No.909801

タロット・ゲーム プロローグ1

小説とは言い難い稚拙文章

2017-06-11 23:15:19 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:445   閲覧ユーザー数:443

そこは静かで暗い場所だった。

 

奥深くに何者かが佇んでいる。

 

 

「コッ、コッ、コッ…」

 

 

足音が空間に響く。この部屋の奥にいる者に向かっていた。

 

おそらくは部屋の主と思われる者が声を発する。

 

 

「ようやく、揃ったか・・・」

 

 

足音が止まり、その言葉に返答する。

 

 

「はい。最後の一人がようやく見つかりました。」

 

 

暗くてお互いの姿は確認できないが、両者は主従関係にあるようだ。

 

 

「1000年・・・長かったぞ・・・だが、ついに・・・」

 

「始まるのですね・・・」

 

「ああ、我が悲願・・・ついに叶う時が来たのだ・・・」

 

 

部屋の主は静かに笑う。今はまだ、何もわからぬまま・・・

女の声「あ~、バイトだりぃ~」

 

気怠そうな声でそういいながら街をあるく女が一人。

彼女の名は三村かつき。フリーターの21歳。

 

かつき「でも働かないと食っていけない世知辛い世の中だしなぁ~」

 

口ではどうこう言いつつもやることはやる。

 

そんな日常をこれからも送るはずだった。

 

 

瞬間、目の前が真っ白になる。

 

かつき「うわっ、なんだ?!」

 

音もなくただただ白い空間に一人。いったい何が起こったのか彼女には理解できなかった。

 

そしてどこからともなく声が聞こえてきた。

 

「君は選ばれた。このタロットカード『世界』の所有者として。」

 

かつき「はぁ?」

 

かつきは何のことかまったく理解できていない。だが声はそのまま話を続ける。

 

「お前はこのカードの力を使い、最後の1人になるまで戦うのだ。」

 

かつき「カードを・・・使って・・・戦う・・・?何いってんの?」

 

状況をまったく呑み込めていない。誰だって突然こうなれば当然の反応だと思う。

 

「すべてのカードを手に入れたものはどんな願いも叶えられる。」

 

かつき「どんな願いも・・・?」

 

そこだけは食いついた。

 

「今、すべてのプレーヤーが揃った。これより『タロット・ゲーム』が始まる。己のすべてを賭けて挑むがよい。」

 

かつき「はぁ?知らねぇよそんなの!勝手に人を巻き込むな!」

 

今日一の自己主張も声の主には届かなかった。

 

「プレーヤーには従者をつけている。わからぬことはその者に聞くがいい。では、健闘を祈る。」

 

刹那、あの真っ白な空間は消え元の街並みに戻っていた。

 

ただ一つ違うのはかつきの手に1枚のカードが握らされていたことである。

 

かつき「・・・なんだよ、これ?」

 

『世界』と書かれたタロットカードとおぼしきもの。それ以上のことは今はわからなかった。

 

かつき「なんだよ・・・なにがどうなって・・・タロット・ゲーム?従者?願い事?わかんねぇことだらけだぞ・・・」

 

すると背後から妙な声がした。

 

声「お困りかな、主よ。」

 

かつき「!?」

 

声に気づき振り向くと、そこには白い板状の物が浮いていた。

 

アルカナ「我が名は『アルカナ』、タロット・ゲームのプレーヤーに従属する存在。」

 

アルカナ「主は何が知りたい?答えられる範囲で答えよう。」

 

かつき「・・・・・・」

 

かつきは目の前の存在を受け入れられていなかった。

 

かつき「お前・・・何?」

 

アルカナ「我が名は『アルカナ』、タロット・ゲー」

 

かつき「それはさっき聞いた!」

 

アルカナ「ではまず、必要最低限のことを説明しよう。まずタロット・ゲームとは」

 

かつき「待て待て待て待て・・・っ!」

 

アルカナ「何か?」

 

かつき「バイトがあるから話はそのあとだ・・・」

 

ひとまず目の前の状況から切り替えるためにバイトを逃げ道に選択した。

 

アルカナ「了解。事が済み次第ゲームの説明に入る。」

 

かつき(・・・きっとこれは白昼夢かなんかだろ。バイトでもしてれば何事もないいつもの生活に戻れるさ・・・)

 

アルカナ「などと考えているようだが状況は変わらないと警告しておく。」

 

かつき「人の心読んでんじゃねーよ!」

 

早足でバイト先に向かい、いつも以上にバイトに専念するかつき。何かを忘れようとするがごとく一生懸命働いた。

 

だが、それで全てがなかったことになどならなかったのだ・・・

アルカナ「ではまずタロット・ゲームのルールから説明しよう。」

 

かつき「・・・好きにしてくれ・・・」

 

バイトが終わって自宅までダッシュで帰宅したかつきを待っていたのはこの謎の存在アルカナだった。

そして、すべてをあきらめアルカナの話を聞くことにした。ただし受け入れるとは言ってない。

 

アルカナ「タロット・ゲームとは名の通り22枚のタロットカードを使い、それを奪い合うゲームだ。」

 

アルカナ「カードは両者の承諾による譲渡や能力使用者を倒して奪いとる。能力を使用していないプレーヤーを倒してもカードは得られないので注意が必要だ。」

 

かつき「その能力?を使ってない奴を倒したらそいつのカードはどうなんの?」

 

アルカナ「倒された者が所有権を保持したままになるので、22枚のカードをそろえることは不可能になる。」

 

かつき「じゃあ、能力?を使ってないかぎりは襲われないってこと?」

 

アルカナ「ルールの抜け道を見つけそれを悪用しなければ。」

 

かつき「つまり普通にしてても襲われる可能性はあるってことか・・・」

 

アルカナ「能力についてだが、各タロットにはそれぞれに正位置と逆位置との2種類の能力がある。どちらが適正かはカードによって違う。」

 

かつき「その能力なんだけど、あんたは22枚のカードの能力全部知ってんの?」

 

アルカナ「知っているが教えることはできない。他のプレーヤーの能力を教えることは主が実際にその能力を見るまでは禁じられている。」

 

かつき「対策も打てねーのかよ・・・って、そういえば昼間「すべてのプレーヤーがそろった」的なことを聞いた気がするんだけど・・・」

 

アルカナ「うむ。主が22人目のプレーヤー。1000年間見つからなかった『世界』の適合者だ。」

 

かつき「1000年?!そんな前からやってんのかよこのゲーム!?」

 

アルカナ「否。ゲームは22人揃うまで始まることはない。カードはその都度所有者を変えてゲーム開始を待ち続けたのだ。」

 

かつき「じゃあ、私以外の21人は自分のカードの能力を・・・」

 

アルカナ「主が懸念していることは他のプレーヤーがすでに能力を使いこなせるようになっていることだろう。」

 

かつき「・・・だとしたら勝ち目ねーじゃんよ。」

 

アルカナ「それもルールで指示されている。『すべてのプレーヤーがそろうまでカードの能力は使用できない。』と。」

 

かつき「つまり私も含めて22人全員が能力については初心者ってわけだ。」

 

アルカナ「そういうことになる。」

 

かつき「確認だけど・・・このゲーム、負けるとどうなる?」

 

アルカナ「負傷して降伏を認めればカードが相手に渡る。だがプレーヤーとしての権利は完全に決着がつくまでは維持される。」

 

かつき「譲渡、の可能性があるからか?」

 

アルカナ「そういうことだ。」

 

かつき「でも・・・死んだら終わりだよな・・・?」

 

アルカナ「うむ。」

 

かつき「わかったような、わからんような・・・」

 

 

そんな1人と1枚の会話は夜遅くまで続き、かつきはうやむやながらに事実を受け入れようとしていた。

 

これから始まるゲームとは名ばかりの「殺し合い」を今はまだ知らないままに。


 
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