No.95026

乱世に舞う乙女No.3

雪音紗輝さん

今回は、初回拠点フェイズを投下していきたいと思います。
午前、午後に分けて投稿しようかと思っていますので、よしなに。
ちなみに、午前は朱里の拠点となります。

2009-09-12 15:43:27 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:3856   閲覧ユーザー数:3033

ep2『県令ってのは忙しい』其の一(午前の部)

 

 

 

初めに言っておく。県令ってのは、本当に大変な仕事だ。

 

「ねぇ、朱里? まさかと思うけど、ここに山のように積まれている書類って……」

 

 机の上に綺麗に置かれている書類の山を指差す。

 目を覚ましたら、この光景がいきなり飛び込んできて、少しビビった。

 

「はいっ! それは、今日の分のお兄様のお仕事です♪」

 

「やっぱりか…」

 

 それにしても、限度というものがあるだろう…。これ、軽く俺の身長分はあるのだが…

 ほら、今にも崩れそうにぐらぐらと揺れているよ。

 というか、朱里。お前…よくこの量の書類を落とさずにここまで運べたな。

 

「ちなみに、午後からは警邏のご予定が入っておりますので、正確には午前中に片付けて頂くお仕事になります♪」

 

「マジですかっ!?」

 

「勿論、マジですっ!」

 

あぁ…何であなたはそんなにいい笑顔なんですか、朱里さん。

もしかして、イジメですかっ!?

 俺イジメられてますかっ!?

 

「これは、絶対に昼までには終わらない気がするんだが……」

 

「そこは、気合いでお願いします。本来はこんなにお仕事が溜まる事はないのですが、逃げてしまった前の県令さんが半年分くらいお仕事を溜め込んでいたようで…」

 

「気合いでって…」

 

 あと、前の県令(何故か及川の顔が浮かんだ)。黄巾党から逃げるのなら、せめて仕事を片付けてから逃げて欲しかった。

 というか、寧ろやり残した仕事を片付けに帰ってこい。

 

「大丈夫です! 私もお手伝いしますから、頑張って終わらせちゃいましょう!」

 

 グッと両手を握り締めて微笑む朱里。

 

 ……うん、可愛い。

 

「分かった。これも皆の為だからな…」

 

 多少不埒な事を考えながらも、素直に頷く。この仕事も、国民全員が幸せな生活を送る為に必要なこと。それに、いくらぼやいても、この書類の山が消えてなくなることはないのだ。

 

「ただ、その前に朱里。」

 

 朝食をまだ食べていないから、お腹が減ったんだけど。

 そう言いながら朱里の方を見ると、朱里は既に書類の片付けに取り掛かっていた。

 

「ええっと…治水工事に蒼槍への使者の派遣……はわわっ!? 高いですぅ…っ! いきなりどうしたんですかお兄様!?」

 

「いや、聞こえてなかったみたいだからさ」

 

 なんとなく(と言っても、理由はある)目線の高さまで抱き上げた朱里に話し掛ける。

 驚きつつも、ちょっと喜んでいるような声音だった気がしたが、そこは気にしない。

 

「俺の朝ごはんってあるかな?」

 

 すとんと朱里を床におろし、本来の目的を伝えた。

 

「はぁ~ビックリしました…。お兄様の朝ごはんでしたら、机の上に用意してありますよ?」

 

「えっ? 何処に?」

 

 机の上を確かめる。

 

「ほら、お兄様の朝ごはんはここですよ~♪」

 

 楽しそうに朱里が指差した先…書類の影に隠れてひっそりとそれは存在していた。というか、わざと見つけにくい場所に隠しましたねあなた。

 

 書類を退けて皿に被さっていた蓋を外す。

 

「な、なにぃ!? …朝から…餃子、だと?」

 

 なんという事でしょう。お皿を覆っていた装飾付きの蓋を外したその中から姿を表したのは、溢れんばかりに山と積まれた大量の餃子。

 

「はい! ちなみに、肉まんもありますよ~♪」

 

まさかの……

あと、朝からこんなに重いもの食べたりして、俺は大丈夫なのだろうか?絶対太る気がする。

 中国では、これが普通なんだろうか?

 

「カルチャーショックって本当にあるんだなぁ…」

 

「お兄様、かるちゃーしょっくってなんでしょうか?」

 

無垢な瞳を俺に向けてくる朱里。そうか、俺の世界の話はこっちでは通用したいのか…

 

「カルチャーショックって言うのは、例えば、すっごく田舎の国の人が、逆にすっごく栄えている国の文化を見たりすると感じる驚きみたいなものだよ。簡単に言うと、異文化体験をした時に感じる感情のことかな?」

 

うーん。

自分では結構分かっていると思っていた言葉でも、いざ説明しようとすると意外に難しいな。

画面の向こう側の皆も、いざという時に困らないよう、勉強しておくといいぞ……ん? 画面の向こう側ってなんだ?

 

「はぅ…天の国の言葉って興味深いです」

 

「よければ、また教えてあげるよ」

 

「本当ですか!?」

 

きらきらと目を輝かせる朱里の頭に手をのせる。

 

「まぁ、そういう時間に余裕があるときに…ね?」

 

そのまま、目の前に広がる書類を見つめ、はぁ…と溜め息を吐く。

 

「あはは…そうですね。では、ちゃっちゃと片付けてしまいましょうか?」

 

「まぁな。…でも、その前に、まず朝ごはんな?」

 

 笑いながら、そろそろ大声で悲鳴を奏でそうな空きっ腹を抑えた。

 お腹と背中がくっつきそうになるという表現方法があるが、今はまさにそれ。

 もしかすると、目の前に山盛りにある餃子も、今なら全部普通に平らげられるかもしれん。

 

「あっ! そうでしたね。先に朝ごはんを頂いちゃいましょう!」

 

 そう言うと朱里は俺の膝の上によじよじと登ってきて、それが然も当然であるかのようにちょこんと腰を降ろした。

 

「…俺の膝、気に入ったのか?」

 

 特に止めさせる意志も起こさずに見ていた俺もアレだが、俺の膝の上ってそんなに落ち着くのだろうか?

 

「…ご迷惑でしたか!?」

 

 上目遣いで俺を見つめてくる朱里。取り敢えず、その泣きそうな顔はやめなさい。

 

「いや、別に迷惑じゃないけど、ちょっと気になってな?」

 

 というか寧ろ嬉しい。何だろう……なんか和む感じ?

 あと、柔らかいお尻の感触がなんとも…ゲフンゲフンッ!!

 煩悩を誤魔化すように朱里の頭をちょっと乱暴に撫で、もう一度問い掛けた。

「なんだか、お兄様のお側に居ると、ついつい甘えたくなってしまうんです……駄目ですか?」

 

「グハッ…」

 

 もう、理由とかどーでもいいです。どうぞ好きなだけ甘えてください。

 

「はわわっ!? 大丈夫ですかお兄様!?」

 

 ごめん、爺ちゃん。俺、煩悩滅却出来なかった。

 今、俺の鼻から流れ出る真っ赤な液体がその証拠です。

 

「萌えっ! …じゃなくて、萌…ゲフンッ! いや、もう何時でも何処でも好きなだけ甘えてくれ!」

 

リビドーは抑えられなかったね。

妄想駄々漏れだよ。

 

「はいっ! ってお兄様!? 鼻血が…。 誰かー!!誰かお医者様をー!!」

 

もう、俺は満足だよ。幸せいっぱい夢いっぱいだねっ!!

 

「がはぁっ!」

 

 我が萌え道に一片の悔いなしぃぃいいいっ!!

 

「はわわわわわわっ! お兄様が虚空に片手を突き上げながら血を吐いて……っ!? た、助けて凪さぁぁああんっ!!」

 

今日の仕事…本当に昼までに終わるのかな?

 

もう、ゴールして…いいよ、ね……………?

後書き

 

 雪音です。

 初回確定の拠点フェイズ、トップバッターは朱里ちゃんでした。

鈴々や雛里がいない陣営の朱里って、きっと物凄い甘えん坊になると思うんですよね(一刀に対する呼称がお兄様なのは、甘えの表れです)。

 ちなみに、次回は凪編(+α)になりますので、あれ? 凪は? と思った方、ご安心くださいませ☆

 では、近いうちにお会いしましょう!!

 

 ちなみに、今回の画像は撫子のイメージ図になります。

 殴り書きに近い駄絵ですが...


 
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