「やはり良いな、我々の時代は」
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マイ「艦これ」「みほちん」(第3部)
EX回:第45話(改2)<我々の時代>
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「司令……」
やっぱり私の隣に技術参謀が座った。
とはいえ今度は私の真横に、にじり寄ってくることも無く彼女は普通に空や港湾内を見ていた。
そして風に髪をなびかせながら言った。
「……やはり良いな、我々の時代は」
「そうですね」
同感だった。
未来へ行ったことは貴重な体験だ。しかし人には、それぞれ居るべき位置があるのだ。
技術参謀は視線はそのままで続けた。
「お前の機内での行為だが……」
「はっ」
私は緊張した。
彼女は続ける。
「私の、すべて日誌からは消しておいた……以後、気をつけることだ」
「……」
私には返す言葉がなかった。
参謀は、こちらを見た。
「まだ司令としての経験も浅いことだ」
「ハッ、恐縮です!」
ふと見ると比叡と喋ってた金剛は急に、こちらを振り向いた。
(……?)
私と彼女の目が合ったが金剛は猫のようにニヤッと笑っただけ。微笑んだまま再び隣の比叡との会話を続けた。
……前みたいな、妙な『嫉妬光線』は送って来なかった。
(お前も、ちょっとは成長したんだな)
何となく嬉しかった。
その脇では赤城さんが、また煎餅(せんべい)をボリボリと真顔で食べている。そのギャップが何とも言えないな。
(それ、まだ残ってたんだ)
彼女は私に気付いて自分の煎餅は口にくわえたまま1枚持って私に差し出してくれた。
「たべまふ?」
「……そうだな、一枚」
今度の私は手を伸ばして受け取った。ちょっと小腹も空いていたから。
「うふふ」
首をかしげた彼女は自然な笑顔だった。その表情にも安心感があった。
ボリボリと煎餅を食べながら、ふと前を見ると夕張も居た。また静かに本を読んでいたから全然分からなかった。もちろん『非公式』なメガネも健在だ。
そんな彼女も私に気付いて顔を上げた。
「もう少しで、この本読み終えるんです」
「へぇ、そりゃすごい」
夕立も金剛たちに合流して笑っていた。その金髪は南国の風になびいてサラサラと空中を流れた。
(水面ではない……貞子にならなくて良かったな)
祥高さんは相変わらず、うつらうつらしている。
日向は……
(あ? どこだ)
声がした。
「司令、お隣良いですか?」
「あ、あぁ」
びっくりした。振り向くと脇に居たのか。
彼女はスッと技術参謀と反対の私の側に座る。ふと境港での山城さんVS日向のベンチでの不毛な戦いを思い出してしまった。
さっき機内で散々プレスされたからこれ以上は堪忍だ。だが今日の日向は落ち着いていた。
彼女は参謀を意識して言った。
「ブルネイでの研究は……思いのほか進んでいるのですね」
「そうだな」
技術参謀が応えた。
私は操舵室を見た。
(確かに、この船を操縦している五月雨は、まだ試作的なタイプだと思えるが……どうなんだろうか?)
すると急に技術参謀が答える。
「ここの艦娘たちは、ほぼ完成型に近い。あとは安定性だな」
「は?」
(安定性? なに)
そう思った瞬間ブルネイの埠頭が視界に入った。船内の艦娘たちも会話を止めて降りる準備を始める。桟橋からも先方の艦娘たちの姿や声が聞こえる。
そして五月雨が言う。
「到着いたしました」
埠頭から見える、ちょっと開けた場所が広場のようだ。残念ながら、お祭りはしていない。私たちは次々と荷物を持って陸に上がる。
五月雨は、また司令部と交信しているらしく何度も操舵室で頷いていた。
陸に上がった私は思わず憲兵さんが居ないか確認してしまう。
(今のブルネイに居るわけないよな)
私はホッと胸をなで下ろした。バカみたいだが。
やがて五月雨は通信を終わった。彼女は到着後の内火艇の引き継ぎを他の艦娘に任せると、こちらを向いた。
「私たちの提督がお会いするそうです。執務室までご案内します」
そう言った五月雨は先頭に立って歩き出す。私たちはゾロゾロと付いていく。
(もしかして、あの大将の若い頃が拝めるのか? いや、年代が違う。あり得ないことだが……両時代の差は何年あるのだろうか?)
それは分からない。
歩きながら周りを見る。現代のブルネイ泊地は、まだ各施設がとてもキレイだった。多くの施設が設置直後らしい。艦娘たちも歩きながら、やたらキョロキョロ見回している。同じ事を考えているようだ。
彼女たちは瞬時に弾道計算をこなす能力はあるが時空を越えるという超常現象への感覚は理解出来ないだろう。
(時間旅行ってのは、いろいろとややこしい置き土産をするものだな)
ほどなくして鎮守府本館の建物に到着した。玄関ロビーから中に入る。いよいよ提督か。果たして、誰が出てくるのだろうか。
「いよいよ現地のテートクですヨ」
「前のゴツい方を思い出します!」
金剛と比叡の会話は誰もが同感だろう。かく言う私も、そんな想像をしていたから。
五月雨を先頭に私たちは鎮守府本館の2階へと上がる。私は彼女に聞いた。
「艦娘たちも全員、面会して良いのか?」
彼女は微笑んで応える。
「提督は、皆さんが遠方から来られたから全員と挨拶しますと仰られました」
「そうか」
(うーむ、まだあの大将かどうか何とも言えないな、この状況では)
だが五月雨の青い髪の毛を見ていると別の考えが出てくる。
(この五月雨は、あの未来の彼女と同一人物なのか? それとも「試作品」か?)
年代が違うから仮に同一人物だとしても私たちのことはまったく知らない。ほぼ別人と考えても良いわけだが……何か、あの五月雨とは違う感じがするのだ。
(……あとで、技術参謀に聞いてみよう)
内火艇で技術参謀が話していた『安定性』という言葉も非常に気になる。
「こちらになります」
五月雨の言葉と共に私たちは執務室前に立った。
(ついに来たか)
……チョッと、ドキドキするな。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ3ん」とは
「美保鎮守府:第三部」の略称です。
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また前回と同じように内火艇で桟橋へと向かう司令たち。外見は同じでも中身は前回とは違うブルネイ。改めて「現在」に生きることを実感する面々だった。