No.910912 九番目の熾天使・外伝 ~改~竜神丸さん 2017-06-20 21:36:50 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:1545 閲覧ユーザー数:1098 |
-ドシャアッ!!-
「ぐぇっ!? げほ…!!」
深夜の海鳴市、とある陸橋下のゴミ捨て場。ゴミ袋が多数置かれている中、そこに金髪の男性が突き飛ばされていた。男性がゴミ袋の山の中で苦しそうに呻いているところに、2,3人ほどのサングラスをかけたスーツ姿の男達が不機嫌そうな表情で歩み寄ろうとしていた。
「旦那ぁ~、そろそろ年貢の納め時じゃありやせんかねぇ~?」
「こちとら3日も待ってあげたんですわ。そろそろ返すもん返して貰いやすぜ」
「ま、待ってくれ…!! もうちょっとで返せそうなんだ…せめて、あと1日だけでも…!!」
「その台詞、もう聞き飽きましたわぁ」
「返せないんやったら、違うもんで支払って貰おうやないか」
「ひぃ!? ま、待ってくれ!! まだ死にたくない…!!」
会話の内容からして、どうやらこの男達は
「…ッ!? う、ぁ…が…!!」
「あん?」
突如、金髪の男性が自身の首元を押さえて苦しみ始めた。スーツ姿の男達は何事かと眉を顰めるが、その表情はすぐに戦慄の表情へと切り替わる。
「お、おい……こいつ、変やぞ…?」
「ぐ、あぁ……はぁ…はぁ…!!」
金髪の男性の首元から、何やら青黒い血管のような物が浮かび上がり始めたからだ。彼の胸倉を掴んでいた男は慌てて手を離すも、既に遅かった。金髪の男性が全身から煙を噴き出した段階で、彼等はもう逃げるべきタイミングを完全に逃してしまっていたのだから。
「あ、ぁ、ぁ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…!!」
「「「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」」」
「―――!」
そんな男達の悲鳴を、確かに耳にしている者がいた。停めていた赤いバイクを背に座り込んだままペットボトルの水を飲んでいた1人の少女。後ろに一つ結びにした長い金髪、左耳に付けた氷の結晶型のピアスが特徴的なその少女は聞こえて来た悲鳴に反応し、近くに置いていたリュックサックのホルダーにペットボトルを入れ、リュックサックを背負ってから立ち上がり赤いバイクへと跨る。
(今の悲鳴……この反応……すぐ、近く…!)
ヘルメットを被り、ライダーグローブを身に着けた少女はバイクのエンジンをかけ、バイクのヘッドライトが青く発光。バイクに乗った彼女は男達の悲鳴が聞こえた方角へとバイクを走らせる。
「あ、あぁぁ…っ…!?」
場所は戻り、陸橋下のゴミ捨て場付近……そこは酷い惨状となっていた。スーツ姿の男達の内、1人は腹部を喰い破られて内臓が地面に飛び散っており、外れたサングラスの下は白目を剥いている。また1人は食い千切られた手足が周囲に放り捨てられ、喉笛を噛み千切られた状態で絶命している。残る最後の1人だけがまだ生存し、この惨状を作り上げた存在を前に恐怖で腰を抜かしてしまっていた。
「グルルルルル…」
その存在とは、先程までスーツ姿の男達に命乞いをしていた筈の金髪の男性……否、
「や、やめてくれ…!! お、俺等が悪かった、助けてくれ…!!」
「…グルァアッ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
男の命乞いも聞き入れず、ヒグマのような怪物は唸り声を上げて襲い掛かろうとする。男が泣きながら両腕で頭だけでも守ろうとしたその時…
「ッ……グガァ!?」
ヒグマのような怪物が、突如横から突っ込んで来た赤いバイクによって撥ね飛ばされた。ヒグマのような怪物が地面を転がる一方、赤いバイクで撥ね飛ばした張本人である少女はバイクを停車させ、命拾いした男に振り返る。
「へ…?」
「そこの、人……逃げて、下さい…!」
「へ? あ…ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
男が慌てて逃げ出していくのを見た少女はホッとした後、近くに広がっている惨状を見てすぐに悔しげな表情に変わる。その時、撥ね飛ばされたヒグマのような怪物が起き上がり、自身を撥ね飛ばした少女を睨みつける。
「グルルルルルゥ…!!」
「…あなたに、恨みは無いけど」
赤いバイクから降りた少女はリュックサックのチャックを開き、中から1本のベルトを取り出す。赤い中央部に白い目のようなコアユニットを持ったそのベルトは、少女の手で腰へと装着される。
「私は、あなたを、殺さなくちゃいけない…」
少女の左手に握られた黒い注射器型のユニット。少女はそれをベルトの中央部のスロットに装填し、スロットを上げてから注射器型ユニットを左手で強く押し込み、ユニット内部の怪しげな薬液がゴポゴポ音を立てながら注入されていく。
≪NOVA≫
「だから……ごめんなさい」
「…グルアァッ!!!」
低い電子音声が鳴り、ベルト中央部の白い目が青く発光。それと共に少女の瞳の色も茶色から徐々に澄んだ青色へと変化していく。それを見たヒグマのような怪物は何か危険な物を感じ取ったのか、目の前の少女を排除するべく高く吠えながら走り出す。そして…
「―――アマゾン!」
-ズドォォォォォォォォォォォンッ!!-
「グガァァァァァァァァァッ!?」
少女の全身から発せられた熱気と衝撃波が、ヒグマのような怪物を大きく吹き飛ばした。熱気と衝撃波を発した張本人はと言うと、噴出された煙の中からゆっくり歩き始める事でその姿を現した。
「ウゥゥゥゥゥゥ…」
血管のような黒いラインの入った黄金色のボディ。そのボディの各所に纏われた黒い装甲。手足や背中に生えた鋭い棘とヒレ。青色の複眼と、それを守るように覆われたバイザーのような装甲。
「…ウアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」
金色の戦士―――仮面ライダーアマゾンノヴァは、高い咆哮と共にヒグマのような怪物―――ヒグマアマゾンへと勢い良く飛びかかった。先程吹き飛ばされてから起き上がろうとしていたヒグマアマゾンは、飛びかかって来たアマゾンノヴァの膝蹴りを顔面に喰らい、再び地面に倒れたところにアマゾンノヴァが追撃のパンチを繰り出す。
「グルァァァァァァァァァァッ!!」
「ッ…アァァァァァァァァァァァァッ!!!」
顔面を殴られた反撃として、ヒグマアマゾンは再度殴りかかってきたアマゾンノヴァの拳を掴み、持ち前の握力で無理やりアマゾンノヴァを投げ払ってから素早く起き上がり、投げ払われたアマゾンノヴァも受け身を取って華麗に着地。突っ込んで来たヒグマアマゾンの振るった爪を寸前でかわし、ヒグマアマゾンの突っ込んで来た勢いを利用したアマゾンノヴァはヒグマアマゾンの腹部に強烈な肘打ちを炸裂させ、口から黒い血反吐を吐いたヒグマアマゾンがその場に膝を突く。
「ウゥゥゥゥゥゥゥ……ウアァ!!」
≪SWORD LOADING≫
ヒグマアマゾンが膝を突いている隙に、アマゾンノヴァはベルトのスロットに挿し込んでいるユニットを再度強く押し込み、電子音声を鳴らす。するとアマゾンノヴァの右腕の装甲が展開し、そこから刃物のような形状をした金色の物質が細長く伸び、アマゾンノヴァが腕を振るうと同時に刃物が一瞬にして超硬化。鋭利なソードと化したそれを構えたアマゾンノヴァはその場から跳躍し、立ち上がったヒグマアマゾン目掛けてソードの先端を突き立てていく。
「ウアァッ!!」
「ガァッ!! グ、ガァァァ…ッ…!?」
突き立てられたソードは、ヒグマアマゾンの喉元を勢い良く突き刺した。しかしそれでもヒグマアマゾンはしぶとく抵抗し、自身の喉元に突き刺さっているソードを両手で掴み、力ずくで引き抜こうとする。しかしそれを想定していたアマゾンノヴァは敢えて自身の身体をヒグマアマゾンに密着させ、突き刺したソードをより奥深くへ刺し込ませていき…
「ッ…アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」
そのまま真横に振るい、ヒグマアマゾンの首を勢い良く撥ね上げてみせた。首がおさらばしてしまったヒグマアマゾンの胴体はその場にドシャリと倒れ伏し、撥ねられた首が地面に転がり落ちた後、肉体が黒く変色した状態のままその生命活動を終え、ピクリとも動かなくなってしまった。
「ッ……ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」
ヒグマアマゾンの死亡を確認したアマゾンノヴァは、その全身から冷気を噴出し、煙の中から再び少女としての姿を現す。全身汗だくとなっている彼女は、赤いバイクの傍に置いたリュックサックから別の黒い注射器型ユニットを取り出し、その先端の針を自身の首元へと突き刺し、ユニット内部の薬液を注入する。
「ウゥッ…………ふぅ」
一瞬だけ苦しげな表情を浮かべるも、すぐに落ち着いた表情に戻る少女。彼女はリュックサックを背負い上げてから再度バイクに乗り、騒ぎになる前に現場から立ち去っていく…
「あ~あ、今回は先越されちゃったね」
少女が立ち去って行った後、その場にはまた別の人物達が姿を現した。黒い制服と黒いマスクを身に着けた男達がすぐさまヒグマアマゾンや男達の死体の周囲に集まり、火炎放射器で即座に死体を焼却し始めた。胸元の開いた制服と茶髪のポニーテールが特徴的な女性は、その様子を見ながら残念そうな口調で呟く。
「問題ありませんよ。彼女が仕留めてくれたのであれば、私達は隠蔽工作の作業だけで済みますから」
「けどさぁ~。殺すだけ殺しといて、残った死体は放置してオサラバって面倒じゃん? アタシ等が後処理にどんだけ苦労してるか知らないんだよあのガキは」
「…君のよくやる器物損壊に比べれば、まだマシな方ですよ。渦木さん」
女性の愚痴に呆れたような返事を返すのは、制服の上に防弾チョッキも身に着けた坊主頭の男性。右目に黒い眼帯を着けたその強面の男性は、少女が走り去って行った方角を見ながら告げる。
「しかし、所詮は彼女もアマゾンに過ぎません。もし彼女が同じように人喰いの存在となれば……その時は、彼女も私達の手で駆除しなければなりません。それは分かってますね?」
「はいはい、分かってるって黄島さん……お、作業終わった? そんじゃ今すぐ撤収ねぇ~♪」
「…お願いですから真面目に聞いて下さい」
茶髪のポニーテールの女性―――
(さて、“彼”の言葉通りであるなら今頃、あの組織もアマゾン駆除の為に動き出している筈……何事も無いまま順調に行けば良いんですが……“蝿崎さん”がやらかしてしまいそうですねぇ)
「こ、これは…!?」
OTAKU旅団アジト、
「あの姿、それに彼女が乗っていたバイク……何故“ジャングレイダー”を彼女が所持しているんだ…!? それにあの妙な連中も…」
アマゾンノヴァだけではない。残されたヒグマアマゾンや喰われた男達の死体の後処理を瞬く間に終えて撤収した謎の兵士達。彼等に対する疑問も大きかったが、どれだけ考えても謎は解明されそうになかった。
「一城様、間違いありません。あの少女が乗っていたジャングレイダー、
「!! …だとすれば……いや、まさかとは思うが……彼女の正体は…」
(やっと、ここまで来れた…)
赤いバイク―――ジャングレイダーに乗りながら、夜の道路を走り抜けていく少女。
「今から、会いに行きます……お父さん、お母さん」
彼女が両手に着けたライダーグローブ。
その表面には―――
―――
~NEXT TARGET~
「人間がアマゾン化する細胞だと…!?」
「原点となる世界では、これを溶原性細胞と呼んでいるようです」
海鳴市に出没し始める、謎のアマゾン達…
「『黒の騎士団』黄島隊、出動します」
そのアマゾンを狩るべく、動き出した謎の組織…
「君は、一体…?」
「やっと、会えました……お父さん!」
アマゾンである少女は、実の父との対面を果たす。
そして…
「お前、誰だ…!?」
「アマゾンなら、俺に喰わせろよ…」
≪BETA≫
「…アマゾン!!」
黒きアマゾンが、その姿を現す…!!
Episode2「BERSERKER」
To be continued…?
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Episode1「AMAZONZ」