「血の通った「艦娘」という新しい人間だと認めて欲しいのです!」
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マイ「艦これ」「みほちん」(第3部)
EX回:第64話(改1.5)<艦娘たちの想い>
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思い出した。本物の戦艦『比叡』は何度か栄えある『お召し艦』の経験もあった。残念ながら美保の比叡には、そんな雰囲気は微塵もないが。
恐らくブルネイの量産型比叡(2号)には過去の歴史的な『記憶』が蘇っているのだ。控えめな性格だから、まだ世俗に染まっていないということか。
そんな比叡の姿を見て『王宮男性』は目を細めて嬉しそうだ。
『苦しゅうないぞ。美しさと強さは兼ね備えてこそ本物じゃ』
私と提督は思わず顔を見合わせた。
(何だ、彼は英語も分かるんだな)
それに『王宮男性』の言い分は分かる気もするが、よく考えたら意味不明だ。まぁそれは高貴な人に有りがちな『美学』なのだろう。
ブルネイは歴史ある王国だ。そして比叡に留まらず艦娘たちにも歴史がある。もしかしたら『王宮男性』と彼女たちは歴史的な何かが共鳴しているのだろうか?
気になった私は隣のブルネイ提督に小声(日本語)で突っ込んでみる。
「本当に強いのか?」
「あの試作型は正直、自信を持って、お勧めは出来ないな」
彼も肩をすくめて小声で答えた。それでも機転が利くだけ立派だ。
(やれやれ……要人相手は疲れるよな)
私は頭に手をやった。軍人にとっては肩が凝りそうな任務だ。
取り敢えず、この場は何とか収拾がついたようだ。一同にはホッとしたような安堵の空気が流れた。
あの美人系の秘書官も『王宮男性』に近寄って何か耳打ちしている。すると急に彼は思い出したような表情に変わって態度を変えた。
『そうじゃったな。この場は、いろいろ都合がある者たちが集っておった』
それを見た私は、またブルネイに呟く。
「上から目線だな」
「身分は高い人だから、そこは仕方がない」
提督も小声で呼応した。
「それに我々は、この国に駐留させて貰っているわけだからナ」
「それは分かるが」
他のスタッフたちも、ちょっと苦笑していた。
私たちの側に控えている艦娘たちも今のところ大人しくしているのが幸いだ。もっとも一番うるさそうな金剛や比叡が、いきなり『王宮男性』の先制攻撃を食らったわけだ。結果的には良かったのだろう。
その『王宮男性』は『失礼した』と言いながら自分の席に戻った。彼の隣にいた補佐官のような黒髪のイケメンの男性が椅子を出して座るのを補助している。今気付いたが彼も腰にサーベル(剣)を下げている。
(近衛兵か)
目つきも鋭いからSPも兼任した武官だろうな……私はボンヤリ考えながら見ていた。
『では、改めて艦娘の説明をいたしましょう』
咳(せき)払いをしてブルネイ提督が英語で話し始める。
『現在、世界各地の海域に深海棲艦が出没して以降、既存の軍艦や巡視艇などが、まったく太刀打ちできず海上航路が分断されて久しいのは、ご存知の通りです』
一同、頷く。艦娘たちも、この件(くだり)は知っているだろう。
『深海棲艦の出現とほぼ同時期に、わが国に現れたのが艦娘と呼ばれる彼女たちです』
提督は艦娘たちをチラッと見ながら続けた。
『普通の人間ではなく、かといってロボットでもない。それでいて艤装と呼ばれる武装を施すことで通常兵器の何倍にもなる兵力を有します。それまで、いかなる兵器でも、まったく対抗手段がなかった深海棲艦への唯一の切り札となっています』
『問題はだね……』
あのブルネイ軍の作戦参謀が手を上げた。
『どうぞ』
提督は発言を促した。
彼は続ける。
『まだ日本にしか、その艦娘たちが居ないという事実だ』
片言の英語だった。
『中東から東アジアへのシーレーンは日本のお陰で徐々に回復しつつあるが欧米は未だ陸路や空路に頼る現実だ』
『そうじゃな』
『王宮男性』も英語で話題に加わってくる。
『わが国は、ちょうど中継地点で、いろいろ協力しておるが、なぜ日本だけが艦娘を独占する? 貴国は優秀な工業大国だから、もう艦娘の量産化も出来ているんじゃろ?』
顔は微笑んでいるのだが言葉の端々(はしばし)に若干の不信感を滲ませている。場は再び微妙な空気に包まれた。
するとブルネイ提督は恐縮そうな顔をした。
『はい、仰る通りです。ですが決して独占しているわけではなく……』
彼は一呼吸を置いた。
『そもそも彼女たちは工業製品のような存在ではありません。ですから仰る量産化も、まだ研究中で、ここに居るのは日本から来たオリジナルの艦娘たちなのです』
『オリジナル? 艦娘は量産兵器ではないのか』
初めて知ったような顔で警察関係者がカットイン。この反応された言葉には美保の艦娘たちも顔をしかめている。
(そうだよな)
私自身も海軍の内外で何度も聞かされたセリフだ。もっとも日本国内での認知度は、まだ少ないのだが。
「よろしいでしょうか」
突然、赤城さんが挙手をした。これに一同、ちょと驚いた。
ブルネイ提督は「どうぞ」と言った。彼女は軽く会釈をして立ち上がった。
「私たちを兵器と見られるのは致し方ないと思います」
直ぐにブルネイ側にも通訳が入る。その様子を確認した赤城さん。
「そう……私たちの使命は、ただ単に敵を殲滅すること以外にはありませんから」
淡々と説明する。
「でも私たちには心があります。喜びや悲しみ……」
彼女の姿にブルネイの要人たちは一様に緊張していた。赤城さんの日本語が直接、通じなくても実際(リアル)の艦娘が自らの意思で立ち発言している姿そのものが、まず彼らにとって大きなインパクトらしい。
「そして国家に対する忠誠心だって陸軍や空軍に負けない自負もあります」
彼女の感情を押し殺したような冷静な語り口が逆に艦娘たちの無念な思いを滲ませている気がするのは私だけだろうか。
(いやブルネイ提督も複雑な渋い顔をしている)
そうだ。直接、艦娘と接している者には次第に分かるようになってくる。彼女たちの想いや疎外感、悲しみというものが。
赤城さんは続けた。
「誤解を恐れず言えば深海棲艦たち……『彼女』たちの苦しさも最近は少し分かるようになったと思います」
「あ……?」
私は、変な声を出して反応した。
(ちょっと赤城さん。いきなり核心部分へ急降下爆撃ですか?)
そう思ってブルネイ提督を見ると彼も一瞬、顔が青ざめていた。
彼女がいう『深海棲艦』とは、あの大井(仮)のことだと思うが……その意図が、このブルネイの要人たちに通じるだろうか? 現に彼らも少し、ざわつき始めている。だが私と提督の心配をよそに彼女は続ける。
「もちろん、わが国だけではありません。世界を救いたい助けたい! その想いはありますが」
赤城さんは凛としている。普段のボーっとした姿からは想像もできない。
「いま量産化も着実に前進しています。実用化されれば、もっとたくさんの人を護ることができるでしょう」
彼女の巍然(きぜん)とした態度にブルネイ側の要人たちも何か言いたいのを制して話を聞いてるようだ。
「でも忘れないで欲しい」
次第に赤城さんの声が震えてきた。
「私たちは単なる機械ではありません。血の通った『艦娘』という新しい人間だと認めて欲しいのです!」
ここまで言い切って赤城さんは顔を押さえて泣き出してしまった。
いや彼女だけじゃない。他の艦娘たちも泣いていた。でも龍田さんペアはジッと耐えているけど。
(無理するなって)
隣に居た日向が赤城さんの肩を抱くようにソッと着席させた。誰が悪いわけでもないが、この状況では男どもが『女子を泣かせた』状態だな。こうなると男性陣は何となく気まずい雰囲気に浸ってしまう。
すると女性秘書官が手を上げた。ブルネイ提督が発言を促した。
以下魔除け
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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ブルネイ側との話し合いで、まだまだ艦娘たちへの誤解が多いことを知る提督たち。そして赤城さんが立ち上がった。