No.919200

真・恋姫†無双~黒の御使いと鬼子の少女~ 45

風猫さん

真・恋姫†無双の蜀√のお話です。

オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話なので、大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。


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2017-08-20 01:54:17 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:897   閲覧ユーザー数:859

 城から抜け出した俺は元の場所へ戻る前に見知った姿を見つけた。

 

「趙雲!」

「玄輝殿、ご無事か?」

「……ああ」

 

 そしてその後ろには鳳統と張飛を除いた面々と、緑髪の少女。

 

「ゆ、月っ!!」

 

 俺が抱えている少女を見て、顔を青くしながら駆け寄る少女。その少女に渡すように助け出した少女の体を預ける

 

「月! しっかりして、月!」

「気絶しているだけだ」

「っ! あんた、月に何かしたの!?」

「……ああ、俺が気絶させた」

「アンタ!」

 

 と言ったところで、俺の手に握られている赤い布に目が行く。

 

「……ね、ねぇ、その布は、何?」

「……セキトのことを知っているのか」

「ちょ、ちょっと待ってよ。なんであんたがセキトの首の布を持ってるのよ? あの子、お風呂に入れる時でも絶対外したりなんてしないのよ? そ、それをなんで!」

 

 こいつにも、セキトの事を話すべきか。

 

「……こいつを守るために、矢に射抜かれた」

「っ! じゃ、じゃあセキトは……」

「…………すまん。最後の最後で気を抜いた俺のせいだ」

 

 その言葉に、少女の目から涙が溢れ出るが、彼女はそれを流すことをせず、袖でふき取る。

 

「……別にいいわ。セキトは、自分から月、この子を守ったんでしょ?」

「ああ」

「なら、いいわ。でも、いつかその話を飼い主、いえ、家族にしてあげて」

「そのつもりだ。何があろうが、必ず伝える」

 

 俺はセキトの布をもう一度、力強く握りしめて再び決意をする。

 

「で、お前の助けてほしい少女はこの娘でいいんだな?」

「ええ。間違いないわ。でも……」

「別に情報は目が覚めてからでも構わん。今はそれよりもしなければならないことがある」

 

 そう言って俺は趙雲へ視線を向ける。

 

「……何か変わったことはあったか?」

「いえ、特段ありませぬ」

「……そうか」

 

 それだけ返して、一緒に来ていた劉備たちに話を振る。

 

「劉備、休憩の時に話していた董卓の件だが……」

「あ、玄輝さん、そのことなんだけど……」

 

 そう言って彼女は俺の後ろにいる少女二人に視線を向ける。

 

「実は、その、そこにいる女の子がそうみたいなの」

「……なんだと?」

 

 そう言って緑髪の少女に視線を向ける。

 

「……あの緑髪の方か?」

「ううん、気絶している方が董卓ちゃんみたいなの」

「なん、だと?」

 

 思わず後ろに振り返っていまだ気絶している少女に視線を向けえる。

 

「あれが、董卓?」

 

 だが、今思い返せば分からなくもない。脱出するまでの短い時間の中ですら分かるほど、彼女は優しい人間だ。こちらが抱いたイメージに近い性格に思える。

 

「そうなると、あれが賈駆か」

「うん」

 

 成程。色々と納得がいった。だが、だとすれば妙なことがある。

 

(白装束は董卓を何に使う気だったんだ? 何に捧げる気だったんだ? 何より、なぜ負けるまで何も手を出さなかったんだ?)

 

 いくつも残る疑問。だが、それは董卓自身が目を覚ましてから聞くべきだろう。

 

「で、どうする劉備? あれを実行するのか?」

「え? あ、うん……」

「……どうした?」

「そ、その、玄輝さん何かあったの?」

 

 ……そうか。今の俺はこいつらといた俺じゃないか。

 

「……別に。元に戻っただけだ」

「元に……? それって」

「今は目の前の人間を救うことを考えろ。こいつらを救える人間は、今はお前しかいない」

「……うん!」

 

 その言葉に覚悟を決めたような表情になって賈駆に近づいて、同じ目線になるようにしゃがむ。

「えっと、さっきも自己紹介したけど、一応。私は劉備玄徳、幽州を治める者です」

「……僕たちを、捕らえるの」

「うん。でも、連合軍に渡す気はないよ」

「っ? 本気で言ってる? 大体そんなことをしたら、アンタたちにどれだけの不利益があるか……」

「だからって、私たちはあなたたちを見放したくはないの。だって、あなたたちは巻き込まれただけだもの。それに、私たちは白装束の人たちの情報も欲しいの」

「……でも、どうするつもり? 連合軍は間違いなく地の果てまでも僕たちを追い詰める」

「うん。だから、二人には死んでもらうの」

「っ!」

 

 その言葉に全身を強張らせる賈駆。それを見て劉備が慌ててその真意を説明する。

 

「あっ! まって、ちょっと待って! えっと、その死んだことになってもらうの方が正しいの!」

 

 その言葉を聞いた賈駆は怪訝な表情になる。

 

「……僕たちをアンタたちが討ったことにでもするつもりなの?」

「うん、そうだよ。でも、いくつかあなたたちに聞きたいことがあるの。まず、あなたたちの顔を知っている人間ってどのくらいいるの?」

「……ごく少数よ。この連合の首謀者の袁紹や袁術にも素顔は見られてないわ。せいぜい背丈くらいかしら」

「背丈かぁ……」

 

 その言葉に劉備が眉根を寄せて唸り始める。まぁ、そうなるのも無理はない。

 

 何せ、董卓は背が低い。張飛より少し背が高いくらいだ。それに近い身長の者を用意するのはかなり難しい。尚且つ、命まで奪う相手となればほぼ皆無だ。

 

「桃香さま、背丈ぐらいでしたら問題はないと思いますよ」

 

 だが、そこへ助け舟を出したのは孔明だ。

 

「朱里ちゃん、それ本当?」

「はい。むしろ、背丈ぐらいしか見られていないのであれば、影武者だったということにしてしまえば問題ないかと。董卓さんの悪評を利用すれば“幼い少女を影武者に仕立て、自分は賈駆と共に安全なところに隠れていた”という話も付け加えれば信憑性はかなり高まるはずです」

 

 なるほど。確かに民に暴虐と恐怖を振りまいた悪の権化のような人間であれば、影武者を用意して自分だけ安全な場所にいるのも頷ける。

 

「そうだね。じゃあ、朱里ちゃんの意見を採用、するのはいいんだけど、影武者さんをどうするかだね……」

 

 ……時間の無駄だな。そう思った俺は一番手っ取り早い方法を提示する。

 

「……なら、適当な死体を俺が見繕ってくる」

「え、でも……」

「死人は何も言わん。それに、申し訳ないというのであれば体だけでも連れ帰って家族に理由を話せばいいだろう」

「そ、それはそうかもしれないけど……」

「他に何かいい手があるか?」

 

 そう言って孔明を見ると、彼女は一瞬だけ体を強張らせた。しかし、一度目を閉じて心を落ち着けたのか、口を開いた時にはいつもの孔明に戻っていた。

 

「そうですね。確かに玄輝さんの手は有効だと思います」

「ならば文句はないだろ」

「ですが、そんな手ごろな死体はここにはありません。まさか、作るおつもりではないでしょうね?」

「……そんなわけがあるか。純粋にさっきまで白装束を斬っていたせいだ」

 

 感覚的に近くに死体がある気がしていた。斬ったのは式神だけだというのに。

 

「玄輝さん、白装束と交戦を……?」

「ああ。それについては後で皆に話す。今は影武者をどうするかだ」

「……仕方ありません、ここは髪を使って」

 

 と、孔明が策を出そうとした時だった。

 

「ぐもぅ!」

 

 空からす巻きにされた男が降ってきたのは。

 

「は、はわわぁああああああああああああああ!?」

「落ち着け孔明!」

 

 よく見ると、ご丁寧に猿ぐつわまでされている。と、体を縛り付けている縄に手紙が挟まっているのに気が付いた。

 

 その手紙を抜きとり、広げてみると、流暢な字でこう書かれていた。

 

“私からのプレゼントよぉん。他の世界での極悪人だから、遠慮なく影武者に使うといいわぁん。あと、あの犬はあなたに任されたようにしておいたから、心配しなくていいわよん”

 

「……そうか」

 

 誰にも聞かせるつもりがないつぶやきをして、俺はその手紙を懐にしまう。

 

「あ、あの、玄輝さん、その手紙は……」

「俺の知り合いからの贈り物だそうだ。影武者にでも使えって手紙だ」

「で、でも」

「そいつによればこいつは極悪人だから気にするなってことだ」

 

 まぁ、こいつにも言い残したいことはあるだろう。とりあえず猿ぐつわだけでも外してやる。

 

「我を誰と心得る! 我は新皇、平将門ぞ!」

 

 なるほど。確かに極悪人だな。

 

「たっく、何て奴よこしやがるんだ、あいつ」

「聞いておるのか! ぬし、ただでは」

「黙れ」

「ぐっ!」

 

 俺はできる限り血が飛び散らないよう、心臓めがけ刀を突き刺し、それをひねる。すると、す巻きにされた男はそのまま一言も発することなく息絶えた。

 

 しかし、その様子を見ていた本郷は青ざめた表情で屍となったその男を見ていた。

 

「な、なぁ、玄輝。今、平将門って……」

「気にするな。気味が悪いなら袁紹にでもくれてやれ」

「……その方が、いいかも」

 

 こうして、俺たちは影武者の影武者を手に入れた。これで袁紹にでも首級を渡せば、と思っていた時だった。

「ご、ご主人様ぁ~~~!」

 

 鳳統が大きな声を出しながら張飛と駆けこんできたのは。

 

「ひ、雛里? どうしたの大声なんて出して……」

「た、大変でしゅ! え、袁紹さんと袁術さんが都に、入ろうと!」

「えっと、一回深呼吸して。はい、すぅー、はぁー」

「すぅー、はぁー」

 

 北郷の後に続いて深呼吸したおかげか、鳳統がいつものような雰囲気で報告をする。

 

「袁紹さんと袁術さんが都の一番乗りを狙って、半ば暴走気味に都に押し入ろうとしているんです!」

「なんだって!?」

「こ、このままだと、都の人たちに被害が……」

「いや、これは好都合だろう」

 

 俺のその言葉に全員が驚いた顔をする。

 

「……言っておくが、住民に被害が及ぶ方じゃないぞ。影武者の首を見せつけるには、という意味だ」

「そ、そうだよね……」

「とりあえず、この首をくれてやるから失せろとでも言えば都での暴走はある程度抑えられるだろう」

 

 奴らが欲しいのは目に見える評価だ。その先のことなど考えられない脳みそしかない袁紹には董卓の首はかなり効果があるはずだ。

 

「でも、その首をめぐって袁紹と袁術が争ったりしないかな?」

「それは知らん。だが、少なくとも興味は都から移るはずだ」

「……そうだね。じゃあ、首を使って二人と交渉して暴挙を止めるってことで、桃香もいい?」

「うん!」

 

 方針を決めた俺たちは鳳統と張飛を加えて自軍のところへ戻る。

 

 門のところまで戻ったところで、両軍はもはや都の目と鼻の先まで来ていた。

 

「よし、朱里。まず袁紹さんに使者を送るように指示を。いったん冷静になってもらう方法は何かある?」

「そうですね。一度、兵隊さんに袁紹さんたちの前で目の前で武器を持たないで横一列に整列してもらいましょう。そうすれば、足は止めてもらえるはずです。あと、董卓さんを討ったことを話してしまうと、間違いなく目先の欲に囚われてしまうでしょうから、それ話さないように兵に徹底させる、といったところでしょうか」

「よし、じゃあそれでいこう。すぐに指示を。董卓さんの首は準備できてる?」

 

 北郷はそう鳳統に話しかける。対し、鳳統は小さくうなずいて肯定の意味を示してから、言葉を口にする。

 

「化粧の方もほぼ終わったようです。でも、どうしても目が閉じられないと……」

「あ~、うん。それは無理に閉じなくてもいいって伝えておいて」

「? 御意です……」

 

 若干不思議そうに首をかしげながら鳳統はその指示を死に化粧をしている人たちへ伝えに行く。

 

「……ねぇ、玄輝。あの首、こっちに来るかな?」

「知らん。来たところで撃ち落として灰にでもしてしまえばいいだろう」

「……なんか、それをしたら疫病が流行りそう」

「なら、首が来たら神として扱うか?」

「菅原道真みたいに?」

「ありゃ首は切られてないだろうが。島流しだろ」

 

 まぁ、恨みやら祟りやらで神に祭り上げられたってのは変わらんが。

 

「さて、そろそろ頃合いだ」

「うん」

 

 袁紹、袁術軍がこちらの兵に気が付いてその足を止める。すかさず使者が躍り出て、袁紹、袁術へのお目通りを願う。

 

 少しして、使者から許可が出たという事なので、北郷と劉備、そして孔明が二人の元へ首を持って行った。

 

(さて……)

 

 この話し合いが終わった後は白装束の事を話さなければならない。どうやって説明するか、なんて考えていた時だった。

 

「玄輝殿」

「……なんだ、趙雲」

 

 趙雲が真剣な面持ちでこちらに話しかけてきた。

皆さん、どうもおはこんばんにちは。作者の風猫です。

 

ふぅ、そろそろ董卓編も終わりそうで一安心してる作者です。

 

そういえば、土曜日の夜なんですけど、私の家の近くではものすごい落雷の嵐が……

 

もう、ビカビカと何度も光っては轟音が鳴り響いて正直、初めて雷にビビりました。

 

地震雷火事親父とはよく言ったものですね……

 

と、こんなところでまた次回。

 

誤字脱字等があったらコメントで言っていただければと思います。

 

では。

 


 
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