No.915973

真・恋姫†無双~黒の御使いと鬼子の少女~ 40

風猫さん

真・恋姫†無双の蜀√のお話です。

オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話なので、大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。


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2017-07-28 00:32:11 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1033   閲覧ユーザー数:965

~洛陽~

 

「……っと」

 

 俺は城壁を単独で登り切り、そして誰にも見られることなく洛陽の中へと侵入できた。

 

(さて、趙雲たちはっと)

 

 上からばれないように皆を探すと、すぐに見つかった。

 

 極力音を立てずに下に下り、趙雲たちの元へ駆けだすと、向こうも気が付いたようで、小さく手を上げる。

 

「すまん、俺が最後か」

「いや、さして変わりませぬ。それより、どうやって探るおつもりで?」

 

 今潜入しているのは俺と趙雲、そして兵士が6人。

 

「そうだな、兵を2分して、東を1番隊、西を2番隊、中央を俺と趙雲でどうだ?」

 

 これなら戦力的にもどうにかなるし、目も足りるはずだ。

 

「集合は?」

「一刻後でいいだろう。もし、何かあったら、一人が集合場所に戻ってそのことを皆に告げるってところでどうだ?」

「……ふむ、妥当ですな」

 

 少しだけ考えていた趙雲がそれに賛同する。

 

「それに、私と玄輝殿であれば恋人にも見えましょうからな」

「ぶふっ!?」

 

 こ、こいつ……!

 

「お、お前!」

「玄輝殿。お静かに」

 

 ぬぐっ! 確かに今は潜入中、下手に大声は上げられんか……。

 

「……後で覚えてろよ」

「持ち帰った情報に埋もれてなければ」

 

 ……帰ったら秘蔵のメンマの場所、バラしてやる。そう心の奥で誓った俺はさっきまでの嫌味な笑顔を浮かべていた趙雲と共に洛陽の中へと静かに潜り込んでいった。

~洛陽・内部~

 

(……今のところは特に異常なしか)

 

 街中は静かと言えば静かだが、おかしい様子はない。

 

「ふむ、静かですな」

「ああ」

「こうも静かでは裏道でまぐわってもすぐにバレてしまいそうですな」

「まったくっておい!」

 

 こいつ今変なことをサラッと入れやがった!

 

「玄輝殿、今は潜入中なのですぞ? もう少し静かに……」

「お・ま・え・の・せ・い・だ・!」

 

 なんて会話をしているときの事だった。

 

「……あ?」

 

 視界に、白が一瞬映り込んだ。

 

「玄輝殿? どう、」

 

 趙雲の言葉が終わるより前に駆け出していた。

 

 白がもう一度目に入る。路地裏へ入っていった。それを追う。そして、その背中を、見た。

 

「……………あ」

 

 目の前にあるのは、洛陽の路地裏だ。だが、俺の視界に移っているのは、あの日の赤い世界にいたあいつらの背中。白装束で全身を包んだ、俺が殺すべき敵。

 

 その姿を完全に認識した瞬間、俺を今まで抑えていた枷が外れた音がした。

 

「あ、あ、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!」

 

 激高の叫びと共に斬りかかる。相手は三人だが、そんなのは関係ない。白装束の一人が振り返るよりも早くその体を袈裟に両断し、左手を一度放してから刃を上に向け、再度握った瞬間に落ちる体ごと二人目を貫き、刀を上に振り抜く。そして、振り抜いた勢いのまま三人目を上から下へ切り裂くが、即死には至らず、かと言って助けられはしない程度の傷を負わせ、その胸倉を掴んで壁へ叩きつける。

 

「答えろ。お前らの目的はなんだ?」

「…………」

「だんまりか」

 

 俺は迷うことなく刀を鞘に戻して、苦無型の暗器を抜いて、それを白装束の太ももに突き刺し、思いっきり捻る。

 

「……っ!」

「痛いだろ? 素直に目的を言えば楽にしてやる」

「…………」

 

 まだだんまりか。ならば。

 

 と、次の拷問をしようとした時だった。

 

「無駄よ。そいつら、何にも話さないわ」

「あん?」

 

 後ろを振り向けば、そこには緑の髪の少女がいた。

「てめぇ、何モンだ?」

 

 こちらの視線に一瞬怯むが、すぐに怯えつつもこちらを睨めつけて返事を返す。

 

「ま、まず自分から名乗りなさいよ!」

「名乗って何になる? それに俺は名前を聞いてるんじゃねぇ。お前は何者だって聞いてんだよ」

「っ!」

「この白装束に守られてるってことは、何かしら深い繋がりがあるはずだ。それを教えろって言ってんだよ」

 

 その言葉に驚きの表情を見せる少女。

 

「アンタ、こいつらの事を覚えてるの?」

「ンなことはどうでもいい。こっちの質問に答えろ。お前はあいつらとなんの繋がりがある?」

 

 その言葉に彼女は一瞬だけ考えるそぶりを見せて、返答を返した。

 

「……繋がりはないわ。利用されただけよ」

「チッ、何か情報は持ってないのか?」

「……あるといえばあるわ。でも、ただでは言わない」

「ほぉ……そんな取引をする余裕があるのか?」

 

 そう言って刀の切っ先を向ける。だが、少女は臆しながらもその切っ先へ自ら向かってくる。

 

「別に斬りたかったら斬ってもいいわよ。でも、あんたは貴重な情報源を失うことになるわよ」

「はっ! お前のどこが貴重な情報源なんだ? 利用されていただけの人間なら既にこちらにいる。その程度では情報源になりはしない」

「すでにいる……?」

「華雄だ。奴はこちらで預かっている」

「華雄、生きてたのね……」

 

 それに彼女は安堵の表情を見せる。だが、それはすぐに真剣なものへと変わる。

 

「……でも、私はそれ以上の情報を持っている人を知っているわ。奴らの目的もおそらく聞いてるわ」

「……なるほど。つまり、それがお前の言う貴重な情報ってわけか」

 

 確かにそれは貴重な情報だ。目的が分かっているということは“シン”についても少しは分かるかもしれない。

 

「……いいだろう。で、何をすれば教えてくれるんだ?」

「……その人を助けて」

「何?」

「その人は、ううん、その子は今あいつらに別の場所へ連れてかれてる。多分、目的地に着いたら、命はない」

「……口封じか」

 

 小さくつぶやいたのだが、彼女には聞こえていたようで、首を横に振る。

 

「ううん、違うわ。何かに捧げられるのよ」

「捧げる? 何にだ?」

「……それは助けたら話してあげるわ」

 

 チッ、まぁいい。

 

「で、そいつは今どこにいるんだ」

 

 そう少女に聞いたところで趙雲が路地裏に入ってきた。

 

「玄輝殿、いかが」

 

 そこで趙雲の言葉が止まる。

 

「……なんだ、趙雲?」

「……玄輝殿、か?」

「……誰に見えるんだ、お前は?」

 

 その言葉に、表情が固まる趙雲だが、首を振って途切れた言葉の続きを口にする。

 

「何があったので?」

「白装束に囲まれた女を保護した。で、貴重な情報を持っている奴の救助を依頼されたところだ」

「白装束が?」

 

 そう言って趙雲が周囲を見渡すが、怪訝そうな表情で質問をしてくる。

 

「……どこにいるので?」

「……なに?」

 

 俺も周囲を見渡したが、いない。白装束の死体どころか血すらも消え去っていた。それに、さっきまで苦しめていたはずの生き残りすらも消えていた。

 

「ばか、な……」

 

 あの感覚が幻? いや、それこそあり得ない。間違いなく斬った。血が飛び散るのも、それが壁に当たった音も間違いなく聞いた。

 

「……本当に覚えてるのね。正直、私もあんたが斬ったのを忘れてたわ」

 

 そう言って少女は俺に近づく。

 

「お願い。あんたにしかあの子は助けられない。あいつらの事を覚えられているあんたにしか」

「…………」

 

 真剣な表情でそう言う少女。俺は一度目を閉じ、深呼吸をして開いた。

 

「いいだろう、助けてやる。で、今その娘はどこにいる?」

「……多分、まだ城を発ててないと思うわ。他の人質、って言っていいのかしら? まぁ、それが逃げ出したってさっきあんたが斬った奴らが言っていたから」

「なるほど」

 

 それを確認した俺は城へと視線を向ける。

 

(城まで目測で7町、いや、8町【約900m】か)

 

 すぐにでも行かなければ間に合わんな。

 

「趙雲、すぐに外のやつらに知らせてこいつを保護しろ。俺は城へと向かう」

「……今の玄輝殿にはそれを任せられませんな」

「あ?」

 

 そう言って趙雲の方へ視線を向ければ、若干寒気すら感じるような真剣な目で俺を睨んでいた。

 

「……じゃあどうする? お前が行くか?」

「それもいいかもしれませんな」

 

 ちっ!

 

「くだんねぇ問答している時間が俺には惜しいんだが?」

「ふむ、だが生憎、私からすれば下らぬ問答ではないのですよ」

 

 ひょうひょうとした口調は変わらないが、その言葉の中には冷たいものをひしひしと感じられる。

 

「……何が言いたい?」

「いや、このままだと犬死しそうなのでな。それは看過できんと」

「はっ! その程度の事か?」

 

 その言葉に一瞬趙雲の表情が固まる。

 

「あれだろ? 復讐に目の眩んだ奴の末路とかそんな話だろう? 生憎、そんな話は師匠からさんざん聞かされてんだよ」

 

 そう、俺に剣を教えた師匠は何度も何度もそれを厭味ったらしく言い続けた。

 

「さしずめ、俺がそれに激高すると踏んでいたんだろうが、そいつはもう“し飽きた”」

 

 さっきは久方ぶりに枷が外れたから、加減を間違えた。だが、もう問題ない。完全にいつもの俺を取り戻した。

 

「教えてやるよ。今お前の目の前にいるのは復讐に囚われた人間じゃねぇ。復讐が人の形をしているだけだ」

 

 それだけ言って俺は趙雲から視線を外して城へと駆けて行った。

 

(ああ、この感覚だ。力が漲る、血が燃える、脳が焼け付いて、すべてが“研ぎ澄まされる”)

 

 久しぶりの”感覚”と”歓喜”に打ち震えながら俺は駆けた。ああ、ようやくあいつらの影を掴んだ、と思いながら。

みなさんおはこんばんにちわ。作者の風猫です。

 

さて、みなさん、本日7/28は恋姫無双の新作の発売日です! 皆さんはどうですか? 買いましたか?

 

作者は……

 

買ってないっすorz

 

いや、だってあの終わり方だったら自分、きついですよ……

 

というのと、FGO(フェイトグランドオーダー)の水着ガチャに全力を傾けてしまいまして……

 

まぁ、いわゆる金無しってやつです。

 

……いつかは買いたいですけどね! できれば今年中には!

 

ってなわけで、また次回お会いしましょう。

 

……董卓編は7月中無理そうでござるorz


 
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