「やっぱり、良いことがあったんだ」
「う、うるさいぞ」
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マイ「艦これ」「みほ2ん」
第33話 <炎天下>(改2)
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お台場公園では日向が妖精に索敵の指示を出しているのが聞こえる。
「境港の岸壁は陸軍が作業中で憲兵もいるから基本除外だ。旧市街、特に路地を中心的に索敵せよ。なお発見時には目標物の固有名詞、特徴は伏せること」
私は駐車場の軍用車に戻り無線機を助手席に設置した。電源を入れると陸軍や空軍の無線に混じって美保鎮守府と大淀艦隊の交信も混じるようになった。
「島風ちゃん、速いわ」
「えぇ? 皆が遅いんだって」
「担架だからな、もうちょっと抑えてくれ」
「ぶー」
「あと半分よ……皆、頑張って」
既に大淀艦隊は美保関沖の敵と最接近する地点を無事に通過したようだ。
「敵の空母二隻は動かないか……」
私はふと思った。あの敵の艦隊は大淀艦隊がもし深海棲艦(大井・仮)を拿捕して連れて帰った場合には強引に奪還する攻撃を仕掛ける意図があったのでは?
「それが寛代と夕立だったから……」
それで敢えて見逃しているのだろうか?
私は運転席で腕を組んだ。
公園の芝生の上では日向が交信をしながら索敵を続けている。
軍用車が停まっている駐車場はちょうど建物の陰になっていた。この日陰は境水道を渡る風が通り過ぎるから意外と涼しい。
入り混じる無線を聞きながら私は考えた。実際のところは分からないが連中は確実に私たちの交信を傍受しているだろう。それは先日、あの青年将校の実施した作戦を思い出せば、十分立証されるだろう。
「まさに情報戦か」
気付けば太陽は、ほぼ真上に来た。
「今日も暑いな」
そういえば、あの深海棲艦は日向に強く打ちのめされていた。その上で逃げ出したのか。
「大丈夫かな?」
敵ながら心配になる。
「この炎天下に、この気温だ。弱った身体では、どこへ逃げても大変だろう」
まして、さほど遠くに行けるとも思えない。
詳しくは知らないが深海棲艦という名のごとく、あいつらは深海のようなところから来たのか?
「もし、そうだとすると、この真夏の地上に居るだけでも拷問みたいなものだな」
私は助手席の上に一人分だけ残ったサンドイッチを見ながら呟く。
「あいつも、お腹すいてるだろうか? ……このサンドイッチ渡したら食べるかな?」
だが私は直ぐに苦笑した。
「バカバカしい、頭を冷やせ!」
思わず制帽を取った。
「そもそも話し合って通じる相手では無いのかも知れない」
私は……自分の立場で出来ることを精一杯するだけだ。
無線は、いろいろな通信を傍受し続けている。美保関沖の敵の空母機動部隊は、ずっと動かないらしい。
時折かなり小さな敵機が単独で比較的上空を横切る。まるで対空砲火を刺激しないように用心して飛んでいる感じだ。
「妙に慎重だな……やはり連中も深海棲艦を探しているんじゃないか?」
もし逃げた「彼女」がまだ境港の旧市街の何処かに留まっているとすれば?
敵の航空機は、このエリアには近づけないのが現状だ。すると敵より先に私たちが発見出来る可能性が高い。
陸軍も、まだ境港の岸壁での残骸回収でバタバタやっているし……この無線機は軍用だから特別な暗号通信もある程度は傍受できる。日向と妖精のやり取りもちょうど入ってくるな。
「駅周辺は特に問題なし」
さっそく妖精からの通信だ。
「了解」
日向は、きびきび答えている。
「なあ、日向」
「何だ」
「良いことあったんだろう? ハルにも教えてくれよ」
「お前には関係ない」
すると別の妖精の通信が入る。
「関係ないって言うからには、やっぱり良いことがあったんだ」
「う、うるさいぞ」
珍しく日向が感情的になっている。
「まあまあ……」
ちょっと間が空いて
「ハルも良いことあったぞ。墓参りが終わったら今日は神社で盆踊りだな」
「……」
日向が、こちらを向いて手を振っている。
「なるほど、一種の暗号か」
私も手を上げて応えた。
彼女は妖精に指示を出す。
「ハル、そのまま上空で待機」
「ラジャー」
ハルの返事を受けて、こちらに向かって駆けくる航空戦艦。夏の芝生の上を飛行甲板を装着した艦娘がやって来るというのは、なかなか絵になるな……いや、それは、どうでも良いことか。
彼女は報告する。
「司令、発見です」
私も応える。
「あのハルとか言う妖精、しっかり仕事は、するんだな」
彼女は苦笑した。
「口は悪いですが、能力はあります」
「そうらしいな」
私はエンジンを始動させた。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ2ん」とは
「美保鎮守府:第二部」の略称です。
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暑い日差しの中で索敵が始まる。しかし司令はなぜか「敵」の心配を始めるのだった。