No.934404

【真・恋姫†無双】さよなら

南無さんさん

どうもお久しぶりです。
中々、筆が進まずこの様な時期に投稿する事となりました。
夏までに投稿すると記載しながら、約束を守れず申し訳ありません。
次回がありましたら、なるべく早くに投稿できるように努力します。

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2017-12-24 13:30:21 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:4469   閲覧ユーザー数:3780

 

和平を掴み取るとはやはりいい事だ。かく言う武一辺倒の私もその様に思う。

 

これも、隊長のお蔭だろうか。きっとそうだろう。

 

だって、その優しさで私達は変わったのだから。特に華琳様は隊長の影響を受けている。

 

そうでなければ、三国が鼎立しての和平と言う未来に辿り着く事はなかったと心からそう思うから。

 

 

「ふぅ…」

 

 

風が気持ちいい。酒気を帯び熱くなっている頰を冷ましてくれる。

 

そして、視界に映るこの喧騒とした雰囲気も嫌いではない。

 

 

「あ、凪ちゃん。ここにいたの」

 

「おう。凪。隊長どこにいるが知らへんか?」

 

「隊長?いや、私も見かけていない…」

 

 

沙和と真桜がそう口にした瞬間、私の心は早鐘をうった。

 

辺りを見回すと何時も中心となっている隊長が、見当たらないから。

 

それと、この耐え難い悪寒はなんだ。嫌な予感がする…

 

 

「すまない!真桜。コレを頼む︎!!」

 

「え?ちょい待ちい。凪。何処に行くんや︎」

 

 

私は盃を渡し、走り出す。居ても立っても居られなかった。駆け巡る不安。

 

その思いが走れと命令する。そして何故か、私が向かう先に必ず隊長が居るそう思った。

 

どうか、どうか、この鬱屈とした心情が間違いであって欲しい。

 

私はひたすら進むべき方向へと足を止めずにいた。

 

 

 

「…終わったな」

 

俺は一人、皆の元からひっそりと離れ水面を見つめていた。

 

その水面では写し出された月がゆらゆらと揺れている。近くに落ちていた木の枝を投げ込み、

 

波紋を起こせば更に不確かな月影となった。空を見上げれば、その形は不変であるのは明らか、

 

だが、俺が見つめる先ではそうはいかない。所詮は仮初めの場所で写し出されているに過ぎないから。

 

そう、その月影は正に今の俺を象徴している様に。

 

 

「………」

 

 

ぼんやりと手を見つめる。すると次第に透けてきて向こう側の景色が否が応でも、見えてしまう。

 

言葉が出なかった。だが、絶望はしていない。無論、喜んでもいないが。

 

これは自分自身で選択した結末だから。

 

そして、俺は人知れ消えていく。皆に伝えなかったのは勇気がなかったからだ。

 

怒るだろうか。きっと、いやその答えは九九を答えるよりも簡単なものに違いないな。

 

 

「さて、と…」

 

 

おれは立ち上がり、覚悟を決める。未練など…残さない為に

 

 

「たい……う。隊長ー︎!!」

 

 

俺を呼ぶ声が背後から聞こえる。その声主は振り返なくとも、誰だかわかる。

 

共に警邏などをし信頼を深め、時には料理を馳走になった大切な女の子。

 

 

「…凪」

 

 

目の前の女の子は中腰の姿勢で膝に手をつき、息切れしている。

 

呼吸を整え終えると顔を上げ俺を見つめてきた。

 

その顔はうっすらと汗が滲んでおり。何かを察したかの様に眉を八の字にしている。

 

 

「どうしたんだい。こんな所に…」

 

「それは、こちらの台詞です隊長。急に居られなくなったと思いましたら、どうしてこの様な場所に…!!」

 さぁ、帰りましょう。沙和や真桜も待っております」

 

「帰る、か。…凪はどうして俺がここにいると分かったんだ」

 

「それは、何となくですが。私が進む先に隊長が居られると思いましたので」

 

「そっか。凪は聡い子だね。なら、もう分かっているんじゃないないかな。

 俺の答えも、今から、何が起こるかも」

 

「…わかりません︎。私は、私は隊長が居られなければ何も出来ません︎」

 

「…矛盾してるよ。やっぱり、分かっているじゃないか」

 

「っ︎!!…隊長︎!!!!」

 

 

凪が叫ぶと同時に体は更に透過していた。俺は目を細め、この状況を受け入れようと必死に努める。

 

だが、それとは対照的に凪は己が感情を爆発させ、今にも泣き出しそうになっていた。

 

 

「隊長は、隊長は平気なのですか!!

 …この様な別れ方、この様な結末!!私は耐えられません」

 

「…この別れを受け入れられるか、られないか。それはもう問題じゃないんだ。

 受け入れざるを得ない。俺はその行動を既に選んでしまった」

 

「え?」

 

「覚悟無くして、人の天意を変える事は出来ない。それこそ、失うものがなければ、得ることが出来ないように。

 そして、俺は得てしまった。だからこれは等価交換。俺は俺の意思の元、選択したから…この結果には納得している」

 

「…そんな事仰らないで下さい!!残される者の気持ちはどうなるのですか!!

 私は、只、ただ…!!」

 

「…すまない。わかってくれ――」

 

 

気がつくと、俺は無意識のうちに凪を包んでいた。だが、触れてはいない。

 

この透ける身体がそれを許さないから。だから、そっと凪に寄り添い、

 

その形式を取っているに過ぎない。これが今、俺に出来る唯一の意思表示。

 

伝わるかわからないが、これは大切だと思うが故の行動そのもの。

 

 

「隊長、御身が…」

 

「ああ、もう凪に触れる事も不可能みたいだ」

 

「そんな…嫌です。お願いですから。どうか消えないで…」

 

「…凪。どうか息災で。俺は皆の…凪の幸せを願っている。見上げる空は違うけど、

 それだけを本当に願っている」

 

「…隊長!!」

 

 

刹那、俺の視界には無数の光の粒子が映った。それはまるで、ホタルの光の様で、

 

その美しさとは正反対に、俺は納得をしてると口にしながら、酷く醜く後悔すると予想できていた。

 

そして、四肢の感覚が無くなった瞬間、俺は無意識に本当に無意識だったんだ。

 

光の粒子のその先に…寂しがりやの女の子がいた事に気がついたのは――――

 

俺は胸に痛みを抱えたまま、この激動の世界と別離をした………

 

 

「あ…ああ……………!!」

 

 

隊長が、隊長が消えてしまった。居なくなってしまった。

 

 

「…何も、何もできなかった。隊長の艱難辛苦に気づけず、自分の都合のいい様に

 これからもずっと共に過ごせると思っていた。最後だって駄々をこねて

 安心して送り出せなかった。でも。それでも、私は…一緒に居たかった。本当にそれだけなんです」

 

 

もう立っていられない。私は膝をついた。虚ろの心で空を見上げると、

 

その瞬間、星が落ちた。天文を読み解く知識はない。

 

でも、その星は隊長の星だと感じずにはいられなかった。

 

そして、私の頬にも一筋の涙が流れた。

 

 

「……っつ…うぅぅ……たい、ちょう―――」

 

「………行ってしまったわね」

 

「華琳…様―――」

 

「忘れなさい。あの男の事は、私達を見捨てた一刀なんて…ね……」

 

「……!!」

 

「さぁ。立ちなさい。何時までもここに居る義理はないわ」

 

 

私は怒りから立ち上がった。だが、それは決して従った訳ではない。

 

隊長の想いを蔑ろにされている事が許せなかったから。

 

私は、華琳様に詰め寄り睨みつけた。

 

 

「隊長は…隊長は私たちを見捨てた訳ではありません!!御身を犠牲にして、

 私達に未来を示してくれたのです。訂正してください!!華琳様!!」

 

「…そう。私に対して、それだけ言えるのなら、大丈夫ね。凪」

 

「…え。華琳…様……?」

 

 

くるりと華琳様は反転して、歩き始めた。華琳様は私を試したんだ。

 

だから、あの様な心にもないお言葉を。

 

 

「でもね。凪…これだけは覚えておきなさい」

 

 

華琳様は少しして留まり、再度、言を発する。

 

 

「ここでもし、止まってしまっては、それこそ貴女が言った通り、一刀の想いを踏み躙ってしまう。

 今日この日は長きに渡った内乱が終結し、民にとっては喜ばしい特別な日。

 でも、その影には一人の男が奔走し、その自身を省みない行動を取った結果、

 悲哀なる一日を同時に与えた罪深き日。それでも、悲しみは許されない。

 私達は託されたのだから。大切な人の未来を犠牲にして……」

 

 

…震えていた。あの気高く強い華琳様が。

 

そして、うっすらと頬を濡らしていたのが、夜の薄暗さ中でも垣間見えた。

 

 

「…話は終わりよ」

 

 

華琳様は去っていった。その去って行く時の背中は覇を唱えた王と言うには程遠く、

 

か弱き一人の女性の様だと、私の眼にはそう映った……

 

そして私は、再び脱力して、草本に両膝をつけた。

 

 

「華琳様はやはりお強い。ですが私には…無理です。気持ちを簡単に割り切れません……たいちょう――」

 

 

何度も、何度もあの人の名を口にする。それはまるで壊れた人形の様に何度も…

 

頬を伝う涙は、行き場を失い滴となって、草本に零れる。

 

空に浮かぶ月の美しい光とは逆に、私の中の光は失われていった。

 

そして、私は、華琳様からの助言を無視して絶望に支配された。

 

隊長と再び会える未来を、この時の私は信じられずにいたから―――

 

 

 

 
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