「死ぬんじゃないよ、ぽいチャン」
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マイ「艦これ」「みほ2ん」
:第13話<武運長久を>(改2)
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空襲警報が鳴り響く中、軍用車は一路、墓地へと急行する。
日向が聞く。
「全員、無事ですか?」
私は母親を見て言った。
「ああ、大丈夫そうだ」
しかし母親は、この状況でも、まったく恐れていないのは意外だった。さすが軍人の妻だ。
そう、私の父親は空軍のエースパイロットだった。エースというのは、あくまでも噂だ。ただ、その割には出世もせず最後は地上勤務していた。
そこは、当時まだ若かった私には解せなかった。ただ今では人間関係でいろいろあったのかな? ……と想像するのみだが。
来た道を逆走している軍用車は共同墓地に近づく。前の方に、お寺の近くにある市民公園が見えた。墓参の市民が逃げ込んでいる。
それを見た母親は言った。
「ここでええわ、下ろしてごせ(下さい)」
日向が何か言いかけると母親は続けた。
「ここにも防空壕はあぁけん。寺まで回ると時間がないけんな。あんたらも早く準備せんといけんが?」
日向はハッとして何かを悟ったように「はい」とだけ応えた。彼女は直ぐにミラー越しに私に視線を送る。
私は言った。
「よし、公園前で停車だ」
「はい」
私の指示で軍用車は公園の入口で停まった。寛代と私に続いて母親は下車した。
降りた寛代は、しきりに頭に手を添えて周りを気にしている。恐らく索敵モードに入っているのだろう。鎮守府と通信をしているのかブツブツ言っている。
ボックスから軍手を取り出した日向と夕立は車から降りると車体側面のフックを外して手早く軍用車の幌を畳み始めた。
私も後部から荷台へ回って例の包みを開いた。その中には黒光りする軽機関銃があった。
「これか」
「では司令、後は私たちが」
日向の言葉に私は下がった。彼女は夕立に声をかけて手際よく包みの下にある銃座を引き起こして、そのまま一旦地面に据えた。
母親は準備をしている夕立に声をかけた。
「ぽいチャン、元気でな」
「ぽい?」
いきなり『ぽいチャン』と呼ばれた夕立は驚いて振り返った。
母親は言う。
「うちにも、この子(司令)の下に死んだ娘がいてな。生きてたら、ちょうどアンタくらいの歳だわ」
「ぽ……」
夕立は、その言葉の意味を直ぐ理解した。私に死んだ妹がいたことは知っていた。ただ生まれる前に母親が病気をして流産したのだ。
母は続けた。
「死ぬんじゃないよ、ぽいチャン。そしてお前も」
母親は私のほうを見た。
「アンタらの命は、お国のものだ。ムダに散らすじゃないだで」
そして真剣な顔で私に敬礼した。
「武運長久を」
私も思わず答礼した。
堪りかねた夕立は顔をクシャクシャにして母親に抱きついた。
「お母さん!」
母親も無言で夕立を抱きとめた。
しかし寛代が叫ぶ。
「来るよ!」
その場に緊張が走った。夕立は直ぐ母親から体を離すと私に並んで敬礼をした。
夕立は泣くのを堪えながら言った。
「行って……来ます」
「あぁ、行っといで」
既に日向は軽機関銃の準備を終えて運転台に向かっていた。私たちも母親と別れて直ぐに軍用車に乗り込んだ。
私は後部座席に、夕立は車内中央に据えられた軽機関銃の銃座に立った。さすが艦娘は軍人だ。単に可愛らしいだけの制服だったのが今は彼女と機銃がしっかりマッチしていた。
母親が叫んだ。
「必ず生きて帰りな、ぽいちゃん! さっ、早く!」
いつの間にか敵機の低い爆音が遠くから聞えていた。
「出ます」
日向はシフトレバーを操作する。幌を取った軍用車は黒煙を吐きながら公園の前を発進した。
「来た!」
寛代が叫ぶと遠くの空に黒い点が幾つも見えた。お台場だろうか? 高射砲の発射音と共に空に弾幕が張られていく。
ふと振り返ると母親はまだ敬礼をしていた。
やや俯(うつむ)いて唇をギュッと閉じている夕立。金髪を振り乱して泣いているようにも見えたが気のせいか?
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ2ん」とは
「美保鎮守府:第二部」の略称です。
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空襲警報の中、司令の母を避難させて戦いに備える艦娘たち。しかし母親が急に夕立に声をかけた……