みんな、おはよう。
俺は聖フランチェスカの二年生で所属クラブは剣道部員、成績は良く見積もって中の上ぐらい、運動は結構出来るほうだ。今は学生寮で一人暮らしだが、実家の爺ちゃんが剣術道場を経営(所持?)しており、昔から鍛えられてきたのでそこら辺のチンピラ程度なら三人相手にしても勝てるぐらいの腕は持ってると思う。
自己紹介はここまでにして、みんなに質問がある。昨日自分の部屋で寝たはずなのに目が覚めると見たこともない場所が目の前に広がっていたら、人はまずどんな反応をすると思う?答えはこれだ。
「なんじゃこりゃーーーーー!?」
・・・・・・とりあえず俺の場合はこうだった。
ちょっと待て!! 落ち着け、俺!!とりあえずもう一度周りを見渡してみよう。そしたらなにかわかるかもしれない。
・・・・・・見渡す限りの地平線、砂の混じった乾いた風、黄色い大地、遥か向こうにみえる壮大な山々。
・・・・・・いや、おかしいだろ!!もう俺の部屋じゃないとかそれ以前の問題だよね!?すでに日本じゃないよね、ここ!?田舎のほうにいってもこんな景色はないよね!?
・・・・・・OK、もう一回落ち着こう。深呼吸、深呼吸、スーハースーハー・・・。
よし、とりあえず昨日の行動を思い返してみよう。そしたらなにかわかるかもしれない。
昨日学校に行った後、部活に行く前に「かずピー、俺これからデートやねん。羨ましいやろ~」とかほざいてた及川を殴っておいた。うん、ここまではいつも通りだ。
部活終わった後、普通に帰宅、飯食って、夜の鍛錬(実家での習慣)をして、風呂に入って、寝た。うん、普通だ。どこにも問題はない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
じゃあ、なんでこうなってんの!?・・・・・・余計わからなくなった・・・・・・
あっ・・・そういえば寝る前に変な銅鏡が送られて来てたっけ。送り主がわからなくて怪しかったけど、鏡ひとつでこんな事にはならないしなぁ・・・
「おい、そこの兄ちゃん」
はっ!!まさか及川の呪い!?って、んなわけないか・・・
「おい!無視してんじゃねえぞ!!このガキ!!」
「へっ?」
おっと、考え込んでしまって誰かに話しかけられているのに気付かなかった。とりあえず俺はその声の方へ振り返った。
「・・・・・・・」
そこにいたのは特徴的な男の三人組だった。一人はチビでもう一人がデブ、残りの一人が二人の兄貴分って感じで三人とも昔の中華風の盗賊みたいな格好をしていた。昔の盗賊なんて見たことないけど。
(・・・コスプレ?)
怪しい・・・でも人は人。ここがどこなのか訊いてみよう。ついでに服装のわけも。
「あ、あの、すいません、訊きたいことがあるんですけどいいですか?」
「ん?・・・なんだ?」
ちょっとイラついているような感じはするけどまあいいか。とりあえず訊いてみよう。
「ここってどこですか?それとその格好はコスプレですか?」
「はぁ?なに言ってんだ?てか、こすぷれ?」
「な、なに言ってるかわからないんだな。」
チビとデブが首をかしげてる。兄貴分は俺の質問でさらにイラついたようだ。えっ、俺なんか悪い事した!?
「まあ、そんなことはどうでもいい。今、俺は一仕事終えたばかりで少しばかり機嫌がいいんだ。とりあえず金目のものもそのキラキラ光ってる服も全部渡しな。そしたら命だけは助けてやる。」
シャキン
「へっ?」
兄貴分は腰の剣を抜いて俺の喉元に向けた。ってこれ真剣じゃん!!銃刀法は・・・日本じゃないから関係ないのか・・・。
焦って頭にのぼっていた血が引いていく。・・・そういえばいつの間に制服に着替えたんだろ?昨日はちゃんと着替えたはずなのに、ってそんな事は今はどうでもいい!!
「へへっ、このガキ、ビビッてやがる。」
「だな、だな。」
いや、確かにビビッタけどもう今は冷静になってるよ。とりあえずこいつらはそんなに強くないけど丸腰で三人相手だと結構きびしいな・・・どうしようか・・・
どうやってこの場面を切り抜けるか考えていたそのとき―――
「待て。」
――その声が聞こえた。
「誰だ、てめえは!?」
声の主の格好を一言で表すなら『魔術師』のようだった。黒のマント(ローブか?)を纏いフードをかぶり布で顔を隠しているので、真紅の眼と白銀の前髪以外は隠れて見えないが、声の感じからして女性だという事がわかった。そしておそらくこの人は―――
「答える必要はないし、お前らのような屑に答えたくはない。」
「な、なんだと~、てめえら、やっちまいな!!」
「へいっ!!」「だな!!」
―――強い。
まず、チビが小剣で切りかかったが、軽くかわして蹴りをいれて吹っ飛ばす。その間にデブが斧を振りかぶったが、その時にはすでに懐に入り一撃を喰らわせ、吹っ飛ばす。
「げはっ」
「ぶふっ」
どさっ、どさっ
チビとデブは兄貴分の傍に落下した。
「・・・やっぱり雑魚だな。」
そういって一歩近づく。
「てっ、てめえら!!退くぞ!!」
「へ、へいっ。」
「だ、だな。」
そういって三人は脱兎の如く逃げていった。・・・助かった・・・とりあえずお礼を・・・
「逃がさん。」
・・・・・・へっ?
「お前らの身包みを置いて逝けー!!」
ええぇーー!!この人もそういう人!?俺は標的にされてないからまあいいんだけど・・・。というか漢字が少し違う気が・・・ってもういない・・・あの三人を追いかけていったようだ。
そしたまたひとりぼっち・・・べ、別に寂しくなんかないんだからね!・・・はぁ・・・
「大丈夫ですかー?」
「えっ?」
声の方を見てみると、そこには女の子の三人組がいた。(決してさっきのチンピラ三人組ではない!)
それにしても、三人とも中華系というかなんというか・・・少なくとも日本じゃ普通は見ない格好だ。何かのアニメやゲームのコスプレとかでも・・・ないと思うんだけど・・・。
「待ちなさい、風。まだこの人が危険かどうかもわかってないのに、どういうつもりですか?」
「・・・ぐぅ~」
「寝るなっ!!」
「おぉっ!?」
「あまりに予想道理な質問についうとうとしてしまったのです~。」
「・・・私に喧嘩をうっているのですか・・・。」
・・・見事な?漫才をやってのけた二人。突っ込みをした女の子は、茶髪で眼鏡をかけていてきりっとした眼つきをしていて、風と呼ばれたボケ役の女の子は栗色の長い髪の少し小さめで頭の上に何か変な物体を乗せている。あれは・・・太陽の塔?
「おうおう兄ちゃん、俺に目をつけるなんて、いったいどういうつもりだぃ?」
・・・それ、しゃべる設定なのね、というか腹話術だろ。
「まあ落ち着け。もしもの時は私の槍に任せればよいではないか。」
「・・・それもそうですね。」
そう言ったのは紅い槍を持った薄い青の髪をした女の子。たぶんこの子も強い。その証拠に眼鏡の子もすんなり納得した。
「それにしても災難だったな。我等の連れが間に合ったのが不幸中の幸いか。」
「この辺りは盗賊は比較的少ない地域なんですが・・・」
少ない方って・・・ここらへんにはあんなのがたくさんいるってことなのか?やっぱり日本じゃないのか?でも言葉は通じてるし・・・さらによくわからなくなってきた・・・。
とりあえず彼女たちはさっきの奴らと違ってこちらに敵意はなさそうだし、色々訊いてみよう。
「えーっと・・・風、さん?」
「・・・ひへっ!?」
「貴様・・・っ!」
――シャキンッ
「へっ!?」
ちょっ、なんで槍を向けられてんの、俺!?なんか悪いことした!?
「おぬし、どこの世間知らずな貴族かは知らんが・・・いきなり人の真名を呼ぶとはどういう了見だ!」
「へっ!?真名!?」
「て・・・っ、訂正してください・・・っ!」
「えっ!?えっ!?」
「訂正なさい!!」
「うぅぅ・・・っ!」
・・・よくわからないけど真名っていうのは胸や裸を見られたりするのと同義なんだということだけはわかった。
「・・・わ、わかった、ごめん!訂正する、訂正するから!だ、だからその槍をひいて・・・!」
「・・・結構。」
そういって、青い髪の子は槍を引いてくれた。それにしても速かった。反応が全く出来なかった。
「はぁー・・・」
「はふぅ・・・いきなり真名で呼ぶなんて、びっくりしちゃいましたよー。」
「おぅおぅ兄ちゃん、いきなり真名を呼ぶなんて大胆じゃねぇか。」
「す、すいません・・・。」
・・・なぜ俺は太陽の塔もどきにまで謝っているのだろう・・・
「真名・・・ねぇ・・・。じゃあなんて呼べばいいの?」
とりあえず真名は初対面でいきなり呼んではいけない。これは覚えた。
「はい、程立と呼んでくださいー。あとこの子は宝慧ですー。」
「今は戯志才と名乗っています。」
・・・程立ちゃんはともかく、戯志才さんの方は偽名ですって言ってるようなもんだよな・・・。それにしても程立と戯志才・・・どこかで聞いたことのあるような・・・。太陽の塔もどきはどうでもいいや。
「おぅおぅ兄ちゃん、俺だけその扱いはどうなのよ?」
「・・・すいません。」
・・・オブジェクトに心を読まれた・・・。
「我が名は趙雲と申す。」
「・・・へっ!?」
落ち込んでいた思考が一瞬止まった。
「?どうかなされたか?」
「い、いや・・・」
趙雲って、あの三国志とかに出てくるよな・・・そういえば他の二人の名前も三国志関係で聞いたような・・・
「えっと、ちょっといい?」
「なんですかー。」
「その名前って偽名・・・かどうかはいいとして、通称とかコスプレネームとか源氏名とかじゃないんだよね?」
「こすぷ・・・?」
「えーと、つまりどんなときでもそういうふうに名乗ってるんだよね?」
「当然、我が名はそれ以外はありえぬゆえ。」
「じゃあ、親が三国志好きだったとか?」
「三国志?なんですかな、それは?」
・・・へっ?
「稟、お主は三国志なるものを知っているか?」
「いえ、聞いたこともないですね・・・風は?」
「いえー、風も聞いたことがないのですよー。」
・・・三国志を知らない?あんなに有名な物語の名前すら聞いたことがない?ならなぜ『趙雲』という名前をつけたのか?
ここで俺の思考はとても馬鹿げた、しかしこの状況を明確に説明できる答えに向かって行った。
「・・・まさか」
「どうかしたのですか?」
「えっと、もう一ついいかな?」
「?いいですよー。」
「もしかして今、後漢王朝だったりする?」
「「「・・・」」」
こう言った瞬間三人は沈黙した。そして―――
「何を言うかと思えば・・・」
趙雲さんが呆れたようにしゃべりだす。
・・・そうだよな、いくらなんでもタイム・スリップなんてこと起こるわけ―――
「そんな当たり前のことをお聞きになるとは・・・」
―――あっちゃいましたー。だけどもし本当にタイム・スリップだとしても―――
「―――どうしてあの趙子龍が女性なんだ・・・?(ボソッ)」
「!?お主、なぜ私の字を―――」
「ただいまー。」
その時、さっき、チンピラを追いかけていったマントの人が戻ってきた。とりあえず口元の布は取ったみたいだ。
それにしても、盗賊たちが逃げていった方向と違う方から帰ってきたのはなぜ?
「おかえりなさいー、銀(イン)ちゃんー。遅かったですけど、さっきの盗賊さんたちはどうしたんですかー?」
「うん、金目のものをあんまり持ってなさそうだったから、恐怖を与えるように追いかけて、楽しんでたんだけど・・・」
・・・S(サド)だ・・・この人、結構なSだ・・・
「・・・馬でも使われたのですか?」
「うん、それでも追いつけるから、しばらくそのまま追いかけていたらなんか飽きてきて・・・」
いや、馬に追いつけるって、ちょっ、どんだけっ!!
それにしても飽きてって・・・
「ふむふむ・・・」
「その後、どうしようかなーって思ってたら、官軍が近づいてきたから面倒になる前に帰ってきた。」
「官軍、ですか・・・」
官軍とは・・・簡単にいえばお国の軍隊のこと・・・だったはず・・・あってるよね?
「とりあえず今は盗賊を追ってて、こっちには来てないからまだいいけど、今のうちにここから離れた方がいい。」
「そうだな、官が関われば楽しいことも台無しになる。」
「では、この方はどうしますか?」
「お、俺!?」
「見たことのないその煌びやかな服を見る限り、どこかの貴族か豪族の子息ではないかと伺えるのですが、そのような方が我々のような者と一緒にいてはあらぬ疑いをかけられますから。それにここなら時間はかかってもその官軍の方が見つけてくださるでしょう。」
ま、まずい。よくわからないが、このままだと官軍の人がくるまでこの荒野に一人ぼっちにされてしまう!
「ちょっ、ちょっと待って!俺はどこかの貴族でも豪族でもないよ!」
「・・・そうなのですか?」
戯志才さんが少し驚いた顔をした。・・・この制服だけで貴族とかにみえるのだろうか・・・?
「えぇ、そんな光り輝く服は見たことありませんからー。」
そうか・・・三国志の時代には当然ポリエステルなんてないもんな。あと程立ちゃん、心の中を読まないでほしい。
「それは無理な相談ですー。ところで『ぽりえすてる』ってなんですかー?」
・・・あのオブジェクトか!?あのオブジェクトがアンテナになっているのか!?
「なにを言ってるの、風?あなたはどうするべきだと思う?」
「そうですねぇー。風はどちらでもいいと思いますー。銀ちゃんはどうですかー。」
「ん?・・・・・・・(じー)」
なんかすごい見られてる・・・。なんで?まさか気付かれてなかった!?
「・・・連れて行くに決まってるだろ?こんな面白いことの種みたいなやつ。」
ありがたい意見、キターーー。でも、その認識はあまり喜べない・・・
「それはどうかわからんが・・・とりあえず村までは同行してもらいたい。」
おっ。趙雲さんも好意見。
「あれ?私は、星は反対すると思ったんだけど・・・」
「いや、少々訊きたい事ができてな・・・。お主、なぜ名乗ってもいない私の字を知っていたのだ?」
「え、えっと・・・」
しまった・・・さっきの独り言が聞かれてたみたいだ。どう説明したらいいのか・・・?
「まあ、その説明も含めて色々詳しく訊くためにひとまず村に連れて行こうということだ。」
「・・・確かに気になりますね・・・」
「それでは、決まりだな。」
「では、村までもどりましょー。」
「そうだ、その前に・・・」
なにかを思い出したようにマントの人がこちらを向いた。・・・
「自己紹介がまだだったな、徐庶元直、これが私の名だ。」
徐庶元直・・・確か劉備に諸葛亮を紹介した人だったかな・・・。
「お前の名前は?」
・・・あ
「そういえば、我らも訊いていませんでしたな。」
そういえば自分の自己紹介がまだだったな・・・。俺の名前は・・・
「俺は北郷一刀だ。」
あとがき(という名の言い訳)
初めまして、シンジというものです。
銀がどの武将もしくは軍師なのか考えていた方もおられると思いますが、残念ながら作者である私が三国志をあまり知らないため、彼女は完全なオリジナルです。三国志での根本となる人はいません。
ここの恋姫の小説を拝見させてもらっていますが、別の次元からやってくるとか主人公を除いて、もとの人がいないオリキャラがいない気がしました。もしかして完全オリジナルキャラっていうのは駄目なのでしょうか?
そこで、アンケートを取らしてもらいたいのですが・・・
1、 銀の名前を三国志に出てくる武将もしくは軍師のものに変更する。
2、 そのままでいい。
こんなひよっこがいきなりアンケートとかとるのは心苦しいのですが、もし1が多いのなら、きちんと調べて修正させていただきますので、コメントとか駄目出しとかのついででいいのでご協力お願いします。正直な意見をよろしくお願いします。
ちなみに銀は一応武将っぽい役所と考えています。
銀の名前を史明なんとかから徐庶元直に変更しました。
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どうも、次は第一話です。楽しみにしてくださる方が出来るようにがんばります。なんか星や稟のキャラというか口調がよくわからなくなりましたが、許していただけるとうれしいです。