No.914075

英雄伝説~光と闇の軌跡~エレボニアカオスルート

soranoさん

第47話

2017-07-14 22:51:41 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2106   閲覧ユーザー数:1818

同日、18:20―――

 

~パンダグリュエル・パーティーホール~

 

「あ…………」

「ユーシス君……」

「よかった……話には聞いていたけど、無事で本当によかったよ……!」

「皇女殿下もご無事で何よりです。」

部屋に入って来たアルフィン皇女達を見たトワは呆けた声を出し、ジョルジュとエリオットは明るい表情でユーシスに、アルゼイド子爵は安堵の表情でアルフィン皇女にそれぞれ声をかけ

「皆さん……この混沌としたエレボニアの今の状況で皆さんが無事で本当によかったですわ………」

「…………バリアハートの件はレン皇女殿下から聞いた。迷惑をかけたな。」

アルフィン皇女は安堵の表情でアリサ達を見回し、ユーシスは重々しい様子を纏って答えた。

「そんな……迷惑だなんて……」

「オレ達は当然の事をしたまでだ。」

「まあ、結局あのリィンって人達に邪魔されて失敗しちゃったけどね~。」

「ミリアムちゃん………」

「頼むから少しは空気を読んだ発言を覚えてくれ………それよりも色々あったようだけど、無事で何よりだ。”憎まれっ子世にはばかり”というし、無事だったのもうなずける。」

ユーシスの言葉に対してエマは苦笑し、ガイウスは静かな表情で答え、ミリアムが呟いた言葉を聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中クレア大尉は呆れた表情をし、疲れた表情で指摘したマキアスは気を取り直してユーシスに視線を向けた。

「フン、お前の方こそ。あっさりと領邦軍あたりに捕まったと思ったが、悪運だけは強いらしいな。」

「な、なにおう!?」

鼻を鳴らしたユーシスの言葉に対してマキアスはジト目でユーシスを睨んだ。

「あはは、それじゃあ――――!」

その時ミリアムが勢いよくユーシスに抱き付こうとしたがユーシスは身体を横に背けてミリアムを避けた。

「な、なんでよけるのさー!?」

ユーシスの行動に対してミリアムは不満げな表情で声を上げた。

「抱きつこうとするからだ。暑苦しい。」

「ぶー、照れ屋なんだから。」

「ハハ……早速いつもの調子が戻って来たようで何よりだよ。」

「うん……本当によかったよ……」

「ふふっ、これでようやくクロウ様を除いて”Ⅶ組”は全員揃う事ができましたわね。」

ユーシスの答えを聞いたミリアムは頬を膨らませ、その様子をジョルジュとトワ、シャロンは微笑ましそうに見守っていた。

 

「う~ん、銀髪のあの娘や緑色の学生服の女の子もだけど、水色の髪のあの娘も中々可愛いな~♪先輩、三人ともお持ち帰りしてもいいですか!?」

「あんたね………緑色の学生服の娘はともかく、他の二人のプロフィールはメンフィルから渡されて、二人の情報も知っているのに、よくあの二人に対しても通常運転でいられるわね―――って、あのレンに対しても通常運転でいられるのだから今更よね………」

「はい!可愛い事に罪はありませんから!」

するとその時アネラスとシェラザードが会話をしながらアルフィン皇女達の背後から現れ

「お前さん達は……!」

「シェラザードにアネラス……!まさかあんた達が皇女殿下の護衛だったとはね………」

「おお……シェラ君にアネラス君じゃないか。フフッ、”影の国”に続いてこのような奇妙な場所で再会する事になるとは、これも女神による導きかもしれないね♪」

二人の登場にトヴァルと共に驚いたサラは苦笑しながら二人を見つめ、オリヴァルト皇子は目を丸くした後酔いしれた様子で答え、その様子にその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて脱力した。

「あはは……お久しぶりです。オリヴァルト殿下は相変わらずの様子ですね………」

「ハア………和解調印式でその”女神”とも会って来たから冗談抜きで洒落にならないわよ、その言葉は………というか祖国が悲惨な状況になっているのに、よくいつもの調子でいられるわね、このスチャラカ皇子は………」

アネラスは苦笑しながら答え、シェラザードは疲れた表情で頭を抱えた後呆れた表情でオリヴァルト皇子を見つめ、オリヴァルト皇子を”スチャラカ皇子”と呼んだシェラザードの発言にその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「いや~、再会していきなり褒めてくれるなんて、ひょっとして私の事が恋しかったのかな♪」

「……和解条約の件もあるから、ちょっとは大目に見てあげようと思っていたけど、どうやらその必要はなかったみたいね。再会の挨拶代わりに”影の国”から帰還して以降に覚えた新技か魔術の実験台にしてあげようかしら?」

笑顔を浮かべて話しかけたオリヴァルト皇子に対してシェラザードは静かな表情で呟いた後威圧を纏った笑顔を浮かべると共に自身の得物である鞭に魔力によって発生した竜巻を纏わせて構え

「ガクガクブルブル……!ごめんなさい、調子に乗った事は謝るのでマジで鞭や魔術は勘弁してください………!」

シェラザードの行動を見た瞬間すぐに疲れた表情で身体を震わせて謝罪したオリヴァルト皇子の行動を見たその場にいる多くの者達は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

(あの二人って、一体どういう関係なのかしら……)

(一国の皇子を”スチャラカ皇子”って呼べる程の仲なんだから、ひょっとして恋仲とか?)

(フフ、実際の所はどうなのでしょうね。)

(というかあの銀髪の女遊撃士が鞭に霊力(マナ)を宿らせた事を考えると銀髪の女遊撃士は間違いなく魔術師でしょうね………)

アリサやフィー、エマがそれぞれ小声で会話をしている中セリーヌは目を細めてシェラザードを見つめていた。

「もう、お兄様ったら。可愛い妹をほおっておいて、旧知の仲間の方達との再会を優先するなんて薄情ですわね。」

一方アルフィン皇女は頬を膨らませた後ジト目でオリヴァルト皇子に指摘し

「ハハ、すまないね。―――お帰り、アルフィン。…………事情はレン君から全て聞いた。私達の代わりに君に辛い役目を押し付けてしまって、本当にすまなかった………」

アルフィン皇女の言葉に対して苦笑したオリヴァルト皇子は優し気な微笑みを浮かべた後辛そうな表情でアルフィン皇女に謝罪をした。

 

「いえ………わたくしはアルノール皇家―――いえ、帝位継承者の一人として当然の事を行ったまでですし、今回のメンフィル帝国との戦争はわたくしも戦争勃発の原因の一端を背負っていますから、その責任を果たしただけですわ………」

「皇女殿下………」

「申し訳ございませんでした、皇女殿下……!護衛の任に就いていながら、肝心な時に護衛から離れていた挙句、俺が殿下の判断を惑わせるような発言や提案をしたせいで皇女殿下―――いえ、エレボニア帝国が辛い立場に立たされる事になってしまいました……!」

寂し気な笑みを浮かべて答えたアルフィン皇女の様子をアルゼイド子爵は心配そうな表情で見つめ、トヴァルはアルフィン皇女を見つめて頭を深く下げて謝罪した。

「その件についての責任はトヴァルさんだけでなく、わたくしにもありますから、トヴァルさんがわたくしに謝罪する必要はありませんわ。それよりも謝罪するのわたくしの方です。幾らかつてエレボニア皇家と縁があったとはいえ、既に他国の貴族になったシュバルツァー家に頼る事をわたくしが提案しなければ、トヴァルさんも遊撃士協会本部より処罰を言い渡される事も無かったのですから………本当に申し訳ございませんでした………」

「皇女殿下がそこの遊撃士失格のバカに謝罪する必要はありませんよ。ユミルの件に関する責任の大半は貴族連合軍で、残りの責任は”国家権力の不干渉”を規約の一つとしている遊撃士の癖に国家権力に干渉したそこのバカですから、そこのバカの場合は自業自得です。」

「その意見には同感ね。今回トヴァルが行った行動は遊撃士どころか、中立勢力に所属している関係者として失格な行動だったのだから。」

「ぐっ………」

「サ、サラ先輩にシェラ先輩~。トヴァル先輩もその事に関して深く反省していると思いますし、処罰まで受ける事になっているのですから、これ以上その件を蒸し返すのは幾ら何でも可哀想だと思いますよ?」

トヴァルに謝罪するアルフィン皇女に指摘したサラとシェラザードの言葉を聞いたトヴァルは唸り声を上げて肩を落とし、アネラスは苦笑しながらトヴァルを責めた二人に指摘した。

「……何はともあれ、ユーシス様と皇女殿下もいらっしゃったのですから、まずは御二方からそれぞれの事情を詳しく伺った方がよいかと。」

そしてシャロンの提案によって、アリサ達はアルフィン皇女達との情報交換を始める為にそれぞれ席についた。

 

「話を始める前にまずは俺の方から謝罪をさせて欲しい………――――すまなかった。父が猟兵達に他国の領土であるユミルを襲撃させた事を命じた事を知った時点で父を捕縛するか処刑して、父の身柄と共にメンフィル帝国に出頭して謝罪を行っていれば、このような事が起こらなかったかもしれなかった………」

「ユーシス…………」

「……ま、今回の戦争勃発の一番の”元凶”であるアルバレア公の身柄をさっさとメンフィルに渡して謝罪していれば、戦争勃発にまではならなかった可能性はあったかもしれなかったわね。」

「セリーヌ!」

頭を深く下げて謝罪する様子のユーシスをガイウスは心配そうな表情で見つめ、静かな表情で呟いたセリーヌの言葉を聞いたエマは声を上げてセリーヌを睨んだ。

「頭を上げてくれ、ユーシス君。君の責任ではないよ。今回の戦争も内戦も元を辿れば、両派閥の争いを止める事ができなかった我々”アルノール皇家”の責任だよ。それよりも君は私達アルノール皇家の不甲斐なさによってルーファス君を含めた家族全員を失うどころか、実家や地位まで失ってしまったんだ。その償いになるかどうかはわからないが、エレボニアに所属し続けてくれるのならば君―――いや、”アルバレア家”に新たな貴族としての地位を用意する事は約束する。」

「お兄様………勿論わたくしも内戦が終結した際にはお父様にもお兄様が仰ったユーシスさんの待遇についての嘆願をしますから、できればどうかメンフィル帝国との和解の為に内戦終結後エレボニアを去るわたくしの分も含めてお兄様達―――いえ、今後のエレボニアを支えてあげてください、ユーシスさん。」

「殿下達の寛大なお心遣い、心より感謝致します……ッ!アルバレア家は殿下達より受けた御恩を返す為……そしてエレボニアを衰退させてしまった償いをする為にも、今後永遠にアルノール皇家の方々に忠誠を捧げます………!」

オリヴァルト皇子とアルフィン皇女の気遣いにユーシスは頭を下げたまま身体を震わせて感謝の言葉を述べた後宣言をした。

「ありがとう。今後のアルバレア家の働きに期待している。」

ユーシスの宣言に対してオリヴァルト皇子は静かな表情で答えた。

 

「えっと………メンフィルに捕まってからのユーシスの事はレン皇女殿下から聞いてはいたけど……捕まっている間は本当に何もされなかったの?」

「ああ。”軟禁”とは言っても、城館内ならばある程度の自由は許された上軟禁場所は自室で、食事の配膳もメンフィル兵ではなく公爵家が雇っていた使用人達で、その使用人達もメンフィルが改めて雇用してくれた。………今回の戦争勃発の元凶であり、メンフィルが最も怒りを抱いていた父の関係者に対する待遇とは思えない程の好待遇だった。」

「そうか………」

「ちなみに食事はどうだったの~?毒が入っていたり、食事内容が貧相じゃなかったの~?」

エリオットの質問に答えたユーシスの答えを聞いたラウラは安堵の表情をし、ミリアムは興味ありげな表情でユーシスに訊ね、ミリアムのとんでもない質問内容にその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「お願いしますから、もう少し遠回しな言い方で訊ねてください、ミリアムちゃん……」

「というか何でそんなどうでもいい事が気になっていたんだ、君は………」

「阿呆。第一食事に毒が入っていれば俺は今頃この場にいないし、食事内容も”ガレリア要塞”の”特別実習”の時に出た食事とは思えない酷い食事内容ではないどころか、そこの第三学生寮の管理人が毎日出した食事と同等のまともな食事内容だ。」

「ふふっ、お褒めに預かり光栄ですわ♪」

「シャロン、貴女ねぇ………」

ミリアムの発言にクレア大尉とマキアスが疲れた表情をしている中、ユーシスは呆れた表情で答え、ユーシスの話を聞いて微笑んでいるシャロンをアリサはジト目で見つめた。

 

「えっと……ユーシスさん。ルーファスさんの事ですが………」

「……兄上が”パンダグリュエル”にて父の時同様シュバルツァー卿のご子息である”特務部隊”の総大将に討ち取られた話や兄上が”鉄血の子供達(アイアンブリード)”の”筆頭”で、”鉄血宰相”の指示によって内戦の状況を調整していた疑いがある話も既にレン皇女殿下から伺っている。」

言い辛そうな表情をしているエマに対してユーシスは僅かに辛そうな表情で答え

「その………レン皇女殿下の話だとユーシス君はリィン特務准将に対して恨んでいるどころか、感謝しているって言っていたけど………」

「ユーシス君は本当にリィン特務准将の事を恨んでいないのかい?その……もし、”Ⅶ組”が”特務部隊”の指揮下に入る事になれば、家族の仇である彼の下で戦わないといけない事になるけど……」

「――ああ。父も兄上も当然の報いを受けただけで、俺がその事に対して二人を討ち取ったリィン特務准将を恨むのは筋違いだ。………俺に限らず、エレボニアの民達もリィン特務准将に感謝しているだろうな。リィン特務准将は内戦で自分達を苦しめ続け、挙句の果てにはメンフィルとの戦争勃発の元凶となった父上と兄上を討ち取り、これ以上愚かな真似をしないように阻止してくれたのだからな………」

「ユーシスさん………」

トワとジョルジュの疑問に辛そうな表情で答えたユーシスの様子をアルフィン皇女は心配そうな表情で見つめていた。

 

「……皇女殿下。レン皇女殿下の説明によりますと皇女殿下はアルバレア公が雇った猟兵達がユミルを襲撃した際に貴族連合軍の”裏の協力者”の一人であったアルティナという少女に拉致され、カイエン公の下へと連れて行かれ、その結果”パンダグリュエル”に幽閉されていたとの事ですが、皇帝陛下達は”パンダグリュエル”に幽閉されていなかったのですか?」

その時重苦しい空気を変える為にアルゼイド子爵はアルフィン皇女に質問をした。

「はい。お父様達は別の幽閉場所に幽閉されているとの事です。」

「何で貴族連合軍は、アルフィン皇女だけ”パンダグリュエル”に幽閉したの?」

「わたくしだけが”パンダグリュエル”に幽閉されたのは貴族連合の……カイエン公の狙いだったそうです。内戦が始まって占領した地域にわたくしが顔を出して声をかける……そうする事で民の反発を抑え込もうとしているのでしょう。」

「……それは…………」

「チッ、皇族を味方にしている事で自分達に”大義”がある事を民達に知らしめる為か……!」

「殿下を傀儡にし、利用するなど不敬にも程があるぞ……っ!」

「兄上………」

フィーの疑問に答えたアルフィン皇女の答えを聞いたオリヴァルト皇子やトヴァル、ラウラは表情を厳しくし、ユーシスはカイエン公の考えに同意し、アルフィン皇女を利用しようとしていたと思われる今は亡きルーファスの顔を思い浮かべて辛そうな表情をした。

 

「ですが皇女殿下には失礼になりますが、皇女殿下が”パンダグリュエル”に幽閉されていた事によって、皇女殿下は”パンダグリュエル”を占領したメンフィル帝国によって拉致され、その後メンフィル帝国の提案に応じたリベール王国に保護されて皇女殿下が皇帝陛下の名代として和解調印式に出席し、メンフィル帝国との戦争を”和解”という形で終結させ、メンフィルの監視下という形ですがこうして無事に戻って来られたのですから、皇女殿下が”パンダグリュエル”に幽閉されていた事は不幸中の幸いだったかもしれませんわね。」

「シャロン!」

シャロンの指摘を聞いたアリサは声を上げてシャロンを睨み

「………アルフィン。”パンダグリュエル”で君は先程の特務部隊の一員の中にいたフォルデ特務大佐に捕縛されたとの事だが、”パンダグリュエル”での幽閉場所で捕縛されたのかい?」

「いえ……”パンダグリュエル”から脱出しようとしたルーファスさんや、”帝国解放戦線”の幹部、後は結社の使い手の方と僅かな数の護衛兵達と共に脱出用の飛行艇がある格納庫に連れられた際、既に先回りしていたレン皇女殿下やリィンさん達によってルーファスさん達が討たれ、その後護衛兵の中に紛れ込んでいたフォルデ特務大佐に捕縛されたのです。」

「ええっ!?ル、ルーファスさんどころか、”帝国解放戦線”の幹部や”結社”の使い手も一緒だったんですか!?」

「ちょっと待って……ルーファス卿が”パンダグリュエル”で討たれたという事はルーファス卿と一緒にその場にいた”帝国解放戦線”の幹部や結社の関係者も同時に討たれた可能性が高いって事じゃない!」

「……皇女殿下。お辛い事を聞くようで申し訳ませんが、ルーファス卿以外に誰が討たれたのでしょうか?」

オリヴァルト皇子の質問に答えたアルフィン皇女の答えを聞いたエリオットは驚き、ある事に気づいたサラは血相を変え、クレア大尉は真剣な表情でアルフィン皇女に訊ねた。

 

「……スカーレットという名前の眼帯の女性がエリゼさんとセレーネさんに、ヴァルカンという名前の大柄な男性がレン皇女殿下に討たれましたわ………」

「ええっ!?レン皇女殿下達が”帝国解放戦線”の幹部の”S”と”V”を!?」

「教官達の加勢とオレ達が全員で協力してようやく退ける事ができたあの二人をレン皇女殿下達は僅かな人数で討ち取ったのか……」

「”S”と”V”が討ち取られたという事は”帝国解放戦線”の幹部クラスは”C”を除けは全滅したという事になりますね………」

「フン……”G”同様ロクな死に方はせんと思っていたが、エレボニアではなく、エレボニアの戦争相手であったメンフィルに討ち取られるとは皮肉な話だな。」

「というか、温厚な性格に見えるセレーネお嬢さんやエリゼお嬢さんまで帝国解放戦線の幹部を殺ったなんて、正直信じられないぜ……」

「最低でも”執行者”クラスと推定されている”殲滅天使”や”竜”のセレーネって人はまだわかるけど、軍人でもないエリゼって人まであの”S”を討ち取るなんて、かなりの実力を持っているみたいだね~。」

(……ま、エリゼの”師匠”を考えたら、そのくらいできてもおかしくないわよね。)

(エリゼちゃんはよりにもよって、あのエクリアさんの愛弟子だそうですものねぇ?)

アルフィン皇女の説明を聞いたアリサは驚き、ガイウスは重々しい様子を纏って呟き、クレア大尉は真剣な表情で考え込みながら呟き、ユーシスは鼻を鳴らした後静かな表情で呟き、トヴァルは疲れた表情で呟き、興味ありげな表情で呟いたミリアムの言葉を聞いたシェラザードは疲れた表情で溜息を吐き、アネラスは苦笑していた。

「なるほどね………”殲滅天使”が今回の戦争によってあのバンダナ男がメンフィルに憎悪を抱いているって言っていたけど、その憎悪の原因は”帝国解放戦線”の幹部達が討ち取られた件に対する”敵討ち”でしょうね………」

「あ………」

「そう言えばレン皇女殿下はそのような事を言っていたな………」

セリーヌの言葉を聞いたエマは呆けた声を出し、ラウラは複雑そうな表情で呟いた。

 

「……皇女殿下。結社”身喰らう蛇”の使い手は何という名前の方がレン皇女殿下率いるメンフィル帝国軍の部隊に討ち取られたのでしょうか?」

「いえ、結社の方は結社の方が戦った相手との戦闘の際に、その相手の方の攻撃によってできたパンダグリュエルの穴から空へと飛び出した後ペテレーネ神官長やレン皇女殿下が扱っていた転移魔術のような方法で消えましたから、恐らく結社の方は死んでいないと思いますわ。……それとその方とは会う機会もなく、名前も伺っておりませんので、その方が誰なのかは申し訳ございませんがわたくしはわかりません。」

「せ、”戦闘の際に、相手の攻撃によってできたパンダグリュエルの穴”って………」

「間違いなくその結社の関係者と戦った人物は凄まじい使い手だろうね……」

「生身で戦艦に穴を空けるなんて非常識な………」

シャロンの質問に答えたアルフィン皇女の答えを聞いたトワは信じられない表情をし、ジョルジュは不安そうな表情で呟き、マキアスは疲れた表情で呟いた。

「……皇女殿下。レン皇女殿下の説明によりますと皇女殿下がパンダグリュエルにてメンフィル軍によって捕縛された後、メンフィル軍の戦艦の貴賓室に軟禁され、その後皇女殿下が捕縛されたその日の夜の内にリベール王国に移送され、和解調印式まではリベール王国の王城―――グランセル城に滞在されていたという話も真実でしょうか?」

「それと軟禁されている際、メンフィル帝国は皇女殿下に危害を一切加えず、また皇女殿下と接触したメンフィル帝国の関係者はリウイ皇帝陛下とペテレーネ神官長、そしてエリゼさんのみとの話も真実でしょうか?」

「はい。全て御二方の仰る通りですわ。」

「最初から期待していなかったが、”殲滅天使”が俺達に語った事に偽りはなかったようだな………」

「そうね。メンフィル帝国のアルフィン皇女殿下に対する待遇で偽りがあったら、和解条約内容を少しでもマシな内容に変更できる方便が作れたかもしれなかったしね。」

「ハハ、レン君に限って、それだけは絶対にありえないよ。」

アルゼイド子爵とクレア大尉の確認に頷いたアルフィン皇女の答えを聞いて複雑そうな表情で呟いたトヴァルの言葉にサラは頷き、オリヴァルト皇子は苦笑しながらトヴァルとサラに指摘した。

「何で”殲滅天使”は絶対に嘘を言っていないって、言い切れるの?」

「以前君達にも説明したが、レン君は13歳という幼さでありながら、あらゆる”才”に長けている。そしてその”才”の中には当然論争や交渉のような外交に関する知識も含まれている。そんな知識を持つ彼女がアルフィンや和解調印式に出席した他勢力の人達に確認すればすぐにわかり、その結果メンフィル帝国が少しでも不利になるような嘘をつくと思うかい?」

「そもそも今回の戦争の結果はメンフィルが多くの有利な条件をエレボニアに承諾させて和解するという”メンフィルにとって最高の形”で終わったのですから、今更その結果を少しでも変更させるようなミスをたった一人で私達の反論を全て封じ込める事ができる程論争のような才にも長けているあのレン皇女殿下がするなんて、ありえないかと。」

「それは…………」

フィーの質問に対して答えたオリヴァルト皇子の話とシャロンの推測を聞いたジョルジュは複雑そうな表情をし、他の者達もそれぞれ辛そうな表情や複雑そうな表情で黙り込んでいた。

 

 


 
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