彼と3つの…
今、彼の目の前に金色をしたボールのようなものが三つ、間隔を開けて横一列に並んでいる…
年末も迫ったある日、前日からの雨が上がって鈍色の雲が流れていた。
彼はコンビニに行こうとさっと冬着を着て、寒空の下に出た。
彼が家の前の砂利道を少し歩くと、普段見慣れないものがあった。
それは丸く、冬の日を受けて金色に光っている。
「なんだ、これ…」
彼の目の前には金色をしたソフトボール大の「何か」が、三つ整然と横一列に並んでいた。
それは砂利道にわずかばかり埋まっているようだった。
彼はこの物体を怪訝に思い、次に綺麗だなと思った。
彼はこの物体を見なかったふりをしてそのままコンビニに行くかどうか、迷った。
今日は休日で、彼は暇である。
またこの物体をまたいでいくことはわずかばかり彼に嫌な気持ちを与えた。
彼は周りを見回して確認した。低木に、コンクリートのフェンス、雑草。
いつもの景色と何も変わったところはないし、
この物体は目の前にある三つだけのようだった。
彼はゆっくりと近づいてその物体を観察してみることにした。
それは砂利に少しめり込んでいるが、おそらく完全な真球に見える。
表面は純金のように輝く金色だった。
よく見ると鋳造鉄のようにすこしぼこぼこしていて、滑らかではなかった。
それは見る限り重そうで、少しの風が吹いてもピクリとも動かなかった。
キノコのように地面から生えたものではないだろう、
だが落ちてきたにしては整然な並びが不自然だ。
彼の思考はこの物体を誰が、何のために此処に置いていったのか、に移っていった。
「カルトとかがやったのかなあ…?」
彼が思い浮かべたのは、
ずいぶん昔に話題になったアルミホイルを手当たり次第に巻き付ける奇妙な集団のことだった。
しかし辺りには寒風が吹くばかりで人影もなく、他の家の前にはこの物体は見られなかった。
触ってみるか……
当然の選択肢だったが、彼には不可能だった。同時にそれを跨いで行くことも彼には不可能であった。
彼は道の端、路肩の雑草が生えているところを通ることにした。
それでも三つの物体の延長線上を跨ぐときには慎重に足で
探りを入れ、意を決して大胆に飛び越えていったのである。
コンビニで買い物をしている間も彼の頭の中から
金色のボールのようなもののことは全く離れなかった。
彼は帰り道すがら、また道の端を歩くことを考えると気分が重くなるのを感じていた。
それとも今度はあれにさわってみようか…と考えながら家に近づいたとき、
あの物体は忽然と姿を消していた。
それが夢ではなかったという証拠に三つのへこみだけを道に残して……
彼は安堵した。同時にやっぱり触ってみればよかったとも少しだけ思った。
そして、あの物体がなぜ三つだったのかを思った。
二つなら…金色のボールが二つなら、もう少し何かがわかりやすかったような気がしていた。
結局下ネタに行きついた自身の思考に苦笑しながら、彼は家のドアを開けた。
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