No.926802

マイ「艦これ」「みほ3ん」EX回(改1.1):第6話<やはり会場へと>

しろっこさん

ブルネイとの模擬演習になる状況に焦った美保司令は先方のイベントを潰すわけにもいかず葛藤する。

2017-10-20 00:01:41 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:608   閲覧ユーザー数:608

「はぁ、胃が痛む」

 

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マイ「艦これ」「みほちん」(第3部)

 EX回:第6話(改1.1)<やはり会場へと>

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 お祭り広場で及び腰になっている私の腕をブルネイの大将は掴んだまま、ずんずん進む。

 

彼は近くを通りかかった蒼い浴衣の女性に声をかけた。

「大淀ぉ、この方々と同じ編成で演習やるから。招集かけといてくれや」

 

「はい」

敬礼をする彼女。

 

「え? 大淀さん……」

私は自分の目を疑った。ひょっとして、この人は量産型の大淀さんか?

 

 一瞬その彼女を見つめた私……確かに面影はあるが、ちょっと美保とは雰囲気が違うような。

 

「あふっ!」

舌を噛みかけた。ブルネイの大将は一瞬立ち止まった私を再びグイグイと引っ張る。

 

(ちょっと痛いんですけど)

……口に出せない。

 

到着早々、演習なんかしないだろうと甘く見てた。だから余計、焦る。

 

それに大将はガッチリした身体で艦娘並みの力強さ。有無を言わさない気迫(迫力)まで併せ持っている。

 

(美保の艦娘たちは私を助けてくれないのか?)

そう思って振り返るが、もはや誰も圧倒されて手が出せない様子。

 

オマケにうちの金剛と夕立たちは、一応付いて来て居るようだが……。

「おえっ」

「ぽい……」

 

(あんな二人も演習に出すのか?)

万全な体調なら金剛に夕立は主力として十分な艦娘たちだ。しかし……今さら大将に『棄権します』なんて言えない。

 

 仮に、この状況下でそんなこと言ったらブルネイの全艦娘たちから総攻撃されて半殺しの目に遭いそうだ。

 

そもそも私たちの行列を見る会場の艦娘やお客さんたちの視線が期待の色に染まっている。恐らく私たちとの演習が今日のお祭りの目玉だろう。

 

(仕方ない)

私は歩きながら覚悟を決めた。

 

「こうなったら金剛と夕立には泣いて貰うしかない」

ここは軍隊、私も鬼になる。

 

「ぽい?」

不安そうに、こちらをチラッと見た夕立、そして比叡。

金剛は硬直した表情のまま。

 

 やがて演習会場と思(おぼ)しき砂浜に出た。キラキラ輝く水面。

その蒼い海を目の前にして双方の艦娘たちは手前の広い砂浜に徐々に整列していく。

 

『あー、あー、マイクチェック、マイクチェック』

 設営準備だろうか? どこかからマイクの声がする。

 

 砂浜の両側に設けられたひな壇や草むらに座り込んだ観客たちも徐々に増えていく。

 お祭り全体の高揚感が、さらに増していく感じだ。私も緊張が高まって心臓の鼓動が早まる。

 

「じゃ俺、ちょっと本部に顔を出すから失敬するぜ。ここで待っててくれや」

ブルネイの提督は軽く手を上げるとイベント本部らしいテントへと向かった。

 

 後に残された私たち。長い髪の毛をかき上げながら赤城さんも圧倒されているようだ。

「すごい盛り上がりですね」

 

確かに……美保のみならず日本でも滅多に見られない騒ぎっぷりだ。

 

淡々とした日向も腕を組んで言う。

「模擬戦とはいえ、お互い艦娘だ。このご時勢の、お祭りイベントしては最高だろう」

 

「そうねえ……」

龍田さんも、ちょっと姿勢を崩して周りを見る。

 

「内地では報道とか反対派とかイロイロ煩い面もあるけど……ここでは、そんな心配も不要なのね」

意外に客観的かつ冷静な分析をする彼女。まるで青葉さんみたいだな。

 

 私も、さっきまでブルネイ提督に掴まれて痺れの残る腕を振って言う。

「世界中の海域は、ほとんど深海棲艦に牛耳られて彼らに対抗できるのは帝国海軍の艦娘だけと聞く」

 

秘書艦の祥高さんも頷いて補足する。

「ええ、だから今までは日本近海とそこに通ずる航路だけが維持されていますね」

 

「量産化……人類の夢」

いきなり寛代が鋭い台詞を言う。だが、それは紛れも無い事実だ。その夢が今、我々の目の前にあるのだろうか?

 

 だが私は意気消沈していた。未だ、ここブルネイの様子が分からない。それに本調子でない艦娘たちを駆り出す良心の呵責。

 それでいて相手の顔を潰してはならぬ、という板ばさみ。

 

「はぁ、胃が痛む」

すると寛代が私の背中に手を当て『大丈夫?』という目で私を見上げる。

 

「有り難う寛代。大丈夫だから」

この艦娘は意外なところで支えてくれるんだよな。ちょっと気が楽になった。

 

アナウンス席を見詰めていた日向が言う。

「この実況は戦艦『霧島』……それに解説は戦艦『武蔵』だ」

 

その言葉に美保の艦娘たちは改めて遠くのテントに陣取るブルネイの艦娘たちを見た。

 

「確かに……遠くからでも彼女たちの威圧感が凄いわ」

赤城さんが呟くように言う。

 

「あれが武蔵様か。正直、私も彼女を肉眼で見るのは初めてだ」

喘ぐように私は言った。

 

(いくら量産型とはいえ何て豪華なメンバーだ?)

 

「ここブルネイは艦娘の人材が豊富みたいですね」

祥高さんも感心して言う。

 

「これって、もしかしたら帝国海軍の未来像なのかしら?」

龍田さんも不意に予言めいた台詞を言う。

 

「確かに……そんな印象も受けます!」

これは比叡だが。率直だな。

 

「もしそうなら深海棲艦に対しても十分な戦力が各地に配置できるようになるわけだな」

これは日向。相変わらず腕を組んで冷静な意見を言う。

 

(そうか。もしこれが未来像なら、わが帝国海軍の行く末はバラ色なのだろう)

 私は思わずホッとして苦笑いした。

 

(だが、それは何年後の話なのだ? そもそも、こんな未来にまで私は果たして生き残っているのだろうか?)

 

「あ、目まいが……」

 暑さと緊張と混乱。

油断すれば私自身も意識がどこかへ飛んで行きそうだった。

 

 金剛や夕立は既に地面にへたり込んでいる……可哀想に。そんな彼女達をよそに会場の盛り上がりは更に高まっている。

その間にも凛々しい武蔵様が解説を続けていた。

 

(良いなぁ、あんな強い艦娘が、うちの鎮守府にも来ないかな?)

そんな妄想をする私が半分ボーっとしているとルール説明のアナウンスが始まる。

 

それを聞きながら繰り返すように呟く赤城さん。

「負けは全滅……または旗艦の撃沈?」

 

「いや、これは演習だ。それは轟沈判定のことだろう」

思わず反応する私。

 

(そうか、それなら弱い艦娘を先頭にして、さっさと終わらせようか?)

思わず不謹慎なことを考えてしまった。

 

「いかん、いかん。反省」

私は思わず独り言を言う。

 

『では、ただ今より10分間の作戦タイムとなります』

ブルネイの霧島さんのアナウンス。

 

「作戦タイムって言ってもねえ」

私は、渋々艦娘たちを招集した。

 

 盛り上がる演習会場とは裏腹にスローテンポでゾンビの群れのような我が艦隊だ。

 

「えーっと」

あまりにも突然の状況に呆然としたままの私。

 

 目の前にいるのは魂の抜けたゾンビ艦娘が2体(金剛と夕立)

ついで元気な4人(日向、赤城さんと龍田さん、強いて言えば比叡)

 

 とりあえず、うちの鎮守府では錬度も高いメンバー。秘書艦と寛代は今回は除外。もともと戦闘タイプではない。

 

 しかし長旅と変な嵐で疲れていることに加えて一時的な受け入れ拒否で焦ったこと。

 ついでに異質なブルネイの雰囲気での半ば強引な模擬演習か。

どう見ても勝ち目は無い。

 

「はあ」

また、ため息が出た。

 

「司令、私達は大丈夫ですから」

そう言うのは日向。それに同意するように頷く赤城さんと龍田さん。ついでに比叡。

 

「そうだな」

まだ、この艦娘たちは冷静だ。この面々なら何とかなるだろう。

 

戦場とは常に修羅場だ。私も決意を固めた。

「改めて言うことはない。知っての通り演習は絶対に沈むことはない。思う存分に戦って欲しい。また相手は友軍であるが我々の知らない兵器や戦法でくる可能性もある。十分用心すること。以上だ」

『はい!』と応えた4名。

 

「精一杯やってくれ」

そうとしか言えない自分が情けない。許せ! 

 

 新兵器の気配がしたのは直感だ。

さっき感じた『未来』というキーワード。それが現実のものとなっている気がする。

 

 数分の作戦タイムは終了した。

 

実況の霧島さんが伝える。

「では提督、お互いに握手を……」

 

 再びブルネイの大将が近寄ってきた。そして互いに力強く握手をした。だが私はボーっとして成すがまま。

 

 こんな状態だから、かの大将は、また怪訝(けげん)そうな表情をしている。申し訳ない。

 

 せっかくのイベントなのに私がこんなことでは盛り下がってしまうな。反省、反省。

 

「では……演習、スタンバイです!」

霧島さんの掛け声で、砂浜から海へと向かう艦娘たち。

金剛や夕立も、艤装をつけて何とか立ち上がる……彼女たちも腹をくくったようだ。

 

 私はただ、彼女たちの後姿を眺めるだけだった。

寛代が珍しく手を振っていた。

 

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※これは「艦これ」の二次創作です。

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サイトも遅々と整備中~(^_^;)

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PS:「みほ3ん」とは

「美保鎮守府:第三部」の略称です。

 

 


 
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