誰もいない炎天下、陽炎が揺らめきながら独りの少年が砂漠の中歩いていた。
沢山の荷物を詰め込んだ緑色のリュックを背負いながら、一歩一歩ふらつきながら砂の上を歩く、少年の体力は限界に近かった。
すると砂漠の蜃気楼の中に木が見えた、近づくたびに徐々に木の本数が増えていく、気が付くと砂漠の中に森林があった。いわゆるオアシスだ。少年は驚いた表情と同時に助かったという安堵の気持ちで、オアシスの中を進んだ。
地面には緑色の草、無数の木が生えていて、小さな川がチョロチョロと流れていた。樹木の木漏れ日が指す中、水分補給を終えた少年はほっとしたのかぐったりと木に背もたれに寄り掛かった。
砂漠であるはずも無いオアシスがある、そしてそのオアシスには神がいるという噂を旅先で聞いたのを夢で思い出していた。
いつの間にか眠ってしまったらしい、さっきまで炎天下の昼間だったのにすっかり昼間の熱は冷めて、涼しい風が吹く夜になってた。少年は小腹がすいたのか食べ物をキョロキョロと探し始める、すると「お腹空いてるの?だったら近くに林檎の木があるよ」少年の隣から声がした。
ふと、少年はビックリしまたキョロキョロする。そして林檎の木を見つけ腕いっぱいに林檎を抱えてさっきいた場所に座った。ランプを照らし無心に林檎をかじっていると「ねえ、君、旅をしてるの?いいなー楽しそう。」また声がした、少年は辺りを見回すが誰もいない。
もしかして幽霊かと冷や汗をかいた時に「ここだよ!ここ!」少年は、ハッとして木の根元を見る。小さな樹の苗が葉を揺らして喋っている。「やっと僕を見てくれた!」樹の苗は嬉しそうに喋り続けている、少年は見てはいけないものを見てしまった様に樹の苗から離れ始める。
「ねえ!聞いてる?なんで離れてるの?もう遅いからここで寝なよ」ハキハキと喋る樹の苗に驚きながらも言われるがまま、元の場所に戻り少し寝た。
気が付くと空は明るくなり鳥の鳴き声が響いていた、少年は寝ぼけながらゆっくり体を起こすと、隣に樹の苗があった。
そして昨日の喋る樹の苗の事を思い出し、荷物をまとめその場から逃げようとした。「おはよう!もう旅に出るの?もうちょっとゆっくりしなよ」相変わらず突然しゃべりだす樹の苗に驚くも、何度か驚いたのか恐怖心は少しずつ消えていった。
「あ、あの・・・君は誰?」少年は恐る恐る樹の苗に話かける。樹の苗はキュッと自分の方に向きを変え「やっと話しかけてくれたね!有難う!嬉しい!」とまた葉を揺らしながら喋る樹の苗。礼を言われ少年も「林檎の木の事教えてくれて有難う」と恥ずかしそうに言う。
昨日摘んだ林檎を朝食代わりに食べ、残った林檎3つを大きなリュックに詰める、出発する支度をしていると「ねえ、良かったら僕も旅に連れて行ってよ!」予想外の事を言い出す樹の苗に少年はビックリする。「僕ね、ここから出てもっと色んな世界を見てみたいんだ!キミは旅人なんでしょ?」嬉しそうに話す樹の苗。
「連れていくってどうやって?どうして?なんで自分が?」次々と疑問が湧く少年。「うーん・・・じゃあ知恵を貸してあげる、君が旅先で困ったときに知恵を出してあげるよ!」少年の質問に答えない樹の苗。
樹の苗が砂漠を超えた隣町まででいいからと言い、少年は渋々答える。樹の苗の指示で林檎の木の裏に小さな植え鉢を見つけると土と樹の苗を入れる。
樹の苗が植えてある植え鉢を両腕に抱えて、再び旅に出る。またこの猛暑の砂漠を歩なくちゃいけないのかと億劫になる。そして覚悟を決めたように一歩歩き出すと「ねえ待って!!砂漠歩く気なの!?無理だよ!オアシスから隣町に行ける道があるからそこから行こうよ」樹の苗が閃いた様に提案する。
「そういうことは早く言ってよ・・・!!」少年が飽きれた様にツッコミを入れると、トボトボと歩き出し、オアシスの奥にある隣町に通じる道に向かう少年と樹の苗。
こうして不思議な旅が始まるのであった。
2話につづく
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初の創作小説作品です。文章が読みにくかったり等あるかもしれません、ご了承ください。
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