「まるで家族が増えたみたいだわ」
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マイ「艦これ」「みほ2ん」
第60話 <平和なひと時>(改2)
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奥で着替えを終えて出てきた私に居間に居た艦娘たちが注目する。
五月雨が呟く。
「そういえば制服以外の司令は初めて見るのです」
「いや、そんな大げさな」
私は頭をかいた。
制服だと指揮官という位置がハッキリするのだが、浴衣というラフな格好だと素(す)の自分が歩いてる感じになる。
もちろん家族の前なら別に何でもないのだ。
実際、私の両親は息子の浴衣姿を、とても喜んでいるようだ。
ただ私としては部下でもある艦娘たちの前だと、この壁の無さが妙に気恥ずかしくなるのだ。
「司令、宜しいですかぁ」
青葉がレンズを向けてくる。
(別に断る理由も無いか)
それでも私は、ちょっと緊張した。
「あ、ああ。でも控え目にな」
「了解です」
……とはいえ今宵、浴衣の主役といえば、やはり艦娘たちだ。
いつも過剰なほど個性的な面々が浴衣を着ると意外に大人しくなっている。それに雰囲気からすべてがピッタリマッチしているように感じるから不思議だ。
「えぇなぁ、まるで家族が増えたみたいだわ」
母の言葉にも実感がこもっている。
「不思議な存在だな、艦娘というものは」
父も感想を述べた。寡黙な彼にしては意外なことだ。
だが考えてみたら艦娘とは純粋なまでに、この国を護る防人(さきもり)なのだ。その志が日本古来の浴衣という伝統文化と相まって、いっそう輝くのだろう。
そういう意味では普段の私は艦娘たちを少々甘く見過ぎていたのかも知れない。そこは反省すべきか。
……ここでなぜか私は、あの中央から来た青年将校を連想した。
(何だろうね、あの御仁(ごじん)は)
私は内心、苦笑した。
やがて母親が艦娘たちに号令をかけた。
「軽くご飯を食べてから盆踊りに行くだわ」
『はーい』
食べ物とお酒で懐柔されたか母親には妙に従順になる艦娘たち。
つい先程まで一部、泥酔していた連中が気が付くと素面(しらふ)に戻っている。
(お前ら、どういう内臓しているんだ?)
やはり普通の人間とは違う。
絶対、艦娘たちはアマゾネス並みの強靭な身体(ボディ)なのだ。
しかし実家の居間に12人もの艦娘。そして結構、背の高い子が多いから、この構図は壮観だ。鎮守府の食堂とは、また違った趣(おもむき)がある。
「そうか浴衣を着ているから緩く見えるのか」
思わず呟いた。
「寛代や五月雨は駆逐艦だから学生かな。そして赤城さんや金剛、利根は、さしずめ『お姉さん』か」
なぜか私の解釈に頷く艦娘たち。
「祥高さんや山城さん、それに龍田さんになると、もう『大人の女性』って感じだな(実際は若いけど)」
「ねえ、アタシは?」
私の言葉に北上が聞いてきた。
「そうだな……北上や青葉、比叡あたりは、ちょっと微妙だけど女子高生かな?」
「あはっ、嬉しいです!」
妙にノリが良い比叡だった。
そんな会話をしていると祥高さんが艦娘たちに『お小遣い』を支給し始めた。
私は聞いた。
「それは?」
「お小遣い……お祭りなら必要でしょうから」
「う、嬉しいです!」
五月雨が瞳をウルウルさせている。タダでさえ大きい彼女の瞳が更に大きく見える。
祥高さんは続けた。
「正確には給料ですが艦娘たちは普段ほとんど外出もしませんから生きていれば貯まる一方なので心配には及びませんが……」
と、ここまで話した彼女は少し『しまった』という表情をした。
そして祥高さんは私の両親に頭を下げた。
「すみません、あまり相応しくない話題でした」
しかし母親は平然として言った。
「えぇけン、うちも軍人だ」
母親の笑顔に祥高さんもホッとしていた。その場はホワッとした雰囲気に包まれた。
これは軍関係者でなければ分からないことだ。奇麗事ではなく常に生死に臨む者たちが共有する感覚だ。
すると今度は利根が聞いてきた。
「お盆とか踊りって何するのじゃ?」
「えっと……」
こいつは長身と広島弁だから浴衣を着ても妙に迫力があるな。
すると隣の青葉さんが答える。
「亡くなった人たちを偲ぶために集って話したり食事したり踊ったり……イロイロやるんですよ」
「それなら艦娘も、お盆は出来るナ」
利根が納得している。
まあ確かに艦娘たちは日々戦いに明け暮れて、いつも生死と隣り合わせの生活だ。つまり盆踊りとも決して無縁ではない。
「なるほど、今日の墓参が妙に艦娘たちとマッチしていたのは、そういうことか?」
思わず呟く。
「Oh! 踊りってダンスのことデスね?」
金剛が悟ったように言う。
「お姉さま、ちょっと違います。盆踊りですから」
比叡がナイスフォローをする。
「どう違うネ?」
金剛の反論に今度は比叡が硬直している。
……まあ正直言って彼女も本当の意味は分かってないのだろう。
すると日向が答える。
「櫓(やぐら)を中心に輪になって皆が一斉に踊るものだ」
さすが「武人」だけあって、よく知っているな。
「ああ、お姉さまも連れてくれば……」
山城さんは違う方向に逝ってしまいそうだが。
「なんだか、見てて飽きンが」
母親がニコニコしながら艦娘の様子を見ている。まあ、チョッとズレているけど逆に新鮮な感覚だよな。艦娘のお盆ってのは。
今夜の盆踊りは駅前か近くの小学校、どっちでも良いらしい。母親は近所の手前もあるから小学校の方へ行くという。
私たちは部外者でも大丈夫そうな駅前の盆踊り会場へ向かうことにした。どちらも歩いて直ぐいける。
(でも、夜だから地図とか見なくて大丈夫かな?)
そう思っていたら艦娘たちが寛代を中心に集まっている。
「何しているのだ?」
私が聞くと祥高さんが応える。
「一時的に地図情報を共有するシステムがあるので、その準備です」
日向が補足する。
「本来は大淀のように旗艦クラスの艦娘でないと装備されていない仕様だが寛代は通信特務艦だから可能です」
「へえ」
そこに青葉。
「これも『改』で備わった共有システムなんですよ」
「なるほど、実戦でも便利そうだな」
すると龍田さんが微笑む。
「でもまさか『初陣』が盆踊りとはねぇ」
その言葉に一同は笑った。なんだか平和なひと時だなと思った。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ2ん」とは
「美保鎮守府:第二部」の略称です。
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盆踊りに行く準備をする艦娘たちの浴衣姿に日本の伝統的なものを感じる司令だった。