リッシ湖での再会
スモモからコボルバッジを受け取ってバッジは3個になったクウヤ。
いつか再び戦うことを約束した翌日、クウヤはトバリシティをあとにした。
「えーと、スモモの話だと次のジムがあるのはノモセシティって場所らしいけど・・・」
タウンマップで場所を確認して、クウヤは自分の手持ちとともに進む。
今日は天気も良く空気もおいしく風も心地よい、外で歩くには申し分ない環境だ。
道中で遭遇したトレーナーとポケモンバトルしながら、クウヤはその道を進んでいくと、途中でリゾート地を発見した。
「うわ、建物がいっぱいだな・・・リッシ湖ってのがあるらしいけど・・・」
看板とたくさん並んでいる宿泊用の建物を交互に見て、せっかくだしちょっと覗いてみるかという気持ちでリッシ湖へ行くことにした。
「この辺にあるレストランでポケモンバトルをすると、豪華な料理が食べれるらしいな・・・そこにもちょっと挑戦しちゃおうか」
そんな気分でリッシ湖に足を踏み入れるクウヤは、その視界に、一人の男性の姿が見えた。
白い帽子と白いマントの、長身の男性だ。
「あああああっ!!」
「ん?」
その男性に見覚えのあるクウヤは大きな声をあげて、その男性に駆け寄る。
「ミクリ兄ちゃーん!」
ミクリとは、ルネシティジムの元ジムリーダーであり現ジムリーダーアダンの弟子・・・そして今はポケモンコンテストのコンテストマスターだ。
そんな彼のことを兄と呼びながら、クウヤは満面の笑顔でその人物に駆け寄った。
「クウヤ・・・クウヤじゃないか!」
ミクリも、クウヤを暖かい笑顔で迎える。
彼はクウヤのことを実の弟のようにおもっており、クウヤもまた彼を実の兄のように慕っている。
「ミクリ兄ちゃん、久しぶりだな!」
「ははは、相変わらず元気だな」
義理の兄弟はこの再会を喜び合う。
「そこにいるのが、今回シンオウで出会って仲間にしたポケモン達か?」
「ああ、そうだぜ!」
そこでミクリは、彼と一緒にいるポケモンに気がつき、クウヤは自慢げに自分のポケモンを紹介した。
「みんなで旅を続けて・・・ジムバッジもこの通り、ほらっ!」
そして彼に、これまた自慢げに自分が集めたジムバッジを見せる。
バッジケースには、彼がこれまでに手に入れたジムバッジがおさまっていた。
「もう半分か、いいペースだな」
「ああ!
でもまだ強いトレーナーはたっくさんいるし知らないポケモンもいるし・・・もっともっと頑張らなくちゃ!」
「よろしい」
彼の向上心に満ちた笑顔をみてミクリも静かにほほえみ彼の頭をくしゃくしゃとなでる。
するとそこに、別の声が聞こえてきた。
「ふふ、元気のいいポケモントレーナーですね」
「え?」
クウヤとミクリの前に現れたのは、片手に本を持ち紫の髪に眼鏡をかけたスーツ姿の長身でスレンダーな男性だった。
初めて会う人物に、クウヤはミクリにたずねる。
「あれ、この人は誰?
ミクリ兄ちゃんの知り合い?」
「ああ」
「初めまして、私はゴヨウと申します。」
「ゴヨウさん?」
「彼はシンオウ地方の四天王の一人だよ」
「へぇーそっか四天王・・・って四天王!?」
ゴヨウが四天王だと知ったクウヤはびっくりして目を丸く大きく見開く。
そんなクウヤの素直なリアクションに笑いつつも、ミクリはクウヤのことをゴヨウに紹介する。
「ゴヨウ、彼はクウヤといって、私の弟だ」
「ほう・・貴方に弟がいたとは初耳ですね」
「まぁ弟といっても、血はつながってないから義理がつくよ。」
「にしても、なんで四天王がここにいるんだ!?」
四天王との遭遇に興奮するクウヤ。
「彼がこのリッシ湖を調査するというので、その協力をしに来たのです。」
「彼は知識が豊富でね、シンオウで調べ物をするときはいつもゴヨウを頼っているのだよ」
「そうだったんだ・・・そうだ!
おれ、この旅の途中でシロナさんに会ったぜ!」
旅の中で出会ったシンオウ地方のチャンピオンのことを思い出したクウヤはその話題を持ち込んできた。
「シロナさんと・・・どうでしたか、彼女は」
「ああ、すっげぇ強かった!」
「でしょう・・・彼女はチャンピオンですからね」
「ああ・・・本当にそうだと思ったよ・・・でもおれ、いつか本気でバトルしたいんだ!
強くなったときに、さ!」
シロナと会った時のことを意気揚々と話すクウヤをみたゴヨウはさっき思いついた提案を彼に持ちこむ。
「そうだ、せっかくだし私とポケモンバトル、してみませんか?」
「えーっ!?」
「ゴヨウ!?」
突然の勝負の申し出に、指定されたクウヤ本人だけでなくミクリも驚く。
「やりたいっちゃやりたいけど、い、いいのかよ!?」
「ええ、特にそこのイーブイと」
「え?」
ゴヨウが指定したのは、なんとイーブだった。
クウヤはしゃがんで、イーブと話をする。
「なぁイーブ、ゴヨウさんがお前とバトルしたいってさ」
「ブイ」
「いいか?」
「イッブイ!」
クウヤの言葉に対しイーブはいいよ、と言うように頷き声を出す。
「イーブがいいよって言ってるから、いいぜ!」
「ふふ、ではバトルフィールドがあるのでそちらにいきましょう」
「うん!」
「じゃあ審判は私がやろうか」
「ありがと、兄ちゃん!」
クウヤはゴヨウと共にバトルフィールドに向かった。
「私のポケモンは、このキリンリキです」
ゴヨウが出したのはエスパーとノーマルを併せ持つポケモン、キリンリキだった。
「では試合開始!」
「サイケこうせん!」
「シャドーボール!」
ミクリの合図と同時に双方が技を繰り出した。
その技は衝突しあったが、若干サイケこうせんの方が勝り、サイケこうせんがイーブに襲い掛かろうとしていた。
「かげぶんしんからのでんこうせっか!」
すぐにクウヤはかげぶんしんを指示してサイケこうせんを回避、でんこうせっかでキリンリキにとっしんして攻撃に出る。
「受け止めて、ダブルアタックです」
キリンリキはそのでんこうせっかに耐えて、ダブルアタックで攻撃する。
「まだまだ、かみつく!」
ダブルアタックを受けたイーブだったが、クウヤの指示に合わせて体制を整えキリンリキにかみつく。
エスパーのキリンリキにあくのかみつくは有効だ。
「振り払いなさい」
「ぶぅい!」
「イーブ!」
だがその攻撃にも耐えたキリンリキはイーブを振り払い地面にたたきつける。
「大丈夫か、イーブ!」
「ぶぅい!」
「めざめるパワー!」
イーブはめざめるパワーを放ち攻撃に出る。
「キリンリキ、サイコキネシスです」
「あぁっ!?」
だが強力な念波に押されてめざめるパワーはかき消され、イーブは弾き飛ばされる。
「イーブ!」
クウヤは慌ててイーブに声を掛けると、イーブはあの大きなダメージを受けていたにもかかわらず立ち上がってまだ戦おうとしていた。
「イーブ・・・!?」
「・・・」
ゴヨウはこの状況でも立ち上がろうとするイーブに感心するが、イーブは一度立ち上がったように見えてすぐに倒れてしまった。
「イーブ!」
クウヤはイーブに駆け寄り抱き上げる。
「大丈夫かイーブ?」
「ぶっぶい・・・」
「気にするな、お前は良く頑張ったぜ、ありがとな。
・・・おれの負けだよ、ゴヨウさん・・・!」
そして、ゴヨウの方を向いて自分の敗北を認める。
ゴヨウも、クウヤの潔さや確実に勝敗が見えたことで試合をやめ、キリンリキにお疲れさまと声をかけてボールに戻す。
「勝負あったな、クウヤ」
「ああ、やっぱ強いな四天王は」
すぐにポケモンセンターに向かい、イーブを回復させる。
回復が終わるのを待つ間、クウヤはゴヨウに、さっきから気になっていたあることをたずねる。
「でもゴヨウさん、なんでおれのイーブとバトルしたがったの?」
「そうですね」
いきなりバトルを申し込んできて、しかも自分のポケモンを指定してきた。
四天王である彼がそんなことをするのは、なにか理由があってのことだと察したクウヤは直接、先程のバトルの意図をゴヨウ本人に聞いたのだ。
「あのイーブイには、可能性に満ちていると思ったからです」
「かのうせい?」
可能性、という言葉を聞いてクウヤは首を傾げる。
「私のキリンリキのサイコキネシスを受けながらも、それに耐えようとして、一瞬とはいえ立ち上がりました。」
「ああ・・・あれはおれもびっくりしたよ。
まさかイーブがあそこまで根性があるなんて思ってなかったから」
自分の知らない、手持ちポケモンの隠れた一面。
あのバトルでそれを見たクウヤは思い、そしてそれを言葉に出す。
「おれ、あいつのことわかってたつもりになってて、全然わかってなかったんだな・・・。」
「・・・」
「そりゃ、今いる仲間と比べたらあいつとの付き合いは短いしバトルに出した回数も少ないけど・・・。
でもおれ、時間の長い短いをを言い訳に使いたくない。
あいつはおれのポケモンだ、だからしっかりちゃんと向かい合って解らなきゃだめだな。
「・・・なるほど」
この少年は純粋に伸びしろがあり、これからさらに成長するとゴヨウはこのとき感じた。
そして、そんな彼の手持ちにイーブイがいることに関しても、これはどこか偶然ではないとも感じていた。
「イーブイには幾つもの進化の可能性を持ったポケモン。
だけど、進化とは別のものをこの子からは感じますね。
あのバトルで、それを感じました。」
「・・・幾つもの進化の可能性・・・」
クウヤは回復マシンに置かれているイーブのモンスターボールを見た。
イーブは今はボールの中でぐっすり眠り、休んでいる。
「今後も真剣にあの子と向き合うと決めた君なら、その可能性を引き出せると私は思います。
ですのでなにに進化させるかは、自分で考えて決めるといいでしょう」
「・・・ああ!」
彼の言葉にしっかりと頷くと、プロレスラーのような恰好の体格のいい男が声を掛けてきた。
「いやぁさっきのバトル、お見事だった!」
「え?」
「四天王が相手でも怯まずに勝負を受けて立つ姿勢、気に入ったぞ!」
誰だろうこの人、とクウヤが首をかしげているとゴヨウが彼を紹介した。
「彼はマキシさん、ノモセシティジムのジムリーダーです」
「ジムリーダー!」
四天王だけでなくジムリーダーにも遭遇してクウヤは驚く。
しかも一番驚いたのは、彼がジムを受け持っている町の名前だ。
「ってゆかノモセジムって今おれが目指している次のジムじゃん!」
「ほーう、そうだったのか!
よし、挑戦を受けよう、名前はなんだね?」
「おれはクウヤってんだ!」
「ではクウヤくん、私はノモセシティのポケモンジムで待ってるぞ!」
「おぅ!」
「では、さらばだ!」
クウヤに背を向け、マキシはノモセシティに帰って行った。
「今回はこれでいいですか」
「ああ・・・これで十分だ」
イーブの回復が済んだころ、ミクリはゴヨウからなにか資料を受け取っていた。
どうやらそれが、ゴヨウの手伝いの内容らしい。
「では、私はそろそろ失礼します。
またなにか知りたいことがあれば、何時でもご連絡ください」
「ああ、頼りにしているよ」
ゴヨウとミクリは握手をした。
彼と手を離したあとでゴヨウはクウヤの方を向く。
「ではクウヤくん、今度はリーグで再び会いましょう」
「おう!
絶対にリベンジをしにいくから待ってろよ!」
「ええ、楽しみに待っていますよ」
ゴヨウはクウヤと握手を交わしながらいつかの再戦を約束し、そこを去っていった。
「それにしても、ここで兄ちゃんとか四天王とかジムリーダーに会うなんてな。
もしかして、リッシ湖ってなーんかわけありのなんかがあったりするのか?」
んなわけないか、とでも言いたげに頭の後ろで腕を組み白い歯を見せて笑うクウヤ。
「鋭いな、クウヤ」
「え、まじなの!?」
「ああ」
ミクリはリッシ湖に視線を向けた。
その水は透き通っていて空の色をそのまま湖面に写し、静かに揺れ日の光で煌めいていた。
「ここには、伝説のポケモンがいるといわれているんだ」
「伝説のポケモン・・・?」
「そのポケモンは、強い志を持つものにのみその心を開き自信にふれることを許すと伝えられている」
「つよい・・・こころざし・・・」
クウヤの脳裏に浮かんだのは、自分の友人であり好敵手でもある少女の姿。
彼女はどんなときでも自分の意志を貫き通してきた。
「シンオウ地方にはこのリッシ湖の他に二つ、同じものが眠っているという。
シンジ湖には感情を与えるものが存在し、リッシ湖には知恵を授けるものが存在すると言われている」
ミクリは淡々と3つの湖の伝説を語るが、クウヤは微妙についていけず頭を抱えた。
「うぅーん、よくわかんねぇや・・・。」
「ふふ、まぁじっくり覚えればいいさ。
それより、クウヤはこれからノモセシティを目指すのだろう?」
「ああ!」
「では、早速向かうとしよう」
「・・・へ?」
なぜミクリが自分を誘導するのだろう、と戸惑うクウヤの心情に気づいたのかミクリはふふと笑いつつ彼に向かって言った。
「次のジム戦、ノモセジムは私と同じ水のエキスパートということで、実力をじっくりみさせてもらうよ。」
「えーっ!?」
ミクリは、クウヤの試合を観戦するつもりだ。
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クウヤと彼の関係はRSEの小説書いているときに突然思いついたものです。