「怪我とか大丈夫なのか?」
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マイ「艦これ」「みほ2ん」
:第12話<5分間>(改2)
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町中に空襲警報が鳴り響く中、寛代は呟く。
「敵機、小型と中型。機影は5機、境港に向けて飛行中」
日向が大声で聞く。
「司令、引き返しますか? お寺には防空壕があります」
「そうだな」
……と言いかけた途端、軍用車は急ブレーキをかけた。
「ぽいぃ!」
夕立が叫んだが直ぐに母親の身体を押さえてくれていた。
「どうした?」
私は慌てて車外を見る。
目の前の道路に、あの『女性』……深海棲艦(大井・仮と、しておく)が立って居た。
「あいつか?」
彼女は道路のど真ん中で、私たちの行く手を遮るように立っていた。
「陸(おか)の上で、ご苦労なこったな」
私は言った。
しかし、あれが昨日のアイツだとすると?
「怪我とか大丈夫なのか?」
思わず言ってしまったが、敵に対しては余計な心配だろう。
私たちから数十メートル以上離れているそいつは何か言ってきた。
「シンパイスルナ」
……直接、空中を伝わって聞こえてくる声ではない、何だろう?
「オマエタチトハ、カラダガ、チガウ」
それは頭の中に直接、響いてくる。あれか? 『念話』ってやつだろうか?
道路の上で偉そうに腕を組んでいるが……今の彼女は、さっきまでの暑苦しい上着を脱いでいた。だから、その白い肌が否応(いやおう)にも目立つ。
「なんだあれ? 別の外人さんか?」
母が普通に聞いてくる。そうか、敵の問い掛けは母親にも伝わっていたのか。
私は言った。
「お母さん、あれが海軍の敵だよ!」
「へえ……そんな悪い人には見えんな」
それは鋭い。
実際こうして街中で出会うとアイツもさほど『悪』っぽく見えない。不思議だが。特に、この深海棲艦は正体不明ながら、そんな印象なのだ。
母の感想を聞いたのか知らないが『彼女』の刺々しい雰囲気が少し緩んだ。
「キノウノカリハ、カエシタ」
「かり?」
私は答える。
「ハカマイリチュウハ コウゲキハ、ヤメサセタ」
「ほう、それは親切な……」
というか妙に義理堅いやつだな。
あれか?
「昨日の赤城さんの攻撃のことか」
私が呟くと、そいつは軽く頷いている。敵とのやり取り……不思議な感覚だな。
しかし、こう妙に人間臭いところが、この深海棲艦の厄介なところだ。我々が戦うべき相手なのに敵愾心が萎えてしまう。単純な悪者なら楽に闘えるんだが……。
「それで、どうするつもりだ?」
私は改めて彼女に問い掛けた。対話が出来る相手なら、その意図や目的を確認して戦闘を回避出来るかも知れない。
すると、その深海棲艦は片手を私たちの方へ向け、手のひらを広げて見せた。
「ゴフンダケ、マッテヤル。ソノアイダニ、ミンカンジンハ、ニガセ」
民間人って……私は母親を見た。まさか?
「……敵に塩を送るつもりか?」
私は肩をすくめた。こういう『温情』がある敵だとはな。ますます戦い辛い。
「どうします?」
一連のやり取りを聞いていた日向も聞いてくる。
私は言った。
「5分……取り敢えず戻れ!」
「了解!」
日向はシフトチェンジしてバックギヤに入れると母親に言った。
「お母様、揺れますので気をつけて!」
直ぐに軍用車は後退しながら加速する。夕立の金髪が車外になびいた。
「ぽいぃっ!」
だから、お前の叫び声には何の意味があるんだよ! 一応、軍人だろっ。
「口を閉じて、舌を噛みますよ」
後ろを振り返りつつ、そう言った日向。ある程度のところで正面を向き直ると彼女は急ハンドルを切って軍用車は路地で勢いよく180度ターンをした。
「おえぇ」
「誰だっ!」
さっきから、うるさいのは一人だ。
「……ったく夕立か?」
寛代も母親も黙っているが。
「……」
だが夕立は賑やかな台詞とは裏腹に私の母親の身体は、しっかりと押さえてくれていた。そこは任務を果たす軍人らしかった。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ2ん」とは
「美保鎮守府:第二部」の略称です。
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墓参が終わったとたん、謎の女性と遭遇した司令は戦い難さを感じるのだった。