No.944230

孤高の御遣い 北郷流無刀術阿修羅伝 君の真名を呼ぶ 27

Seigouさん

北郷の一族(後篇)

2018-03-07 17:25:01 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4336   閲覧ユーザー数:3492

一刀「おおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

刀誠「はあああああああああああ!!!!!」

 

純粋な技の競い合いに終止符を打ち、お互いに氣を全開にしての攻防に移る

 

ブゥンッ!!

 

分歩の究極型による質量のある残像を生み出す一刀

 

三体の一刀が一斉に刀誠に襲い掛かる

 

刀誠は縮地で後ろに下がり距離を置く

 

ズドンズドンズドーーーーン!!!

 

すると、刀誠が通った地面が爆発する

 

辰の型、轟歩による爆発で分身体を掻き消していく

 

一刀「しっ!!」

 

轟歩による爆発を回避し巳の型回歩で刀誠の後ろを取る

 

右の貫手を刀誠の背中に突き立てる

 

しかし、確かに手応えがあると言うのに刀誠は微動だにしない

 

一刀「(っ!分歩!)」

 

それは究極型分歩による質量のある残像だった

 

ドガーーーーーン!!!

 

その事実に気付いた瞬間、その分身体の足元が爆発する

 

分歩と轟歩の混合技による爆発は凄まじく、地面は黒焦げになっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「うわっ!!一様もろにくらいませんでしたか!!?」

 

雛罌粟「あんな爆発に巻き込まれたら、いくらご主人様でも・・・・・」

 

百合「もう止めて下さい、一刀君、おじいさまぁ・・・・・」

 

徐栄「くぅぅ、心の臓が縮む思いです・・・・・」

 

張済「兄上、どうかおじいさんと一緒に生き残って下され・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刀誠「・・・・・ふむ、ちとやり過ぎたかのう?」

 

真っ黒焦げになった地面を裸足で蹴り、刀誠は溜息を漏らす

 

刀誠「かなり手応えがあったが、消し飛んでしまったかのう?・・・・・むおっ!?」

 

次の瞬間、いきなり氣の線が地面を走る

 

足元に飛来する氣弾を蔦歩で飛んで躱す

 

刀誠「地泉戒か・・・・・っ!」

 

さらに空中に居る所に高速氣弾が飛来する

 

刀誠「かあっ!!」

 

この氣弾を拳に氣を集中させ、ぶつける事で掻き消す

 

刀誠「雷針砲など速いだけで、相応の氣で相殺すれば何とでもなるわ!」

 

見事に氣弾に対処し、苑歩で地面に降り立つ

 

すると、目の前の地面が盛り上がり、そこから無傷の一刀が飛び出す

 

刀誠「土遁の術でやり過ごしおったか」

 

忍術も北郷流の中に組み込まれているので、出来ても不思議ではない

 

一刀「少しきわどかったけど、なっ!!!」

 

再び氣を解放し、刀誠に肉薄する

 

刀誠「ふんっ!!!」

 

刀誠も氣を解放し、迎撃するも

 

刀誠「むっ!!?」

 

肉薄した一刀は分身体で、振るった拳がすり抜ける

 

しかし

 

ドカンドカンドカン!!

 

刀誠「むおおお!!」

 

分身体が通った地面が破裂する

 

分歩と轟歩の別バージョンに、刀誠は僅かに怯む

 

刀誠「むぅ、この程度で・・・・・むっ!?」

 

いきなり刀誠は一刀を見失う

 

周囲を見渡しても一刀の姿は何処にもなかった

 

刀誠「(・・・・・これは)」

 

ピンときた刀誠は、その場で嶽歩を発動し、完全防御態勢に入り腕を組み仁王立ちになる

 

刀誠「・・・・・・・・・・っ!!」

 

いきなり真横から一刀が現れ、嶽歩の壁に拳を見舞うも、寸での所で刀誠は回避行動を取る

 

刀誠「闇歩など、下らん技を使いおって!!!」

 

戌の型湫歩で氣を辺りに張り巡らし、寅の型闇歩を見切る

 

さらには嶽歩で誘いをかけ、回避すると同時に反撃に移る

 

得意の左足を見舞い、地面がさらに抉れる

 

ガシィッ!!

 

刀誠「むっ!!?」

 

しかし、先程の氣を使わなかった時の威力とは比較にならない速さと威力のはずの蹴りを一刀は苦も無く受け切った

 

一刀「確かに、下らない技だよ・・・・・終わりにしてやる、じいちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

于吉「・・・・・北郷の目が本気になりましたね、どうやら終わりが見えて来たようですね」

 

神農「そのようじゃのう・・・・・どうじゃ、少しは進展があるかのう?」

 

左慈「うるさい、最後まで話し掛けるな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刀誠「ぬおおおおおおおおお!!!」

 

そこから連続で蹴り技を繰り出す刀誠

 

最早常人では捉えきれない程の速さで、あらゆる角度からあらゆる北郷流の蹴り技を見舞うも

 

シュババババババババ!!!

 

苦も無く一刀はこれらの蹴技を見切っていく

 

刀誠「むぅ、ならばこれならどうじゃ・・・・・コォ~~~~」

 

両腕を円を描くように回し、構えを取る

 

刀誠「しぇあっ!!!!」

 

指を立て突き出し、鋭い貫手を繰り出す

 

合計七本の貫手が一度に繰り出される

 

北郷流訃技、北斗蒼龍

 

この七本の貫手全てが、人の最も危険な七か所の人体急所に狙いを定めたもので、くらえば確実にあの世行きと言う、まさに必ず人を殺す技と書いて必殺技

 

この神速を体現した七本の刺突が一刀に襲い掛かる

 

しかし

 

バシンッ!!!

 

刀誠「むおっ!!!??」

 

一刀「選択を誤ったな、じいちゃん」

 

確かに北斗蒼龍は防御不能な上に回避不可能で、それを知らない他流派にとっては、まさに死を宣告するに等しい技である

 

が、同流派の一刀はその本質を知っているが故に七本の貫手が順番に何処に来るか分かっていた

 

祖父と同じ様に北斗蒼龍の要領で七本の貫手を全て見切り受け止めた一刀は、祖父の右腕を掴んでいた

 

一刀「これで幕引きにしよう・・・・・じいちゃん!!!」

 

ギシィッ!!

 

刀誠「ぐっ!!速っ!!」

 

一気に引き寄せられ、右腕の関節を極められながら一本背負いを極められる

 

ビキィッ!!

 

刀誠「がっ!!!(こ、これは!!?)」

 

右腕の肘関節を折られながら投げられる

 

刀誠「(画竜点睛!!!)」

 

気が付いた時にはもう遅い、逆さまの状態で空中に居た

 

ゴカァッ!!!

 

次の瞬間、一刀の左蹴りが刀誠の顔側面に炸裂した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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紫苑「きゃああああああああああ!!!!」

 

祭「刀誠!!!!」

 

桔梗「いかん!!!完璧に極まりおった!!!」

 

璃々「おじいちゃん!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神農「・・・・・勝負あった様じゃの」

 

于吉「ええ、あれだけの必殺の技を受ければ、生きていたとしても立ち上がる事は最早できないでしょう・・・・・しかし、かなりの収穫がありましたね、これで北郷流の攻略法はほぼ完成したと言っていいのではないですか、左慈」

 

左慈「まだだ、まだ終わってはいない」

 

于吉「は?ですが流石にもう立つ事は出来ないでしょう」

 

左慈「確かにあれをまともに受けてしまったんじゃ、俺でも暫くは立てないだろう・・・・・だが祖父の方はまだ生きている、まだ何かあるはずだ、黙って見ていろ」

 

于吉「・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

無刀術訃技、画竜点睛

 

この技は、無刀術の中でも秘中の技で、一刀も藁人形相手に型稽古で使う程度であった

 

一刀本人にとってもそうそう使う機会など無く、このように実際に人間相手に使う事など無いだろうと思っていた

 

その最初に使った相手が自分にこの北郷流を叩き込んでくれた師匠であり、血を分けた祖父であると言う事実

 

目の前に仰向けに横たわり、右腕が完全に折れ、首筋が青く染まっていく祖父を見ると何とも言えない気持ちになってくる

 

刀誠「おぁぁ・・・・・見事じゃ・・・・・一刀よ・・・・・」

 

一刀「っ!・・・・・じいちゃん」

 

倒れた祖父の体は、光の粒子を放出しながらみるみる薄くなっていく

 

今にも消えてしまいそうな祖父の傍に寄り添い、最後になるであろう会話に耳をそばだてる

 

刀誠「一刀よ・・・・・ワシの手を握るのじゃ・・・・・」

 

言われた通り、差し出された左手を握る

 

倒れた祖父の左手は震え、今にも地に伏しそうなほどに弱弱しかった

 

だが

 

刀誠「ふっ!!!」

 

一刀「な!!? 」

 

次の瞬間、膨大な気力が刀誠から解き放たれる

 

しかし、それは攻撃的なものではなく、温かく包み込むとても心地のいいものだった

 

一刀「(これはまさか!!?)」

 

その氣は一刀の中へと流れ込んでいき、刀誠は手を離す

 

刀誠「北郷流奥義・・・・・九十九桜花・・・・・」

 

一刀「なんて・・・・・なんて事をするんだ、じいちゃん!」

 

北郷流奥義が一つにして三大禁忌が一つ、九十九桜花

 

これは、対象一人の寿命を底上げする奥義である

 

しかし、華やかな名に似合わず、この技は奥義とは言い難い代物である

 

なにせ、自分の命を引換とするものなのだ

 

しかも、底上げできる寿命は精々回天丹田1~2回分、よくても3回が良い所である

 

命を対価とするにしては、余りに割に合わない技と言えよう

 

以前に一刀との戦いで雷刀が披露した千刀戮功があるが、あれは元来一人でやる代物ではないのだ

 

本来なら二人以上の人数で行使するものであって、北郷流同士のガチの試合をする時にしか用いられない

 

今回は何もない広い荒野で試合ったので、二人とも使用する必要はないと判断し事に挑んだだけである

 

刀誠「お前は・・・・・これまで回天丹田の遣い過ぎで・・・・・相当に寿命を削られておるからのう・・・・・」

 

一刀「だからって、じいちゃんが俺にそこまでする必要なんてないだろう!」

 

刀誠「これで、良いのじゃ・・・・・これが、儂からお前への・・・・・最後の贐じゃ・・・・・」

 

一刀「俺は、誰かから贐を貰う資格なんて・・・・・」

 

刀誠「ふっ・・・・・そう悲観するでない・・・・・お前は、お前なりにこの世界で立派にやって来た・・・・・胸を張れ・・・・・」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

刀誠「お前は、全盛期のワシをとっくに超えておる・・・・・お前になら北郷流宗家を安心して引き継がせられる・・・・・」

 

一刀「そんな、じいちゃん・・・・・」

 

刀誠「一刀よ・・・・・北郷島津守刀誠が命じる・・・・・北郷家当主を受け継ぎ・・・・・島津守の名を襲名するのじゃ・・・・・」

 

一刀「そんなもの、何の意味もないだろう!」

 

刀誠「確かにのう・・・・・このような称号、この世界では役には立たん・・・・・かつて、島津の地を守って来た北郷家の見得でしかないからのう・・・・・じゃが、それでも・・・・・北郷家が長年探してきた・・・・・侍の理想を追い求めるうえでは・・・・・かっこは着く・・・・・」

 

一刀「そんなもの、俺には荷が重過ぎる・・・・・」

 

刀誠「そう気負うでない・・・・・ワシも、そのような理想などあると思うておらん・・・・・ワシも深くは考えずに、先代からこの名を襲名したからのう・・・・・」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

刀誠「これが、儂の最後の我が儘じゃ・・・・・一刀よ、聞いてくれんか・・・・・」

 

一刀「・・・・・分かった、何処まで出来るか分からないけど、やってみる」

 

刀誠「感謝するぞ・・・・・これで安心して逝けそうじゃ・・・・・さらばじゃ・・・・・一刀よ・・・・・」

 

そして、光の粒子と共に祖父の姿は完全に消えてしまった

 

一刀「・・・・・じいちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零「ああ、ぐっす・・・・・刀誠、様ぁ・・・・・」

 

華佗「おじいさん、あんたはそれほどまでに一刀の事を・・・・・ううぅ・・・・・」

 

雫「やはり、一刀様の寿命は・・・・・刀誠様、感謝します、感謝します・・・・・」

 

事の顛末に、一同は余りに悲哀な気持ちとなる

 

しかし、それと同時に一刀の寿命が縮んでいた事実と、それを引き上げてくれた刀誠にただひたすらに感謝するしかなかった

 

そして、水晶からの投映が消えていく

 

管輅「ここまでのようね・・・・・貂蝉、卑弥呼、行くわよ」

 

貂蝉「分かったわん」

 

卑弥呼「うむ、今こそご主人様と邂逅すべき時」

 

そして、貂蝉と卑弥呼は管輅の肩に手を乗せ、管輅は二人と共に転移の術で移動した

 

桃香「あ!!?管輅さん、貂蝉さん、卑弥呼さん!!?」

 

雪蓮「ちょっと、あの三人何処に行ったのよ!!?」

 

華琳「決まっているわ、一刀に会いに行ったのよ」

 

桃香「だったら、私達も連れて行ってくれたらよかったのに!!」

 

華琳「それは我が儘が過ぎるわ、桃香」

 

雪蓮「・・・・・そうね、あたし達が自分の力で一刀に会わなければ何にも意味が無いんだし」

 

桃香「・・・・・そう、ですよね」

 

零「それはそうと、早く奴らの根城を見つけ出さないと!!」

 

雫「はい、これ以上一刀様を戦わせる訳にはいきません、せっかく刀誠様が一刀様の寿命を延ばして下さったんです、それを無駄になど出来ません!!」

 

そして、一同は三国の力を総結集し、左慈達の根城に関する情報収集に乗り出したのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

祖父が居た場所を呆然と見つめる一刀

 

いずれ自分も、こんな風に消えていくのかと思うと悲哀を通り越して感情など湧かなくなってくる

 

雷刀「よう、俺」

 

一刀「・・・・・雷刀」

 

その時、背後に裏の自分が現れる

 

自分の分身であるが故に、自分と祖父の戦いを傍観していたのは分かっていた

 

何時来てもおかしくないと思っていた、下手をしたら祖父との戦いに乱入してくるかもと思っていた

 

しかし、そうしなかったということは

 

一刀「祖父殺しの俺を、殺しに来たか・・・・・」

 

雷刀「・・・・・いいや、お前のした事は間違っていない、じじいは俺達と同じくここにいてはならない存在だったからな・・・・・それに、お前が手を下す事が無ければ、俺がじじいを殺っていたよ」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

結局、どう転んでも祖父は自分の手によって命を落とす運命だったと、思い知らされる

 

雷刀「だが、まさかじじいがお前の寿命を引き延ばすとは思っていなかったがな」

 

一刀「で、この場で回天丹田を連続で使って、伸ばした寿命を元に戻せってか?」

 

雷刀「馬鹿言え、じじいの贐を無駄に使い潰すっていうなら、それこそここで引導を渡してやるよ」

 

一刀「・・・・・そうか」

 

たとえ裏の自分と言えども、祖父に対する感情は自分と大差無いらしい

 

安心したかのような感情を抱いていると、独特な空気の乱れを感じる

 

貂蝉「お疲れ様、ご主人様・・・・・と言うのは、無粋だったかしら・・・・・」

 

卑弥呼「貂蝉よ、それは不謹慎が過ぎるぞ!」

 

一刀「構わない、俺は誰に何を言われても何も言い返せないからな・・・・・それより、初めて会うけど、この場合久しぶりと言えばいいのかな・・・・・会いたかったよ、貂蝉、卑弥呼」

 

そう、一刀が刀誠より先に会いたいと思っていたのは、この二人だったのだ

 

現れた三人の管理者に一刀は雷刀と共に向かい合う

 

一刀「貂蝉、卑弥呼・・・・・お前達から見て、俺はどう映る・・・・・」

 

貂蝉「そうねん・・・・・私もこれまで悲しい運命を辿って来たご主人様を何人か見て来たけど、貴方はその中でも極まれるわ・・・・・」

 

卑弥呼「うむ、言葉もないとはこの事じゃ・・・・・」

 

一刀「自業自得だ、全ては俺の過ち、間違いから生まれたものだ・・・・・」

 

雷刀「そうだな、お前は碌な最期を迎えないだろう、それだけは確実だ」

 

管輅「・・・・・感傷に浸っているところ悪いけど、私もあなた達に伝えたい事があるわ」

 

一刀「なんだ?」

 

雷刀「この期に及んで何を伝えるって言うんだ?」

 

管輅「私は以前、貴方達に説明したわね、貴方達はかつて始まりの外史から分かれた北郷一刀達が、外史の将達の役に立ちたいと望み、その想念の下に生まれた存在だと・・・・・だけどそれは、正解ではあるけれど完全な回答とは言えないのよ」

 

一刀「なんだって?」

 

雷刀「どういう意味だ?」

 

管輅「貴方達は、貴方達の北郷流がどのような歴史を辿って来たか、知っているかしら?」

 

一刀「日本戦国時代からだ、あの狂った時代から端を発して、今に至る」

 

雷刀「もっとも、それはあくまで歴史の表舞台に立ってからの話、実際はもっと長いんだろうけどな」

 

管輅「そうね、正確に言うと千年、平安時代にまで遡るわ」

 

雷刀「・・・・・どういう事だ、管路?お前は俺達の事を何処まで知っているって言うんだ?」

 

一刀「ああ、俺達だって、自分達の流派の事を一から百まで知っている訳じゃないのに・・・・・」

 

管輅「・・・・・少しだけ長い話になるけど、いいかしら?」

 

一刀「いいさ、構わない」

 

雷刀「今更どんな事実が出て来たところで、何も不思議じゃないからな」

 

管輅「それなら話すわ・・・・・あなた達、北郷一族の軌跡を・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昔々、それはもう気の遠くなるような、神々でさえも忘れ去ってしまうような遠い昔、あるところに、人の身では決して辿り着く事の叶わない、まるで無何有の郷のような所に一人の神仙が居た

 

その名は、南華老仙

 

その容姿は、才色兼備を形にしたような、神々しい存在

 

神仙の中でも彼は別格で、神仙の女性が引っ張りだこにするほど

 

外史の管理でも、剪定から延長まで全てを意のままにこなす、まさに伝説ともいえる存在

 

そんな存在がとある不安定な外史に降り立つ、その外史とは、陰陽師が一躍していた怨霊入り乱れる日本国の外史

 

その陰陽師の中でも明星の如き活躍をしていたのが、安倍晴明

 

この安倍晴明もその外史では女性で、都の怨霊を払うことに心血を注いでいた

 

しかし、外史そのものが不安定になるほどの怨霊の数に流石の晴明も苦戦を余儀なくされ、肉体的にも精神的にも追い詰められていく

 

そこに南華老仙が彗星のごとく現れ窮地に陥っていた晴明は彼に救われ、都の怨霊も草を刈る様に払われ、程なくして晴明は南華老仙に恋心を抱いた

 

陰陽師としての務めも忘れ、彼を振り向かせようとあらゆる手段を行使する晴明

 

しかし、元々南華老仙はその外史を剪定する為に降り立ったので、晴明の気持ちに応える事は無かった

 

日の本中の怨霊を一掃し役割を終え外史を去ろうとする南華老仙、嗚咽しながら彼に縋りつき希う晴明

 

しかし、ここで事件が起きる

 

彼が去ろうとしたその時、それまで払った怨霊の数十倍の怨霊達が一斉に外史に溢れ出たのだ

 

それらの怨霊は一ヶ所に集まり、禍々しい巨大な龍の怨霊へと姿を変えた

 

二人に襲い掛かる怨龍、晴明を守りながら勇猛果敢に闘う南華老仙

 

本来、龍の一匹や二匹など南華老仙の敵ではなかったが、相手が怨霊から生まれた龍では苦戦は免れなかった

 

なんとか怨龍を払う事に成功した南華老仙だったが、その戦いの中で彼は深手を負い、倒れてしまう

 

晴明は、南華老仙を献身的に介抱し、そのおかげで彼の傷は癒えた

 

しかし、南華老仙が目覚めた時、彼はほぼ全ての記憶を失っていたのだ、自分の事、自分が何故ここに居るのかも、晴明のことすらも忘れ去っていたのだ

 

それまでの勇猛さや神々しさは影を潜め、童のように不安に陥る南華老仙

 

そんな南華老仙を、晴明は決して見放さなかった

 

その後も晴明は南華老仙に寄り添い続け、南華老仙は晴明に心魅かれていった

 

いつしか二人は相思相愛の仲になり、二人の周りは彼らの子供達が駆けまわり、幸せな家庭を築いていったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

管輅「そして、この二人の子供達が各地に散らばっていき、正史の北郷一刀、そしてそこから分かれた北郷一刀達の想念に影響され生まれたのが貴方なの・・・・・と、ここまで言ってようやく正解ということよ」

 

一刀「・・・・・それじゃあ、俺が暮らしていた、あの元の世界は」

 

管輅「ええ、貴方が暮らしていた世界も正史から生まれた一つの外史でしかないと言う事なのよ」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

雷刀「・・・・・・・・・・」

 

この管輅の説明に二人は驚きを隠せない

 

自分達がかつて居た世界が、現実のものではなかったなど、驚天動地としか言いようがない

 

一刀「じゃあ、俺が持っているこの力は、人のものじゃなくて、神仙の血による神がかり的なものだってことなのか!!?」

 

貂蝉「その通りよん♪」

 

卑弥呼「どうじゃ、驚いたか?」

 

一刀「・・・・・いや、正直俺も疑わしかったんだ、何で北郷の家系はこんなにも氣の扱いに長けた者が多いのか」

 

雷刀「だな、驚くどころか、むしろ納得だ」

 

管輅「その中でも、貴方の家系は南華老仙様の血を色濃く受け継いでいるわ、なにせ本来であれば正史や多くの外史の想念を持って生み出すはずの存在を、自分一人の罪の意識から生み出してしまったもの・・・・・流石としか言いようがないわ」

 

貂蝉「そうねん、管輅ちゃんも南華老仙様のお尻をいつも追いかけていたものね♪老仙様、老仙様~♥って♪」

 

管輅「言わないで、それは大昔の話よ///////」

 

卑弥呼「何を言う、お主はあのお方を目標に神仙の修行に明け暮れていただろう、この御主人様を随分気に掛けているのだって、かつての思い人の面影が残っておるからであろう、がはは♪」

 

管輅「・・・・・///////」

 

一刀「それで、管輅はこの事実を俺に伝えて、何をさせたいんだ?」

 

管輅「・・・・・別に、ただ貴方には真実を伝えておきたかっただけよ、それであなたの罪の意識が晴れるとは思っていないけど・・・・・」

 

一刀「分かっているじゃないか」

 

雷刀「そうだな、俺がここに存在している時点で、こいつは犯した罪から逃れられない」

 

二人は、別の道を行き、この場を離れようとする

 

貂蝉「ちょっと二人共、ここまで知ったんだから、もう一人で行動する理由なんてないでしょ!?」

 

卑弥呼「そうよな、二人で左慈達の陰謀を阻止すればいいだろうに」

 

一刀「俺の目的は、左慈を止める事じゃない」

 

雷刀「これはこいつが撒いた種だ、自分でケツを拭いてこそだ」

 

一刀「俺は、お前の世話は受けない」

 

雷刀「俺もお前の世話をするなんてまっぴらだ」

 

卑弥呼「・・・・・まったく、どっちも頑固者よのう」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

雷刀「・・・・・・・・・・」

 

そして、二人は盧陵から去っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

于吉「なんとうことでしょう・・・・・申し訳ありません左慈、あの祖父を呼び出したのは失敗でした、まさか北郷の寿命を延ばされてしまうとは」

 

神農「よいではないか、延びたといってもせいぜい10年かそこらであろう♪」

 

于吉「よくなどありません、彼には回天丹田という虎の子の技があるのです!それを余分に使うことが出来るという事になります!・・・・・それに神農様は知っていたのですか!?あの北郷がかの伝説の神仙、南華老仙様の血を引いている事を!?」

 

神農「おお、もちろん知っていたとも、あ奴と儂は同期と言っても過言ではないからのう♪」

 

于吉「何故言って下さらなかったのですか!!?」

 

神農「聞かれなかったからのう♪」

 

于吉「・・・・・貴方と言う人は、昔からちっとも変っておられませんね」

 

神農「褒め言葉として受け取っておこう♪」

 

于吉「ということは、以前神農様が仰っていた、自由になった神仙というのは・・・・・」

 

神農「そうとも、あ奴のことじゃ♪」

 

于吉「なるほど・・・・・しかし、私達からすれば、それは自由になったとは言えませんね、記憶を無くした上に外史という籠の中に置き去りにされていては」

 

神農「確かに、お主達からしたら中途半端この上ない結末かもしれんのう」

 

左慈「・・・・・・・・・・っ」

 

そして、左慈は立ち上がり神殿の奥に足を運ぶ

 

于吉「左慈、どちらに行かれるのですか?」

 

左慈「少し奥に引っ込む、終わるまで話し掛けるな」

 

于吉「・・・・・左慈、北郷の寿命が延びてしまった事ですが」

 

左慈「何も問題はない、延びたのならその分殺せばいいだけの話だからな」

 

神農「・・・・・あ奴も今回は本気の様じゃのう」

 

于吉「ええ、きっとあの部屋を使うのでしょう」

 

神殿の奥へと向かう左慈の後ろ姿に、二人は底知れぬ戦慄を感じていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍奈「うう・・・・・ぐっす、ひっく・・・・・」

 

ようやく盧陵に辿り着いた龍奈だったが、そこには戦闘の跡があるだけで人っ子一人いなかった

 

龍奈「一刀ぉ・・・・・どこにいるの、龍奈を一人にしないでぇ・・・・・」

 

一人泣きじゃくる龍奈の嗚咽は荒野に空しく響くばかりだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは、久方ぶりの阿修羅伝です

 

前篇から時間が掛かってすみません、ここ最近バタバタしていまして、碌にパソコン向う暇がありませんでした

 

おまけに文字通り久しぶりに執筆したので、何処まで話が進展したのかおぼろげになってしまい、自分も一日くらい時間を割き、もう一度北郷伝の途中から全部読み直しました

 

ここまで久しぶりだと、特に干支の型の名前や特性などを忘れてしまっているので、読み返さないと矛盾した点が出て来かねませんからね

 

さて、一刀の秘密が解き明かされ次の話が楽しみな方々には大変申し訳ありませんが、また焦らしモードに入っていきます

 

鎮魂の修羅の方が長いので、主にそちらを進めないと進行バランスが崩れてしまいますので・・・・・もう崩れてしまっているかもしれませんが

 

しかし、そもそもこの阿修羅伝を執筆しようと思った主な要因が英雄譚の新キャラがまだ出揃っていなかったからでしたし、それがなければ、このお話は未だに世に出ていなかった可能性も否めません

 

というわけで、阿修羅伝の投稿はまたかなり先になってしまう予定ですが、楽しみにしている方の為に、少しだけ予告をすると、次回はある意味今回以上の薄幸な出来事が待っています

 

では、またかなり待て、次回


 
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