ギンガ団アジトへ殴り込め
トバリシティのはずれ。
そこに、その施設は存在した。
「・・・ここが、ギンガ団のアジト・・・!」
その冷たい鉄でできた建物をみて、クウヤはそうつぶやいた。
彼がここを発見できたのは、道中で遭遇したボロボロのギンガ団を捕まえてアジトの場所をはかせたからだ。
「ここに、伝説のポケモンが捕まってるんだな・・・。
そしてたぶん、アカギもいる・・・!」
アカギは自分の目的を果たすために、警察から自分の存在を隠し攪乱した。
そのために人やポケモンの体も心も傷つけてきた。
今回の作戦も、傷ついたトレーナーやポケモン達がいる・・・そんな過tれらの傷をいやすため、クウヤはギンガ団に戦いを挑もうとした。
「・・・いくぞ!」
「クウヤ?」
「!」
いざ突入しようとしたとき、名前を呼ばれて咄嗟に振り返るとそこには、コウキの姿があった。
「コウキ・・・!? おまえ、どうして・・・」
「・・・ボクもギンガ団とリッシ湖で戦ったんだ・・・バトルに負けはしなかったけど、伝説のポケモンはそのままつれてかれてしまった・・・。
それじゃあボクは負けたも同然だ。
だからリベンジマッチを挑むために、アジトを探していたんだ。」
「自力でここ見つけたのかよ!?」
驚くクウヤにたいしコウキは頷いて答えた。
彼は非常に頭のまわりがよくカンも鋭いし、冷静な判断ができる性格なのは知っていたつもりだったのだが、ここまでやるとは思ってなかった。
「・・・キミもこれから、あそこに乗り込むんだろ?」
「ああ」
「ナナカマド博士から電話で聞いたよ・・・あの二人を悲しませたあいつらを、ボクは許せない。
絶対に、倒してやる」
「コウキ・・・わかった、一緒にいこうぜ!
あいつらぶっとばして、このシンオウを助けようぜ!」
「うん」
二人は顔を見合わせて笑うと、サイレンが鳴り響いた。
「なんだ!?」
「侵入者だー、侵入者がでたぞー!」
「侵入者!?」
「まさか、おれたちのことか!?」
突然の警報、叫ぶ下っ端、あわてる二人。
ふと背後から何かが迫ってきている気配に気づいて、彼らはボールを構えながら振り返るとそこには下っ端が一人いた。
「!」
「待て、私だ」
下っ端はそういって顔の一部をつまむような動作をとり、顔の皮と髪を一気に引きはがす。
するとそこから、彼らが以前会ったことがある男の顔が現れた。
「国際警察のおっちゃん!」
「ハンサムさん!?」
国際警察の、ハンサムだった。
3人が隠れた頃に、警報もとまり下っ端達も落ち着き始めていた。
「侵入者はどこにいった?」
「どこにもいない、逃げていったようだ」
「そうか・・・ッチ、我々の秩序を乱しやがって・・・おかげであの方の演説が中止になって聞けなくなるところだったぜ」
「ああ・・・まったくだ」
そう話をしつつ、ギンガ団の下っ端は一度建物の中に戻っていった。
「まさかあの侵入者って、ハンサムさんじゃねーよな」
「・・・」
「図星だね、この反応」
少年達に図星をつかれたハンサムは誤魔化すように咳払いをする。
するとクウヤはここにハンサムがいる理由を聞いた。
「でもハンサムさん、なんで・・・」
「前々からここがアジトだと私は知っていた、だが潜入するチャンスがなくてな・・・だが昨日、一気にギンガ団が外部へ出て行ったのをみて、それがチャンスだと思って潜入を開始したんだ。」
「そうだったんですか・・・」
「だが、そこで私は奴らが恐ろしい計画を立てていることを知ったんだ。
その証拠を突き止め上部に報告しようと証拠を探していたのだが、そこで別のギンガ団に見つかり、このザマだ」
ハンサムから、彼がここにいる理由を聞いた二人。
そこで、アカギと接触した経験のあるクウヤは、アカギのことを思い出し計画の内容について考えていた。
「恐ろしい計画・・・アカギの野郎なにを考えてるんだ?」
ふっと思い出すのは、以前アカギと遭遇したときに彼が言っていたこと。
クウヤに対しての一つの問いかけ、自分の理想とする世界。
そのためにギンガ団を結成し、行動をしているという話。
「完璧な世界・・・」
「え?」
「前にカンナギタウンであいつと戦ったときに言ってたんだ。
完璧な世界がどうとか、完璧な存在とか・・・長所や短所がどうとかさぁ・・・正直へんに難しくてわっかんなかったんだけどよ・・・」
クウヤはぽりぽりと頭をかいて、アカギと遭遇したときの話をした。
彼の言葉を聞いたコウキなるほど、と考える動作をとってつぶやく。
「なんか道を間違えた完璧主義者、というところかな・・・アカギは」
コウキはクウヤの話からアカギをそういう人間だと認識した。
ふとハンサムはあることが気になり、クウヤに問いかける。
「そうだ、クウヤくんはそのとき、どう思ったんだ?」
「おれ?」
ハンサムの問いに、クウヤは正直に答えた。
あのとき、アカギに向かっていった自分の答えをそのままハンサムに同じように伝えた。
「おれはどうでもいいって言ったよ」
「え、え・・・ど、どうでもいい・・・!?」
「うん」
クウヤは頷いた。
「完璧な世界って絶対になくちゃいけないわけじゃないだろ?
それにこだわってたら何年生きたってなにもかわらないままだよな・・・って思ったし。
おれ自身も正直よくわかんないから、どうでもいいって思ったんだろうな」
まぁそのあとで理解は難しいだろうなとバカにされたけどな、と付け足してクウヤは笑う。
クウヤの答えにぽかんとしていたコウキとハンサムだったが、次第にクウヤらしいなと苦笑する。
そのときだった。
「もうすぐアカギ様の演説がはじまるわ」
「急ぎましょう」
そういう女性の下っ端の話が聞こえてきた。
演説が始まると聞いて、クウヤはよし、と頷くとコウキとハンサムにある提案をする。
「おれ達も、その演説を聞こうぜ」
「え?」
「そうすりゃ、あいつの考えとか・・・わかるかもしれねーじゃん。
ここはいってみるっきゃねぇよ」
「・・・クウヤ・・・わかった。
ボクもいくよ、あいつらの考えを知っておかなきゃ、これからの戦いに支障がでるかもしれないしね。」
「・・・君達は本当に10代前半なのか?」
二人の会話を聞いたハンサムは苦笑しつつも、彼らの意見通りにしようとアカギの演説をする場所へ向かおうとする。
「相手に見つからない安全なルートは知っている、きてくれ」
ハンサムの案内に二人はうなずき、彼についていった。
「こっちだ」
3人は物陰に隠れながらも、演説会場を見た。
そこには多くのギンガ団下っ端が整列しており、一点を見つめていた。
彼らが見ていた一点には、まさに演説を行うのにはちょうどいいステージがある。
「・・・演説なんてでっけぇことして、何を考えてんだよあいつ?」
「さぁ・・・ああいうタイプって理解したくないけどね」
「し、静かに・・・始まるようだぞ」
3人の目の前で、その演説は始まった。
ステージにはアカギの姿が現れ、その姿を見た下っ端たちは一斉に姿勢を正した。
「我が意志についてきてくれたギンガ団の諸君、この良き日によくここに集ってくれた。
私はこのギンガ団をまとめるもの、アカギだ」
マイクによって、その空間内にアカギの声が響きわたる。
「君達の協力によって、知恵のユクシー、感情のエムリット、意志のアグノムといった、心を生み出したと伝えられその象徴とも呼べるポケモンたちが私の手中に収めることができた。
そう・・・これは君達が選ばれしものである証・・・そんな選ばれた君達が私の部下であるからこそ、今回の作戦を成功させることができたのだ。
本当に感謝している」
この話を聞いたとたん、ギンガ団の下っ端たちは一斉に拍手した。
拍手がやむと、アカギは再び話し始める。
「さて、今回の作戦が成功したことで、私は次のステージに進むことができるようになった。
これよりギンガ団にさらなる力を与え、私自身も今以上の力を手にするための準備がついに最終段階を迎えようとしている!」
「・・・?!」
「世界を制圧するためにまずはこのシンオウ地方から、制圧していく!」
「おぉぉぉおぉっ!」
「そのために、私は神の伝承の残る地へ向かう!
テンガン山、やりのはしらへ!!」
「やりの、はしら・・・?」
テンガン山は通ったことがある。
だが、やりのはしらという場所は今のアカギの言葉で初耳だ。
そこでギンガ団をとめなければ、シンオウ地方は危ない・・・。
クウヤはそう思い、拳をぐっと握った。
「我々は分担し、それぞれで行動を起こそうと思う!」
「おおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
「テンガン山に、やりのはしらに私とともに向かうもの!
各地で、我々の計画を妨げるものを足止めするもの!
ここに残り、ここを守り戦うもの!
場所は違えども、思い描いたものが同じならばそれぞれの役目を全うしともに戦える!」
アカギはさらに声量をあげて演説を続ける。
「このアカギのもとに、ともに戦おう!
選ばれしものたちよ!」
その声はおそらく、建物全体に響きわたっただろう。
それを聞いたギンガ団の下っ端たちは拍手をしてそれぞれに声を上げ、去っていくアカギに向かって歓声を浴びせた。
「アカギ様バンザーイ! バンザーーーーイッ!!!」
「神の力が我々の元に、すなわち神は我々に手をさしのべたのだ!!」
「すべてアカギ様のお心のままに動いたからこそ・・・」
「このケガレた世界に、神の・・・アカギ様の意志のままに制裁を下し美しき新世界を生み出す時が訪れたのだ!」
「おぉぉぉっ!!!」
ギンガ団は狂ったようにアカギを崇め讃え、その場に歓声があがった。
それは一体、どういう光景なのか、クウヤにはわからなかった。
「・・・」
いや、わかりたくはなかった・・・というのが、正解かもしれない。
演説も終わり、ギンガ団がそれぞれの目的に向かって動き出した頃、クウヤとコウキはハンサムとともにそこから少し距離を置き、口を開き始めた。
「な、なんなんだあいつ・・・神様とかの名前だして・・・なにやってんだよ・・・?」
「うん・・・正直、ぞっとしたよ・・・」
クウヤもコウキも、顔が若干青ざめている。
アカギから、実力や存在感とは違う別の・・・恐怖を感じたからだ。
「しかし、あのアカギとやら・・・とんでもないな。
あれで27歳とは恐れ入る」
「え?」
ハンサムの口からでたアカギの情報に対しクウヤとコウキは目を丸くした。
「それ、まじ?」
「ああ、本当だ」
アカギの年齢を知ったクウヤは彼の顔や態度などを思い出し考え込む。
そこには、自分がずっと兄と呼んで慕っていたあの男の姿も同時に思い浮かばれていた。
「あれで27歳・・・ミクリ兄ちゃんとそんなに変わんないのかよ・・・嘘だろ?
信じられねぇ・・・どーみたっておれには40歳くらいに見える」
「否定する気はないけど、口に出して言う人間はキミくらいのものだよ、クウヤ」
「・・・と、とにかく、今はポケモンたちを助けようぜ!」
「あ、ああ・・・そうだな」
「うん!」
3人が行動を開始しようとしたときだった。
下っ端の数名が彼らの存在に気づいた。
「お前達、そこでなにをしている!」
「おっと、年齢とかを気にしている場合じゃねーな!
いけ、リーム!」
「ボクはこいつでいくぞ、ヘラクロス!」
ギンガ団はゴーストやアゲハントなどを繰り出してきた。
それに対しクウヤやコウキも、ポケモンを出す。
「ゴースト、シャドーパンチ!」
「ヘラクロス、つじぎり!」
「アゲハント、つばめがえし!」
「リーム、こおりのつぶて!」
ポケモンバトルは順調で、次々に相手を倒していった。
ポケモンバトルではかなわないと悟ったギンガ団の一人は、ポケモンバトルをしようとはせずコウキに向かって拳を向けた。
「このガキィーッ!」
「あっ」
「るぁ!」
コウキに殴りかかるギンガ団の腕をつかんだハンサムはそのまま下っ端を投げ飛ばした。
下っ端はドアに当たるとそのまま部屋の中に入っていき壁にぶつかると、気絶した。
「すっげぇ・・・」
「さぁ、急いでアカギのいるところへ向かうぞ!」
「うん!」
ほとんどの下っ端はバトルに突入する前にハンサムが投げ技で倒していき、ポケモンを出してきてもヘラクロスとリームが撃退していった。
そうして進んでいき、やがて彼らは一つの部屋に突撃した。
「ここにきたか・・・」
「アカギッ!」
そのときだ。
ギンガ団のボス、アカギが再びクウヤの前に現れたのは。
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クウヤはどんどん、突き進みます。