第8回「恥さらしの人生!」
そんなこんなで校歌を合唱してその後、定番の新入生たちと向き合ってお互いあいさつしたりすると、式はあっけなく終わった。
だが、教室に新しい2年の教科書とカバンを取りに行った帰り、ひとり土間の所でひとしが虚ろな目でくつを履き替えているとふいに担任の山岡先生に「服部~。」と肩を後ろからぽんとたたかれ呼び止められた。
急な声かけに何を返していいのか分からないひとしはただあわてて目を白黒させるだけだ。
山岡、ひとしの動揺など少しも気にもせず、威圧的で軽蔑じみた視線を向けると・・・。
山岡
「今年はどべにならずにちゃんと勉強しろよ。お母さんに心配かけるな!」
どべとは成績学年順位で一番最後と言うこと。僕が勉強できなくて頭悪いこと全部知っていたんだ。
ひとしはかあ~っと顔が熱くなる。それに気にせず山岡は冷静に続ける。
山岡
「それから、テストは隠さずお母さんたちにちゃんと見せなさい!結局見つかって最後に恥をかくのはおまえなんだから!」
ひとし
「は・・はい!Σ(゚Д゚)」
強い口調の説教じみた言い方にただ返事をすることしかひとしは言葉が見つからなかった。
山岡
「勉強が分からなかったら分かるまで聞け!親しいやつの1人や2人くらいいるだろ。小学校から一緒のやつがたくさんいるんだから。おまえ転校生じゃないだろ!」
ひとし
「は・はい・・・!(>_<)」
少し涙目で返事のテンションがおちるひとし。それを見て山岡がひとしの背中をかるくぽんぽんたたくと急に笑顔になって・・・。
山岡
「もう2年生なんだから遊んでばかりいないでしっかりしなきゃだめだぞ~。わからない教科があったら私が沢山プリント作って渡してやるから・・・。後はお前がどうするかだ。頑張れ!」
とどめを刺すような言葉で今年1年はお先が真っ暗であることを悟ったひとし。絶望的です。
ひとし
「はい・・・。ちゃんとします!(>_<)」
ひとしの心にじわりと汗ばむように緊張の熱がこもる。風が吹くたび上空からシャワーのように身体にまとわりついてくる桜の花びらがものすごくわずらわしかった。
新学期だというのに、久しぶりの学校だってのに、いろいろな事がありすぎてひとしは頭の思考回路が機械音のように落ち着かない。
そして山岡に言われっぱなしのまま、ほかの校外でにぎやかな生徒たちの無邪気なはしゃぎ声のするなか唇を噛みしめひとしはひとり学校を後にした。
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時間の流れに身を任せるように気分の乗らないまま、ひとしの新学期の1日が終わろうとしていた時、下校時の靴箱で、そんなひとしに追い打ちをかけるように背後からゆっくりと忍びよる影が・・・。