クラリスが不思議な声のする方へ歩いて行くと、迷路のようなダンジョンで迷うことなく、祭壇のある大広間に辿り着いた。
「ここは一体…。ジュン君はどこにいるんだろう?」
「…やっと会えたね…クラリス…僕はここにいるよ」
クラリスは祭壇の中央まで恐る恐る歩みを進める。魔法陣のような図形が描かれており、その中心に古ぼけた壺が置かれていた。
「ジュン君…。この壺は何?」
「…クラリスの力で…その壺の封印を…解けるはずだよ」
「私、落ちこぼれだから封印解除の魔法なんて使えないよ?」
「…大丈夫…君ならできるよ」
クラリスが壺に手を伸ばし、指が壺の蓋に触れそうになる寸前だった。地響きがして大きな爆音が轟いた。
「び、びっくりした!今のは何の音?」
「…まずい…奴らが来た…急がないと」
「えっ、どうして?」
「…早く封印を…解いて…お願いだ…クラリス」
「でも私、どうしたら良いのかわからないよ…」
「…何も…難しいことはないよ…君が…壺に触れるだけで…良いんだ」
バタバタと大勢の人の足音が近づいてくるのが聞こえる。クラリスが再び壺に手を伸ばした。壺に指が触れた瞬間、衝撃波が起こり、強い光が発せられて目が眩み、クラリスは気絶してしまった。
「一足遅かったか!すでに封印は解かれてしまった後のようだ…」
「あの強力な封印を一体、どうやって解除したと言うのか…」
「ところで、この倒れている少女は誰なんだ?」
「ピプル族の少女だが、強い魔力を秘めていたので、監視の為にアカデミーに通わせていたらしい…」
「なるほど、連れて帰って事情を聞いた方が良さそうだな?」
クラリスが目を覚ますと、瞼を赤く泣き腫らしたゲルスと目が合った。見覚えのある花柄の毛布から出ると体を起こす。
「あれ?ここは私の家…。さっきまで遺跡の中にいたはずなのに」
「クラリス!目を覚ましたんだね。三日も目を覚まさないから心配したよ」
ゲルスは目をこすりながら笑顔でクラリスの手を握っていた。
「三日も経ってたの?ジュン君は助けてもらえたのかな」
「ジュンって言うのは誰なんだ?」
ゲルスの後ろにいたカースがクラリスのベッドに近づいて来て尋ねた。
「遺跡の中にいた人。顔は見てないんだけど…。声はずっと聞こえてたよ」
「遺跡の中にいるなんて怪しい奴だな」
「優しそうな人だったけど…」
ゲルスが大きなあくびをする。カースがゲルスの肩に手を置いた。
「ゲルス、もうずっと寝てないだろ?僕は仮眠を取っていたが…」
「大丈夫、クラリスの元気な顔見たら、俺も元気になった!」
そこへ大人たちがゾロゾロとクラリスの部屋に大勢入って来た。カースは一歩前に出るとこう言い放った。
「封印解除の魔法を使ったのは僕です。クラリスは関係ありません。どんな罰でも受けます」
to be continued
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オオカミ姫の二次創作ストーリー、第四話です。