「でも航空機といえば日向だろうに?」
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マイ「艦これ」「みほ2ん」
第56話 <大和撫子>(新)
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乾杯が終わると食事となった。艦娘たちは遠慮なく食事に飛びついている。
祥高さんが釘を刺す。
「皆さん、食事も帝国軍人として節度ある行動を心掛けて下さいね」
「はひ」
……頬を膨らませている赤城さんが応えると非常に説得力が無いな。
艦娘という少女の容姿を持っていても中身は軍人だ。
むしろ食べることに旺盛な方が指揮官としても安心できる。
そんなことを思いつつ適当に食事をつついていると青葉さんが近寄ってきた。カラカラとカメラのフィルムを巻き取りながら彼女は言った。
「司令? ボーっとしてますね。ひょっとして疲れちゃいましたか?」
私は苦笑した。
「いや最初は普通の家に艦娘が大勢居るって構図に違和感があったンだけどね。特に世間離れした服装とか被り物とか」
そう言いながら私は金剛姉妹や山城さんを見る。
片や金色(こんじき)のレーダー、もう一方はノッポの艦橋が頭に乗っている。
「でも暫くすると慣れて意外に、しっくり来るもンだなって思って」
私の言葉に彼女は微笑む。
「あはぁ、青葉なんかは、ご覧の通りセーラー服ですけどね。だいたい巡洋艦までは割と普通の人間に近くて大人しい服装ですけど戦艦クラスになると皆さん派手ですからね」
「そうじゃ、艦娘もイロイロなのじゃ」
利根が割って入る。当然彼女は普通の軍服スタイルである。
「司令殿は勘違いしておるのじゃ。艦娘は全員、中身は純粋に大和撫子(やまとなでしこ)なのじゃ」
「なるほど」
さすが利根というべきだろう。彼女の説明は妙に腑に落ちた。
帰国子女の金剛だって名前も衣装も和風だから、もともと同化しやすいのだろう。
むしろ艦娘は一般とは相容れないという先入観を持った私の方が問題だった。だいたい艦娘を家族(ファミリー)として扱うと宣言しながら意識が足りない。
そこは猛省だな。
「あれ?」
食事が進むに連れて妙なものが出てきた。
私は配膳をする母親に聞いた。
「何でビール?」
「祥高さんに聞いたら、構わないって」
「え?」
……そうか。艦娘たちは今回、墓参で気を遣ったのか知らないが皆、制服だった。だから勤務中だと勘違いしていたが、よく考えたら私も含めて全員、休暇扱いだった。
「アルコールはダメか?」
母親が念押しする。
「いや、全員休暇中だから」
「そうか?」
母親は微笑んだ。何でもアリになってきた。
「こんにちは」
「はい」
来客があったようで母親が玄関に出る。
そのうちに仏間へ入れ替わり立ち代わり人が来て拝んでいる。
「あれは?」
青葉さんが小声で聞いてくる。
「ウチは本家だからね。お盆になると仏壇に線香を上げに来る近所の人が居るんだよ」
「なるほど……」
さすがに情報通の青葉さんも、お盆の風習を実際に見る機会は、ほとんど無かったか。それでも写真を撮りに行かないのは彼女なりに礼をわきまえていると言えるだろう。
「しかし、うちの仏壇を参りに来た人は驚いただろうな。真っ昼間から女性が大勢で宴会しているから」
私はグラスを片手に呟いた。苦笑する青葉さん。
私は続ける。
「でも艦娘も受け入れる懐の広さが、この町にはあるから大丈夫だ」
「そうなんですか?」
「ああ、ここは港町だからな。海に関わる者は誰でも受け入れる土地さ」
そう言いながら私は自分でハッとした。
「そうだな。私も境港の人間だ。もう堅苦しいのは止めよう」
そう思うと、急に気楽になった。
ふと祥高さんと目が合うと、彼女は微笑んでいた。
すると利根が聞いてくる。
「司令殿は、お酒は飲まぬのか?」
そう、私のグラスに入っているのは、お酒ではなく普通の麦茶だ。
「ああ、昔から飲まないね……ていうか、おいお前、顔が真っ赤だぞ。大丈夫か?」
「案ずるな。吾輩は強いのじゃ」
「いや、そういう問題じゃないと思うが」
そう言いながら周りを見ると、比叡は早々に酔い潰れている。ただ利根を筆頭に強い連中も居るらしい。
五月雨と寛代は最初から飲んでいない。まぁ彼女たちは年齢的にも問題ないだろうが何故かホッとした。
「あれ?」
いつの間にか父親が末席に居た。母親に聞くと廊下で青葉さんに誘われたらしい。
「やるな」
最初は青葉さんにイロイロ、経歴などを聞かれたらしい。
そのうちに利根が加わり、そこに山城さんも合流。
少し時間が経って、その席を立った青葉さんに私は聞いた。
「何を話していたんだ?」
「当然、お父様がお得意な航空機のご教示を賜りましたよ」
「ああ、なるほど」
それで利根が来たのか。
「でも航空機といえば日向だろうに?」
私が疑問に思うと青葉さんが私に近づいて囁(ささや)くように言った。
「ホラ、山城さん日向さんに対抗していたでしょ?」
「あ?」
何だよ、それ?
「それに山城さん、渋い男性が嫌いじゃないみたいです」
「は?」
それは私の父親のことか? よく分からないな。
洋間は、お酒を飲まないグループ……私と祥高さんと寛代、それに五月雨に分かれていた。
比叡は既に轟沈し、龍田さんは金剛と上手に嗜(たしな)んでいる。
私はちょっと浮いている日向に声をかけた。
「日向……は飲めるよね?」
彼女は少し微笑みながら淡々と応える。
「いえ、今日は遠慮しておきます」
「生真面目ですねえ」
青葉さんが笑う。
「帰りは妖精さんが運転してくれますよ」
しかし日向は苦笑しながら続ける。
「ええ、でも不測の事態があるといけませんので」
彼女らしい選択だな。私は笑った。
「それで良いよ日向、気にするな」
「はい」
……休暇中でも職務を全うしようとするのか。さすが日向だな。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ2ん」とは
「美保鎮守府:第二部」の略称です。
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司令の実家で始まった食事会。そこで様々な想いが行き交うのだった。