No.90788

ふぁーねるさんちのまほうつかい【01.ファーネルさん家の魔法使い】

K2-farnelさん

もりのこかげの ちいさなこやで
きょうもきこえる わらいごえ
きょうもきこえる すてきないちにち
そこにすむのは

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2009-08-21 03:03:52 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:500   閲覧ユーザー数:465

 

そっと耳を傾けると聴こえてくる――

そんな風は 遠い遠い大陸からやってきたのです

 

風の送り主――ここはウルストルスと呼ばれる大地

ゼインと呼ばれ たくさんたくさんの冒険者たちが行きかう中枢都市

 

このおはなしの舞台は そんな大都会‥‥から少し離れたのどかな森

ここには小さな家があります

周りは木々に囲まれ 時々動物たちも遊びに来るような

そして 町から遊びに来る人々で いつも声が絶えないような家なのです

 

この家には ひとりの魔法使いが住んでいます

彼女の名前はアイ・ファーネル

町の人からは「ファーネルさん」と呼ばれる赤毛の女のひとです

 

子供たちには「魔女おばさん」とからかわれる事もあり‥‥

その度にファーネルさんは「おねーさんです! まだ2×歳なんですよッ!」と怒るのです

それがおもしろくて子供たちは またやってくるのですが‥‥

ファーネルさんがその事に気付くには もう少し大人になる必要があるようですね

 

ファーネルさんは町の「魔法ギルド」という所で働いています

そこにはファーネルさんのような魔法使いがたくさん集まっているのです

 

町の片隅にある建物に入ると ファーネルさんは受付の人からこう呼ばれます

「ミルツェントドゥ――ファーネル・チーフ 今日も魔術の加護がありますように」

そう ギルドではファーネルさんはチーフ――ちゃんとした一人前の魔術師なのです

チーフになる為には 何年も何年も一生懸命勉強しなければいけません

勉強して 研究して 仕事もして‥‥それがギルドに認められて初めて一人前になれるのです

 

冒険者だったファーネルさんがこの町に来たのはもう何年も前の事です

ギルドに入ったばかりの頃はチーフ目指して頑張る毎日でした

その頃は家も無かったので町の宿に住みこみ ギルドだけじゃなく色んな仕事をこなし 暇を見て勉強もし‥‥

そうやって何年も経って ファーネルさんはチーフになれたのです

 

でもファーネルさんにその頃の話を聞くと 「全然辛くなんてありませんでした」と笑って話してくれます

何故なら宿屋や町の人たちはとても優しく 忘れる事のない素敵な仲間ができたから

 

ファーネルさんが住んでいた宿屋は ファーネルさんと同じように色んな冒険者たちが集まり住んでいる不思議な宿でした

そこでは毎日のようにいろんな騒動が起き――時には未熟だったファーネルさんが騒動を起こし――一部の町の人からは「トラブル弾薬庫」と呼ばれる事もあったそうです

そんな退屈しない日々で ファーネルさんは勉強と研究を続け 魔法の腕も上げていったそうなのです

 

「そんな昔話ばっかしてると またおばさん化が進むぜー」

「な ななな何ですってッ!? こら待ちなさいッ! 一発お灸を据えなきゃダメですッ! 待てーッ!!」

逃げる子供たちを追いかけてファーネルさんが走っていきます

 

今は その宿屋は無くなってしまったかもしれないけど

もしかすると まだ何処かで営業していて そこに行けばみんなに会えるのかもしれないけど

それでもファーネルさんは 毎日毎日 いつもと変わらずに過ごしています

だって そうやって「いつもの自分」でいる方が これからもずっと楽しいとわかっているから

「いつかの仲間」も「これからの仲間」もずっと楽しいとわかっているから

 

だから ファーネルさんはこう言うのです

「いつでもここに来てください 何でも話しにきてください

ここは私だけじゃなく‥‥私と あなたと みんなの家です」

 

――そう――その家では 今日もファーネルさんとみんなが笑っているのです

 

 

 

 

 
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