(六)
一刀達が山越の本隊へ向かった頃、十万の山越の軍勢は容赦のない攻撃を呉の城へ繰り返していた。
矢の雨霰、城壁に梯子をかけて登ってくる。
城の四方は完全に囲まれており打って出ることすら出来ない状況下でも風は落ち着いて指揮を執っていた。
城内に残った一万二千もの将兵は逃げ出すことなく勇敢に戦っていたが、昼夜を問わない山越の攻撃によって次第に疲労の色を濃くしていく。
華雄や京が陣頭指揮を執り、挫けそうな士気をなんとか支えていたがそれも日をおうごとに限界を迎えていた。
「食糧がそろそろ尽きそうです」
士気を高めるために食糧を兵士達に提供しすぎたせいで余裕がなくなってきていた。
多くの兵士も傷つき、傷薬なども底を尽きかけていた。
風は刻一刻と追い詰められる中でものんびりと椅子に座って的確な指示を出しながらも何時まで持ち堪えられるか考えていた。
念のために援軍要請を建業に送ったものの、一刀が行方不明であることは伏せられていた。
一刀の筆に似るように風が文を書いたため、蓮華なら一刀が無事であるとが確認できて安心するであろうと思っていた。
「風様」
「はいはい?」
亞莎もここ数日不眠不休に近い状態で疲労もかなり蓄積されていた。
「このまま戦えばあと半月持ち堪えればよいほうです」
「困りましたね」
連日のように攻め寄せてくる山越は物量に任せて攻め込んでくるため、数で劣る風達はなるべく無理をしないように戦っていた。
「負傷兵もすでに五千を超えました。このままでは……」
一刀が戻ってくる前に自分達が全滅しかねない。
亞莎の不安は確実に現実になってきていた。
「風さん、いつまで耐えなければならないのですか?」
兵の補充、物資の管理などを一手に任されている悠里も限界を感じていた。
「皆、一刀くんが戻ってくることを信じて戦っているのです。しかし、何時戻るか分からない状況ではもう耐えることすら難しくなってきています」
余力のあるうちに城を放棄して再度、遠征をすればよいのではないかという悠里の意見に風はというと、
「ぐぅ~」
「「寝ないでください!」」
亞莎と悠里はハモるように風に大声を浴びせる。
「おお。ついお兄さんが戻ってくる夢を見ていましたよ」
追い詰められてもマイペースな風。
だが、亞莎と悠里からすればその余裕すらなくなってきていた。
「もはや戯言を言っておられる場合ではないのですよ?」
珍しく悠里の表情に怒りと焦りが入り混じっていた。
一刀が無謀な行動に出なければここまで状況がひどくなることはなかったと思ってしまい、心の中で後悔しながらも兵士を無駄に死なせてしまうことが心苦しかった。
最良の策は物量の前に踏み潰され、もはや成す術がない今、風の余裕さが恨めしく思えた。
本来の彼女であれば人を恨むことなどなかっただけに、感情が爆発するのを必死に押さえ込んでいた。
風もこれ以上は無理だろうと思い、重い口を開けようとした時だった。
「申し上げます。陳宮様がお戻りになりました」
その知らせに風達は驚き、音々音が室内にやってくるのを待った。
ゆっくりと部屋の入り口が開くと汚れきった姿の音々音が入ってきた。
「ねねさん、よくご無事で」
亞莎が音々音に駆け寄っていくと、音々音も安心したのか嬉しそうにしていた。
「ねねちゃん、お兄さんとは会えましたか?」
感動の再会中に風は何よりも優先することを述べた。
「ヘボ主人なら会ったですぞ」
「それでご無事なのですか?」
「ヘボ主人が無事だからこそねねは戻ってきたのです」
「それで旦那様はどちらに?」
期待を込めて亞莎と悠里は一刀の姿を見ようと開かれたままの入り口の方を見るが、誰も入ってこない。
「どこにいらっしゃるのですか?」
「ヘボ主人ならいませんぞ」
「「えっ?」」
一刀を探しに行っていた音々音が、一刀と合流して連れ戻ってきたのではないのかと二人は問う。
「ヘボ主人はやることがあるといってねねを城へ戻らせたのです」
「戻らせた?」
「そうです。あと、二、三日後に山越で変わった動きがあれば全軍を挙げて突撃をせよということを伝えろと言われたです」
この劣勢の中で全軍を挙げて山越の大軍に突入をせよと余りにも無謀な命に顔をしかめる二人。
「なるほど、お兄さんらしい命令ですね」
風は一人納得したように一刀からの命を受けた。
「風様、そろそろお教えいただけませんか?」
これ以上の隠し事には耐えられなくなっていた亞莎の視線の風はこの辺りが潮時だと思い、彼女が知る限りのことを話した。
呉と山越の長い争いに終止符を打ち、和平をもって平和な世の中を共に作っていくこと。
それは一刀がこの遠征で行おうとしていたことだと風は話していく。
自分達に黙ってまでそれを成し遂げようとしている一刀の気持ちがこのときばかりはわからなかった。
なぜ自分達に黙っているのか。
その疑問には風も答えることは出来なかった。
「ただ、お兄さんは無駄な血を流したくないから自分の身の危険を顧みないで動いていると思いますよ」
「でも、それで旦那様が……一刀様が命を落とされたら」
「そうなればお兄さんとしては運がないだろうと言っていました」
自分のこれまでの強運をここで実証するように一刀が動くのは、周りから見れば本当に無謀としか思えなかった。
「だから風は風の出来る限りの事を協力すると言ったのです」
悪者になろうとも愛する一刀のためならなんでもする。
それが初めからの風の変わらぬ決意だった。
「わかりました。一刀くんが望むのであれば最後まで信じるのが私達の役目。しかし、わからないのは、和平を望むのであれば全軍で突撃をせよとはどういう意味なのでしょうか?」
悠里の指摘に誰も答えられなかった。
戦うのであれば和平にならないのではないか、と思っていると亞莎がある事に気が付いた。
「もしかして旦那様が内通者を泳がせていた理由は和平を望むことをわざと教えるためなのでしょうか?」
両軍がぶつかり合い疲弊していく中で、戦をやめようという動きを内通者を通じて山越と連絡を取り合う。
そしてこれ以上の無駄な戦を内外から止めさせるためにあえて全軍で突撃をする。
「もしそうであるのならば、山越の中にもこの戦を望まぬ者、早く終わらせたい者がいるということになりますね。しかし、その内通者が和平派であるかどうかの保証はどこにもありませんよ」
もしその反対であればわざとおびき出されるかもしれないという危険性もあった。
「お兄さんの運に賭けましょう」
ここまできた以上は一刀の天の御遣いとしての強運を信じることにした。
「では最低限の守備隊だけを残して残りはその準備をさせましょう」
そうと決まれば悠里はさっそく行動に移った。
「亞莎ちゃんはなるべく自然な形で和平の噂を流してください」
軍師としての才覚をフル活動させる風は次々と手を打っていく。
「負傷兵の方達からも志願させてください。連れて行く兵力は多い方がいいですから」
「わかりました」
「あと、ねねちゃんには城に残ってしっかり守ってくださいね」
「わかったのです」
どんな形にせよ一刀と会える。
そのことが崩れかけていた彼女達を立ち直らせていく。
「さぁこれから忙しいですよ、お兄さん」
風はここまで我慢できたのだから戻ってきたら一番に褒めてもらおうと思いつつ、出撃の準備を整えていった。
その一方で風は一刀の部屋に篭っている恋を訪ねた。
寝台の上で蹲っている恋に風はゆっくりとやってきて寝台に座った。
「恋ちゃん」
一刀が行方不明になって以来、ほとんど食事を取ることなく、ただ悲しみと寂しさを抱きしめていた恋の瞳は虚ろさが漂っていた。
「お兄さんがもう少しで戻ってきますよ」
「……」
恋はわずかに風の方を見る。
その言葉が本当なのかどうか確認するかのように見ていた。
「本当ですよ。ただ、今すぐにというわけではないですけどね」
優しく恋の頭を撫でながら風は穏やかな表情を浮かべていた。
「……ご主人さま、無事?」
「はい。あのお兄さんが風達を遺して死ぬなんてありえないことですよ」
風は一刀の最後は間違いなく美女、美少女達に囲まれて死ぬと確信していただけに、戦死などは考えていなかった。
「風」
「はいはい?」
「ご主人さまに会いたい」
いますぐにでも傍に行き、力いっぱいに抱きしめられたい恋。
たくさん頭を撫でられたい。
優しい笑顔を自分に向けてほしい。
恋はそれだけでも幸せになれた。
「ええ。だから恋ちゃんにも二、三日後に起こる迎撃戦の先陣をお願いしたいのです」
そうすれば何の問題もなくなり、無事に一刀と合流することができる。
ゆっくりと身体を起こしていく恋の瞳に精気が戻ってきた。
「ご主人さま、助ける」
「だから今はしっかり食べて体力をつけておいてくださいね」
「(コクッ)」
恋は名残惜しそうに寝台から離れ、一度だけ振り向いて部屋を出て行った。
そんな彼女を風はのんびりと眺め、出て行った後、寝台にその身体を沈めていく。
「お兄さん、風は頑張りましたよ?だからご褒美はしっかりといただきます」
もうすぐ心の苦しみから解放される。
だが、最後まで気を緩めることは出来ない。
「ほんの少しだけお兄さんの中にいさせてくださいね」
そう言って風は積み重ねていた疲労感からほんの少しだけ解放するかのように意識を手放した。
その頃、一刀達は山越の本隊近くまでやってきていた。
すでに城に篭る呉軍に苛烈な攻撃を続けていた。
「なんとか城は持ち堪えているみたいだけど、まさかこんなに近くまで来ているなんて思わなかったよ」
十万の山越を見るだけで壮観だが、いつまでも隠れているわけにはいかなかった。
「梅花、それで話はまったくなんだっけ?」
「そうよ。だからまずいことになっているって言ったでしょう?」
このまま行っても話し合いをする前に三人そろって亡骸になることは間違いないと梅花は言う。
「ならここからは俺一人で行くよ」
三人で行っても同じなら一人で行っても同じ。
一刀の軽挙な行動に梅花と真雪は慌てて止める。
「あんた一人がいっても同じよ」
「かずさまだけを行かせたくないでしゅ」
「それでも行かないと何も解決しない」
たとえ言葉が通じなくても粘り強い交渉をすればどうにかなると一刀は思っていた。
「交渉なんてしないわよ。一刀の顔を見れば即その頸を落とされるわよ」
仲間だった自分ですら攻撃をしてきた山越に梅花は複雑な気持ちだった。
「もしこの頸が落とされたら山越は終わりだよ」
自分の後ろにはそれを成し遂げることのできる力を持っている人物がいる。
仮に自分が死んだら山越はその歴史を完膚なきまでに終わらせ、子孫すら残らなくなることは目に見えていた。
だが、それを防ぎたい一刀は自分が死ぬことを許されなかった。
「俺はもう無駄な争いを起こしたくない。だからなんとしても和平を結ぶ」
真雪と梅花が協力し合うように、呉と山越も同じように協力し合い生きていくことは今の時点では夢物語のようなことでも成しえないとならない。
「仕方ないわね。こうなったら最後まで付き合ってあげるわよ」
「私も離れないでしゅ」
「…………わかった。絶対に俺の傍から離れないでくれよ」
「わかっているわよ「はいでしゅ」」
一刀は二人の気持ちに感謝しながら左手を前に差し出した。
「二人とも俺の手に重ねて」
「「?」」
二人は何をするのだろうといった感じで一刀の手を見たが、言われたとおりにそれぞれの手を重ねていく。
そして最後にまた一刀が右手を重ねた。
「俺達はこれからもこうして手を取り合って生きていく。そのことをここで誓ってほしい」
小さな一歩だがこれがやがて大きくなっていく。
その想いから真雪と梅花は一刀、そしてお互いに誓約を交わした。
「呉軍軍師、魯粛子敬は天の御遣い様のもと、山越族と手を取り共に生きていくことを誓うでしゅ」
「山越族頭目、潘臨。天の御遣いのもと、呉と手を結ぶことを誓約する」
二人の女人と一人の男がもとに結ばれた同盟はやがて大きな意味を持っていくことになり、呉と山越は共に歩んでいくことになるが、それは未来の話だった。
「では天の御遣いとして両国の誓約を受けるよ」
三人は頷きあい、山越の軍勢の方を見た。
「しかしこれほどの大軍をどうやって集めたんだろうな」
五胡などの異民族ならば大陸の奥なのでいくらでも兵を動員することはできるが、山越のように呉の国内に存在する異民族に十万の大軍を動員できる要因がわからなかった。
「山越はいろんなところにいるのよ。普段はそれぞれの部族長がまとめているから多くても数千なの。でも大王が命令すればその全てが集められるの」
「つまりその大王が目指す人物なんだな」
「ええ。でも、正直なところアタシはあの大王が嫌いなのよ」
「どうして?」
自分達の王を嫌うということはよほどの理由があるのだろうかと一刀は梅花が続きを話すのを待った。
「だって一度は山越から抜けた者がまた戻ってきて無理やり王になったのよ」
「無理やり?」
「ええ。孫策に負けて戻ってきたらいきなり前の王を監禁して自分が王だって名乗ったの」
当然反対する者も出てきたが、そういった者は次々と監禁、もしくは討ち取られてしまい、今では誰もがその恐怖に従っていた。
「頭はないくせに力だけは人一倍なもんで、みんな従ったのよ」
そして山越を全て掌握すると呉に対して攻撃を仕掛けた。
「一言でいえば馬鹿か」
思わず口にしてしまい、すぐに言い直そうとしたがそれよりも先に梅花が笑みを浮かべていた。
「アタシとしては一刀が山越の王になってくれるのなら歓迎するわよ」
「おいおい」
梅花は冗談ぽく言ってみせたが実のところ本気でそうしようかと思っていた。
一月足らず一緒にいただけで何かと一刀のほうに視線を向けていた梅花。
敵味方など関係ないといった感じで接してくる一刀の人柄に惹かれていた。
「ダメでしゅ!」
そこへ真雪が猛反対してきた。
「かずさまは呉にとって大切な人でしゅ。だからダメでしゅ」
梅花と仲良くするのとこのこととは別問題のようで真雪は頬を膨らませて抗議するが、梅花からすればその姿がおかしかった。
そんな和やかな雰囲気が突然、凍りついた。
「しまった……」
梅花が気づいた時にはすでに多数の山越の兵士に取り囲まれていた。
「まいったね」
まさか話し込んでいて囲まれていることに気づかなかった自分達が間抜けなのか、それとも山越の兵士が優秀なのか、両手を後ろで縛られながら悩んでいる一刀。
その横には同じように縛られた真雪が一刀に寄り添うようにして座っていた。
「梅花さん……大丈夫でしゅか?」
敵と一緒にいたということで激しい拷問を受けている梅花を心配する真雪。
「大丈夫だから」といって二人に笑みを残していった梅花の姿が脳裏の焼きついており、何とかして助け出したいと真雪は思っていたが、現実はどうすることも出来なかった。
「大丈夫だよ」
不安に表情を支配されていく真雪に一刀は優しく声を掛ける。
「今は耐えるときだけどもう少しの我慢だから」
「かずさま……」
捕まってなお前向きな一刀に真雪もそれを信じるしかなかった。
「しかし、真雪とこうして二人っきりってこのところ多いよな」
「そうでしゅね」
状況が許せるのであれば甘えていたい真雪だが、手を縛られていてはどうする事も出来なかった。
「山越か。あの雪蓮ですら完全に討伐できない相手なんだよな」
「そうでしゅ。だからかずさまの考えが通じるかどうかわからないでしゅ」
冷静に考えればまず不可能だと思われた。
「まぁここまできたら後はなるようにしかならないさ」
緊張感の欠片も見せない一刀。
今の彼を雪蓮が見れば呆れるだろうが、真雪は至って真面目に尊敬していた。
自分では怖くて泣いてしまうところを、相手に心配をさせないように笑顔でいる一刀が眩しく見えた。
「それよりもだ。真雪」
「は、はいでしゅ!」
見惚れていた真雪は顔を紅くしながら慌てて真面目な表情にもどしていく。
「非常事態だ」
「な、何かあったのでしゅか?」
今まで見た事のない一刀の何かを我慢している表情にただならぬものを真雪は感じた。
「じ、実は……」
「実は?」
「…………もれそうだ」
「……え?」
ますます顔面蒼白になっていく一刀は身体もモゾモゾさせ始めた。
「か、かずさま……もしかして」
真雪は違った意味で悲鳴を上げそうになった。
「だ、だめでしゅ。我慢してくださいでしゅ!」
「む、無理言うな……」
牢代わりに使っていた天幕の中で騒いでいると、門番をしていた山越の兵士が何事か入っていくと、涙交じりに厠を訴える一刀と顔を紅くしながらうろたえる真雪の姿があった。
一時的に縄を解かれ、厠を済ませた一刀は満足そうに歩き、縄を解いてくれた兵士に厚くお礼まで言ったため、兵士は困惑しながら縄で縛ったがゆるくしていた。
それからしばらくして傷だらけの梅花が放り投げるように天幕の中に入れられてきた。
「梅花!」
慌てて駆け寄っていく一刀だが、梅花の背中には拷問を受けたあとが痛々しく残っていた。
気を失っている梅花をこのままにはしておけないと、一刀は無理を承知で門番に縄を解いて欲しいと頼んだ。
もちろん反対されたが、逃げないという条件を何度も伝えようやく縄を解かれた。
「梅花、しっかり」
水に濡れた布を頼んでそれを持って来てもらうとゆっくりと傷口を綺麗にしていった。
「痛そうでしゅ」
心配そうに見守る真雪。
「女の子の肌にこんな傷を残すようなことをして……」
拷問などの類は一刀は嫌いであり、実際にそれを梅花の身体に刻まれたのを見て許せない気持ちになったが、今の自分は捕虜なのだからどうすることもできなかった。
「んっ……」
痛みからか意識を取り戻していく梅花。
「気が付いたか?」
一刀と真雪は安堵の表情を浮かべると、梅花はゆっくりと起き上がって後ろを見てから二人を見た。
「大丈夫なのか?」
「やられたふりをしたのよ」
身体の痛みは本物だがそれ以上の忍耐力を梅花は示した。
そして気を失っているふりをしてここに戻されてきたのだが、それでも痛みのせいか時折、表情が歪んでいた。
「でもなんでやられたふりをしたんだよ?」
下手をしたら命を落としかねないため余計に心配をする一刀に梅花は笑みを浮かべた。
「ちょっと和平のことを大声で叫んでいただけよ」
拷問を受けながらも梅花は大声で呉と山越の和平を叫んでいた。
それに少なからず影響を与えたのか梅花は痛みの中でも笑みを崩さなかった。
だが、一刀はそんな彼女の行動を怒った。
「そこまでして梅花が死んだらどうするんだ!」
「だ、だってアタシだってあんたのやることに「馬鹿」!」
一刀は問答無用に梅花を抱きしめた。
「梅花が死ぬなんて絶対に許さない。生きてこそ意味があるんだぞ」
「……一刀」
「だからもう二度と無茶なことはしないでくれよ」
敵だった自分をここまで心配する一刀に梅花はそっと手を背中に回した。
「ありがとう、一刀」
梅花はそうお礼を言うと一刀はゆっくりと彼女を離した。
「どちらにせよ、処刑される前には山越の王と会うと思うからその時にやるだけのことをやろう」
「うん」
今度は梅花から一刀を抱いていくと、その横で頬を膨らませている真雪が我慢できなくなり口を開いた。
「梅花さん!そんなにかずさまと抱き合わないでくださいでしゅ」
そう言いながら二人を引き離そうとする真雪だが、梅花は意地の悪そうな笑みを浮かべてわざとらしく一刀の身体を密着させていく。
「ば、梅花!?」
「なによ?アタシを傷物にしたんだから責任ぐらい取りなさいよ」
「き、きずもの!?」
その言葉に真雪は顔を紅くして必死になって引き離そうとする。
「だ、ダメでしゅ。かずさまが傷物にしていいのは私達だけでしゅ!」
とんでもないことを口走りながらも真雪は懸命に自分の幼い身体を一刀に密着させていく。
「こ、こら、梅花も真雪も離れるんだ」
二人に迫られる一刀はそう言いながらも離れさそうとはしなかった。
そうやって騒いでいると、いきなり天幕の入り口が開かれ、厳つい男が三人を冷めた視線をぶつけてきた。
「ふん。敵と遊ぶところを見ると本当に我等を裏切ったのだな」
一刀と真雪以上に冷たい視線をぶつける梅花に男は何の感情も込めずはき捨てるように言った。
梅花はその男を睨み返したがそれで怯む様子など男には感じられなかっ。
「まぁいい。山越を裏切った愚か者に天の御遣い、それに呉の軍師を処刑すればこの戦だけではなく呉を滅ぼす足掛けになるのだから」
男がそう言うと山越の兵士が三人を縛り付けていく。
「これから山越の王であらせられる厳白虎様の御前に連れて行く。そこでせいぜい命乞いをするがいい」
「厳白虎?」
その名を聞いて一刀の頭の中に「?」がいくつも浮いてきた。
(どこかで聞いたような名前だな)
日本にいた時はどういったことはよくあることが、まさか三国志の時代にも同じような感覚を覚えるとは思いもしなかった一刀。
「引っ立てろ」
兵士達によって立たされ、一刀達が部屋を出ようとした。
そこへ、
「ぎゃあ」
「ぐはっ」
山越の兵士と男は次々に倒れていった。
何が起こったのかすぐにはわからなかった一刀達。
「一刀さん」
現れたのは葵だった。
完全武装をしていたはずの葵だがここまでくるのに幾人もの山越の兵士を打ち倒してきたため、所々、斬り傷などがあった。
「葵ちゃん」
久しぶりに見る葵の表情は一刀を見つけて半分泣きそうになりながらも笑顔を見せた。
そしてゆっくりと一刀に抱きついていった。
「葵ちゃん……」
「探したんですよ。一刀さん達が戻ってこないから」
すぐに見つかるとは思っていなかったが、敵の勢力範囲の中で見つからないように行動をするのは難しく、見つかれば命を取らないように戦ったり逃げたりしていた。
見つけたときにはすでに山越の本隊へ連行されていくところだったため、隙をみて潜り込んでいた。
「でもよかったです。ご無事でなによりです」
「葵ちゃんにも苦労かけたね」
本当ならば抱きしめて頭を撫でるところだが、縛られているために甘えてくる葵を眺めるしかなかった。
「すぐにでもここから逃げましょう」
目的を忘れていない葵は再会の喜びも無理に収めながら一刀達を連れ出そうとした。
「そうしたいのは山々だけど、今は無理だよ」
「ど、どうしてですか?」
命がけで助けにきた葵は信じられないといった表情を浮かべながら一刀の言葉を待った。
「風お姉ちゃんや恋さん達が待っているんですよ?」
「うん。それでももう少しここでしなければならないことがあるんだ」
「それはいった「何事だ!」」
異変に気づいた山越兵が慌しく武器を携えてやってきた。
葵はすぐに臨戦態勢をとり一刀達を守るように立ちはだかる。
「侵入者だ!」
大声で仲間を呼び寄せる山越の兵士に葵は素早く拳を鳩尾に叩きつけていく。
だが、いくら武勇が優れている葵でも数には勝てずに少しずつ押されていく。
「葵ちゃん、やめるんだ」
「しかし!」
命に代えても一刀達を風達のもとに連れ戻そうとする葵。
「やめるんだ」
葵が傷つく姿を見たくない一刀は抵抗をやめるよう優しく諭した。
「……わかりました」
悔しかったが一刀の言葉に素直に従う葵は拳をさげると山越兵に縛られていく。
四人が連れてこられたのは多数の山越兵士に囲まれた広場であり、目の前には壇上が設けられそこに豪華な椅子が置かれていた。
その椅子には丸々と太った男が肉を貪っていた。
「メタポ超えているな……」
「めたぽ?」
「ああ、簡単に言えば太りすぎってこと」
小声で容姿について語る一刀達を見下すように見ていた厳白虎は肉を食べる事をやめずに最後まで食べきった。
山盛りにあった肉を平らげた厳白虎は椅子から動くことなく大声を放った。
「ようこそというべきだな、天の御遣い」
「初めまして」
別に馬鹿にするような言い方をしたわけではないが、厳白虎は不機嫌そうな表情を浮かべていく。
「儂を覚えておらぬのか?」
「覚えておらぬかと言われても」
そんな気はするがどこの誰だったかまでは思い出せなかった一刀に厳白虎は不快感をあらわにしていく。
「ふん、天の御遣いは儂のような男になど興味などないようだな」
「まぁ基本的には女の子の方が好きだからね」
「さすが呉の種馬というべきか」
皮肉たっぷりに詰る厳白虎だが、事実なために一刀は苦笑するしかなかった。
「貴様と我が山越を裏切ったそこの女はすぐにでも頸を刎ねてやる。残りの女はたっぷりと可愛がってやるぞ」
下品という言葉がまさに似合うと思った一刀は自分が『ここにきた本当の理由』を話すときがきたと悟った。
「ではその山越の王に言う。すぐに兵を引き呉と和平を結んで欲しい」
視線を逸らすことなく真っ直ぐに厳白虎を見上げる一刀。
恐怖を感じないといえば嘘になるが、それ以上に自分がやるべきことの重さを感じる一刀は平和への交渉を始めた。
「和平……だと?」
「ああ。これ以上、無駄な争いをして兵士を死なすなんて馬鹿らしいことだと思う。そんなことよりも戦をやめて共に平和な世の中を生きていかないか?」
そうすれば戦で家族を失う者もいなくなり誰もが平和で幸せに暮らせる。
国境なき平和。
甘い理想論かもしれないがそれを実現させれば何よりも優れたものになると信じている一刀だが、厳白虎はそうではなかった。
「呉と和平などありぬ」
「なんでだ?」
「なぜだと?知れたこと。儂が山越の王から呉王、そして先ではこの大陸の王になるからだ」
乱世を好み力でこの世を収めようとする厳白虎の考え。
「それに儂は呉が大嫌いでな。呉王の孫権、それに孫策を地に這いずらせて嬲りものにしなければ気が収まらぬわ」
自分の大切な人達にそのような事をしようとしている厳白虎に軽くない殺意を覚えかけたが、それを必死に押しとどめて冷静さを辛うじて保って反論した。
「なぜそうまで呉を憎む。個人の憎しみでこれほどの軍勢を動かすなど王としてするものではないはずだが?」
「山越では力こそが全て。力無き者は力ある者に従い、その命までもを捧げる。だから王である儂は絶対なのだ」
「貴様!」
一刀以上に怒りをあらわにしたのは梅花だった。
「貴様など山越の王にあらず。先王を汚い手で亡き者にしたくせに」
「ふん、力なき王など不要。あのような王など死んで当然だ」
人の死をその辺の石ころのごとく扱う厳白虎。
「それにここまで山越を大きくしたのは儂のおかげだ。貴様らのような者にも温情を与え一軍の将にしてやった恩を仇で返すとは恥知らずもいいところだ」
その発言に賛同するかのように周りの山越兵も梅花を口々に悪口を放っていく。
厳白虎はゆっくりとその肥大化した身体を動かして椅子から立ち上がり、ゆっくりと亀のように時間を掛けて一刀達の前にやってきた。
「天の御遣いの頸も取れず逆に篭絡されおって」
梅花の前に行き弱者を見下ろす権力者のごとく、厳白虎は冷たい視線をぶつけていきそして力任せに彼女の頬に拳をぶつけた。
地に倒れこんだ梅花を足蹴をして楽しむ厳白虎。
「やめろ!」
一刀が声を荒げて止めようとすると今度はそんな彼の頬に拳を放った。
「ぐっ」
「一刀さん「かずさま」!」
葵と真雪は助けに行こうするが山越兵に肩を押さえつけられて身動きが出来なかった。
「なにが天の御遣いだ。ただの優男なだけではないか」
梅花以上に足蹴りや拳を放っていく厳白虎。
一刀はそれでも気丈に和平を口にしたがまったく聞き入れられる事はなかった。
やがてボロボロになった一刀は力なく地に横たわっていた。
「ここでは殺しはせん。呉の軍勢の前でその頸を叩き落してやるわ」
「兄貴」
そこへ葵によって気を失っていた男、厳白虎の弟である厳輿がいやらしさを伴った表情をでやって来た。
「こっちの女は俺が好きにしていいか?」
葵を指差す厳輿に厳白虎は笑みを浮かべていた。
「この女には殴られた借りがあるからな。何十倍にもして返してやらないと気が治まらないぜ」
「好きにしろ。だが、その前にこいつらを呉軍の前で処刑をしなければならぬ。それが終わるまでは待っておれ」
そう言って厳白虎はすぐさま、呉軍に一刀達の処刑を伝えその準備に入った。
数刻後。
その知らせを受けた風達は騒然とした。
一刀の言っていた山越での不穏な動きがこういう結果として現れたことに動揺を隠せなかった。
「一刀くんを処刑など止めるべきです」
「そうだ。もはやここで議論している時ではない」
悠里、華雄とすぐに出陣すべきだと主張する。
恋、亞莎や音々音、それに京もその意見に賛同していた。
そんな中で風だけは表面的にはいつもどおりだった。
一刀が風にだけ話した理由の一つにこれがあった。
激情に任せて動く事で事態を悪い方へ動かしていくことを防ぐために風は選ばれたといってもよかった。
「風」
恋も出陣することを止めようとは思わなかった。
「風様、このままでは本当に旦那様が死んでしまいます」
「ヘボ主人が言った動きがあったのですぞ。すぐに動くべきです」
「旦那や子敬さん達を助けよう」
亞莎、音々音、京からも出陣を促される風は閉じていた目をゆっくりと開けていき、全員を見回した。
「華雄さん、兵力はどれほど動かせますか?」
「重傷者の中でも志願したがっていた奴もいたがそいつらは残していくとしてざっと五千だ」
半分以上が動けないだけに出て行っても一刀達を救出できるかどうかわからなかった。
わからなかったが、ここでじっとしているより遥かにマシだという意見で一致していた。
「わかりました」
風は覚悟を決めた。
ここからは策など無用であり、もはや天運に任せるしかないと思った。
「では悠里さんは城に残って後をお願いします」
「そ、それは……」
自分も出陣するものだと思っていただけに悠里は不満を表した。
「悠里さんは風達の帰ってくる場所を守っていて欲しいのです」
自分達は戻ってくると言う風に悠里は自分の我侭を押し通すことはしなかった。
「ねねちゃんは内通者の捕縛をお願いしますね」
「わかったです」
音々音も恋に付き従って出撃したいと思っていたが、自分の身勝手な行動を許してくれた風に恩を感じていたため素直に従った。
「先陣は恋ちゃん、その左右に華雄さんと太史慈さん。本隊は風と亞莎ちゃんが率います」
それぞれの役目を与えられ準備に取り掛かっていく。
誰もいなくなった部屋に風はただ一人椅子に座っていた。
「おう、出てきな」
彼女の頭の上に鎮座している宝譿は微かに感じた気配に反応した。
「お気づきになりました」
物陰から声が聞こえてきた。
「おやおや、随分と早いですね」
「事態が事態なだけに猶予がないと思いましたので予定より早く動きました」
「そうですか。ではお願いしますね」
「お任せください」
そう言って気配は消えた。
「随分とお兄さんは皆さんから愛されていますね」
誰もがたった一人の男のために動いている。
国を超えた行動。
「風は頑張りましたよ。でも、勝手な事をした事がばれたらお兄さんは怒るでしょうか?」
一刀から聞かされた和平を単独の力では無理だと風はここに来てすぐに理解できた。
かつての五胡との戦いとは全く違い妥協など許さない状況に風はこっそり雪蓮と同じようなことをしていた。
それが風の想像していたよりも早く動いていた。
「風は悪い子です。お兄さんに何の相談もせずに勝手なことをしました。だから叱り付ける為に生きていてもらわないと困るのです」
誰に聞かせるわけでもなく風は自分のした『勝手な行動』。
「お兄さん、風はこの戦が終わったらしたいことがあるのです」
それはのんびりと一日、一刀と娘の三人で日向ぼっこをする。
いつでもどこでもできるそれを風はいつも望んでいた。
「だから生きていてください。かずとお兄さん」
初めて口にする一刀の名前。
そして両手を握り締めて神に祈るように瞼を閉じた。
いますぐに抱きしめて欲しいという願望が風の中に生まれていく。
「お兄さん、風はお兄さんを愛しています。たとえこの世が終わっても風はお兄さんをずっと愛しています」
雪蓮には申し訳ないと思いながらもこのとき、風は一刀を独占したいという欲望が生まれたが否定をするつもりもなかった。
祈りを終えた風は立ち上がりゆっくりと部屋を出て行く。
「お迎えにいきますよ、お兄さん」
その瞳にはいつものどおりの眠たそうなものを感じさせていたが、彼女自身はやる気全快だった。
そして部屋を閉めて自分が成すべき事をするために出陣の準備に取り掛かった。
その頃、処刑前の最後の時を一刀達四人は天幕の中で過ごしていた。
「ごめん……」
力なく肩を落とす梅花。
葵も真雪も言葉なく同じように肩を落としていた。
「そうだ、誰か左のポケットから小袋を出してくれないか?」
こんな時でも挫けなお、まだ余裕を見せようとする一刀に三人は何も答えなかったが、葵が縛られた腕を使って言われたとおりに引っ張り出した。
それは出陣前に雪蓮が一刀に渡したものだった。
「何ですか、それ?」
「これは雪蓮から挫けそうになったら開けるようにって言われたんだ」
後ろで縛られているためなかなか中身を取り出すことが出来なかったが、少し時間を掛けて取り出したものは紙切れだった。
そこに書かれていたものを『雪愛』という文字だった。
「雪蓮……」
思わず笑みを噛みしめる一刀。
それを他の三人も見たが何のことなのかわからなかった。
「どういうことなのですか?」
「ゆきとあいでしゅ」
「なによ、それ?」
たった二文字の意味がわからない三人はそれがなんなのかを一刀に答えるようにと視線を向けた。
「うんとこれはね」
なぜか顔を紅くする一刀。
「そのなんだ。あとで教えるよ」
「あとって……これから処刑されるのに今聞かないでいつ聞くのよ?」
「そうでしゅ!」
「知りたいです」
もはや自分達の未来など閉ざされるしかない思っていただけに、せめてその問いの答えにも聞かなければ満足できなかった。
「じ、じゃあ、処刑前に大声でいうからそれで勘弁してくれ」
何度も説得をしてようやく収まった三人だが、なぜ処刑前なのかがわからなかった。
「それともう一つ」
一刀はとんでもないことを言った。
「俺達は助かるよ」
「「「えっ?」」」
何を根拠にしてかわからない三人。
「大丈夫。俺を信じてくれ」
挫けかけた気持ちをよみがえらせた一刀はいつものように笑顔を見せた。
そして処刑の時刻になり一刀と梅花は罪人のようにひざまつき、葵と真雪は山越兵に肩をつかまれていた。
「命乞いをするか?」
肉を食い散らかしながら一刀を見下ろす厳白虎。
「残念ながら命乞いをしても助からないとわかっているからね」
これから処刑されるというのに落ち着きを払っている一刀が気に入らないのか、厳白虎は梅花のほうを見た。
「貴様の家族も貴様のせいで死ぬことになる。自分がしたことを悔いるんだな」
「ゲス野郎が」
睨み付ける梅花をあざけ笑うように厳白虎は食べかけの肉を彼女にぶつけた。
「これより天の御遣いと称する男と我が山越を裏切った者の処刑を始める」
大声が響き渡り、一刀達の後ろから大刀を持った処刑人が現れた。
「一刀さん!」
「かずさま!」
葵と真雪は二人に近づこうとするが力強くつかまれているためにそれもできなかった。
「なぁ梅花」
「なによ?」
一刀は死を直前にして梅花に声を掛ける。
「もし生き残れたら山越の王になって欲しいんだ」
「は?」
何を言い出すのかと梅花は呆れた顔を一刀に向けた。
「あんた、馬鹿じゃないの?これからアタシ達は死ぬのよ?」
「ああ。だからだよ。もし死ななければの話ってことで、どうだ?」
「…………いいわよ。王でもなんでもなってあげるわよ。その代わりアタシはあんたの為に王になるから少しは相手をしなさいよ」
「まぁ、なんとか努力してみるよ」
最後に冗談でも梅花は嬉しかった。
「そうだ、一刀」
「なに?」
「アタシはあんたのことが好きだよ」
「俺も友達として好きだよ」
愛の告白と友人としての告白。
梅花は自分の気持ちを素直にいい、そしてそれを否定するのではなく違った形で受け止めてくれた一刀に感謝した。
「言い残す事はもうないな?」
「後一つあるんだけどいいかな?」
厳白虎はどうせくだらない事だろうと思い一刀の願いを聞き入れた。
「それじゃあ、一言」
大きく息を吸い込んで一刀はありったけの息と大声を上げてこう言った。
「雪蓮、愛しているぞ!」
一刀の言葉に一瞬、静寂さが広がった。
その愛の告白に答えるかのように、
「私も愛しているわ、一刀」
どこからともなく聞きなれた声が聞こえてきた。
誰もがその声の主を探していていると、一人の山越兵が一刀のほうへ歩み寄っていく。
鎧を勢いよく脱ぎ捨てていくと、その姿は一刀が一番初めに愛した女人。
「…………雪蓮」
「一刀♪」
嬉しそうに雪蓮は長い髪を揺らしながら歩いていく。
(座談)
水無月:いよいよ山越編も佳境を迎えます。
穏 :今回を含めてあと三話ですね。
亞莎 :長いお話もここまでくればもう少しですね。
水無月:自分でも振り返って驚きましたが、今回は全編を通して一番長い話になっています。オリキラと風が目立つ前半戦から雪蓮達へと流れていきます。
穏 :それにしても本来の山越討伐は穏のはずなのですが、穏はいつ出てくるのですか?
水無月:それは次回で明らかに!
冥琳 :私も長いこと出演していないから忘れかけられているのではないかと思うわ。
水無月:それはないでしょう。冥琳は大人気ですから。
穏 :穏も大人気になりたいです~。
亞莎 :わ、私も……。(照)
水無月:とりあえず次回は山越編第七話。いよいよクライマックスへと突入していきますのでお楽しみに。
冥琳 :まだまだ残暑が厳しいから体調管理にはしっかりしなさい。
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山越編第六話。
今回も更新まで長くかかってしまいました。(猛反省)
まさかの長編に驚きつつも今回を含めてあと三話。
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