第一部 灰色の革命
何が起こるか分からない明日など僕は本気で想像したことがなかった。
今日と同じ明日が来ないということを真剣に考えてみたことがなかった。
あの頃の僕は僕の人生が賑やかだがやや退屈な日々に埋め尽くされていくだろうことを信じて疑わなかった。僕らの暮らしている平和が本当は一欠片のガラスを投げただけで崩れ去ってしまう危うい砂上の楼閣だってことを気付こうとしなかったんだ。
本当は世界中がきな臭い爆弾で繋がりいつ戦争が起こってもおかしくはなかった。街頭には飢えた民衆が溢れかえり、テロリストが民衆の皇室や貴族への怒りに油を注ぎ、革命という名の内戦の火種が燻っていた。テロリストたちは血で血を洗ったかのフランス革命を仰ぎ見るような手本と信じていたのだ。それが僕が生まれた国帝政ロシアの現実だった。けれど僕の両親をはじめとする周囲の大人たちは愛する我が子にその現実を見せまいと必死だったんだ。振り返るとゾッとするような歴史の交差路に僕らは生きていたのに…
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第一部の冒頭の部分です。