No.91253

真・恋姫†無双 ~長江の華~ 第一話

MuUさん

名付けるならば江賊編・・・かな

ここからが始まり

2/10改定

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2009-08-23 20:28:59 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:5017   閲覧ユーザー数:4035

 

深い闇

 

辺りは何も見えず、何も聞こえない。

 

「……(くっ)」

 

一刀には身体を動かすことも、声も出すことさえも出来なかった。

自分が立っているのか、寝ているかさえも分からない。

ただ自分に出来ることは、視ることだけ。

どれくらいの時をそうしていたのだろう。

それは、一瞬のことだったのかもしれないし、一時間、一日、一年だったかのようにも感じられた。

突然、変化が生じた。

 

 

そう小さな、小さな光が見えた。

その光に手を伸ばそうとするも、やはり身体は動かない。

その小さな光は、徐々に、ゆっくりではあるが大きくなってきている。

 

一刀「(いや、光が近づいてるんだ)」

 

そう理解した瞬間―

 

「ごぉ主ぅ人様ぅぁああああああああああああああああん!!!!」

 

「(うぎゃあああああああ)ああああああああああ!!」

 

あまりの衝撃に声が、魂の叫びが溢れ出す。

そう何を考える間もなく、ただ悲鳴だけが出た。

見ただけで分かる鋼の筋肉、引き締まった肉体、そして雄雄しく盛り上がるピンクの・・・・・・

妖しく光る唇と禿頭。

黒光りした身体からは、湯気が立っているかのように周りを揺らめかせている。

 

ガチデスカ?

 

ワタシココデヤラレテシマウノデスカ?

 

 

「会いたかったわ~ん♪ご主人様ぁあん♪」

 

身体をくねらせるな、気持ち悪い。

いったいお前は、どこの地球外生物なんだ?

というか俺の身体を跨ぐな。

そして、腰を振るな。

 

「ぬふふふふん。貴方とは…初めましてかしらねん、ご主人様♪」

 

「そのご主人様ってのは何だ?っていうか寄るな化け物!」

 

「んっまぁ~!だぁ~れが一度みたら孫の代まで夢の中に出てくるほどの化け物ですってぇ!!」

 

「いや、そこまでは言ってないけど。とりあえず半径5m以内に入ってくるな」

 

「ぐふふふふ。照れちゃって。やっぱりいいわんご主人様♪

 そうね。まずは自己紹介するわね。私の名は貂蝉、都のしがない踊り子よん♪

 そして漢女道の探求者にして、同時に外史の・・・まあこれはいいわん♪」

 

一刀の周りを妖しい動きで、舞うように、しかもピッタリ半径5mでくるくると回りながら貂蝉は言う。

 

「―へ? わ、悪い…もう一度言ってくれるかな?どうも幻聴が」

「しょうがないわねん♪ もう一度言うわよ?私の名は貂蝉、都のしがない踊り子よん♪」

 

絶句

 

と同時に頬を伝う熱いものは決して涙ではない。

嗚呼、こいつの親は一体何を考えてその名前をくねくね身を捩じらせてる筋肉ダルマにつけたのだろう?

こいつが董卓や呂布を狂わせた傾国の美女と同じ名前だなんて嫌過ぎる。

というか、そもそもコイツおと―

 

「漢女」

 

「は?」

 

「アチシは花も恥らう漢女なのよぉぉん!それにアチシは正真正銘、貂蝉。

 ご主人様の考えていた通りの漢女なのよん♪」

意味が分からない。

そしていったいここはどこなんだ?

 

「ここは貴方の夢の中。そう夢の中なの。」

 

「考えを読むな。そして、俺の夢なら一刻も早く消えてくれ」

 

心底そう思ってしまう。

 

 

「そうねん。名残惜しいけど、そろそろ時間かしらん」

 

腕を組み、片手を頬に当てながら貂蝉は呟く。

 

「時間って、お前夢の中で―」

 

「ご主人様、これだけは教えてあげる。いえ、教えてあげられる。

 ここは三国志の世界。でも貴方の知っているそれとは違う」

 

「はっ?」

 

「貴方は、突端。

 そして終端。

 物語は無限大。

 貴方は貴方の思うがままに生きなさい」

 

俺の言葉を遮る貂蝉の眼は、酷く悲しげで、酷く苦しげだった。

 

「貂…蝉…?」

 

「最後に……アチシの熱ぅう~~いチッスで、貴方様を目覚めさせてア・ゲ・ル♪」

 

「―は?え!?いや!ぎゃあああああああああああああ!! 」

 

バケモノの顔が近づいてくる。

逃げようにも俺の身体はまだ動かない。

そして、俺は―

夢の中なのに意識を失った。

 

「ご主人様……本当に、本当にごめんなさいね。ワタシからは、何にも説明できない。

 でも、これだけは言わせて…。躓いてもいい、迷ってもいい、そして時には立ち止まっても。

 でも貴方は自分の信じた道を、自分を信じてくれる人達と共に…前に進み続けて頂戴」

 

そんな貂蝉の声と共に遠くで鈴の音が聞こえた気がする。

 

 

「う、うーん」

 

「お頭ぁー!コイツ目を覚ましたみたいですぜー!」

 

大声で誰かを呼ぶ女の子の声、そして走り去る足音が聞こえる。

 

「き、筋肉が…化け物が…はっ、痛ぅ~」

 

目が覚めた途端、頭を激痛が襲う。

 

いったいここはどこなんだ?

見覚えのない天井…夢の続きか?

とりあえず起き上がろうと―

 

「おい、まだ無理すんじゃねーよ」

 

先程の声の主だろうか、言葉使いは乱暴だが自分を心配してくれているようだった。

無理はするなと言われたが、流石に助けてもらった人に寝たままの状態は気が引けるので必死で身体を起こした。

 

「すまねー、兄ちゃん。どうやら俺達の船が兄ちゃんとぶつかったみたいで。

 でも、なんだって長江の真ん中で一人漂ってたんだ?」

 

痛む頭を擦りながらも、恩人の顔を―

 

「―コスプレ?」

 

そこには、薄紅色の髪をした女の子。

その格好は、着物というか何というか、えっミニ?ミニの着物??

少なくとも日本で普通に通りを歩いている格好じゃない女の子がいた。

 

年齢は、中学生くらいってところか?

 

「は?こす…ぷ…何言ってやがる??」

 

少女はしきりに首をかしげる。

言葉は通じるみたいだし、ここ日本だよね。

ということは、

 

「その格好、映画かドラマの撮影かな?随分凝ってるけど」

 

「…兄ちゃんまさか、船に頭ぶつけておかしく―」

 

「おい…あとは私がやる。お前は下がっていろ」

 

いつの間に入ってきたのっだろうか、少女の言葉を遮り、赤い服を着た別の女の子こちらを睨みつけていた。

 

「へーい」

 

少女は二、三その頭と呼ばれた女の子と言葉を交わし、出て行った。

 

「さて、質問はこちらからする。余計なことは喋るな」

 

「き、君は?」

 

「余計なことは喋るなといった筈だが」

 

めちゃくちゃ睨まれた。

ただそれだけで肝が冷えるような感覚に襲われる。

両手を挙げて降参のポーズをとる。

それを見て、女の子は言葉を続ける。

 

「名前と…貴様、この服を見るに、どこかの貴族か豪族の一員のようだが…どこの出身だ?

 しかし、何だこの服は?綿でもなく絹でもない、どこか光輝くような…」

 

彼女の持つ服は、聖フランチェスカの制服の上着だった。

そして一刀は気付いた。

自分が布一枚かけられているだけで何一つ身に着けていないことに…

 

「うひゃぁー!ふ、ふ、ふ、ふ、服。俺服着てない」

 

「妙な声を出すな。服ならそこにある。濡れていたから乾かしただけだ。勝手に着替えろ」

 

言葉と一緒に上着が投げつけられた。

一刀の上着以外の服は、彼女の指差す椅子に丁寧に畳んで置いてあった。

 

あれっ?でも俺確か制服なんて着てなかった気が……

まあ考えても仕方がないか。

 

とりあえず彼女の視線を気にしつつも、着替えながら先程の質問に答えてみた。

 

「あ、ありがとう。俺の名前は北郷一刀。出身は、日本の東京、浅草だけど……質問いい?」

 

「なんだ」

 

意外にもあっさり了解が出た。

それにしても、どうしてこの子は俺をそんなに睨むんだ?

 

「さっきの人が長江って言ってたけど、ここって中国?

 それにしては言葉が通じるのも妙な気がするんだけど」

 

「日本?東京?浅草?中国?そんな地名は聞いたこともない。

 貴様は先程から何を言っているのだ?さっぱり分からん」

 

「えっ?じゃあここは……どこ?」

 

「ここはこの私、甘寧が仕切っている揚州柴桑近くの港町だ」

 

「甘寧って、あの呉の将の甘寧!?と、ゆーことは、やっぱりここは三国志の―」

 

頭に浮かんだ言葉がそのまま声に出ていくほどの衝撃だった。

しかし、最後まで言葉が続かなかった。

 

「なぜ私が『江東の虎』に仕えねばならんのだ!」

 

その言葉と共に首筋に触れたのは、冷たい鉄の感触。

いつの間に抜いたのだろうか…というより、いつの間にこんなに近くに。

当たってます、当たってますよ甘寧さん。

 

「??え、だって甘・・・興覇さん?なんだよね」

 

「いかにも私は『錦帆賊』の甘興覇だ。だが―」

 

刃は引いてくれたが、ますます甘寧の眼光が鋭さを増していた。

が、一刀は微塵も気付かなかった。

なぜなら自分の記憶を引っ張り出そうと躍起になっていたから。

 

「そうか、思いだしてきた。確か三国志では、孫権に仕える前は劉表、黄祖に仕えてて…

 そのもっと前は、江賊をやっていて…確か通り名が…『鈴の甘寧』」

 

「ほう、その名を知り、教えてもいない字を知る…意味不明な言葉を操る貴様は危険だな」

 

これが殺気というヤツなんだろうか。

先程の鉄の感触が全身に行き渡る恐怖。

これが三国時代の英傑の殺気。

 

「っ―ちょ…ちょっと待って!い、今!今、説明するから!」

 

どうにか絞り出した声は、細かく震えていた。

 

「…ふんっ」

 

そんな俺に、興がそがれたのだろうか、甘寧は殺気を抑えた。

しかし、彼女の眼は警戒を解いていない。

一刀は必死になって話した。

自分のこと

自分が別の世界―未来から来たことを

自分のいた時代、三国志というお話の中で甘寧という武将が存在することを

どうして自分がここにいるかも分からない

しかし、ここにいる自分は紛れもない人間であるということを

 

そんな一刀に甘寧は一言、

 

「胡散臭い」

 

と、だけ言い残し部屋を去った。

 

 

部屋を出た甘寧は、そこにいるであろう者に言葉をかける。

 

「聞いていたのだろう冬灯(トウトウ)どう見る?」

 

「あの兄ちゃんの言葉に嘘は見られませんね」

 

何もないところから声だけが聞こえる。

 

姿はない、しかし確かに声がする。

 

先程部屋を出た少女の声が―

 

「では信じる…と?」

 

さも当然のように、甘寧は会話を続ける。

 

「はっきり言って眉唾の話ですしね。第一、証拠もない…しかし、わざわざ助けた命、このまま捨てるのも惜しい。

 ここは有効に使っちまいましょう」

 

「使うとは……まさかお前!あんな奴を天の御使いとして」

 

その言葉に甘寧は耳を疑った。

あんな素人丸出しの男を使って何ができるというのだ。

 

「本物だったら儲け物。とりあえず一度、魯の姉さんに使いを出しますよ。

 それから判断しても遅くねえと思いますが?」

 

「…とりあえずそばに置いておく。せめて生き残れるくらいには鍛えてやる。

 ただし…私がいない時の監視は、怠るなよ」

 

「はっ。分かったぜ、お頭」

 

言葉と共に気配がなくなる。

 

「お頭は止めろと言っているのに…」

 

 

後日、甘寧に呼ばれた一刀は、

 

「とりあえず私の下で働け。無駄飯食いはいらない」

 

そう言われ、ただただ頷くのみであった。

 

 

<あとがき>

 

どうもMuUさんです。

とりあえず今日中に本編を一つ・・・・・・そう思ってしまったのが運の尽き

どうにか書き上げましたが・・・・・・

あの頃の妄想力はどこへ行ったのやら

地球(ちーたま)の皆!オラに妄想力を分けちくりーーToT

 

脳内からオリキャラがこぼれ出てきた模様です

真名だけ登場『冬灯(トウトウ)』

私的脳内イメージでは赤ポリSのミゼルドリッド(分かる人にしか分からんではないか)

詳しくは次回にて

 

礫っ子です

 

2/10追記

改定していると自分の文章の粗が出ること出ることw

あれっ?誰って感じですしね

ではノシ


 
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