寂し芋(さびしいも)は孤独な芋で、地中深く根を伸ばして芋を作るのだけれども、あんまり深く根を張るので、他の仲間と出会うことができず、それでいつも悲劇的な味がする芋なのだ。寂し芋の焼きいもを食べると、とても美味ではあるのだけれども、どうしても涙が出てくるので、僕はあんまり好きではない。
友人が寂し芋をたくさん採ってそれで焼き芋パーティーをしようぜと言い出し、僕は嫌だったけれども強制的に参加をさせられ、寂し芋掘り会を開かされる。寂し芋を掘るには井戸を掘る用の井戸掘り器を使って掘っていくのでたいへんな力仕事なので、それは男の僕がやらされる羽目になるので結局僕一人が重労働で、友人は掘り出した芋を洗って七輪で芋を焼く係なので僕はそっちのほうをやりたいけれどもそっちは友人の仕事なのだ。
人気のない河原に行って、寂し芋の生えていそうな場所を探して草を刈って井戸掘り器をズボズボ刺して芋を掘る。あたりを付けておいたのがうまくいって、寂し芋の群生地に当たったらしくゴロゴロと採れたので、最初に頑張るだけでよくなったので後は休んでいると友人が芋が焼けたよと言い、煙を浴びてぼろぼろ泣いている友人がアルミホイルに包まれた紫色の寂し芋をこっちに差し出してくる。仕方がないので食べるけれどもやっぱり涙が出てきて、こんなに美味しいのに涙さえ出なければもっと食べるのになあと思いながら食べている。
人気のない河原はだんだん夜になって行って、七輪の火だけが明るく見え、僕は少し肌寒くなってきたので煙に当たるのも構わずに七輪の方へ近づいて行って、七輪に手をかざしながら泣いていた。下流の海の方を見ると、工業地帯の明かりが皓々と空の雲に照っていて、白い煙の明るく見えるのが遠い感じがしていた。
友人が泣きながら黙々とひたすら芋をひっくり返しているので、何か嫌なことでもあったのと聞くと、あったと言い、それ以上喋ろうとしないのでもっと突っ込んで聞いた方がいいのかどうか迷ったけれども、僕も悲しくなっているのでそんな気力は湧かず、二人でぼろぼろ涙をこぼしながら大量の寂し芋をひたすら食べていた。お酒を買って来ようかと言うけれども、いい、寂し芋の力のみで暴力的に涙を流したいというので、僕らは水だけを飲みながらひたすら寂し芋を食べている。
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オリジナル小説です