「えぇ! 負けたっぽい?」
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マイ「艦これ」「みほちん」(第3部)
EX回:第11話(改2)<決着そして絆>
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自分の喉が落ち着いたところで私は再び海上に目をやった。
「演習はそろそろ決着するかな」
私は呟いた。
背中を擦(さす)ってくれていた五月雨も一瞬、その手を止めて海上を見た。
「そうですね」
海上では激しい攻撃が続き幾重にも水柱の壁が生じている。
演習とはいえ凄い物量だな。
ブルネイの金剛姉妹は最初、連射しながら美保の金剛姉妹の至近距離を狙っていた。
だが私のインカムに時おり入ってくる音声では海上の戦闘シーンとは、まったく違った雰囲気だ。
『Oh! ソーリー』
『頭、下げて下さいねっ!』
それは実に奇妙な構図だった。
やがて攻撃が落ち着くとブルネイ側の金剛と比叡の姿が確認できた。
当たり前だが美保の二人と瓜二つだ……その金剛は攻撃を緩めるように腕を横に突き出した。
『もう良いネ! 今度はアウトサイドへ』
『はいっ、行きます!』
そのやり取りと同時に中心から外側に向けて再び水しぶきの壁を作るように砲撃が始まった。その迫力に観客は大喜びだ。
私のインカムにも断片的に相手側の音声が入ってきた。
『イェイ! たまには一斉射もイイネ』
『お姉さま、でも慎重にお願いします。これから空母が動きます』
ふと見上げると瑞雲と彗星。
『No problem ヨ!』
何となくウインクをしながらブイサインを出す金剛の姿が連想できた。
『さ、今のうちに』
赤城さんの声だ。
陰で互いの赤城さんと日向が動き出していたのだ。
『Oh! 赤城?』
何となく、顔を上げたような金剛の声。水柱の裏側では美保の金剛が赤城さんと会話をしているのが聞こえてきた。
『さ、これを付けて……』
『これは?』
『特殊メイク。墨で体を汚してカモフラージュするの。でも大丈夫、服に付いても洗濯すれば落ちるから』
絶対に関係者以外には聞かせられないマル秘音声。衣装の心配をしてくれるとは赤城さんらしい。
『さぁ、私たちは外側の定位置へ』
『了解!』
後から聞えた声は日向か。
『後はよろしく』
『ありがとう』
『艤装も汚しておいてね』
雑音に混じって慌ただしく艦娘たちのやり取りが入る。
『これでフィニッシュ!』
恐らくブルネイの金剛だ。その直後に激しい水柱と轟音。まるで残弾全てを撃ち尽くすかのように。もちろん観客席の興奮もクライマックスに達していた。
……そして水煙が晴れた。その輪の中には美保の艦娘たちが大破していた。ボロボロになって抱き合っている金剛と比叡。さらに、よく見れば、その周りにも同様な赤城さんと日向……まぁ彼女たちは実際には戦っていない。同じようにカモフラージュしているだけだ。
私もインカムの音声が無ければ、この状況下で美保の艦娘がブルネイの艦娘たちにボコボコにされたようにしか見えなかっただろう。
「……」
私の背中を擦ってくれていた五月雨が息を呑んでいる感じが伝わって来た。半分振り返って彼女を見ると両手で口を押さえている。
(心配してくれているのか? 五月雨)
何て健気な。
(……ああ、そうか)
特殊な周波数だから駆逐艦の彼女には、演習の艦娘たちの会話は伝わらないか。
ただ彼女は本気で美保の艦娘たちを心配してくれているようだ。
何だか申し訳ない。
(……本当のことを言うべきか)
私は躊躇(ちゅうちょ)した。
(だが喋ったら、この真面目な子は別の意味で衝撃かな)
実況のアナウンス。
『こ、これは……?』
と同時に直ぐに本部席の判定官が双眼鏡で海上を覗いている。
彼は何度か頷(うなづ)くと手にした旗を高く上げた。
それを受けて実況も叫ぶ。
『美保鎮守府旗艦・金剛の轟沈判定が出ました! 我がブルネイ鎮守府の勝利ですっ!』
『しかし、これは呆気ない終わり方でしたねぇ。まさか航空機の爆撃で終わるなんて』
……その遥か向こうでも呆気に取られて立ち尽くしている美保の夕立がいた。
『えぇ! 負けたっぽい?』
ガックリとうなだれる夕立。それでも闘争心はあったんだな。
(偉いぞ、夕立)
ちょっと見直した。
しかし意外に美保の金剛は粘った。演習の時間も予定よりも、かなり延長したらしい。
(やはり今回の旗艦は要領が良い赤城さんにしておくべきだったか)
相手の武蔵様が、この演習の流れの解説をし始めている。それを感心して聞いている観客たち。流暢(りゅうちょう)な解説だが……もしや、この演習の裏の事情を知りながら敢えて違う内容を即興で解説しているのだろうか?
私はインカムを外して武蔵様を見た。
「恐らく彼女は分かっているだろうな」
「あ、済みません」
私を介抱してくれていた五月雨は自分の手が疎かになったことを詫びようとした。
私は手を上げてそれを軽く制した。
「ありがとう五月雨……だいぶ楽になったよ」
その言葉に彼女は恥ずかしそうな表情を見せた。本当に純朴な子だ。
水柱による水蒸気で視界が落ちている上に戦闘も終わったので観客の多くは海上を注目していない。座っていた人たちも立ち上がって屋台を覗いたり他のイベント会場へ移動し始めていた。
会場にもアナウンスが流れる。
『以上で演習イベントは終了いたします。皆様、ごゆっくりお祭りをお楽しみ下さい』
「では提督、私も失礼してよろしいでしょうか?」
五月雨の言葉に私もハッとしたように応える。
「あ、ああ」
彼女に双眼鏡を返して私は改めて海上を見た。そこではブルネイと美保の金剛姉妹たち4人が互いに抱き合って泣いている。身を挺して姉を護ろうとした美保の比叡の一途な姿に心を打たれたようだ。
演習とはいえブルネイの提督に疑われるほど実力が違い過ぎた。それに今回はブルネイは美保と同じ艦娘をあてがって来た。ちょっと趣味が悪いというか……艦娘たちにとっても自分と同型艦を攻撃するのは葛藤があるだろう。そういう一連の想いが演習を終わって一気に緊張が解き放たれたようにも感じた。
抱き合う艦娘を見て、この夏、境港の路地で深海棲艦に対し両手を広げて私を庇った寛代を思い出した。振り返ると、その寛代は相変わらず寝ていた。
私は軽く肩をすくめると改めて海を見た。抱きあう比叡と金剛の姿に私も、いろいろと考えさせられる。
(こういった行動こそが艦娘らしいのかも知れない)
彼女たちにしか分かり得ない絆や想い。それが艦娘が単なる機械ではない重要な証しなのだ。
まぁ、美保の金剛や夕立は今回、本調子じゃなかった。それに演習冒頭の肉弾戦も美保の龍田さんが担当してくれて何とか形にはなった。
お互いの龍田さんの機転によって今回のイベントが滞りなく回ったようなものだな。
もしこれが金剛や夕立だったらゲロゲロ地獄で大惨事。きっとイベントも台無しになったことだろう。
ダブル赤城さんも、お互いに健闘を讃えあっている。また二人の日向同士も戦闘機を取り出して何かを語り合っている。
ブルネイの夕立が美保の龍田さんの側頭部を気にしている。龍田さんの手を当てて心配そうな顔をしていた。でも龍田さんは『大丈夫よ』という雰囲気で笑っている。相手の夕立は強いだけでなく優しさも備えているようだ。素晴らしい。
一方でブルネイの龍田さんが蚊帳の外に押し出されたような美保の夕立を呼びに向かっている。夕立は脱力して座り込んでいたが……直ぐに立ち上がると恥ずかしそうに頭をかいている。
(お前は無線を全然、聞いて居なかったんだろうな!)
やれやれ。真っ直ぐな性格も過ぎると問題だよな。
さて、すべてが丸く収まったようだ。きっとブルネイの大将も水に流してくれるだろう。
私は、ゆっくり席を立つと向こうの席に座っているブルネイの大将の元へ向とかった。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
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PS:「みほ3ん」とは
「美保鎮守府:第三部」の略称です。
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演習は一方的に「大将」側の艦隊が勝利した。しかし、あっけなさとは裏腹に様々な思惑が渦巻いていた。