ある日、樹の苗を連れて旅に出てから一年が経った頃、少年はとある町にたどり着いた。
その町は古代の物と思われる建築物や巨大な神殿、女神像など壊されていて、文明が滅びた雰囲気が漂っていた。
滅びた遺跡が残る誰もいない町で、一人の老婆と出会った。老婆に話を聞こうとすると突然、突風が吹いて竜巻が発生した。
老婆は急いで家に少年を招き入れる。老婆の家の中は大きな暖炉が合って、木製の家具、パッチワークなど並んでいた。
「さっきは有難うございます。突然の竜巻なので驚きました」少年は老婆に礼を言うと老婆は暖炉に火をつける。
「いいんじゃよ・・・いつもそうじゃ。よそ者が来ると竜巻が起こる。まるで・・・いや、何でもない。風が収まるまでゆっくりしなさい」老婆は少年にお茶を出し、椅子に腰かける。
「有難う、あのこの町はどうしたんですか?遺跡があるのに人や観光客が全くいないなんて・・・」少年は恐る恐る老婆に聞く。老婆は少し悩んだ後、この町に怒った事を話した。
この町は昔、女神さまが住んでいた。女神は自分の存在を認知し崇めてくれる人間が可愛くて好きだった。
人間は女神の為に巨大な神殿や女神像を作る。女神はそれを答えるように、民の繁栄、穀物祈願、永遠の平和をこの町の人間に与えた。
しかし、文明の発達と共に女神の存在が問われるようになり、いつしか女神の存在を信じなくなった。それに深く嘆き悲しんだ女神は怒りのままに人間が自分の為に作ってくれた神殿、女神像、美術品の数々を破壊し、人間をこの町から追い払った。
それ以来、この町は呪われた町として有名になり人が寄り付かなくなったという。
「・・・そんな事があったんですか・・・だから、さっきの竜巻は自分を追い返すために・・・じゃあ貴方は?」少年が聞くと「例え、呪われていても人々にこの事を伝えなければいけないと思い私の祖先が長い間、この場所に住み続けているのじゃ。そして女神は今もあの神殿にいるらしい」老婆が語る。
少年は老婆の家の空き部屋に泊まらせてもらうことになった。
翌日、少年は女神が今もいるという神殿に向かった。神殿に向かう途中で何度も突風や、突然の雷に襲われた。
なんとか神殿に着くと少年は大声で呼びかける。
「女神さま!いらっしゃるのなら、話を聞かせて下さい!このままではこの町は完全に滅びて昔の様な活気が二度と戻ってきません!ですから!」
すると今度は地震が起きた。それでも少年は呼びかける。
その様子を見た樹の苗は覚悟を決めたように「僕を神殿の入口のところに置いて」樹の苗は自分が説得しに行くようだ。少年は心配する。「駄目だ!樹の苗も破壊されてしまったら、自分は・・・!!だったら自分も一緒に行く!」結局、話し合って一緒に行くことにした。
神殿入口までいくと樹の苗が言う「はじめまして!さっきは僕の親友が失礼な事言ってしまってごめんなさい、良かったら話をしませんか?」
説得するのではなく、優しい口調で話した。すると目の前に白い服を着た女性が現れた。
「神と対話しようとする勇気は認めよう。ねぇ精霊?」女性は女神だった。「300年間続いた悲しみをそう簡単に消せる筈がない、誰も私を救えない。だから直ちにここから立ち去れ」女神はいら立っている。
「じゃあ、なんで今もこの神殿に居るの?この神殿は人間が君の為に作ったんでしょ?本当は壊したことや、追い払った事を後悔してるんじゃないの?」樹の苗が言い返す。少年は樹の苗の言い返す勇気に驚き冷や汗をかいた。
そしてこの様な言い争いが2時間過ぎた頃。「・・・はぁ・・・分かった。少しだけ私の私情も語ろう。全く大した精霊だな」女神が言い争いに疲れ心を開いたのだった。樹の苗は調子に乗って葉を揺らす。
5話に続く
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いつも読んで下さって有難うございます!前回の続きです。物語が一気に進みます。