何もないただ真っ白な空間で、何者かの声を聞き1枚のカードを手渡された。
そんな非日常的な体験をしたのは4年前・・・
そのときから僕の「従者」となったアルカナと名乗る物体は僕にいろいろなことを語った。
そんな非現実な出来事をすぐに信じることなどできなかったが、時間が過ぎるうちに違和感を感じなくなっていった。
僕、緒方啓一に与えられたカードは「女教皇(ハイプリエステス)」、能力は少し先の未来を見ることができるらしい。
僕はタロットカードについていろいろ調べた。いずれ始まる「タロット・ゲーム」にむけて少しでも対策を考えておきたかったからだ。
カードの種類、特性から能力を予測し考察する・・・そして、自分の能力でそれに勝てるのかも考察する。
概ね得られる考察結果はこうだ。
「少し先の未来がわかるだけでは相手を倒すことはできない。」
4年間、何度となく想像しつづけ得られた回答。僕は自分の能力に絶望していた。勝てないのだ、この能力では・・・
しかし、ゲームが始まらなければ僕の日常は何も変わらない。この4年間、僕のようにアルカナを従えた人物を見たことがない。
そもそもプレーヤーがどこにいるのかがわからないこのゲームで、プレーヤー同士が出会うことがあるのだろうか?
ある日、そんな僕の日常が終わった。
アルカナ「すべてのプレーヤーが揃った。タロット・ゲームが開始される。」
啓一「えっ・・・?」
アルカナの発言に耳を疑った。4年間、起こることのないことと思いながら過ごしてきた非現実な出来事が本当に始まるというのだ。
僕は背筋に悪寒が走るのを感じた。このままではまずい、対策を考えないと・・・
アルカナ「ゲーム開始に伴い封印されていたカードの能力が解放された。これからは自由に行使できる。」
啓一「な、ならどんな能力か実際に使って確かめないと・・・っ!」
僕は焦りながら、カードを手に取る。しかしどう使えばいいのかわからなかった。
アルカナ「カードの絵柄を正しい向きにして発動するのが『正位置』、逆に向けて使うのが『逆位置』。まずは正位置で使うといい。」
アルカナ「カードに念を込めれば能力は発動する。」
啓一「念を込める、ね・・・簡単に言う。」
僕は手にしたカードに念じる。それに応えるようにカードが光りながら自分の体内に入りこんでいった。
アルカナ「それがカードの能力が発動した状態。」
啓一「へ、へぇ・・・普段とあまり変わり・・・は・・・?」
違和感を感じた。身体が自分のものじゃないような、そんな違和感。
アルカナ「女教皇の能力を男性が発動すると、身体が女性化する。」
啓一「そんなこと一度も聞いてないんだけどっ?!」
違和感の正体はそれだった。本当に身体が女性のものに変わっているのだ。
啓一「最悪だ・・・ただでさえ能力が頼りないのに身体までこんなになるなんて・・・」
アルカナ「『恩恵』のことを忘れたわけではあるまい?」
啓一「能力発動中に得られる身体能力の強化ってやつね・・・」
アルカナ「恩恵を得たプレーヤー同士の身体能力は同等。」
啓一「ならなおさら能力の性能や相性がものをいうんじゃないか・・・」
啓一「・・・ところでこれ、どうやったら元に戻れるの?」
アルカナ「念じよ。」
啓一「あ、はい・・・」
心の中で「能力止まれ」と念じると身体の中に入ったカードが出てきた。僕の身体も元の男に戻った。
啓一「・・・まずは他のプレーヤーと出会わないようにする対策が必要だな・・・」
僕の戦いは「逃げる戦い」。出会わず、隠れ、逃げ延びる・・・
命の危機を感じたら譲渡すればいいとも思ったが、カードを手放さないほうが生存確率は高い。そういうルールがあるからだ。
これが僕にとってのタロット・ゲームの始まり。この先何が起こるのかは、この時点の僕は何も知らない・・・
Tweet |
|
|
1
|
0
|
追加するフォルダを選択
小説とは言い難い稚拙文章