「駆逐艦8隻……二人分か?」
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マイ「艦これ」「みほ2ん」
第21話 <艦娘の絆>(改2)
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路地で撃たれた寛代を抱いている私。そこに日向と夕立が集っていた。
「寛代ちゃん!」
夕立は自分が負傷しているにも拘らず寛代を心配している。
「……」
日向は何も言わないが無念そうだった。
私は彼女に聞いた。
「日向、お前も無線は持っているよな」
「ハッ」
私は少し離れた路地に倒れている深海棲艦(大井・仮)を見ながら言った。
「祥高さんに、この状況の報告を頼む」
「了解です」
日向は伸びている深海棲艦を示した。
「あれはどう致しましょう?」
「そうだな……」
私は少し考えた。
「負傷した捕虜も一名、追加だな」
「了解」
なぜか敬礼した日向は少し微笑んでいた。
「では……」
そう言いながら彼女は路地から外に出て通信を開始する。
私はチラッと夕立を見た。彼女は腕が痛むようだ。それでも私の視線に気付くと軽く頷いて笑顔で応えた。
「……大丈夫っぽい」
「無理するなよ」
「ううん、本当っぽい」
……だから、その『ぽい』が付くから、全て嘘くさくなるんだよ。
ほどなくして日向が戻ってくる。
「司令、秘書艦より入電。大淀を旗艦として支援に重巡足柄。寛代と深海棲艦の移送用には駆逐艦8隻を派遣します」
私は、しばし考えた。
「駆逐艦8隻で、二人分か?」
「そのようです」
「でも大淀さんが自ら出撃とは珍しいな」
ちょっと嫌な予感がした。
私の表情を察した日向が付け加える。
「実は、この作戦は、元帥閣下からの勅命も入っているそうです」
「え?」
私は驚いた。
彼女は続ける。
「それ以上、秘書艦は何も仰いませんでした。ただ『事態の重要性を察して下さい』とだけで」
「察しろって言われてもねえ……」
私は寛代を見下ろした。その時初めて気付いたのだが、この子はかすかに息はしていた。
夕立も、それに気付いたようだ。
「あ、寛代ちゃん生きてるっぽい」
「……」
日向も安心した表情を見せる。
私もホッとした。やはり艦娘同士、安否は気になるよな。
ただ解せないのは祥高さんに報告しただけで、この子に元帥閣下が絡んできた。この美保鎮守府というのは一体、何なのだろうか?
「駆逐艦8隻で、二人分……」
私は概要を確認するように反復した。
「夕立は自力で……車で戻るのかな?」
私は日向に問い掛けた。
「そうですね……個人的な意見ですが深海棲艦の移送は、その意識の有無に関わらず陸路で運ぶ方が望ましいかと存じます」
すると夕立も言った。
「良いよぉ。私だって軍用車くらい運転出来るっぽい」
何か、この子の口癖は拍子抜けするんだよな。
苦笑する私に日向は真面目な顔で言った。
「ちょっと私から秘書艦に進言して見ましょう」
「頼む」
再び彼女は路地の出口付近で通信を始めた。
「司令ぇ、寛代ちゃんの面倒は私が代わるッぽい?」
夕立が寛代を抱きかかえている私に手を伸ばす。
「いや、お前だって腕を怪我しているだろ?」
「あ……、それっぽい」
夕立は頭に手をやって舌を出す。
「やれやれ」
私は苦笑したが、何故か彼女を見てホッとした。
一見すると、おバカのように見える艦娘たちも、その心は意外に温かいのだ。そこに艦娘同士の絆の深さを感じた。
最初は、なかなか艦娘たちとの距離感が掴めなかったが、時間をかければ徐々に近くなるものだな。
日向が外を警戒しながら戻って来た。
「司令、秘書艦より返信。私の提案は受理され、夕立を海上で搬送する作戦に変更されました」
「えぇ? 私ぃ、車で大丈夫っぽい」
夕立は反論している。
だが日向は言った。
「貴女を中心として考えるのではなくチーム全体を見て。もしも今後、突発的な事態が起きたとき、どちらが対応しやすいと思う?」
「ぽいぃ……」
少し口を尖らせながらも少し考え込む夕立。
「うん、分かったっぽい」
どうやら彼女も後の作戦の方が良いと感じたらしい。
「それで良い」
日向は頷きながら淡々と応える。彼女たちのやり取りに私が口を挟む余地はなかった。
改めて日向は路地から表を覗きながら言う。
「暫くは、ここで待つしかないようだ」
彼女の後姿を見ながら私は言う。
「その路地を出ると境港の岸壁になっているだろう」
「そうですね」
日向も艦娘だからな。境港市の旧市街は初めてだろう。
私は記憶を手繰りながら続ける。
「そこは境水道(海峡)に平行した直線道路が続いて見通しが良い」
「……」
私の言葉に日向は黙って様子を見ていたが、外を見ながら口を開いた。
「ちょうど良い按配(あんばい)に破壊された戦車が私たちの路地を塞いで簡単な防壁になっていますが」
「なるほど目隠しか……だがそれは敵の目標にもなるな」
「確かに」
すると夕立の高い声が聞こえた。
「ねぇねぇ、岸壁の向こうって川じゃないっぽい?」
私と日向は苦笑した。
「私たちの目の前にある境水道は島根半島に挟まれた一種の海峡で、狭いなりに見通しが良い」
日向は改めて夕立に説明をしている。
「だから撤収作戦を決行するには地上、海上ともに制圧しておくか、敵が来る前に迅速に作戦を遂行する必要があるということだ」
「へぇ」
夕立は感心している。実は私も同じだった。日向のような戦艦クラスの艦娘になると、さすが分析力が優れているな。
その日向はチラチラと外を警戒しながら続ける。
「何しろ戦車まで持ってきた連中だ。それが一両だけ単独で上陸したとは考え難い」
私も頷きながら説明する。
「この旧市街は路地が多い。建物の陰に潜むには敵、味方とも具合が良いからな。油断は出来ない」
日向も淡々と付け加える。
「迎えの艦隊が来るまでは、ここが敵に発見されなければ良いのだが……確率は五分五分の線だな」
「えぇ? 怖いっぽいぃ」
嘆く夕立。
だが日向は不敵に笑う。
「大丈夫。いざとなったら私が盾になるから……」
私は苦笑した。日向の場合、冗談では済まされない雰囲気があるんだ。
深刻な雰囲気になりそうだったので私は話題を変えようとした。
「しかし、とんだ墓参になった……責めるつもりはないが祥高さんの読みは外れたな」
すると夕立。
「違うよ、その深海棲艦が執念深いっぽい!」
「はは、それは言えてるな」
彼女は何気なく言ったのだろうが妙に的を得ていた。日向も微笑んでいる。
日向に伸(の)された深海棲艦が沈黙している今が撤収のチャンスだろう。
ただ、この二人には、ある程度の理解があるとしても実際に深海棲艦を鎮守府へ連れて帰ったら他の艦娘たちが複雑な感情を抱く可能性はあるな。
「やはり、私は甘いかな」
ふと呟いた。
だが元帥閣下が私たちの行動を知り即時、干渉してきた意図は何だろうか? 少し気になった。
その時、警戒していた日向が再び報告する。
「秘書艦より入電。移送の駆逐艦娘は、黒潮、白雪、雪風、大潮、荒潮、朝潮、長月、霞です」
「おお、鎮守府の中堅駆逐艦が勢ぞろいだな」
私が言うと、夕立が続ける。
「……第六駆逐隊と島風ちゃんは入っていないね」
あ、確かにそうだな。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ2ん」とは
「美保鎮守府:第二部」の略称です。
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寛代の移送と司令たちの撤収作戦が始まろうとしていた。そして美保鎮守府からは8隻の駆逐艦が派遣されることになった。