「これからも、ここはいろんな事件が起こって……」
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マイ「艦これ」「みほ2ん」
第57話 <龍田さんの想い>
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ふと気づくと金剛(姉)も、早々に酔い潰れていた比叡を追うようにして轟沈。
その相手をしていた龍田さんも、それなりに飲んでいたはずだが、こちらはケロッとしていた。
……なんとなく分かるけど、ある意味、恐ろしいな。
ちょっと気になったので私は席を立って彼女に近くに座った。
「大丈夫か? ……その」
こちらを見た龍田さんは直ぐに微笑んだ。
「あらぁ司令……ううん大丈夫よ。気になさらないで」
彼女は傍らで寝入っている金剛の髪の毛を軽く撫でながら言う。
「金剛さんも長女で帰国子女……いろいろ重圧もあるから大変なの。このまま寝かせてあげましょう」
さらりと言う彼女。
「いや、私が心配なのは」
……言いかけた私に龍田さんは指を立てて『シッ』という仕草をする。
「大丈夫よ。私は地上では最後まで残るタイプなの。でも海上では……」
そこまで言った彼女は、ちょっとだけ寂しそうな表情をした。
龍田さんは空になった容器を机に戻しながらホウッとため息をついた。お酒の匂いが辺りに漂う。アルコールと彼女自身の、お香のような香りが独特の怪しさを醸(かも)し出している。
それでいて彼女の場合は、それが個性として昇華されているから不思議でもあった。
直ぐに龍田さんは明るい表情に戻った。
「お気になさらないで下さいな司令。艦娘の使命は例え旗艦が犠牲になっても作戦を全うすることですから」
「……」
しばらく宙を見詰めていた彼女はゆっくりと口を開いた。
「……私ね、今まで自分の延命とかには全く関心がなかったのよ。でも今はちょっと変わったの」
龍田さんは自分の傍で眠っている金剛姉妹を見ながら言った。
「司令は意識されていないでしょうけど、今の美保鎮守府にいると、何か大きなものが変わっていくような気がするの」
それから彼女は、秘書官と駆逐艦に視線を送った。
「……それは司令官と秘書官を中心として、少しずつね。着実に変わっていくわ」
「そうか?」
もちろん私には全く分からないことだ。
だが彼女は私を見て微笑んだ。その表情からは今までの妖艶さが消え、とても素直な彼女自身の自然な笑顔になっていた。
「徐々に分かってくるわ……これからも、ここはいろんな事件が起こって……でも、必ずみんなで力を合わせて最高の鎮守府になっていくから」
そこでちょっと間が空く。
「……私は今度こそ、それを最後まで見届けたいの」
「今度こそ?」
やはり、よく分からないが……
「まあ私としては司令官としての責務を全うすべく精誠を尽くすばかりだ」
「はい。よろしくお願いします」
彼女は微笑んだ。
龍田さんも何処となく秘書官にも似ている部分があるな。そう思いながら私は軽く会釈をして席を立った。
(他の酒に強そうな連中というと利根と山城さんか)
彼女たちを探したら、なぜか父親と航空機談義をしている二人を見つけて驚いた。
(へえ)
一方の、お酒を飲まないグループ……祥高さんと寛代、五月雨は別の場所にいた。
お酒を飲まないと手持ち無沙汰になるのか彼女たちは適宜、配膳を手伝ったり下げたりしている。特に駆逐艦娘たちは何かをしていないと落ち着かないのだろう。こまごまと動いている。
そのお陰で、私の母親もかなり手が空いて北上や龍田さん、それに時々青葉さんと楽しそうにお喋りをしている。艦娘たちに囲まれて私の父も母も自然に艦娘たちと馴染んで、けっこう楽しそうにしている。
その光景を見てると私自身せっかく故郷に着任したのだから実家にも時々、顔くらい出さないと駄目だなと思った。
(あれ?)
「どうしたの? お母さん」
私は、こちらに来た母親に聞く。
彼女は艦娘を見ながら言った。
「彼女たち、明るいし話題も豊富だな。普通の軍人さんとは思えん。とっても楽しいわ……それに休みの日も何処も行かんっていうが? だったら時々うちに連れて来るだわ」
「え?」
いったい何を言い出すのかと思った。
「艦娘って艦船だぁが? いまはまだ法律があるけん単独でウチげな普通の家に来たらいけンだぁも、お前が許可して複数で来れば、えぇってだぁが?」
(通訳:艦娘は艦船だから今の法律では彼女たちが単独で一般家庭に来るのは禁止だけど。責任者が許可した上で複数で訪問する場合は作戦行動の一環として認められる)
「詳しいな、お母さん……」
(てか、こらっ青葉! ……なに入れ知恵してるんだ!)
だが時、既に遅し。この場にいる艦娘たちには、その案がしっかりインプットされてしまったようだ。
「テートクぅ、それ良いねえぇ」
酔って轟沈していたはずの金剛が鼻息荒く浮上して絡んでくる。
「止めろ! 酒臭いっ」
「比叡もそれ、頂きます!」
余計なのまで起きてきて、こっちも頭を寄せて……来るなって。
「お前の被り物は金剛より痛いんだ!」(ごりごり)
「痛ってぇ!」
思わず絶叫。
「そうじゃぞ! それもぉ、指揮官の重要な任務じゃあ」
利根もフニャフニャしながら言う。
「勝手に決めるな! ……ってか利根っ。おい、顔真っ赤だぞ。大丈夫か?」
目が据わっている。怖いな。
「私も……そのアイデア、素敵だと思います。ぜひ、ご一考を」
「ちょっと……赤城さんまで何を?」
(……って、うちのお櫃(ひつ)丸ごと抱えて言わないでくれよ!)
「楽しみだわ、来月の休暇。アタシも未消化の休日が、ずーっと、ずっとたまってるのよ」
こっちも目が据わっているのに休む気満々な龍田さん。再びその妖艶さに拍車がかかっている。
「私も、お姉さまと一緒に……」
真顔の山城さん、怖いって。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ2ん」とは
「美保鎮守府:第二部」の略称です。
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司令は龍田さんと初めて言葉を交わした。彼女には、秘めた想いがあるようだった。