[断罪の果て 辿り着く] 2010/5/1 公開
今の私に光はなく 音もない
舌は削がれ
目は抉られ
耳はもがれ
皮膚は爛れ落ちた
人間を闇へと引き摺り込んでいた悪魔たる私
人間を光へと導いていた天使たる貴方
禁忌を犯した二人
神の怒りに触れ 私達には罰が与えられた
人間の罪を代わりに贖うこと
その鎖を我が身に集わせるのは貴方
責め苦を味わうのは私
出会った時から結末は分かっていた
諦めようとした貴方を引き止め
甘美なる堕落へと誘い込んだのは私
悪魔の欲望に果てはない
貴方を手元に置き続けるには裁かれるしかなく
巻き込み貴方と共に此処に居る
身体が失われても意思は残されている私
貴方はそんな私を見て涙を幾度となく流す
自らが私を汚さねばならぬ重荷に喘ぎ
此の身が唯の肉の塊となっていく恐怖に懺悔し
絶えることなく流れ続ける鮮血の中
時折感じる貴方の嗚咽
嘆くことはないと伝えたい でも
声を奪われた私に告げる言葉は紡げない
だから気付いて
私は望んで此処に居る
だから赦して
貴方を手放せなかった此の私を
だからお願い
ずっと私を殺し続けて
二人を繋ぐ罰の枷が
永劫決して解け得ぬように
[シアワセの先] 2011/4/3 公開
幸せを探しても見付からない
あなたの瞳は 美しい景色を映す為にある
幸せを求めても得られない
あなたの手は 他者へ差し伸べる為にある
夢が叶うことを願うなら
待つより自分で それを為せ
愛が与えられることを望むなら
自ら先に 皆を愛せ
誰に想い通じずとも
誰に声届かずとも
怠けず 驕らず
進むべき未来を歩め
道分からぬ時は 自ら切り開け
先が見えぬ時は 自ら光となれ
用意された終着地なんて
約束された未来だなんて
蹴散らしてしまえばいい
幸せの先 最後の場所へ行き着いた時
たとえあなた一人であっても
辿り着いたのならばそれでいい
あなたが在ればただ それだけでいい
[魂の産声] 2011/8/20 公開
魂の あらん限りと声高に 聴きて蝉声 逝きて蝉蛻
[春の君] 2012/4/7 公開
咲きて儚き春の君
散りて愛しき花霞
風に聞こえし彼の人の
幸の音(ね)誘(いざな)う我が頬に
零れる雫 映える薄紅
[金の亡者の成れの果て] 2013/2/26 公開
金は天下の回り物
セレブ 成金 大富豪
美人の嫁さん 立派なお屋敷
それがどうしてこうなった
金の切れ目は何とやら
バブリー オイリー 大不況
逃げた嫁さん 雨漏りあばら屋
何がなじょしてこうなった
地獄の沙汰も金次第
棺おけ 戒名 銭次第
金の亡者の成れの果て
次はお金に生まれたい
[しるべ] 2013/3/3 公開
命ある限り 友よ
我らの道は必ず交わる
もし此方叶わぬことあらば
彼方きっと見(まみ)えよう
今世の別れは来世の約束
互いの絆が道標
[君の見る色] 2013/4/14 公開
君の瞳に映る私は何色?
青に煌めき 赤に燃えて
揺蕩う色の海の中
私を見付けて欲しい
君が見上げる私は何色?
蒼に輝き 朱に染まって
さざめく色の天の果て
私を見出して欲しい
降り積もる雪
星纏う夜
芽生える新緑
散り咲く花々
どれもが君の世界を彩る
君が見つめる私は何色?
どの私も君のもの お望みのままに
君が心を失わぬ限り
その世界から 色が消えることはない
[紅涙] 2013/5/18 公開
凍れこれこそ 私が生きていく世界
通れとれない あなたの温かい心臓(しんのぞう)
凍り付いた夜のしじま 闇に溶け込む姿
通りに煌めくだんびら 獲物を求め鳴る
ご心配なさいますな 狩るのは命だけ
瞬きの間に全て 終わらせてみせまする
ご抵抗なぞ無駄な足掻き どうぞおとなしくなさいまし
痛みを感じる暇もなく せめての情けなれば
ご覧の通りこの刀 血に飢え狂うて仕方なし
紅き飛沫浴びとうて 嗚呼この鍔震えておりまする
凍り付きそうに冷たい 刀持つ死人(しびと)の手
通り打ち付ける雨粒 この身を突き抜ける
覚えはございませぬか この顔この声に
愛でられ斬られ捨てられたあなたの妾です
恨めしくも愛しい御方 お伝えせねばなりますまい
あなたがお使いになったこの刀の真実を
惨たらしく殺された剣客(けんかく)の怨念乗り移り
斬られれば呪いの餌食 血に酔う修羅と成り果てまする
逃れる術(すべ)は一つだけ
愛しいあなたを斬り
血と心臓を供物として捧げればいい
凍り付いたかの如く動かぬ頸に刀滑らせ
通り一面に緋色の雫が降り注ぐ
不安は無用にございます あなたの心臓とりませぬ
呪いは消えずにいつまでも 私がお傍におりまする
[澪標] 2013/5/18 公開
見よ 力強き姿
絶望打ち払う剣
民に希望与える
讃えよ 我らが王を
聞け 天高く響く声
慈愛に満ちた調べ
民に光授ける
栄えよ 我ら王の御代
時代変われど人は変わらず
盲目のまま救いを求める
王よ ただ誠実に堅実であれ
伸ばされる手の為に
新たなる幕開け 未来へ続く扉
誉れよ民よ 今こそ切り拓く時
[過去と未来] 2013/5/22 公開
過去の君に一つだけ伝えたい
黄昏時の帰り道 桜舞う頃
毎日行くカフェの店長のこと
想いを寄せてるってそりゃ知ってるけど
店が閉まる頃 見計らい
いつも裏口で彼を待つ
恋心 手作りの菓子に込め
彼に渡すのが至福の時
桜舞い散るあの夜 いつもより遅い時間
紅(べに)に染まるあの人 倒れている女性
鈍く光るナイフ 彼が振り返る
それから先は真っ暗闇へ真っ逆様
気をお付け
未来の君に一つだけ話したい
夕暮れ時の帰り道 雪舞う頃
毎日避けてるカフェの店長のこと
恐怖を抱(いだ)いてるってそりゃ知ってるけど
学校が始まる頃 見計らい
いつも校門で彼が待つ
恋心 手書きのカードに込め
彼に渡されるのが最悪な時
雪舞い落ちるあの朝 いつもより早い時間
白に染まるあの人 倒れてしまう君
鈍く煌めくナイフ 彼が微笑む
それから先は真っ赤へと一直線
気をお付け
桜舞い散るあの夜 いつもより遅い時間
紅(べに)に染まるあの人 倒れている女性
鈍く光るナイフ 彼が振り返る
それから先は真っ暗闇へ真っ直ぐ真っ逆様
雪舞い落ちるあの朝 いつもより早い時間
白に染まるあの人 倒れてしまう君
鈍く煌めくナイフ 彼が微笑む
それから先は真っ赤へと一直線
逃げられない
[託す心] 2013/7/1 公開
天を翔け行く空の旅人よ
名も知らぬ 風纏いし翼よ
お前に言伝を託そう
どうか届けておくれ
異国の空の下 声届かぬあの人へ
蒼を揺蕩う海の踊り子よ
姿見えぬ 水跳ねし尾よ
お前に愛を渡そう
どうか水底に沈めておくれ
異国の海の奥 光届かぬあの人へ
最後の朝 震えるあの人の両手が肩に触れた
引き留めることは叶わない
「誰が言えよう 国の為でなく君の為と」
彼の最後の言葉 今も耳に繰り返す
消えてしまうまで見送った背中
陽炎に融けた恋しい人の後ろ姿
今も思い出すのはただそれだけ
涙隠した笑顔が別れの挨拶
だからどうか 人ならざる者達よ
この祈りを届けておくれ
器失いし時まで待って欲しいと
心はきっとあなたの元へ伺いますと
[折れて始まるもの] 2012年ポッキークリエイターズ応募作
2012年ポッキークリエイターズ応募作
参照:http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=30499640
「あげる」
後輩はPCから顔を上げ目を瞬かせると、私が差し出したポッキーの小袋を胡散臭げに見下ろす。
「賞味期限切れですか?」
「おいこら」
営業部に2年前に入って来たこの若造は、お口も生意気だが態度も相当なものだった。それでも最近の若い奴にしては珍しく骨のある男で、課長に嫌味を言われようが部長に怒鳴られようが、激昂した取引先に水をぶっ掛けられようが翌朝必ず出社していた。大した奴だ。
だからまぁ、そろそろ認めてあげてもいいかなとは思う。
「ま、いいです。丁度甘い物欲しかったんで」小気味良い音を立てポッキーを齧る。そうして全部平らげたところで、「ね、先輩。もっと欲しいんですけど」
「残念でした。今ので最後」
「あるじゃないですか、オレの目の前に」
見下ろしていた筈がいつの間にか見上げていて、気が付けば後輩の顔が間近にあって。
「……ほら、凄く甘い」
触れた唇は、チョコの香り。
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