No.923500

それでも太陽は赤く染まる!第11回「心の闇と桜吹雪!」

母とケンカして自分の部屋で疲れてうたた寝してだいぶ興奮がおさまったひとし。だが、気を取りなおしてそろばん塾へ行こうと部屋を出ると再び追い打ちを立てるような、母の怒りに触れてしまい・・・。

2017-09-23 18:34:46 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:921   閲覧ユーザー数:921

第11回「心の闇と桜吹雪!」

 

空腹で頭が回らなくなって昼寝さえも出来ないと考えていた時、ふいにひとしは勉強机のなかに食べかけのカロリーメイトのクッキーが入っていたことを思い出した。

なので布団から起き上がり、引き出しを開けてチーズ風味のひとかけらだけ袋に入っていたそれを取り出すとすぐに再び布団にもぐり空腹をみたすことにした。

 

しばらくすると意識が遠くなり、そのまま2・3時間くらい眠ってしまった。そして、目が覚めたときは時計の針はいつのまにか4時を回っていてそろばんに行く時間をとっくに過ぎていた。窓から差し込む日の光りはいつのまにかほんのりとした茜色に変わっていた。

カロリーメイトを食べてすぐにうたたねしてしまったせいかチーズの味が口の中に残って少し吐き気がした。

そして長い時間すねて寝ぼけてたせいか、だいぶ怒りがおさまりかけていたひとし。

ゆっくりと起き上がってふすまを開けて台所を除くと、テレビをつけたまま母の絹代もうたた寝をしているようだった。ひとしは素早く私服にフード付きのパーカーをはおり、忍び足で起こさないようにそろばんのてさげカバンをつかむとゆっくり外に出ようとした。

 

・・・が。その時タイミング悪く絹代が起きてしまい、ひとしを見つけると火がついたように「まだおったのかおまえは。さっさとそろばん行って来い、どぐずが!(# ゚Д゚)」と罵声が飛んで、それに対し再び目が覚めて怒りの火がついたひとしも「今行って来るわっ!( ゚Д゚#)」と顔を真っ赤にして玄関に向かって走って行った。

そのひとしを追うように絹代が大きな空っぽの紺色の手提げぶくろをつかんでひとしに投げつけた。

絹代「帰りに朝日スーパーでエノキダケふたつな!湯豆腐に入れるやつやで、まいたけと間違えるなよ。( ̄д ̄)」

 

マイペースな口ぶりの絹代。ひとしはもう何も反応せずに、だが無意識に手提げかばんだけはしっかりと持って外に飛び出していった。

階段を勢いよく駆け下りると出入り口で小さい男の子と手をつないだ親子連れに出会ったが半泣き状態の顔を見られたくないひとしはそのままあいさつも忘れて無視するように横を通り過ぎた。

外のすぐよこにある自転車置き場で自分の自転車をすばやく取り出すとその場から逃げるようにペダルにまたがり自転車のスピードをあげるひとし。

が・・・。いきなり花壇の方から大きな足長蜂が目のすぐ前までよぎり思わず「ふああ~~~っ。」っと甲高く裏返るような情けない声を出してバランスを崩してしまう。

ついでにちゃんと前かごに押し入れてなかったかばんと手提げ袋が弾みで地面に落ちて、一緒にそろばんと筆記用具まで飛び散ってしまった。

ひとしは後ろの親子連れやまわりを気にするようにはずかしそうな顔ですばやくそれらをかごにほうりこむと全力で逃げるようにペダルをこいで走って行った。

 

だいぶ風も強くなって団地の周りに植えられた桜の木々から粉雪のような沢山の花びらたちがひとしの身体を包むように舞ってなぐさめた。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
0
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択