第33話 友達とライバルとマルチバトル
修行の成果をだし、無事トウガンとのジム戦に勝利しマインバッジを手に入れたクウヤは、ポケモンセンターでポケモンを回復させ、町を見て回って一日過ごした。
翌日、準備を整えポケモンセンターをでて、ズーバに捕まって空を飛びミオシティを旅立つ。
「えーっと、確かトウガンさんの話だとリーグ公認の町はあと二つで、キッサキシティとナギサシティにあるっていってたな・・・。」
どっちにいけばいいんだろ、と考えていたら真下にコトブキシティが見えた。
ズーバにそこに降りるよういうと、ズーバはそれに従いクウヤをその町に降ろす。
「サンキュー、ズーバ」
クウヤは着地した後でズーバを戻す。
「んじゃ、キッサキとナギサ、どっちにいくか決めよっと」
「あ、クウヤ!」
「クウヤくーん!」
「おーい!」
「ん?」
名前を呼ばれてそっちを向くと、同じ目的を持ってシンオウを旅している少年少女がそこにいた。
そのそばには、シンオウの初心者トレーナーを支援する役目を担ったポケモン研究者の姿もある。
「コウキ、ヒカリ、ジュン!
それに、ナナカマド博士も!」
「久しぶりだな、元気に旅をしていたか?」
「おう!」
クウヤはナナカマド博士の言葉に対し笑顔で返すと、彼らがここに集まっている理由が気になり問いかける。
「でもなんでまた3人で集まってたんだ?
しかも、今回は博士もいるし・・・偶然なのか?」
「ううん、今回は博士に呼ばれて集まったんだよ。
僕達の旅の成果をしりたいからって」
「旅の成果?」
「そうそう、旅の成果!
んで、話をしようとしたらお前がここに来たところをみてさ、せっかくだしクウヤを混ぜようぜって話になったんだよ!」
「・・・おれってまさか、巻き込まれた感じ?」
二人の説明に、クウヤはそう言うしかなかった。
「それで博士、どのようにして旅の成果を確かめますか?」
「そうだな・・・よし、こうしよう」
ナナカマド博士は彼らの顔を見て提案した。
「君達がどれほどがんばっているのか、話はよく聞いている。
そこでだ、この近くの公共バトルフィールドで、旅の成果を見せてくれい」
「え、ポケモンバトルで?!」
博士の提案に、コウキは驚く。
「クウヤくん、ジュンくん、そしてコウキくん。
君達はポケモントレーナーとして旅立ち、ポケモンジムをいくつも制覇しているはずだ。
ヒカリも、護身用のためなど様々な理由でポケモンを育てている。
だからこそ、君達がどれほどにポケモンを育て、絆をはぐくみ、鍛えてきたのか・・・ポケモンバトルをみて判断しようとおもう。」
ナナカマド博士の話を聞いて、バトルが大好きなクウヤとジュンが一番興奮していた。
「そういうことか・・・だったらやるぜ!」
「ああ、やろうぜやろうぜ!」
そして一番に動き出したのは、やはりというかなんというか、ジュンだった。
「よっしゃーっ!
一番にオレはいくからな、遅刻したら罰金だぜー!」
「あ、ちょ!」
ジュンは猛スピードで公共バトルフィールドへ向かい、一番にそこに到着した。
あとの4人は遅れてきたのでジュンは罰金だと言い掛けたが、ナナカマド博士の視線と無言の圧力によってなにもいわなかった。
そんなことがあったが、彼らは早速バトルのことを話し合う。
「さて、どういうバトルにしようか・・・」
「そうだ、せっかくだしタッグバトルにしようよ!」
「タッグバトル?」
「いいわね、おもしろそう!」
タッグバトルとは、二人一組となってその場にポケモンをいったいずつだし戦うものだ。
コウキの案に彼らは同意し、くじを即興で作り、一本一本を手に取る。
「じゃあ、せーので一気に引くよ!」
「ああ!」
「いくわよ!」
「せーのっ!」
4人は一気にくじをひくと、コウキとジュンには赤い印、クウヤとヒカリには青い印がついたものがその手に現れる。
「あっ!」
「おっ!」
コウキとジュンは互いの顔を見て、幼なじみ同士らしく笑いあう。
やはり長いつきあいなのだ、チームワークに自信がある様子だった。
「よろしくな、ヒカリ!」
「え、ええ!」
一方、クウヤとヒカリは、シンオウで会うまでは赤の他人同士だった。
つきあいは長くはなく、しかもトレーナーとしての経歴はクウヤの方が上なので、ヒカリは足を引っ張らないようにしようと自分に言い聞かせた。
「おれはこいつでいくぜ、キーリ!」
「わたしは、ピクシー!」
「いっけー、レントラー!」
「出番だ、ヘルガー!」
二人はそれぞれのポジションに着き、それぞれのポケモンを出す。
クウヤはキリンリキのキーリ、ヒカリはピクシー。
対するコウキはレントラー、ジュンはヘルガー。
「では、試合開始!」
お互いのポケモンが出そろったところでナナカマド博士は試合開始の合図を出した。
「ヘルガー、かえんほうしゃ!」
「レントラー、スピードスター!」
先手をとって行動を開始したのは、コウキとジュンだった。
2匹の技が2匹に襲いかかるが、クウヤは慌てずキーリに指示を出す。
「キーリ、ひかりのかべ!」
ひかりのかべで2匹の攻撃を防いだキーリは、そのまま正面めがけてサイケこうせんを放ちレントラーを攻撃した。
「ヘルガー、ピクシーにほのおのキバ!」
「ピクシー、みがわり!」
ピクシーに対しほのおのキバで攻撃にかかるヘルガーだったが、それはピクシーのみがわりによって防がれ、さらにピクシーは10まんボルトでヘルガーを攻撃した。
「レントラー、ヘルガーをサポートだ、でんげきは!」
「ピクシー、れいとうビーム!」
でんげきはとれいとうビームは相殺しあって、はじけとんだ。
すぐにレントラーはスパークでつっこみ、ピクシーのみがわりを消した後でアイアンテールで攻撃しダメージを与える。
一方、ヘルガーもキーリにかみついてきたが、キーリも同じ技で迎え撃つ。
「なるほど・・・」
バトルの様子を見ていたナナカマド博士は、そうつぶやいた。
コウキは的確に相手の動きをみて技を指示し、ジュンの勢いの激しさをうまくサポートしている。
一方ヒカリは元々の頭の良さを使って、ピクシーの持つ豊富な技を使って攻撃と補助を使い分けている。
そして・・・クウヤはといえば。
「やはり、ほかの3人のよいところを全部持っているな・・・」
コウキの的確な指示、ジュンの勢い、そしてヒカリの攻撃と補助の使い分け・・・。
クウヤはそのすべてを持っていた。
やはり彼らより経歴が長く、今もなおレベルアップしようとしている向上心がそうさせているのだろう。
ナナカマド博士はこのバトルの行く末を見守りながら、そう考えた。
「レントラー、ピクシーにかみなりのキバ攻撃!」
「きゃ、ピクシーかわして!」
ヒカリの指示に併せてなんとか回避したピクシーだったが、二人のねらいはその瞬間のスキだった。
ジュンはヘルガーにかえんほうしゃを指示してピクシーを攻撃した。
「かえんほうしゃだ!」
かえんほうしゃはピクシーにヒットし、ピクシーは打ち上げられた。
「ピクシーッ!」
「キーリ、ねんりき!」
ピクシーはキーリのねんりきに助けられたが、かわりにキーリがかみくだく攻撃を受けて大ダメージを受けてしまう。
「あっ・・・」
「キーリ、いけるか!」
「キリリィン!」
キーリはクウヤの言葉に応え立ち上がり、彼の指示にあわせてサイケこうせんを放つ。
だがそのサイケこうせんはヘルガーが前にでたことで無効となり、かわりにあくのはどうを受けてしまう。
「キーリ!」
「レントラー、スパークだ!」
「あっ」
キーリがやられているところをみて、ヒカリはピクシーに指示を出すのを遅れてしまい、ピクシーはスパークをまともに受けてしまう。
「今だジュン、一気に決めるよ!」
「おう、スピードスター!」
そこに、2匹同時のスピードスターが飛んできて、キーリとピクシーは同時に戦闘不能になってしまった。
「・・・負けちゃった・・・」
あのとき、すぐ冷静さをかいて戸惑い、指示をやめてぱにくってしまったことを悔やみ、クウヤに謝ろうとする。
だがクウヤはふぅ、と一息ついた後で背伸びした。
「ま、しょうがねぇ・・・か!」
「えっ?」
「だってコウキもジュンも、すっげ強いもん!」
そういいクウヤはキーリに歩み寄り、お疲れさまと声をかけて労り笑いかける。
そんなクウヤの姿を見て、ヒカリはバトルの敗北に対する責任を捨て、ピクシーに微笑みかける。
「ピクシー、頑張ってくれてありがとう」
「ぴきゅー」
一方、コウキとジュンは勝利したポケモンをほめた。
「よし、よくやったぞレントラー!」
「やったぜヘルガー、サンキューな!」
「うむ、勝った方も負けた方もよくがんばった・・・実にいいバトルだ。」
「ナナカマド博士」
そこにナナカマド博士が4人の健闘をたたえながらその輪に入っていった。
「勝ったものはその勝利を誇りに思い自信をもち決しておごらずすすめ、負けたものはその敗北を決して汚点としてみることなく次の勝利に導くために努力を積め。
なによりも、君達は相手を思うからこそ全力で戦い、かつ自信を持って正々堂々戦うことができたこと・・・それだけでもじゅうぶんな成長といえよう。
その心はなにがあっても持ち続けてほしい」
「・・・はい!」
4人はナナカマド博士の言葉に、力強くうなずいた。
そんな4人の返事を聞いたナナカマド博士はふっと笑う。
「今日は実にいい勝負がみれた、おかげで君達の成長がわかった。
満足したから、私は研究所に戻る」
「あ、私も一緒にいきましょうか?」
「いや、私は一人で大丈夫だ、ヒカリはここで彼らとゆっくりするといい。」
「は、はい」
きっとナナカマド博士なりに気を遣ったのだろう、ヒカリは彼の厚意を受け取り、ナナカマド博士を見送った。
コトブキシティのカフェで、ポケモンたちとともにお茶とお菓子を口にしながら、彼らはポケモントレーナートークをしていた。
「そうだクウヤ、お前バッジゲットできたか?」
「ああ、ほらみろよ、6個あるだろ!」
「わぁ、ホントだ!」
そう言ってクウヤはバッジケースに収まった6個のジムバッジをみせた。
ジュンも、同じく6個持ってると言って、同じようにバッジを見せた。
「うわ、クウヤもジュンもすごいね!
僕はまだ5個だよ、これからミオシティに向かおうと思ってたんだ」
「へぇ、そうだったのか」
「本当は、ナギサジムに挑んで6個目のバッジを手に入れようかなと思ったんだけどね・・・」
どこか歯切れが悪いコウキ。
その様子でなにかを察したジュンはまさか、と率直にきく。
「ナギサジムにいどんで負けたのか!?」
「いやちがう」
「即答した!」
「そもそも、挑戦すらできなかったんだよ・・・ナギサシティには行ったけど立ち入ることもできなかった。」
「え?」
どういうことだ、と3人は疑問符を頭に浮かべながらコウキの証言に耳を傾ける。
「ナギサジム・・・なんか、バッジ7個持ってる人とじゃないと戦わないって言ってるみたいなんだよ」
「・・・は?」
「なんというか、このシンオウにある自分のところ以外のジムを勝ち抜いた人とじゃないと勝負したくないって・・・噂があるんだ」
「なんて破天荒な人なの、そのジムリーダーって・・・」
「んなんでいいのかよ・・・バカだろ、そのジムリーダー」
謎に包まれた、ナギサシティジムのジムリーダー。
話を聞くだけでも無駄にプライドが高く自分の実力に自意識過剰ではないかと思うほどの自信を持っていて、あまりやる気が感じられてないような印象を受けたとコウキは語った。
「ま、それだったらやっぱ7個集めてからそこに向かって、そのジムリーダーのへんてこな根性を叩き直すしかなさそうだな」
「しょーがねーなぁ」
ここでクウヤが気づいたのは、次の目的地。
ナギサジムに挑むかキッサキジムに挑むか迷っていたが、さっきの話を聞く限り、選択肢は一つしかなかった。
「・・・じゃあキッサキ決定かぁ・・・」
「あ、でもキッサキいくなら準備した方がいいよ?」
「あ、そうね」
「あ、そうだな」
「へ?」
どういうこと、とクウヤは3人に聞く。
それで彼らはクウヤはシンオウではなくホウエンの出身であることを思い出し、シンオウ地方民としての情報を提供する。
「キッサキシティは雪の町、その周辺も大雪が降っているのよ。
だから防寒装備を整えないと・・・」
「うぅーん・・・寒いのかぁ・・・寒いのちょっと苦手なんだよな」
「ホウエン育ちだから?」
「かもな」
キッサキシティ行きが決まったという話をしたら、ヒカリはそこでそうだわ、と提案を持ち込む。
「じゃあみんなでこれから、防寒着みにいかない?
確か旅のポケモントレーナー用のものがうってたはずよ!」
「お、いいな!」
「賛成!」
「じゃ、早速行動開始!」
彼らはもう、次の冒険のために動き出した。
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ポケモン小説ばっか投稿してるな…でも完結させたいからできるだけ急ぎます。