No.94090

無限銀河魔天王 第6話「最後の敵」

スーサンさん

第6話です。次回最終回です。

2009-09-07 10:16:16 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:630   閲覧ユーザー数:611

 異次元につくと、ライナーゼオンは怪訝そうに辺りを伺った。

「ここは、敵の本拠地にでは無さそうだ……」

 構えた拳を下げ、ライナーゼオンは静かな歩調で歩き出した。

「どうやら、座標軸に多少の誤差があったようだ……敵さんも、簡単に自分の根城を暴くわけは無いか?」

 警戒を強めながら、歩くライナーゼオンの視界にある残骸が映し出された。

「あれは……鉄の残骸?」

 駆け寄ると、ライナーゼオンは驚いたように呟いた。

「これは、大天帝のパーツ?」

 首を振り、ライナーゼオンはスクラップになった大天帝の残骸を漁りだした。

 なぜ、こんな状況になったのか……

 もしすれば、残骸を漁ればわかるかもしれない……

 ライナーゼオンはその巨大な拳からは想像もつかない精細な手つきで残骸を一個一個、取り除いていった。

 そして、ライナーゼオンはさらに驚いた。

「レミー!?」

 残骸の中、血まみれになって倒れているレミーを見つけ、ライナーゼオンの中にいた烈は胸の列車のハッチを開け、中から飛び出していった。

 レミーの身体を抱きかかえ烈は必死になって叫びだした。

「おい、大丈夫か!?」

「う、うぅん……」

 まだ意識のあるレミーに烈は安心したように吐息を吐いた。

「とりあえず、傷の手当てしないと……」

 レミーを静かに寝かせつけると、烈は急いでライナーゼオンの中に乗り込み、救急に使える小道具を探し出した。

 

 

 しばらく経ち、烈はレミーの身体に包帯を巻きつけると安心したように額の汗を拭った。

「ふぅ~~……以外に華奢な身体つきしてるな?」

「まさか、敵に手当てされるなんてね……?」

「起きてたのか?」

「ん……」

 おっこらしょと起き上ると、レミーは気恥ずかしそうに頭を撫でた。

「私も落ちぶれたわね……本来、殺されるはずの敵に救われるなんて?」

「助けてやったのに、その言い草は頂けないな?」

 腰に手を当て、烈は不機嫌そうに鼻を鳴らした。

「前にも言ったはずだ……死ぬ場所よりも、生きる場所を捜せと……」

 そこまで言って、烈の目つきが変わった。

「お前ほどの手練が、こうも完膚なきまでにやられるんだ……いったい誰が?」

「私達の総大将……ヴァクの奴にやられたのよ」

「総大将……俺と魔天王の倒すべく敵か?」

 コクリと頷き、レミーは言葉を続けた。

「奴は強いわ……まさか、あんな兵器を隠し持ってたなんて?」

「兵器……?」

「……」

 烈の言葉に言葉に答えず、レミーはライナーゼオンを見上げた。

「少なくとも、私の大天帝を一撃で大破させた代物よ……ライナーゼオンじゃ、太刀打ちできないかもしれない!」

「信じられないが……お前の言葉を信じないわけにはいかないな!」

 だが、と烈は心のマグマをふつふつと燃え上がらせながら、言った。

「倒しに行かないわけにはいかないな……」

 そっと立ち上がり、烈はライナーゼオンに乗り込もうとした。

「じゃあ、俺は行くとするか!」

「待ちなさい!」

 ガシッと肩を強引に掴まれ、烈は振り返った。

「私もついていくわ……もちろん、戦力として!」

「ほう?」

 愉快そうに烈は目を細め、バカにしたように残骸となとなった大天帝を見た。

「こんな状態の大天帝で、どう戦力なると?」

「ふっ……私だって、バカじゃないわ」

 手に光を集め、レミーは残骸となった大天帝に光を放った。

 光に放たれた大天帝の残骸が渦を作るように飛び上がり、ライナーゼオンを巻き込んで台風を作り出した。

「一時間よ……一時間頂戴! そうすれば、ライナーゼオンはさらに強くなれるわ!」

「面白い! その言葉、信じてやるよ!」

 

 

 一方、同じ頃、光は痛む腰を摩りながら、背中の巫女を睨みつけた。

「こいつは、この戦いが始まってから一度もマジメに戦ったことが無いな……?」

「すぅ~すぅ~……」

「呑気に寝息を立ててるんじゃねーよ!」

 ドカッと腰を下ろし、光は頭を抱えた。

「この戦いが終ったら、どうしようかな?」

 寝息を立てている巫女を一瞥し、光は呆れたように頭を下げた。

「なんだかんだ言って、危険な戦いだからな? 生きて帰れたら、何か目標でも決めるか?」

 頭の後ろを掻き、光は腕に着けていた時計を眺めた。

「もうそろそろ、一時間か……おい、起きろ! 魔天王を出動させるぞ……起きろ!」

 光に揺さぶられ、巫女は眠そうに目を擦った。

「大して寝た気がしないな~~?」

「そら、一時間じゃ、仮眠にもならんだろう?」

「じゃあ、後二時間くらい」

「投げ飛ばすぞ?」

「……」

 巫女は唇を尖らせ、そっと光の背中から飛び降りた。

 その時、上空からスカイバイクが地上に向かって着地してきた。

「どうやら、名実ともに修復は完了したようだね?」

 スッと光の胸ポケットからフロッピーディスクを取り出すと、巫女は二コッと笑った。

「じゃあ、最終決戦に乗り込もうか? これが、終ったら言ってほしい言葉もあるし!」

「言ってほしい言葉……?」

「すぐに気付くよ」

 不思議そうにフロッピーディスクを受け取り、光はスカイバイクに乗り出した。

「天空聖邪降臨! 無限銀河魔天王!」

 フロッピーディスクを差し込み、光はハンドルの横の赤いスイッチを押した。

 その瞬間、一閃の閃光が大地が突き刺さり、巨大な白い巨神が咆哮を上げ、現れた。

「よしっ!」

 光と巫女の身体が淡い光に包まれ、魔天王の中へと吸収されていった。

 魔天王の中に入ると光は目の前の二個の球体に手を合わせた。

「いくぞ、巫女! 居眠りをするなよ!」

「うんっ! ちょっと眠いけど、我慢するよ!」

「今回は褒めてやるよ!」

 光に力を合わせ、巫女も同時に叫んだ。

「銀河に轟く、一閃の星! その名は魔天王……最後の戦いに勝利するため、今ここに出陣!」

 翼を広げ、魔天王は大空に向かって飛び上がった。

 

 

 魔天王のモニターから映る座標軸を見て、巫女はそっと呟いた。

「ついたよ……」

「え……?」

 スチャッと地面に着地すると、魔天王はおかしそうに首を左右に振った。

「ついたって、ここは何も無いぞ?」

「ここは異次元だからね……近くにあっても、視覚で感知できない可能性があるよ」

 ぴっぴっと巫女は目の前のキーボードを連打した。

「コスモインフィニティー全開!」

「っ!」

 腰に現れた刀を抜き去り、魔天王は刀を地面に突き刺した。

 魔天王の足元に魔方陣が浮かび上がり、そこから、いくつもの光の柱が浮かび上がった。

 その光が一つ一つ弾け飛ぶと、一つの居城が霧のように現れた。

「……これが、敵の本拠地?」

 強く頷き、魔天王は手に持った刀を巨大な居城へと突き刺し、叫んだ。

「出て来い! 我が名は魔天王……一対一で世界の命運をかけた勝負を挑みたい!」

 暗黒の空に魔天王の叫び声が何度も木霊し、雷が鳴った。

 何度目かの雷が鳴り終る頃、居城の中から魔天王の声とは別の不気味な笑い声が響き渡った。

「わざわざ、来てくれるとはありがたいな……魔天王?」

「お前は……?」

 霧の中から現れた一人の老人に魔天王は手に持った刀を腰の前に構えた。

「お初にお目にかかる……ワシの名はヴァク。お前達の倒すべき敵といった所か?」

「お前が、親玉なら話は早い!」

 刀を振り上げ、魔天王はヴァクに斬りかかろうとした。

「この場でほふる!」

「お前の相手はワシではない……」

「っ!?」

 魔天王の横顔に凄まじい衝撃が走った。

 ドカンッと魔天王の身体が大地に何度も叩きつけられ、吹き飛ばされた。

「お前は!?」

 何とか立ち上がり、魔天王は目を見開いた。

「大天王!?」

 大天王は腰の刀を抜き去り、ギロッと魔天王を睨んだ。

 魔天王は殴られた右頬を拳の甲で撫で、そっと呟いた。

「この期に及んで、まだ邪魔をする気か?」

 ビシッと刀を構え、魔天王は駆け出そうとした。

「光くん……ちょっと待って!」

「っ!?」

 ピタッと足を止め、光は苛立ったように叫んだ。

「どうした!?」

「大天王の様子、ちょっと変じゃない?」

「……?」

 刀を構える大天王見つめ、光はそっと目を閉じた。

「何か聞こえる……」

 そっと聞こえる声を復唱し、光は目を見開いた。

「殺してくれ!? どういうことだ……?」

 擦れる声で大天王の中にいるマルスは必死に叫んだ。

「私は……ヴァクに殺され……その骸を大天王の操縦兵器として利用された……」

「……」

 言ってる意味がわからず、光は首を横に振った。

 しかし、マルスの悲痛な叫びはわかった。

 今、マルスは無理やり戦わされている。

 そして、自分で自分の命を立てない状態であることも……

「ハァッ!」

 魔天王はぶんっと手に持った刀を振り回し、叫んだ。

「いくぞ!」

 大天王も手に持った刀を振り上げ、魔天王を切り裂こうとした。。

「甘い!」

 ガシッと大天王の刀を持った腕を受け止め、魔天王は右手の刀を横に広げた。

「銀河英雄奥義……」

 刀身が光り輝き、魔天王は身体をコマのように回転させた。

「伐採剣!」

 シュバンッと大天王の身体が横一文字に切り裂かれ、上半身が宙に浮いた。

「クハッ……」

 腹部を真っ二つに裂かれた大天王は一瞬、苦しそうに息を吐き、安心したように言った。

「ありがとう……」

 光に包まれ爆発していく大天王を見つめ、魔天王は怒りを露にして怒鳴った。

「貴様、自分の部下をなんだと思っている!」

「以前よりも、力が上がっている……どうやら、大天王の敗北は無駄ではなかったようだな?」

「なにっ!?」

 魔天王は苛立ったように叫んだ。

「貴様、何を企んでいる!?」

「月並みな言葉でカタがつくぞ?」

 ニヤッと笑みを浮かべるヴァクに魔天王の中にいた光は血相を変えて、叫んだ。

「貴様~~~~~~~許さん!」

「今度はワシが相手をしてやろう!」

 スッと手を挙げ、ヴァクは叫んだ。

「覇王滅亡……魔神銀河極限王!」

 暗黒の空に凄まじい雷鳴が煌き、ヴァクの足元に禍々しい魔方陣が浮かび上がった。

 魔方陣の中から、神話に出てくる魔獣のような姿をした巨大なロボットが現れた。

 魔天王は目の前に現れた自分よりも巨大な巨神の姿に驚きを隠せず叫んだ。

「これは……!?」

「これこそ、ワシの真の力……魔神銀河極限王だ!」

「極限王……」

 クッと光は目を吊り上げ、魔天王を駆け出させた。

「敵が何であれ、倒すのみ……いくぞ!」

 バッと翼が広がり、魔天王は空高く、飛び上がった。

「オラァァァァァァァァァァァッ!」

 手に持った刀が極限王の額を切り裂こうとした。

「ふっ……」

 ヴァクは口元に笑みをやり、魔天王の身体をその巨大な手で挟むように叩きつけた。

「グァッ!」

 苦しそうに魔天王の中にいた光は息を吐き、極限王の手を薙ぎ払った。

「このっ!」

 強引に極限王の手から逃れ、魔天王は手に持った刀に光を集めだした。

「銀河英雄奥義!」

 刀を十字に斬り、魔天王は極限王に向かって光の刃を撃ち放った。

「光波空切剣!」

 光の刃が極限王の身体を切り裂こうとした時、ヴァクも大声を上げて叫んだ。

「あまい!」

 バンッと気合一つで、かき消された必殺技に魔天王は信じきれずに叫んだ。

「俺の技が通じないだと!?」

 極限王の中にいたヴァクは面白いものを見たようにニヤッと笑った。

「つまらんのう……」

 極限王の胸の前に凄まじい光が溢れ出し魔天王に向かって光が撃ち放たれた。

「神滅抹殺砲!」

「っ!?」

 魔天王の視界が真っ白に染まり、大爆発を起こした。

 ドゴンッと地面に身体を叩きつけられ、魔天王は悔しそうに唸った。

「強い……」

「まだ、生きておったか……?」

 魔天王を見下し、極限王は片足を振り上げ、踏みつけようとした。

「死ね……」

「クッ……!」

 光と巫女が死を覚悟したとき、極限王の振り上げた足が光とともに粉々に粉砕されていった。

「これは!?」

「友達は殺させないぜ!」

 振り返ると極限王の目が大きく見開かれた。

 そこには巨大な大筒を右肩に乗せたライナーゼオンが雄雄しい姿で極限王を睨みつけていた。

「貴様が裏切ったレミーの力を借り、生まれ変わりし青き神速! その名は、ハイブリットライナーゼオン! 高速爆誕!」

「ハイブリットライナーゼオン……?」

「大丈夫か、魔天王?」

「ああ……」

 グッと立ち上がり、魔天王は手に持った刀を振り上げた。

「まだ戦えるな、巫女?」

「うん、光くん!」

「よしっ……いくぞ!」

 戦闘の構えを取る魔天王に極限王の中にいるヴァクは忌々しそうに叫んだ。

「しゃらくさいわ!」

 粉砕された足が再生され、極限王は二人に向かって拳を振り降ろそうとした。

「っ!」

 極限王の巨大な拳を身体を回転させることで避け、魔天王は極限王の右足に掴まった。

「オラァァァァァァッ!」

「このっ……ムシケラ如きが無駄な足掻きを!」

「ハイブリットライナーキャノン!」

「っ!」

 ライナーゼオンのエネルギー砲が極限王の顔面に直撃し、極限王はキッとライナーゼオンを睨んだ。

 その時、極限王の身体がガクンッと揺れた。

「よそ見する暇はないぞ!」

「なにっ!?」

 バタンッと極限王の巨大な身体が無様な姿で倒れ、魔天王は大空に向かって飛び上がった。

「ライナーゼオン! 俺の剣にお前の力を……」

「おう! 全エネルギー集結……」

 ライナーゼオンのエネルギー砲の砲身に光りが溢れ出し、撃ち放った。

「ハイブリットライナーキャノン!」

「これで止めだ!」

 撃ち放たれたエネルギー砲を剣に集め、魔天王は極限王の額に剣を突き刺した。

「超究極銀河英雄奥義! 合神波獄界突き!」

 極限王は獣のように悲鳴を上げ、魔天王の身体を鷲掴みにし、振り払おうとした。

「させるか!」

 しかし、魔天王の身体から凄まじい光が溢れ出し、極限王の手を払いのけた。

「死んでも、貴様は地獄へ突き落とす! 例え、魔天王の身体が壊れても、この剣で貴様を葬り去る!」

「き・さ・ま~~~~~~~~~~っ!」

 極限王の身体が強い光に包まれ、まるで消滅するかのように消えていった。

 ガキンッと極限王を貫いていた魔天王の剣が大地にぶつかり折れ、剣先が大地に突き刺さった。

 その様子を眺め、ライナーゼオンははにかんだように拳をつきたてた。

「終わったな……魔天王?」

「ああ、ライナーゼオン……」

 先の折れた剣を鞘に戻し、魔天応はそっと立ち上がった。

「これで、俺達の戦いも……」

《それはどうかな?》

「この声は……!?

 突如、聞こえた、謎の声に魔天王とライナーゼオンは驚いたように叫んだ。

「ヴァク、どこに隠れている……姿を見せろ!?」

《すでに目の前にいる》

 その瞬間、大地からなにかが融けるかのように黒い球体が現れ、ギョロンッと不気味な目が開いた。

《我が名は怨霊大帝ヴァク……星に追放された者だ》

 


 
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