No.931270 真・恋姫†無双 異伝「絡繰外史の騒動記」第二十五話2017-11-26 13:09:21 投稿 / 全13ページ 総閲覧数:3579 閲覧ユーザー数:3012 |
「えっ…それじゃ、本当に七志野権兵衛という者はいないのですか?」
「だから、さっきから何度も言ってるでしょ…そんな変な名前の者がいるなら、さすがに誰かが
知ってるに決まってるわよ」
定時連絡の為に建業から来ていた孫権は、応対した詠にかねてよりの疑問の主であった『七志
野権兵衛』に会わせて欲しいと頼んだのだが…返ってきた答えは冒頭の通りの物であった。
「そんな…だったら母様は誰に討ち取られたと…姉様は一体誰を追いかけているというのよ?」
「もう戦が終わって随分経つのよ?それに…あんた達が大事な人を亡くして悔しい気持ちは分か
らないではないけど、それが嫌なら元から戦なんてするなって話だって事位分かるわよね?」
孫権は半ば呆然とそう呟くが、詠にそう言われるともはや返す言葉もなく、大人しく引き下が
るのであった。
・・・・・・・
「…私も調べてみましたが、本当に誰も『七志野権兵衛』という者の事を知らないようです」
「…思春もダメだったとはね。一体どういう事なの…明命は一体何処の誰に捕まって伝言役をや
らされたというのよ…」
宛がわれた宿舎に戻り、孫権とは別行動で調査にあたっていた甘寧も空振りに終わった事を聞
いた孫権はそう言って悔し気に眉を歪ませる。
だったら『何故、周泰を連れて来ない?』という疑問が浮かんでくるのだが、これに関しては
孫呉の事情も絡んできているのである。先の連合での戦において、軍を率いていた孫策は混乱
の最中に行方をくらまして現在もその消息は不明であり、負け戦と相まって南方の異民族の造
反を招く結果となっていたのである。
幸いにも戦そのものは黄蓋・程普・太史慈の奮戦もあり何とか勝ち戦には持っていけたものの、
未だ予断を許さない状況が続いており、それを打開する為にはやはり孫策の存在が必要だとの
結論に至った為、周泰をその捜索に向かわせてしまっていたのであった。
その結果、もう一つの懸案事項であった『七志野権兵衛』については他に誰も知る者もおらず、
周泰を呼び戻すにしても定時連絡以外に彼女が何処で何をしているのか把握もしきれていない
という状況になってしまうというミスも重なり、完全に頓挫してしまっていたのである。
「はぁ…完全に手詰まりね。姉様が何処で何をしているのかも全然分からないし…穏は勝手に本
屋に行ってるし」
そう、洛陽に来たのは孫権・甘寧・陸遜の三名だったのだが、陸遜は街へ出かけた際に本屋街
へと入ってしまい、建業を遥かに上回るその規模に魅了された結果…本を読むと興奮するとい
う悪癖から衆人の前で危うく痴態をさらしかける事態となり(そうなる寸前で甘寧が間に合っ
たので、最悪の事態は避けられたのだが)、現在も宿舎内の別室で何やらおかしな状態のまま
となっていた…というより、現在もそこからおかしな声が聞こえてきているのであるが、二人
は聞こえないふりをしていたのであった。
「蓮華様、有用な情報かどうかは判断しかねるのですが…董卓様の家臣に絡繰の製造に長けた男
がいるという話は聞きました」
「…その男が『七志野権兵衛』じゃないの?」
「いえ、その者の名は北郷というそうです」
「…北郷」
「もしかしたらその男なら『七志野権兵衛』について知っている可能性もあるのではと…」
「…可能性が全く無いというわけでもないわね。一度会ってみたいけど…何処にいるのかは聞い
てる?」
「どうやら都の何処かにその者の工房があるらしいのですが…私が聞いた限りではそれがどの辺
りにあるのかまでは…」
「そう…それじゃ、明日に董卓様か賈駆殿に聞いてみるわ」
孫権は北郷が董卓の家臣であるのなら、どちらかに聞けば工房の場所を教えてくれるだろうと
軽く考えていたのだが…。
「ダメよ」
「北郷さんに何の目的があって会いたいのかは分かりませんし聞きませんが…工房の場所は機密
事項となっておりますので」
次の日、詠と月にけんもほろろに断られ、孫権は困惑の色を隠せなかった。
「えっ…でも、その、前の戦の後で確か絡繰を皆に見せたとか…」
「あれは特別です。そういえば、孫権さん達はあの時の興行は見ていなかったのでしたね」
「あの時はすぐに建業に帰らなければならなかったので…」
「その時にその場にいた人達には言ったのですが、絡繰興行に関しては私の許可無しには開けな
いようになっておりますので」
「でも…その…少し位…」
「話は以上ですね?ならばこの後、視察に行かなければならないのでこれで失礼しますね。確か、
明後日にお帰りでしたよね?明日一日だけですが、ごゆっくりしてください。では」
孫権はしどろもどろに話を続けようとするも、月は有無も言わせぬ勢いで一人しゃべり倒して
去っていってしまい、孫権はしばし呆然と立ちつくしていたものの、肩を落とした様子でとぼ
とぼと一人宿舎への帰途へとついたのであった。
・・・・・・・
「はぁ…やっぱり私じゃダメなのかしら?この数ヶ月、色々と頑張ってみたんだけど…所詮、母
様が死んで姉様がいなくなったから当主になれただけの女って事なの?」
孫権は宿舎に帰ろうとしたものの、そのまま帰るのも気が重かったので、茶店に入って休憩と
いうか時間潰しというべきか的な事をしていた。そんな事をした所で何の解決にもならない事
は彼女自身も分かってはいるのだが、今はただ一人になりたかったのであった。とはいっても
結局、口から出るのは弱気な言葉ばかりで呟けば呟く程に自分でも嫌になってくるばかりであ
ったのだが。
「すみません、こちら相席よろしいでしょうか?」
一人物思いにふけっていた孫権は、店員にそう声をかけられて始めて店の中が混雑している事
に気付く。本来ならそこで席を立てば良かったのだろうが…。
「あ…はい、大丈夫です」
口から出た言葉は相席OKの返事であり、何故そんな返答をしたのか自分でも戸惑っていたの
だが…。
「すみません、相席になりますがこちらへどうぞ!」
店員に呼ばれて姿を見せたその相席相手を見た瞬間に、孫権は自分の心臓の鼓動が一つ大きく
高鳴るのを感じる。
「どうも、しばらく相席させていただきますね」
・・・・・・・
今日は月様からの依頼も無く、それまで造っていた農機具類はおおよそ目途がついて久々に時
間に余裕の出来た俺は一人街に出て来ていた。何故一人なのかというと、公達は一族の長老に
呼び出しを受けたらしく凄まじいばかりに渋々ながらもそちらへ向かい、胡車児は公達の護衛
として同行、蒲公英と白蓮は二人で馬に乗って遠駆けに出てしまい、輝は昨日書類を全て片付
けた疲れからか今日は全く起きてこなかったからである。月様からは『あまり一人で歩かない
ように』とは言われているものの、さすがに街中位は勘弁してもらっているのである…といっ
ても、おそらく護衛か監視かしている人は何処かにいるのだろうけど。
しかし、よく考えるとこっちの世界に来てから一人で出歩く事はあまり無かったので、何だか
変な気分であると同時にとても楽しい気分でもあったりする。
そして、俺は足の向くままに街のあちらこちらと歩き回り、気が付くとお昼を少し過ぎた位の
時間となっていたのであった。
「しまった…お昼の少し前に飯屋に入ろうと思っていたのに、街歩きが楽しくてすっかり忘れて
しまったぞ…何処か席の空いている店はあるかな?」
その懸念の通り、何軒か覗いてみたものの全て満席であり、これは屋台で適当に買ってその辺
で食べた方が良いだろうかと思い始めて入った茶店で『相席で良ければ大丈夫だと思うのです
が…』と店員さんが恐る恐る聞いてきたので、相席で大丈夫な旨を伝えると店員さんはその席
の人に了解を取った上で俺をそこに案内してくれたのであったが…その席には女の子が一人で
座っていたのであった。しかも結構可愛い娘だ…これはラッキーという事で良いのだろうか?
「どうも、しばらく相席させていただきますね」
「え、ええ…どうぞ」
俺の言葉に女の子は若干俯き加減で小さめの声でそうこたえる。うむ、これは結構どころか最
上級クラスの美少女…今日はとても運が良いようだ。
・・・・・・・
とはいうものの、いきなり初対面の女の子と親しく会話出来るようなナンパテクニックなど持
っていない俺がそれ以上話を続ける事など出来るわけもなく…少し経って出て来た食事(基本
が茶店なので軽食系の物であるが)を黙々と摂るだけだったりする…あれ?
「こっちをジッと見つめて…何かありましたか?」
食事に夢中で今気付いたのだが、同席の女の子が何故か俺を凝視している…俺、何かやったの
か?この娘とは間違いなく今日が初対面なはずだけど…まさか、向こうが俺に一目惚れとか?
…無いな、自分で思って空しくなってきた。こんな美少女に惚れられるようなイケメンだった
ら、元の世界でももっと女の子と交流があっただろうし…やはり、此処は俺が何かしたか俺の
顔に何か付いているかのどちらかに違いないと思い、俺はそう質問したのだが…。
「あ、えっと…ごめんなさい。私、男の人とこうして二人だけで一緒の席に座るってあまり無か
ったもので」
女の子は顔を赤くして俯いてしまう…マジで可愛いぞ、この娘!
~孫権side~
「え、ええ…どうぞ」
相席となった男の子…おそらく私と同年代だろうし、男の子で良いよね…に声をかけられ、私
はしどろもどろになりかけながらそう返答するのがやっとであった。どうしよう…此処は何か
自然に会話でもすれば…でも、何を話せば良いのか全然浮かばない。手持ち無沙汰を誤魔化す
ようにお茶を飲もうとするが…そういえば既に空だった。どうしよう…もうこっちは飲み終わ
ったのだから、軽く挨拶でもして席を立てば良いはずなのに…心の何処かでもう少しこのまま
この人と一緒の席にいたいと思っている自分がいる。それに気付いてしまった結果…。
「あの、お茶のおかわりを…」
頼むつもりも無かったおかわりをもらい、それをちびちびと飲みながらジッと眼の前の男の子
の顔を見てしまっていたのであった…どうしよう、変な女とか思われてないかな?
「こっちをジッと見つめて…何かありましたか?」
自分としてはさりげなく見ていたつもりだったのだが、どうやら全然そのような事は無かった
ようで、私の視線に気付いた男の子がそう聞いてくる。どうしよう…まさか見惚れてましたな
んて言うわけにいかないし、言った所で気味悪がられるだけだろうし…。
「あ、えっと…ごめんなさい。私、男の人とこうして二人だけで一緒の席に座るってあまり無か
ったもので」
恥ずかしさの余り、男の子の顔を見る事が出来なくなった私は俯き加減でそう答える。大丈夫
…だよね?実際、男の子と差し向かいだなんてほぼ初めてだし。
「そうか~、だったらそれが俺みたいなのとなんてちょっと迷惑な話だったかな?もっと美男子
とかだったら良かったんだろうけど」
「そ、そんな事は無いわ!!」
…彼の発言につい大きな声でそう言ってしまった。どうしよう…絶対、今変な女だって思われ
たよね!?
「そうか~、だったらそれが俺みたいなのとなんてちょっと迷惑な話だったかな?もっと美男子
とかだったら良かったんだろうけど」
「そ、そんな事は無いわ!!」
男と二人だけの同席というのが初めてという女の子の発言に俺がそう返すと、いきなり彼女が
さっきより大きな声をあげる。ええっと…『そんな事は無い』という事は俺といても迷惑じゃ
ないって事で良いのかな?
「ええっと、そう言ってもらえるとうれしいよ、ありがとう」
…という返答で良いのだろうか?絡繰の事ならすぐにでも解決方法を出せる自信があるのだが、
女性に対してどのように言えば良いのか、さっぱり分からない。及川だったらもう少し気の利
いた台詞でも言うのだろうけど。
「へっ!?…え、ええっと、ど、どういたしまして?」
何故か疑問系で返して来た女の子の言葉に俺はちょっと笑ってしまう。一瞬失礼かなと思って
女の子の方を見ると、彼女もつられてなのか笑っていた…やはり、女の子は笑顔が一番なのは
何処の世界であろうとも共通事項のようだ。
「ところで、会っていきなりこんな事を聞くのもなんだけど…何処から来たの?あまり洛陽じゃ
見かけない顔立ちに見えるけど…」
「う、うん、よ…ゴホン、荊州の方からね。長沙って所からだけど…」
「長沙というと荊州でも南の方だね。南方の人って皆そんな風な肌の色なの?」
「え?ええ、少なくとも私の周りはこんな感じ…かしら?」
肌の色の感じから南の方から来た人かなと思いつつ、若干ぶしつけな質問をしてみるが、それ
ほど嫌がられる事も無く答えてくれる。これはそれほど嫌われていないと思って良いという事
かな?
~孫権side~
「ええっと、そう言ってもらえるとうれしいよ、ありがとう」
私が慌てて言った事に彼はそう笑顔で返してくれる…そんなにお礼を言われるような程の事な
んかしてないのに。でもこうやって彼の笑顔を見られるのは役得って事で良いのかな?
「ところで、会っていきなりこんな事を聞くのもなんだけど…何処から来たの?あまり洛陽じゃ
見かけない顔立ちに見えるけど…」
「う、うん、よ…ゴホン、荊州の方からね。長沙って所からだけど…」
…彼からの質問に私は揚州と答えずにとっさに長沙と嘘を言ってしまう。何故だか分からない
が、揚州と言ってしまうと私の身許が分かってしまうような気がしたからだが…長沙は母様が
以前に太守として赴任していた場所で私も何年か住んでいた事もあるから、嘘とは言ってもそ
んなに取り繕ったような形にはならない…と思う事にする。
実際、彼はそれ以上は深くは聞いて来なかったので問題無し…だろう。
それからしばらく私達は色々と取り止めもない話をしていた。正直、男の子とこういう風にお
話するのがこんなにも楽しいものだとは思わなかった…肌の色とか聞かれた時にはちょっとだ
け恥ずかしかったけど。普段こういう風に普通に話をするという機会が無かったのもあるけど、
もうしばらく…もうしばらくで良いからこの時間が続いて欲しい。
・・・・・・・
「おっと、結構時間が経ってしまったね。ごめん、もう帰らないとならないんだ」
「そ、そう…そういえば、私もそろそろ帰らないといけない時間だったわ」
楽しい時間はあっという間に過ぎるとはよく言ったもので、気が付けば店に入って一刻以上が
経過してしまっていた。出来ればもう少しこの娘と一緒にいたいけど…彼女も帰らなければな
らないみたいだし、仕方のない事だ。
「あ、あの…」
「うん?」
「私の名前はそ…ゴホン、蓮華っていうの。あなたは?」
そういえばこれだけの時間一緒にいたのに自己紹介をしてなかったな…って、あれ?
「あの…もしかしなくても、今の名前って真名だよね?良いの、初対面の俺なんかにそんな大事
なものを預けても?」
俺がそう聞くと、彼女は顔を赤らめながらコクリと小さく頷く。おおっ…もしかして、これは
かのフラグとかいうやつか!?…って、舞い上がってる場合じゃないな。
「あ、ありがとう…俺の事は一刀で」
「一刀…良い名前ね」
「蓮華も、その、綺麗な名前だよ…君の雰囲気に合ってると思う」
「あ、ありがとう…そういう風に男の人に言われたのって初めてだから、その、嬉しいわ」
俺の言葉に彼女はそう言ってはにかんだ笑みを見せる。おおおっ…マジで可愛いぞ!!しかも、
この流れはもしかして連絡先とか教えてもらえるレベルか?いっちゃうか?聞いちゃうか?
「「あの…」」
どちらかともなく声をあげたその時…。
「一刀兄様いた!!そんな所で何やってるのよ!?」
そう言って後ろから俺にかぶさってきたのは蒲公英だった。
「蒲公英!?何で此処に…」
「何でって聞きたいのはこっちだよ!誰、この人!?どんな関係!?」
「どんなと言われても…今日初めて会ったし」
「ふう~ん…まあ、良いや。月様が一刀兄様に用事が出来たから連れて来いって言われたの。と
いうわけで帰るわよ。そっちの人も御機嫌よう」
「お、おい、蒲公英、待てって…あ、あの、蓮華、またね!!」
「え、ええ…うん、また」
蒲公英に強引に連れていかれる直前に、何とかそれだけ言葉を交わして蓮華と別れたのだが…
結局、連絡先はおろか真名ではない名前も知らないまま終わってしまった。また何処かで会う
機会があれば良いのだが。
「か・ず・と・に・い・さ・ま!!こ~んな美少女が側にいながら、他の女の事を考えるなんて
禁止!!」
「そんな無茶な。そもそも何で蒲公英にそこまd…『何か言った!?』…いえ、何も」
俺は何やらお怒り気味の蒲公英に引きずられるように帰るのであった。
・・・・・・・
~孫権side~
「…あ、あの、蓮華、またね!!」
「え、ええ…うん、また」
いきなり現れた知り合いらしい女の子に強引に引っ張られるように一刀は帰っていく。一人残
されて若干の寂しさを感じながらも、一刀に『またね』と言ってもらえて嬉しい気持ちにもな
っていたりする。彼ももしかしたら少し位は私の事を…なんて考えてしまうとつい頬が緩んで
しまう。思い切って真名を預けて良かったなんて思いながら…そういえば、真名しか教えてな
かったけど…まあ、良いか。
「蓮華様、此処にいらっしゃいましたか」
「えっ!?…ああ、思春。うん、ちょっと休憩でね」
「そうでしたか、城の方に行ったら大分前にお帰りになられたと聞きましたもので…洛陽の治安
は他の街に比べて格段に良いとはいえ、お気を付けを」
「え、ええ、そうね…ちょっと迂闊だったかもしれないわね」
確かにあまり知らない街で一人で歩くのは危険を伴うのは事実、孫呉の当主として少々配慮に
欠ける行動だったかもしれない…今後は気を付けよう。
「蓮華様、何か良い事でもおありになったのですか?」
「えっ…どうして?」
「いえ、お顔がとても嬉しそうに緩んでいるように見えましたもので…おそらくは私でなくとも
気付く位に」
うっ、それじゃ私の頬は余程緩んでいたのかしら…思春は何も言わないが、それじゃ周りから
はおかしな女にしか見えなかったに違いない。今後気を付けなければ…。
「あの…蓮華様?」
「えっ…ええっと、うん。とても良い事はあったわ。何があったかは言えないけどね」
「そうですか…それでは帰りましょうか」
思春の眼は何があったか知りたくて仕方がないと言わんばかりであったが、それ以上は何も聞
かずにいてくれた。
色々あったけど、今日は良い日だった。一刀…洛陽に来ればまた会えるのかしら?会えるよね、
また…。
・・・・・・・
~月の部屋にて~
「どうやら蒲公英の言った通り、一刀が一人で街に出歩いて茶店で女と楽しそうに話をしていた
らしいわ。しかも相手からは真名も預かってるみたいね」
「…詠ちゃん、その相手は誰か分かるの?」
「はっきりとした事は分からないけど、見た目から推測すると…多分、孫権ね」
「なっ!?それじゃ孫権さんは一刀さんと知って…?」
「どうやら一刀が寄った店が満席で、たまたま相席になったのが孫権だったみたいだけど…まさ
か真名までとは随分な事をしてくれるわね、孫権も」
「詠ちゃん、工兵部隊に…いえ、輝さんと白蓮さんと公達さんに改めて言っておいて『一刀さん
を一人で出歩かせるな』って。あと、一刀さんの護衛に派遣していた者は交代させて」
「蒲公英は良いの?」
「蒲公英さんは何も言わなくても勝手に一刀さんの所にいるでしょうし、それに蒲公英さんとな
ら別に…むしろ、葵様との連携を考えると蒲公英さんとはそうなってもらった方がこっちには
都合が良いし」
「それもそうね…それじゃ、行ってくる」
そう言って詠がその場を離れると、月は一人虚空を見ているかのような暗い表情で何やらブツ
ブツと呟いていた。
「計画を進めるのに一刀さんは必要不可欠…余計なちょっかいをかけてくるような輩には分際を
わきまえてもらう必要があるのかな…」
そう呟く度に月の表情はさらにこわばっていくのであった。
続く。
あとがき的なもの
mokiti1976-2010です。
…すっかり投稿が月一ペースになってしまい、申し訳ございません。
もうちょっと早めにと思いながらも色々考えていると結局このペース
になってしまうという…誰かオラに文才を分けてくれ!
というわけで(?)、今回は孫呉の…というか蓮華との出会いのお話
でした。とはいっても、お互いに詳しい身許は分からないままなので
すが。
このままお互いの素性を知らないままでいくのかどうかは現状では未
定とだけ申しておきます。しかし、このままいくと蓮華がメインヒロ
インになってしまいそうな…何せ、双方が悪く思っていないという状
況ですので。どうしよう?(オイ
とりあえず次回も拠点です。次回辺りで拠点は終わりにして本編に戻
りたいとは思っていますが…。
それでは次回、第二十六話にてお会いいたしましょう。
追伸 作中で一刀が『イケメンじゃない』とか『女の子と交流が無い』
とか言ってますが、単に一刀が絡繰に夢中で気が付かなかった
だっただけで、元の世界でも結構女性人気は高かったと申して
おきます。
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お待たせしました!
今回も拠点回です。
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