No.950826

高嶺の花3

リュートさん

オオカミ姫の二次創作ストーリー。第3話です。

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2018-05-02 00:34:34 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:177   閲覧ユーザー数:177

怪我が完治して団長は再びあの断崖絶壁まで来ていた。

 

「あれ…、おじさん。また来たの?あのお姉さんは、一緒じゃないんだね」

 

「カルン殿は諦めるとおっしゃいましたが、一度引き受けたからには、最後までやり遂げないと、わたしの気が済みませんので…」

 

「まあ、おじさんが死んでも、ボクが生き還らせてあげるから、精々頑張ってね?」

 

「世界樹の力というやつですな。使ってはいけないのではなかったのですか?」

 

「おじさんはボクのこと、言いふらしたりしないでしょ?」

 

「ええ、騎士は一度交わした約束は果たします。約束を守れないのは騎士の恥ですから」

 

「約束破るのは悪いヒトだからね。まあ、ボクも妖精の国の掟を破ったけど、ヒトを助ける為だから悪いことではないよ」

 

「カイト殿、まだちゃんとお礼を言っていませんでしたな。助けていただいて、本当にありがとうございます」

 

団長は胸に手を当てて、深々とお辞儀をした。カイトは少し照れ臭そうにしている。

 

「昔、ボクのご先祖様がね、ヒトを生き還らせてあげたんだけど、そのヒトが他のヒトに言いふらしちゃったんだよ」

 

「よっぽど嬉しかったのでしょうな」

 

「うん、そしたらね。悪いヒトがやって来て、ボクのご先祖様を捕まえて瓶詰めにしちゃったんだ。ご先祖様は瓶の中で死んじゃった」

 

「それはそれは…。ツラい経験をなさったのですな。心中お察しします」

 

団長は胸に詰まる思いでカイトの先祖の冥福を祈った。ところがカイトは悲しむそぶりもなく、淡々と続けた。

 

「まあ、その後すぐ生き還ったんだけどね。もうヒトは生き還らせないことにしよう、ってご先祖様が決めたんだって」

 

「なるほど…、我々と妖精では随分と価値観も異なるのですな」

 

「あの花もさ、煎じて飲むとどんな病気でも治せる効果があるからって、命懸けでヒトが取りに来るんだけど、それで死んじゃったら意味ないよね。ヒトって本当にバカだなぁ」

 

「まさかあの花にそんな効果があったとは知りませんでした…」

 

団長は岩壁に手を掛けて、ロッククライミングの準備を整える。

 

「でも死ぬ時って痛いでしょ?ボク、あまり死にたくないなぁ」

 

「確かに…、わたしも死ぬかと思うほど痛かったです」

 

「だからおじさん…一回、死んでたんだよ?」

 

「そのようですな。出来ればもう死にたくはないものです」

 

「まあ、あんな危険なところに行かなくても、妖精の国に来ればいくらでも咲いてるんだけどね」

 

団長は岩壁を登り掛けていた手を止めて、すぐ様カイトに尋ねた。

 

「本当ですか!妖精の国にはどう行けば良いのです?」

 

「それは教えられない。ヒトが妖精の国に来ると戦争が起こるから…」

 

「戦争が起こるとは…どう言う意味ですか?」

 

「悪いヒトが妖精の国を手に入れようとするからね。だから魔法でヒトには見えないように隠してるんだ。妖精の国はすぐそこにあるよ?」

 

「まさか、わたしの目と鼻の先に妖精の国があったとは…。全く存じ上げませんでした」

 

「長生きしたかったら戦争なんかしなきゃ良いのにね。戦争でたくさんヒトが死んでたよ。ヒトって本当にバカだよね」

 

「同感です。カイト殿の言う通りだと、わたしも思いますよ?」

 

「おじさん、ピプル族なのに妖精の考え方がわかるんだね。見かけによらず結構、頭は良いのかな?」

 

「お褒めの言葉をいただき、光栄ですよ」

 

カイトはヒラヒラと飛んで崖の上に行くと、花を摘んで団長に手渡した。

 

「ほら、ボクが取って来てあげたよ。誰の病気を治したかったの?」

 

「誰かが病気と言うわけではないのです。この花がとても美しいので、この花のよく似合うレディーに渡そうかと思いまして」

 

「ああ、ヒトって綺麗な花を好きな女の子にあげるって聞いたことある!」

 

「まあ、大体そんなところです」

 

「ねぇ、おじさんの好きなヒトって、あのお姉さん?」

 

「いえ、わたしの好きな女性は…別の女性ですね。気が強くて、素直ではないですが、心の綺麗な女性ですよ」

 

「ふーん。心の綺麗なヒトならボクも会ってみたいなぁ。今度、そのヒトを連れて来てよ?」

 

「ええ、いつか必ず連れて来ますよ。では、わたしはこれで…」

 

団長はカイトに何度もお辞儀をしてから城へ帰還した。

 

to be continued


 
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