「志を持っている。まさに志士だ」
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マイ「艦これ」「みほ2ん」
第59話 <艦娘の志>(改2)
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艦娘たちは、ワラワラと衣装ケースに群がる。
「へぇ、意外と良いじゃん」
「人数分揃っていそうですね」
「サイズもOK?」
「同じ艦種なら、ほぼ同じですよ」
そして彼女たちは色とりどりの浴衣を手に取って、はしゃいでいた。
(……やはり艦娘は少女なのだな)
つくづく、そう思えた。
しかし艦娘だけの鎮守府とはいえ、なぜ各自の人数分の浴衣が揃っているのだ?
謎だな。ひょっとしてアレも装備なのか。それとも誰かが準備したのか。
まさか軍令部が揃えたわけじゃないないよな……だいたい中央の役人は艦娘を単なる兵器としか見ていないから。
もしかしたら祥高さんが勝手に購買予算を通したのか? ……いや、呉の統括官の監査もあるから、それは難しいだろう。
詰まるところ、よく分からないが浴衣も艦娘の装備品ということか。
そんなことをボンヤリと考えていたら事情を察した母親が再び場を仕切り始めた。
「ほらほら、男はあっち」
(そうか、艦娘たちは早速、浴衣に着替えるんだな)
『……』
急かされた父親と私は居間から追い出された。
着替える間、実家での居場所が無くなった私と父親は、しばらく実家前の道路で佇(たたず)んでいた。
「あれ?」
……見ると実家の周りの路地にも浴衣を着た人が多かった。
それ以前に、普段は閑散としている街全外が今日は、お祭りのためだろう。何となくか人通りが多い。
(ここは旧い町だからな。この戦時下でも伝統行事は、きっちりやるんだな)
しばらく無言だった私たちは、着替えが長引いている間に少しづつ会話が始まっていた。
父親が言った。
「まさか艦娘の鎮守府が美保にあったとはな」
私は応える。
「お父さんも艦娘は知っていたんだ」
彼は、こちらを見て言った。
「ああ、噂には聞いていたがな……ただ現役の頃は、まだ機密扱いだった」
「ふーん」
そういえば私が兵学校へ行くために家を出るまでは、ほとんど父親と会話をすることも無かった。
だから、もし私が美保鎮守府に着任しなかったら、こんな機会もなかっただろう。
(艦娘の取り持つ不思議な縁か)
ふと、そんなことを思った。
父親は腕を組んで続ける。
「艦娘なんてな。無意味なシステムと思ったよ。だが、ちょっと考えが変わったな……良い娘たちじゃないか?」
「え? ああ、まあ……でも女学生みたいだけどね」
私は返した。
すると父親は真顔になった。
「人間は外見だけで判断はできない……」
そう言いつつも、気恥ずかしいのかちょっと苦笑した。
「もっとも彼女たちは『艦娘』だがな」
……そういえば山城さんや利根と父親は、ずっと飛行機の話をしていたな。
父親は続ける。
「お前も直ぐに分かる日が来る。彼女たちは、この国を誰よりも愛している。
それに何があっても純粋に国家を護り抜ける志だって持っている。まさに彼女たちは現代の志士なのだ」
「そう?」
(かなり持ち上げたな、お父さん)
もちろん寛代や日向を見ていると純粋で一途なのは分かる。
彼は通行人を眺めながら言った。
「父さんは、もう退役組だ。だが、お前はまだまだ若い。それにあの娘たちは、もっと若いだろう。
力を合わせて国のため、世界平和の為に、しっかりやれ」
「うん」
父親は、だてに空軍エースだったわけじゃないんだなと、そのとき改めて思った。
(お父さん、ありがとう)
そのとき玄関から五月雨と寛代が勢い良く飛び出してきた。
五月雨は青い髪に、グリーン系のグラデーションの入った浴衣だ。
「し、司令官……見て下さい。は、恥ずかしいけど綺麗です、浴衣って」
確かに彼女の青い長髪と感じが似ていて、うまく調和している。
(そうか駆逐艦娘も浴衣を着ると急に日本人らしく見えるな)
五月雨は、はにかみながらも私たちの前で一回りして見せた。長い髪が意外にも軽くふわっと舞った。
『……』
私も父親も、そして通りを行きかう人たちも注目する。五月雨は大人しい子だけど、浴衣のインパクトは大きい。
彼女は微笑んで立ち止まった。
反対に、赤い浴衣を着た艦娘が……「寛代か?」
すると彼女は立ち止まらずに私を狙って突進して来た。
「だから寛代、やめろって!」
せっかく可愛い着物姿なのに……おいおい!
それでも通りで、しつこくカンチョーしようとする寛代。
「この期に及んで下品だぞ!」
父親も腕を組んで苦笑している。
だが私は逃げ回りながら思った。これは彼女の照れ隠しなのかな? ……と。
「ほら、お前も早、着替えぇだ!」
母親が玄関から大声で叫んでいる。父親は早く行けと言うしぐさをした。
「やれやれ」
既に街は暗くなりつつあり太鼓の音が遠くから聞こえて来る。
「ああ、お盆だなあ」
夏の香りを感じながら、私は家に入った。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ2ん」とは
「美保鎮守府:第二部」の略称です。
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艦娘たちの着替えの間、外で待つ父親と久しぶりに会話をした司令。
その父が艦娘を誉めるので驚くのだった。