『制限解除』を発動した炎掌の圧倒的攻撃力に春蘭は、為す術なくダメージを追い続けてしまう

だが、春蘭の諦めない心･武人としての意地により

『限界突破』が発動された!!!

　　　三節　～沈静消火～

左慈「あいつ………やりやがった…!!!」

秋蘭「姉者が………『限界突破』をっ!!?」

廻りの者達が驚きと歓喜の表情に包まれる

雪蓮「いける……いけるわよ春蘭っ!!!」

一刀「あぁ、春蘭が『限界突破』を会得した今………勝機が見えたっ!!!」

だが、誰も気が付いていないが、一人だけ歓喜でない者がいた

斬魔「(なっ!!?あれは『限界突破』っ!!?

何故、人間如きに『限界突破』をっ!!?)」

『血光軍』の斬魔であった

斬魔「(……これは、まずいぞ……!!!)」

春蘭「………そうか、これが『限界突破』か……」

春蘭は小さく呟き、目をゆっくりと開ける

すると

春蘭「………む？何だ？なんか……見にくいな」

春蘭はそう言うと、徐に左目の蝶の眼帯を取り外す

すると、驚きの変化が現れていた

流琉「へっ!!?春蘭様の左目がっ!!?」

稟「元に戻っていますっ!!!」

于吉「それだけではありません

今まで受けた傷がなくなっています」

春蘭の『限界突破』による変化点は以下の通り

･反董卓連合時に失った左目が元に戻っている

･右頬に『十』と『魏』の文字が重なった刺青が浮き上がっている

･髪の長さが腰辺りから地面まで伸びている

･瞳の色が赤紫やピンクに近い色から水色に変化している

卑弥呼「完全に『限界突破』会得時に現れる変化じゃ」

春蘭「(…………一刀の言う通りだな……

力が涌き出てくる……体が軽く感じる)」

春蘭は内心、驚きながら自分の体を見る

炎掌「て、てめぇ………何だそれはっ!!?」

ここで、ようやく炎掌が口を開く

炎掌「っ!!!『万能眼鏡』の数値がっ!!?」ﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯ!!!

『万能眼鏡』越しに春蘭を見ていた炎掌は、春蘭の『戦闘能力値』が著しい速度で跳ね上がっていたのを見て更に驚いていた

炎掌「くっ!!!馬鹿なっ!!!こんな数値………絡繰人間でもっ!!!」

その時

機器音声「警告！警告！『戦闘能力値上限異常』発生。『戦闘能力値上限異常』発生。」

炎掌「いぃっ!!?『戦闘能力値上限異常』だとっ!!?」

一刀「………こりゃあ、ある意味ヤバイかもな」

一刀は思わず苦笑いをする

炎掌「くそ、くそっ!!!こんなことあり得ねぇっ!!!」

ﾎﾞｫｫｫｫｫｯ!!!

炎掌は叫びながら火力を上げる

炎掌「こうなったら、『出力4割増』だ………!!!」

その熱気に周辺の温度が更に上昇する

于吉が手を『神域の結界』から手を出す

于吉「ふむ…………この周辺の気温は凡そ50.0℃を超えてますね、あちち…!!!」

于吉は思わず、熱された手を冷まそうとパタパタと振る

左慈「周辺の気候を変えちまう程の力………

………気張れよ、春蘭………

こっからが本番だ……………」

だが、左慈と于吉の心配を他所に、50℃を超えた気温の中、春蘭は汗1滴流さない

春蘭「さて……再開しようか」

炎掌「舐めんじゃねぇぞ、人間如きがあぁぁぁっ!!!」

ﾎﾞｫｫｫｫｫｯ!!!

炎掌は燃え盛る焔を増大させ、更なる熱を放出する

周囲の地面の溶解速度が加速する

炎掌「『制限解除』を成した俺だからこそ可能な『出力変更』を思い知れっ!!!」

ﾌｫﾝｯ!!!

ﾌｫﾝｯ!!!

炎掌は両手に作り出した『炎天下槍』を投げつける

先程より槍の大きさは二回り大きくなっている

春蘭はそれに対して静かに構える

春蘭「二度も……………」

『七星餓狼』を強く握りしめ

春蘭「喰らうかあぁぁぁっ!!!」

ﾌｫﾝｯ!!!

大きく振り回し、『無型烈皇』を放った

すると

ｻﾞｼｭｯ!!!

炎掌「がふぇあっ!!?」

猪々子「いぃっ!!?」

桔梗「なんと…………･」

春蘭「む？」

『無型烈皇』は『炎天下槍』は疎か、遠距離にいる炎掌にまで攻撃を与えた

炎掌の胴の中心に一文字の傷が深々と刻み込まれ、口元から血が吹き出る

機器音声「損傷率：2割1分4率」

一刀(未来)「(一撃で残り78.6%まで削ったのか…………!!?)」

未来の一刀は目を見開いて驚く

炎掌「ば、馬鹿なっ!!!『炎天下槍』を切り落としただけならまだしも、俺までも斬りやがったのかっ!!?」

龍天「しかも、斬撃の速度も超過していた」

斬魔「威力も桁違い……やはり、あの小娘…『限界突破』を………」

『血光軍』に衝撃が走る

春蘭「しかも、それだけではない

貴様の絶対防御でもある『溶解熱風』をも切り崩したのだ」

春蘭は『七星餓狼』を肩に担ぐ

そして、口元が弛み大きく笑いだした

春蘭「はぁーはっはっはっ!!!これは愉快だっ!!!滑稽だっ!!!

正に形勢逆転だな、炎掌っ!!!

貴様が下に見ていた人間に追い詰められているぞっ!!?」

春蘭の言葉に炎掌は

炎掌「………………!!!!!!」ﾌﾞﾁｯ!!!

頭の血管がキレた

炎掌「てんめぇぇええぇぇぇええぇえぇぇぇっ!!!!!!」

ﾎﾞｫｫｫｫｫｯ!!!

炎掌は激怒の赤、一色に染まる

炎掌「そんなに死にてぇなら、ぶち殺してやるよっ!!!『出力10割増』っ!!!最大出力だあぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁっ!!!」

ﾎﾞｫｫｫｫｫｯ!!!

炎掌の言葉に共鳴するように今までにないほどの焔が放出される

炎掌「絶対殺すっ!!!今すぐ殺すっ!!!跡形もなく殺すっ!!!殺す殺す殺すっ!!!ぶっ殺してやるっ!!!」

血走った目になり、今の炎掌には春蘭への殺意しかなくなっていた

春蘭「やってみるがいいっ!!!

夏侯元譲、参るっ!!!死ぬのは貴様だあぁぁぁっ!!!」

春蘭が『七星餓狼』を両手に駆け出した

それに遅れて炎掌も

炎掌「くたばりやがれぇええぇぇぇええぇえぇぇぇっ!!!」

瞬時に出現させた巨大な『炎天下槍』片手に駆け出した

春蘭「はあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

炎掌「消えろ、屑野郎ーーーーっ!!!」

ﾌｫﾝｯ!!!

ﾌｫﾝｯ!!!

ﾌｫﾝｯ!!!

ﾌｫﾝｯ!!!

ｶﾞｷﾝｯ!!!

ﾌｫﾝｯ!!!

ｶﾞｷﾝｯ!!!

ｶﾞｷﾝｯ!!!

春蘭と炎掌の猛攻は止まることを知らず、激しい攻防が繰り返される

戦場である地面は完全に溶岩化していた

『限界突破』をしていなければ、今頃春蘭は焼け焦げていただろう

だが、それどころか今は炎掌が劣勢へと追いやられている

炎掌「クソッタレがっ!!!しぶとい奴だっ!!!さっさとくたばりやがれっ!!!」

春蘭「ふざけるなっ!!!貴様を倒すまで、倒れるものかぁっ!!!」

春蘭は攻撃の速度を更に加速させる

炎掌「ぐっ!!?がっ!!!ぐぬぅっ!!!」

炎掌が春蘭の速度に付いていけず、ここで受け止めきれない攻撃を少しずつ喰らい始めた

機器音声「損傷率：6割4分1厘」

貂蝉「35.9%……もう少しよん」

一刀(未来)「っ!!!いけ、春蘭…押しきれっ!!!」

炎掌「クソッッッッタレがあぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁっ!!!」

ﾎﾞｫｫｫｫｫｯ!!!

炎掌は全身を燃やし、春蘭に食らいつく

炎掌「総攻撃だっ!!!喰らいやがれっ!!!」

ﾎﾞｫｫｫｫｫｯ!!!

ﾎﾞｫｫｫｫｫｯ!!!

ﾎﾞｫｫｫｫｫｯ!!!

炎掌は『炎拳』『火球』『炎月刀』『炎天下槍』を同時に出現させる

だが、春蘭は

春蘭「この程度の火力で、この夏侯元譲を倒せるとでも思ったかっ!!?」

ﾌｫﾝｯ!!!

ｶﾞｷﾝｯ!!!

ﾄﾞｶｯ!!!

ｺﾞｵｫｫｫｯ!!!

ﾊﾞｷｯ!!!

その全てを一振りで蹴散らした

炎掌「んなっ!!?」

最早、炎掌に攻撃する手段は絶たれた

春蘭はその一瞬の隙を逃さず

春蘭「はあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁっ!!!!!!」

ﾌｫﾝｯ!!!

ﾌｫﾝｯ!!!

ﾌｫﾝｯ!!!

ﾌｫﾝｯ!!!

ｻﾞｼｭｯ!!!

ﾊﾞｷｯ!!!

ﾄﾞｶｯ!!!

ｻﾞｼｭｯ!!!

一気に畳み掛けた

春蘭の嵐のような攻撃は炎掌の顔面･胴体･脚･腕･首、その全てに命中していく

炎掌「ぐあぁっ!!!ぐえぁっ!!?あぐぁっ!!?がはっ!!?」

炎掌から血飛沫が止まることなく吹き出る

秋蘭「いけっ!!!姉者ーーーーっ!!!」

季衣「春蘭様ーーーーっ!!!」

桂花「春蘭ーーーーーーーーーーーーっ!!!」

魏軍が中心に春蘭を応援する

そして

春蘭「たあぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁっ!!!!!!」

ﾌｫﾝｯ!!!

ｻﾞｼｭｯ!!!

炎掌「ぐはあぁぁあぁぁぁっ!!?」

春蘭の渾身の一振りは、炎掌を切り裂き、激しくぶっ飛ばした

炎掌はその勢いのまま、地面に叩きつけられる

炎掌「あ…あぐ……ぐ、ぐぞぉ…!!!」

機器音声「損傷率：8割9分9厘

戦闘継続が困難です。回復に専念してください。」

炎掌はボロボロになりながらも、立ち上がろうとする

一刀「残り10.1%……立つのもやっとのはずだ」

一刀の言葉とは裏腹に炎掌は

炎掌「知った…こと…か……っ!!!

夏侯惇、てめぇは必ず……この、炎掌様が……ぶち殺すんだよぉっ!!!」

ﾎﾞｫｫｫｫｫｯ!!!

炎掌は目の前にマグマの塊を作り出した

炎掌「『炎壊死弾(えんかいしだん)』………俺の奥義だ……

こいつで、二桁の村を消し去った………

てめぇも消してやるよ………夏ーーーー侯ーーーー惇ーーーーっ!!!!!!」

炎掌は春蘭に狙いを定める

春蘭「ふん、生憎だな」

春蘭は両手で『七星餓狼』を持ち、右斜め上に構える

春蘭「貴様の負けは決まったのだ、炎掌」

炎掌「なにぃ？」

炎掌が眉を顰めた瞬間

春蘭「新奥義…………」

春蘭は『七星餓狼』を振り下ろした

だが、ただ『振り下ろした』だけではなかった

風「……おぉお？」

華琳「っ、春蘭が……？」

炎掌「っ!!?な、なにっ!!!」ﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯ!!!

春蘭は一瞬で炎掌の背後に回り込んでいたのだ

既に『七星餓狼』は完全に振り下ろしていた

炎掌「て、てめぇ……いつの間に………!!!」

その時

ｻﾞｼｭｯ!!!

炎掌「っ!!?がっ……………!!?」

炎掌の右肩から左斜めに巨大な傷が浮かび上がった

機器音声「損傷率：9割9分1厘

戦闘継続不可。戦闘継続不可。」

春蘭「『空斬･仙冥柊(くうざん･せんめいしゅう)』…………」

春蘭は機器音声の言葉とともに、『七星餓狼』を静かに収める

その時

ﾎﾞｫｫｫｫｫｯ!!!

炎掌「あっ!!?あぐぁっ!!?」

春蘭「む？」

春蘭が『空斬･仙冥柊』で与えた傷から火が吹き出したのだ

それにより、炎掌が『燃え始めた』

炎掌「な、なにっ!!?あ、あちちっ!!!

あ、熱いっ!!!」

蓮華「え？炎掌が『熱い』？」

雪蓮「炎掌は火を無効化してるんじゃなかったの？」

雪蓮の言葉とは裏腹に、炎掌の傷口からの炎は激しくなっていく

それと比例して炎掌も苦しみだす

炎掌「ぎゃあっ!!?熱い熱い熱いっ!!!

な、何故だあぁぁぁっ!!?何故、この炎掌があぁぁぁっ!!?」

炎掌は悶え苦しみ、足掻くが火は消えない

斬魔「…………っ、まさか？」ﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯ!!!

斬魔は目を細め、『万能眼鏡』を使って炎掌の体内を透視した

斬魔「くっ………やはり……」

龍天「なんだ？斬魔………

炎掌に何が起こっているのだ？」

龍天は斬魔に問うと、斬魔は悔しがりながら口を開いた

斬魔「炎掌の『気源貯槽』に亀裂が入って、気が漏れだしています

恐らく、夏侯惇の攻撃によるものでしょう」

龍天「『気源貯槽』に？」

斬魔「えぇ………炎掌は『気源貯槽』の気を燃料に変えて、絡繰人間特有の炎へ変えています」

ここまでの言葉を聞いて于吉は納得する

于吉「成る程…………

炎掌の『気源貯槽』から漏れだした気に自らの炎が引火してしまったのですね…………

炎掌の防火対策はあくまでも皮膚の表面のみ……

内臓は未処理だったのでしょう」

稟「しかも、炎掌は自ら『自分の火は通常では消せない』と言っていました」

桂花「打つ手なし……ってわけね」

亞莎「只でさえ、春蘭様にあれだけの傷を負わされています

『癒療装置』をしても手遅れです………」

軍師達の言葉は全て当たっていた

最早、炎掌を助ける手段はない

炎掌「ぐあぁっ!!!ぐ、くそおぉぉっ!!!こ、この俺があぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁっ!!!!!!」

春蘭は炎掌の姿を見て、『七星餓狼』をゆっくりと仕舞いだした

春蘭「ふん…………」

そして

炎掌「ぐ、ぐ、があっ!!?」

ﾄﾞｯｶｱｧｧｧｧｧﾝｯ!!!

炎掌の『気源貯槽』内にある気に引火し、大爆発が巻き起こった

炎掌は内部から破裂したように吹っ飛んだ

春蘭「その程度の実力で我らの将を討とうとしていたのか？」

春蘭は黒煙を吹く岩肌を見て、堂々と宣言した

春蘭「この夏侯元譲に勝てぬ者が、北郷一刀様に勝てると思うな、愚か者がっ!!!」

絡繰人間6号『元名』炎掌：現在状況…死亡

死亡原因：過去の夏侯惇との戦闘により負傷。

負傷した傷から自らの火が『気源貯槽』に引火し、自爆死。

　　　　　　　　　　　……終……