公孫瓚視点
北郷と趙雲に王門との一騎打ちを提案された次の日、私達は城の近くにある鍛錬場に来ていた。ここには勝負するには丁度いい舞台があるためである。
「・・・それにしてもまさか昨日の今日で北郷が一騎打ちをするとはな。」
自分で言ったがこんなに早く実現するとは思わなかった。
「確か趙雲は腕が立つと言っていたがどこまで本当か。」
いくら腕が立つとはいえ相手は我が軍最強の王門だ。その実力は私自身が一番知っている。それ故に今まで追い出さずにいたのだからな。
「白蓮様」
「・・・雪音か。」
真名を呼ばれ振り向くとそこには予想通り関靖・・雪音がいた。
「悪いがもう止めることはできないぞ。」
「分かっております。」
「ん?止めないのか?」
昨日の慌てようから考えて今回も止められると思ったのだがな。
「はい、昨日一刀殿と話して彼を信じる事にしました。」
雪音は昨日とは全く違う穏やかな表情でそう言った。
「そうか・・・なら共に見届けよう。」
「はい、白蓮様。」
「さぁ見せてくれ北郷。お前の実力を」
私はそう言うと闘技場にいる一刀に目を向けた。
北郷一刀視点
「・・・」
「おい!王門様が来てやったぞ!」
そう言われ俺は王門の方を見た。いつ見ても不快な顔と何故そんなにでかくなったのか分からない身体はいつも通りだが普段と違い全身に鎧を付け、手には大斧を持っている。
「・・・随分と臆病なんだな王門。」
「あぁ!?何だその口の聞き方は!俺を誰だと思ってやがる!」
「公孫瓚軍の膿だろ?」
「っ!!殺す!お前だけは必ず殺す!!」
「ははっ!それは良かった俺もお前と同じ気持ちだからな〜。味噌汁まみれの王門君?」
「お前っ何でそのことを!?・・・っ!まさか!」
「あの時は申し訳ありませんでした王門様」
俺は侍女の格好をしていた時に出していた声でそう言った。
「っ!・・・ふははは丁度いい!あの時の借りも今ここで清算してやるよ!」
王門が手に大斧を構え俺に斬りかかろうとしたその時
「王門!まだ開始の合図は出してないぞ!」
王門を止める声が聞こえた。声の主は公孫瓚殿のようだ。
「ちっ!あの女もいつか俺の下につかしてやる!」
王門が盛大に舌打ちをしながらそう言った。
どうやら公孫瓚殿の地位も狙っているようだ。
「これより!王門と北郷一刀による一騎打ちを行う!決着はどちらかが戦闘不能及び戦意喪失した場合とする!武器の使用は自由!ただし毒などによる間接的な攻撃は負けとみなす!」
そんなことを思っていると一騎打ちについての注意事項を言い始めていた。 毒の注意が入ったということは使ってくる可能性があるといううことか。王門の顔を見ると不快な笑みを浮かべていた。・・・魂胆が見えすぎだろ。
「それでは始める!双方構え!」
その合図と共に王門は大斧を構え、俺は手甲のついた拳を構えた。
「北郷、持っていた剣は使わなくて大丈夫なのか?」
公孫瓚殿が俺に暗に使わなくて勝てるのか確認をしてきた。俺はそれに対して笑顔で、
「はい、剣が汚れてしまうので。」
そう言った。すると王門の顔が今にも爆発しそうなほど赤くなっていた。
「そうかならよし。・・・それではいくぞ、双方一騎打ち始め!!」
北郷一刀視点
「うぉぉぉ!!!死ね!」
始めの合図と共に王門が斧を振り上げ襲いかかって来た。俺はその一撃を体を半身にする事で避けた。
ドカンッ!俺に当たらなかった一撃が闘技場の床に直撃し鈍い音がなった。中々の膂力だが・・・そんなことを思っていると
「避けるんじゃねーよ!!」
ブォン!と斧を横に振ってきた。
俺はその一撃も上体を逸らすだけで避けた。
「くそが!」
今度は斜めに斬り下ろすように振ってきたので俺は少し後ろに飛び避けた。
「はぁ、はぁ、はぁ、くそが!何で当たらねーんだよ!?」
「何だ、もう息があがったのか?ちゃんと鍛錬をしてないからそうなるんだぞ。それにお前の攻撃は一撃当てればいいっていう魂胆が見えすぎててよけやすいんだよ。」
「何!?」
「どうせ刃先に弱い毒でも塗ってあるんだろ?例えば直接死ななく、体が痺れるような毒が?」
「っ!」
王門が息を飲む音が聞こえた。
「やっぱりか魂胆分かり易すぎるだろ。よく将軍なんてやれてたな。」
「うるせぇ、うるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇ!!!!!!!!!!俺を!俺を誰だと思っていやがる!俺は公孫瓚軍最強の!」
「さっきからやれ強いだの、やれ最強だのお前の方がうせぇんだよこの雑魚が!!」
俺はそう言うと王門との距離を詰め懐に入り込んだ。
「なっ!」
気づいたようだがもう遅い。俺は拳と腕に気を集中して、腰をの捻りながら鎧を着込んでいる王門の腹に思いっきり正拳突きをした。
「はぁぁ!!」
ドォン!ベコっ!俺の拳は王門の鎧を凹ませながら王門の腹を殴った。
「ごふっ!」
王門は苦悶の声を上げるとその場に蹲った。
「がぁ!おれ、の、はらが、」
どうやら痛みで言葉が上手く話せないようだ。
「おいおい、たった一撃当てただけだぞ?」
そう言うと俺はがら空きになっている王門の顎を蹴り上げ王門の巨体を浮かした。
「ぐふっ!!!」
「まだまだこれからだぞ!!」
そう言うと俺は王門が地面に落とし落ちる間に顎、喉、鼻、みぞうちに一撃ずつ入れた。
ゴン!メリッ!バキッ!ドォン!
ドサッ。王門は声を上げることなく地面に叩きつけられた。
「う、うぅ」
「はは、随分いい顔になったじゃないか。」
王門の顔は俺の蹴りや殴りで腫れ上がっていた。俺はその王門の近くに座り話し始めた。
「なぁ王門、俺の提案に乗らないか?」
「うぐ、て、提案だと・・・」
「ああそうだ。提案に乗るんだったらこの勝負俺の負けでいい。どうだ?」
「っ!のる!」
にやっと心の中で俺は笑った。王門は典型的な自尊心が強い人間だ。だからここで自分が勝つことが出来るならこの取引にのることはわかっていた。
「 そうかなら一つ目だがお前はこの一騎打ちが終わったらすぐにこの軍を出て行け。」
「なっ!そんなこと出来る訳!」
がちっ!
「何か勘違いしているみたいだから言っておくがこれは命令だ。」
俺は王門の頭を掴みながらそう言った。
「ぐっ!」
「俺は今とても怒っている。今すぐお前の手足を叩き折りたいほどにな。だがそれじゃあ怪我が治ったらまた同じ事をするだろう。だから俺はこの提案をしているんだ。」
いくら俺が王門を潰そうが、こいつのこの軍での影響力はあまり変わらないだろう。そうなればこいつの他にも関靖さん達を苦しめる奴らが出てくるかもしれない。だからこその提案である。
「さぁどうするんだ王門?」
「くっ!・・・のろう。」
王門は悩んだ末にそう言った。
「そうかならもう一つだが」
「まだあるのか!?」
「もう一つは・・・二度と関靖さんの前に姿を現わすな。」
「へぇ?」
「何間抜けな声出してんだ?」
「そ、そんなことか?」
「ああ、そうだ。元々この一騎打ちは関靖さんをお前から解放するためにやったんだからな。」
「は、ははははは!そんな事の為にお前は戦ってたのか!?全くくだらなっぶふ!」
「・・・下らないだと?」
こいつは何を言ってるんだ・・・
「あの人がお前の言うその下らない事でどれだけ苦しんだとおもってる。」
バキッバキッ!押し付けられた王門の顔が床にめり込んでいく。
「なぁ、何か言ってみろよ?」
俺はそのまま王門の顔を潰す勢いで床に押し付けていったすると、
ぽかっ
「一刀、そこまでです。」
頭を叩かれた。叩かれた方を向くと
「・・・星」
「一刀、気持ちは分かりますが頭に血が上りすぎです。我々の目的はその男を殺すことですか?」
そう星が言った。
「・・・ごめん。ちょっと頭冷えたみたい。」
「ふふ、ならいいです。」
星のおかげで冷静さを取り戻すことが出来た。危なかったもう少しでこいつの頭を潰すところだった。
「しかし出会ったばかりの女性にそれほどまでに想うとは・・・少し妬けてしまいますぞ。」
「ちょっ!そう言うわけじゃあ!」
「う、うぅ」
俺が星にそう言っていると王門が目を覚ました。
「お前本当に耐久力だけはあるな。」
俺は気持ちを切り替え王門の方を向いた。
「じゃあお前はこの一騎打ちが終わったら城を出ていくでいいな?嫌なら・・・」
シュッ、ドォォン!
王門の顔のすぐ横に拳を振り下ろしながら
にこにこ笑顔で王門を見た。すると王門は首を縦に思いっきり振った。
「・・・よし、いいだろう。」
そう言うと俺は立ち上がり公孫瓚さんの方を向いた。
公孫瓚視点
「・・・・・・」
「・・・・・・」
どうやら王門と北郷の一騎打ちは終わったようだが私達は言葉を発せずにいた。それもそうだろう、王門は我が軍最強の武将だ。だからいくら北郷が強かろうが、よくて苦勝、普通なら引き分け程度だと思っていた。だが蓋を開けてみればどうだ?我が軍最強だと思っていた武将は一方的にやられ地に伏していて、相手である北郷は無傷で立っている。北郷を信じると言った雪音でさえ唖然としているのだ。私が驚かない訳がない。
「公孫瓚さん、一騎打ち終わりました。」
私がそう思っていると北郷がそう言ってきた。
「あ、ああそうだな。勝者!」
「俺の負けです。」
「へっ?」
思わずおかしな声が出てしまった。
「お、お前の負け?」
「はい、俺の負けです。」
私は一瞬北郷が何を言っているか分からなかった。この状況で負けなどあり得ない。
「・・・すまないがそれを認める訳にはいかない。これは正式な一騎打ちだ。ここで勝敗に不正がある訳にはいかない。」
「でも、最初に言ってましたよね。勝敗はどちらかが戦闘不能及び戦意喪失した場合に決まると。」
「た、確かに言ったが。」
「なら俺の負けでいいですよね。」
確かに本郷の言う通りの事を言ったが、この状況で王門の勝ちを認める訳には・・・いや待て、それ以前に何故北郷は負けようとしているんだ?
「あの一刀殿、何故負けようと?」
私が悩んでいると私が考えていた事を雪音が言ってくれた。
「それが一番丸く収まるからです。・・・安心してください関靖さん。もう関靖さんが心配するような事は起きませんから。」
北郷は雪音に優しくそう言った。
「ですから公孫瓚さんお願いします。」
そして私に頭を下げながらそう言った。
「・・・はぁぁ〜そう言われたら認めない訳にはいかなくなるだろうが。」
「じゃあ!」
「ああ、・・・この一騎打ち!北郷一刀の戦意喪失により公孫瓚軍将軍王門と勝利とする!」
私は声高らかにそう言った。
北郷一刀視点
「さて北郷お前の考えを聞かせてもらおうか。」
「分かりました。まず何に答えれば?」
「ここまで私の質問に答えなかった理由は?」
俺は公孫瓚さんにそう言われた。現在謁見の間にいるのは公孫瓚さん、関靖さん、星、そして俺の4人だ。あの一騎打ちの後、公孫瓚さんに質問責めにされたが質問に答えないままここについたからであろう。
「それについては申し訳ありません。あの場では誰か他の方に聞かれる訳にはいかなかっので。」
「ん?何故だ?」
「これからの事に関わるからです。」
「これから?」
「そうこれからです。」
「と言うことはこの軍に入るという事でいいのか?」
「いえ、俺は軍には入りません。」
「なっ!?ではどういう!」
「それは今からお話しします。」
俺は公孫瓚さんを落ち着けるように言葉を遮ってそう言った。
「す、すまない。では話してくれ。」
「はい。まず王門とのことですがもう決着は着きました。近いうちにこの軍を出ていくでしょう。」
「・・・あの時何やら一騎打ち中に話していたがそのことだったか。しかし何故負けた事にしたんだ?」
公孫瓚さんがそう聞いてきた。思った以上に察しが良くて助かる。
俺はそう思いながら公孫瓚さんの質問に答えた。
「それは騒ぎを起きないようにするためです。」
「騒ぎをだと。何故だ?むしろ新たな戦力が加わったと軍が盛り上がるだろうに。」
「はい、この軍だけの事を考えるならそれでもいいでしょう。でも外に目を向けるとあまり良くありません。」
「外、他の軍という事ですか?でも他の軍に知られて困る事ではないのでは?」
そう関靖さんが言ってきた。
「はい、今は構いません。しかし・・・」
そう言うと俺は公孫瓚さんを向きながら俺はその言葉を言い放った。
「公孫瓚さん、今の王朝をどう思いますか?」
「なっ!?」
公孫瓚さんは驚いていた。それもそうだろう。現状公孫瓚さんは王朝に仕えている人だ。そんな人に対してこんな質問をするのは本来あってはならない事だ。
「・・・北郷、それは意味を分かって言っているんだな。」
公孫瓚さんがこれまで見せたことのないような真剣な顔でそう言ってきた。
「はい、理解した上です。」
俺は公孫瓚さんの目を見ながらそう言った。
「・・・正直な感想として以前に比べて少しだが国力が低下してきているとは思っている。」
「それだけですかな?」
「何が言いたいんだ趙雲?」
「つまりですな一刀はこう言いたいんです。"今の王朝をはいずれ滅ぶ"と。」
「「なっっ!?」」
星の言葉に公孫瓚さんと関靖さんが驚愕していた。星には事前に話してあったがその時にも驚かれたのでこの反応は予想していた。
「ほ、北郷それは本気で言っているのか!?」
「はい、それも近いうちに必ず起こるでしょう。」
それがこの有名な三国志の始まりだからな。
「・・・一刀、私の前ではいいが他の者にはそのようなこと言うなよ。最悪切り捨てられても文句は言えないからな。」
公孫瓚さんが少し言い聞かせるような声色でそう言ってきた。心配してくれているのだろう。優しいな。
「はい、俺も公孫瓚さんだからこの事を言ってみたんです。他の方だったらこんな事言えませんから。」
「そ、そうか・・・あ、ありがとう。」
?
公孫瓚さんが何やら恥ずかしそうにそう言った。一体何故だ?
「・・・天然人たらし。」
「それには同意します。」
「何でっ!?」
星と関靖さんがそう言ってきた。普通に思った事を言っただけなのに
「んんっ!・・・話を戻すがもし一刀が言っている事が起こったとして、それと今回の負けとは一体どんな関係なんだ?」
「あ、はい。質問に質問を返すようで申し訳ありませんが、もし今の王朝が滅びたとしたら、次来る時代はどんな時代だと思いますか?」
「・・・っ!?まさか!?」
俺は公孫瓚さんの反応を、にやっと見ながら
「そうです。今の王朝が滅びれば次に待っているのは新たな王朝を決める群雄割拠の時代が始まるでしょう!」
「新たな、王朝・・・」
「ええ、そうです。そこで今回の負けに繋がります。」
俺はそう言うと俺と星の考えた作戦についた話し始めた。
「まず今回負けたのは、この国に新たな戦力が増えた事を悟られないようにすることです。俺と星の見立てではこの城に何人かの他国の密偵が入り込んでいます。」
「っ!?だったらすぐにでも!」
「落ち着いてください。今動けばその密偵を送り込んでいる他国に目をつけられてしまいます。そうするとこの後の時代で不利な立場から始めなければなりません。だから今は我慢の時です。」
「・・・だが」
「はいだからこそ、その密偵に偽の情報を掴ませます。」
「・・・なるほど。だからこその負けか。」
「ええ、この結果を聞いて他国は"あの国はやはり王門以上の将軍は居ないか"と思うでしょう。そうすれば変に他国に警戒されずに済みます。その間に兵力を増強出来れば次の時代で優位に立てるでしょう。」
「ふむ。・・・確かに言っていることには一利あるが、正直まだ半信半疑だ。」
「でしょうね。ですからこれから考えていて貰えば構いません。その内嫌でも分かってくださると思いますので。」
俺は自信を持ってそう言った。歴史的に証明されてるからな〜。
「・・・わかった。北郷の意見も参考にしつつ今後軍事を進めてみよう。」
公孫瓚さんはそう言った後に
「まぁとりあえず話は一区切りついたわけだが、それはそうとお前たちはどういう立場でこの軍にいるつもりだ?流石に何もしないという訳にはいかぬぞ?」
公孫瓚さんが言ってきた。ごもっともな意見だと思う。
「はい、俺は最初に言われていた厨房の方に入ろうかと思っています。」
「そして私は客将としてこの軍にいようかと思っております。」
俺と星は自分達の考えを言った。
「う〜む、趙雲はいいとして、北郷は厨房では勿体ないと思うのだが。」
「それについての考えもありますが、もう少し落ち着いてから話そうかと思っています。」
「まぁそうするしかないな。・・・よし!この話は一旦おしまいだ!雪音、酒を持ってきてくれ!王門がやられるところを見て気分がいいからな!」
公孫瓚さんは先程とは打って変わって陽気な雰囲気に変わっていた。凄まじい早替りだ。
「はぁ〜先程まで威厳のある君主でしたのに・・・はぁ〜」
関靖さんが大きなため息をついた。はは〜苦労してますな。
俺がそんな事を思っていると
「一刀殿、この後中庭の方に来て頂いてもよろしいでしょうか?」
関靖さんがそう言ってきた。
「構いませんけど・・何でしょうか?」
「その内容もその時お話致します。それではよろしくお願いいたします。」
そういうと関靖さんは公孫瓚さんの方に向かって行った。
「ん〜何の用事だろうか?」
「それは本気で言っておるのですか一刀?」
「えっ星分かるの!?」
「・・・はぁ〜。」
星も大きく深い溜息を吐いた。
・・・解せぬ。
北郷一刀視点
公孫瓚さんとの酒宴も終わり、俺は中庭に来ていた。勿論酒は呑んでいない、だって未成年だ。もの。・・・まぁそのことは置いておいて宴の終わりに関靖さんを探したがいなかった。公孫瓚さんに聞いてみると中庭に先に向かったようなので俺も中庭に来た。
「さて、中庭といっても何処なのやら。」
そう、この城の中庭はとても広く、木々なども生えているため何処に何があるのかよく分からない。待ち合わせ場所も決めていないので見つけられるかどうか・・・
そうも思いながら歩いていると一つの木が目についた。少し小高い丘の上にある大きな木だ。俺は吸い込まれかのようにその木に向かって歩き始めた。
木の下に着くと関靖さんを見つけた。しかし、
「・・・寝てる。」
関靖さんは可愛い寝息を立てながら座り込んで寝ていた。・・・まぁしかたないか今まで王門の事で悩まされていたからな。一気に気が抜けて疲れが出てしまったんだろう。
「・・・お疲れ様です、関靖さん。」
そう言うと俺は上着を掛けてあげて目が覚めるの待つことにした。
雪音視点
「ん、んん」
どうやら寝てしまっていたようだ。一刀殿はまだ白蓮様のところだろうか?
そう思い起き上がると何かが私の体から滑り落ちた。これは
「あ、起きましたか関靖さん。」
名前を呼ばれた方を向くとそこには私が呼び出した一刀殿がいた。
「か、一刀殿!も、申し訳ない!呼び出したにも関わらずこのような!」
「はは、構いませんよ。緊張が抜けて一気に疲れがきてしまったんでしょう。」
「は、はい。そのようで。」
くっ!恥ずかしい!穴があったら今すぐにでも入りたい気分だ!
「はは・・・それで関靖さん。今回はどんな要件で?」
私が落ち込んでいると一刀殿がそう言ってきた。
「は、はい。それは今回の事についてのお礼をと思いまして。」
「そんな、気にしないでください。俺が好きでやった事なんで。」
「いえ!それでは私の気が済みません!私の出来る事なら何でもしますのでして欲しい事を言ってください!」
「なっ!」
私がそう言うと一刀殿がとても驚いた。何故?
「せ、関靖さんそれ意味分かって言ってます?」
「?どう言う事ですか?」
「・・・関靖さん」
がしっといきなり肩を掴まれた。
「ひゃ、ひゃい!」
「俺以外の男に今の言葉言っちゃいけませんからね!」
「は、はい!」
一刀殿に力強くそう言われ、私も頷いた。
「じゃあこの話はこれでおしまいですね。」
「ま、待ってください!それでは」
「じゃあこれから俺と仲良くしてください。それだけで俺は嬉しいので」
一刀殿はそう笑いながら言った。
「・・・一刀殿、失礼を承知でお聞きしたいのですが何故私を助けてくれださったのですか?」
何かを求む訳でもなく、何かを強制させる訳でもなく、ただ仲良くしてくれればいいとそう言った。なら一体何故助けてくれたのかそれが疑問で仕方なかった。
「何故ですか・・・」
そういうと一刀殿は一瞬考えるように俯くと、すぐに顔を上げ笑顔でこう言った。
「泣いている女の子を助けるのに理由なんていりますか?」
「っ!」
その瞬間私は分かった。ああ、この人とっては助ける事に理由なんて要らないんだなと。
「・・・雪音です。」
「え!?」
「私の真名です。感謝の意味を込めてどうか受け取って下さい。」
「関靖さん・・・いえ、雪音さん!謹んで受け取らせていただきます!」
「はい!どうか大切にしてくださいね!」
「はい!一生大切にします!」
「・・・ふふ、なんだか結納の儀式みたいですね」
「えっ!?いや!その・・」
「ふふ、ははは!」
「も、もう雪音さん笑わないで下さいよ!」
「ははははは!」
私は久しぶりに声を上げて笑った。今までの悲しみや苦しみを拭い去るように、そして
自分の胸の高鳴りを受け入れるかのごとく。
こんにちはこんばんはアリアです!
恋姫夢想白き才姫に仕えし道化12話読んでくださりありがとうございます!
今回はついに王門がボコボコにされる回となりました!いや〜オリキャラなので書くのが少し難しい場面もありました。これからオリキャラも多数出てくると思うので書くのに慣れていきたいと思います!
あと雪音さんの真名を渡すシーンは、もうちょっと書きたかったのですが書くと先に進まないのでこんな感じになってしまいました。必ず活躍させるので許してください雪音さん!!
それでは今回はここまでまた次回お会いしましょう!それでは再見!
王門が生きているこれって伏線?
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皆さんのおかげで12話目です!
支援、コメント、読んでくださった皆さんに感謝です!