第8話 ハクタイの森大捜索
ハクタイシティにいくためには、目の前に広がっているハクタイの森を超えるしかない。 それを知ったクウヤは意気揚々と勇み足で森に突入した。
「クウヤさん」
「へっ?」
聞き覚えのある声だ、とクウヤは声のした方向を向いた。 そこには以前出会ったおしとやかな女性だった。
「あれ、あんた・・・モミさん!?」
「ええ」
知り合いだったのでクウヤは迷わずモミのところに駆け寄る。
「モミさん、なんでこんなところに?」
「実は私、この森の自然とポケモンを管理、保護している管理官をやっているんですのよ」
「かんりかん!?」
全然予想できなかった彼女の職業にクウヤは驚いた。
「モミさんそんな仕事してたの、うっわぁ意外・・・」
「女と思って油断しましたかしら?」
「い、いや、男とか女とかじゃなくて・・・ホント予想してなかったからさ! 普通にびっくりしちゃったんだよ!」
「そうだったんですか」
クウヤの驚いているリアクションが可笑しいのか、モミはくすくすと笑う。 そんな彼女の様子に対し頬を小さく膨らませつつもモミの仕事の内容を尋ねる。
「それで、モミさんがこの森でやっていたことって?」
「実は・・・この森に密猟者がいるみたいなの」
「みつりょうしゃ?」
「正攻法を使わず多くのポケモンを横暴でとらえては、それを多額で他人に売りさばく悪党です。」
モミは真剣な表情で話を続ける。
「場合によってはポケモンの命をも奪ってしまうような事態にもなりかねないし、この世界の秩序をも乱してしまう・・・そんな事は許されることではありません。」
「・・・」
「ポケモンとは真剣に向き合い戦うことや、絆を生むことで初めてともに進むことが暗黙のルールです。 だからポケモンの乱獲や取引などに利用させるわけにはいきません・・・そのために私達のような管理官がいて、
密猟者をみつけ乱獲を防ぐ必要があるんです」
「そうだったんだ」
彼女の話を聞いてクウヤは自分の中にある、持ち前の正義感の強さを働かせた。
「モミさん!」
「なんですか?」
「おれにも手伝わせてよ、その仕事!」
突然のクウヤの協力の申し出に一度は驚いたものの、彼のうちの熱い正義感を見抜き以前戦ったときの実力を掛け合わせ、モミは彼を今回の密猟者
の発見及び乱獲阻止という仕事に加えることを決めた。
「ですが、無理はしないでくださいね」
「おぅ!」
クウヤは早速といわんばかりにヒーコを出した。
「ヒーコ、今日は悪者の密猟者退治だ! 頑張ろうぜ!」
「モウモウッ!」
クウヤの気持ちに共感したのか、2匹も気合いが十分だ。
「うっふふ、元気ですね・・・私達も頑張りましょうか。」
そんな彼らの様子を見たモミはくすっと微笑むと、一個のモンスターボールを手に取りそこから一匹のポケモンを出した。
「ね、ラッキー」
桃色の体のたまごポケモン、ラッキーだ。
「モミさんラッキーなんて持ってたんだ」
「ええ、他にはあのときのチェリンボ、ガーメイル、ミノマダム、フワライドなど・・・色々なポケモンを持っているんですのよ」
「へぇー! いっぱい持ってるんだね!」
「さぁ、密猟者を探して捕らえましょう。 ここのポケモン達と人の関係のためにも」
「ああ!」
クウヤはそのまま、モミについて行きハクタイの森を進んでいく。
「・・・へぇー・・・ホントにいろんなポケモンがいるんだぁ」
草むらにはケムッソやカラサリス、マユルドなどの虫ポケモン。 ふわふわな体毛と長い耳がチャームポイントのうさぎポケモン、ミミロル。 木にはたくさんのみのむしポケモン、ミノムッチがぶらさがっており、空にはムックルやアゲハントが飛んでいる。
「・・・でもゲットするならやっぱり、ちゃんとバトルしたり仲良くなったりしてからの方がいいよな。 今までおれも、そうしてきたし」
「モウ!」
「だから、自分勝手な目的でポケモンを捕まえまくって、それを金にしようだなんていう密猟者は絶対に許さない! 絶対ぶっとばしてやる!」
クウヤは帽子を被り直してそう言う。
「・・・うふふ、本当に元気のいい、ヒーローね」
そんなクウヤの姿を見て、モミは静かに微笑む。
「なにかいった? モミさん」
「いいえ、もうすぐ密猟者がいる可能性が高いポイントに到着です。 気を引き締めてくださいね」
「おう!」
「ミミィィィィィ!」
「ムクルルルルル!」
密猟者のいる可能性が高いというポイントに向かう途中で、クウヤとモミはポケモンの鳴き声に気がついた。
「なんだ!」
「もしかしたら、密猟者がでたのかもしれません!」
「え!」
ポケモン達が逃げていくのと正反対の方向にはハブネークやドクケイル、スカンプーの大群がポケモン達を追いかけていた。
「とにかく、止めるぞ! ヒーコ、かえんぐるま!」
クウヤはポケモンの群を追いかけるポケモン達を止めるために、ヒーコに技を指示してそれを止める。
「あー、あとちょっとだったのに!」
「おいガキ、邪魔するんじゃねぇ!」
草むらの陰からでてきたのは、以前も遭遇した格好の男達だった。
「あー、てめぇら、ギンガ団!」
「ギンガ団?」
「人を襲ったり脅したりとか、あんなことやこんなことやそんなことまでやってる、とにかく悪い連中なんだよ!」
「まぁ!」
「おいぃぃぃぃ! なんだよそのあんなことやこんなことやそんなことってぇぇぇ!!」
ギンガ団の登場にクウヤは怒りモミは口に手を当て驚き、ギンガ団はクウヤの特に深い意味などない適当な言葉に対しツッコミを入れた。
「やいギンガ団、密猟者っていうのはお前らのことだな!」
「私はハクタイの森管理官のモミです、貴方達を捕らえ乱獲を阻止、警察に突き出しますわ!」
と、モミはギンガ団に対し管理官の証である紋章のついたメダルを見せる。
「すんなり捕まってくださり、自首するなら手荒なまねはせず、罪も軽くさせてあげますわよ?」
「っけ、こんな女とガキに頭を下げるような、ましてや捕まるようなヘマをするほど、おれらギンガ団は弱くなんかねぇんだよ!」
「そうだそうだ、ここのポケモン達をたくさん捕まえて金にして、我らの活動資金にするためにもな! ここにはどうせ、たくさんポケモンがいるんだからあれくらいの数が消えようが大したこともなさそうだしな!」
「なにっ!?」
ギンガ団の発言に対し怒りを覚えクウヤは攻撃態勢に入るのを、モミがやんわりと止める。
「・・・あらあら・・・私の前に倒れて連行されていった無粋かつ虚弱な密猟者の方々は、みな同じことを言っていますのよ? つまり、同じ言葉を今言った貴方達は私達に敗れて警察に連れて行かれる宿命なのですわ」
口元は相変わらずの笑みを浮かべているが、その目は冷たい。 その様子から、彼女が今までどれだけの犯罪者を屈服させとらえていたかがわかる。
「なにをっ! やっちまえドクケイル!」
「出番だ、ゴルバット!」
「ラッキー、やっておしまいなさい」
「いくぜ、ヒーコ!」
まず動き出したのは素早いヒーコだった。 マッハパンチでドクケイルに先制攻撃の直後効果抜群のひのこを浴びせた。 つばさでうつ攻撃でつっこんできたゴルバットの攻撃も、かえんぐるまを使って回避する。
「だったらゴルバット、ラッキーにどくどくのキバ!」
「まもって、おうふくビンタです」
ラッキーの方に攻撃にでたゴルバットだったが、まもるであっさり防がれおうふくビンタを5回受けてしまった。
「さらにいきますよ、タマゴばくだん!」
モミは容赦なくラッキーに技を指示し、タマゴばくだんをゴルバットに命中させる。
「ヒーコ、こっちも連続攻撃いくぜ! みだれひっかき!」
ヒーコにみだれひっかきを指示してドクケイルを攻撃していく。 だが、ギンガ団はにやりと笑ってドクケイルに別の技を指示した。
「今だ! どくどくだ、ドクケイル!」
「ヒーコ!」
どくどくを受けてヒーコはどく状態になり、みだれひっかきを中断させてしまった。
「しっかりするんだ、ヒーコ!」
必死にクウヤが呼びかけるがヒーコはどくのダメージでもがき苦しむ。 こうなったらズーバに交代するしかない、と思ったそのときだった。
「ラッキー、リフレッシュです! そして、たまごうみですわ!」
モミが指示した、状態異常回復技と体力回復技の双方の輝きがヒーコを包み込む。 光がやんだとき、ヒーコは元気に立ち上がった。
「ヒーコ!」
「クウヤさん、一気に決めちゃいますわよ!」
「モミさん・・・うん!」
クウヤとモミの指示にあわせてラッキーとヒーコはそれぞれ技の体制に入る。
「ラッキー、たまごばくだんですわ!」
まずラッキーがゴルバットとドクケイルにそれぞれ一発ずつたまごばくだんを浴びせてダメージを与え地面に落とす。
「ヒーコ、とどめのかえんぐるま!」
体勢を立て直そうと立ち上がろうとした2匹に対しクウヤはおいうちとしてヒーコのかえんぐるまを決め、ギンガ団のポケモンは同時に戦闘不能となった。
「うぐ、こうなりゃ逃げるが勝ちだ!」
「そうはいきませんわよ」
その場を逃げようとしたギンガ団だったが、どこからか虫ポケモンの糸が飛んできて体の自由を奪われる。
「モミさん、とらえました!」
「間に合ってよかったですわね」
「こいつらは警察に突き出します!」
「お願いしますわ」
どうやらギンガ団をとらえたのは、ハクタイの森の管理官のメンバーのようだ。 糸を放った虫ポケモン達は彼らのポケモンだったり、彼らに手を貸したこの森のポケモン達のようだ。
「やったぜ、犯罪者こらしめたぞー!」
「貴方の助力のおかげですわ、クウヤさん」
「いや、おれもモミさんやラッキーがいなかったらどうなってたかわかんねぇよ! だからありがと、モミさん!」
クウヤの無邪気な態度と笑顔にモミも笑顔で返す。 犯罪者を倒したことによる達成感からか、クウヤはますますこれからのやる気に満ちていた。
「よぉーし、この勢いのままいくか!」
「モォウ!」
「あらあら」
あのバトルをやったあとだというのに、クウヤもヒーコも元気全快だった。
「もうそのモウカザルは大丈夫ですね」
「ああ、おかげさまで!」
「なら心配はないですわ」
「じゃあおれ、このままハクタイの森を抜けてハクタイシティへいくよ!」
「ええ、また会いましょう」
「ああ!」
クウヤはモミに大きく手を振って、彼女と別れ、ハクタイの森を抜けるために先へ先へ進むのだった。
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ポケモン映画、みたいなぁ。
この小説投稿したら観にいくけど