No.903818

IS ゲッターを継ぐ者

第二十七話、どうぞ!

2017-05-03 01:15:29 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:926   閲覧ユーザー数:915

 

「ぐ……がっ」

 

『レーゲンが地に崩れたぁ! レールガングォレンダァで大ダメージ!! 流れは滝沢&ケントンペアへ大きく傾きまましたァァァ!!』

 

「ボーデヴィッヒさん! くう!」

 

「逃がしませんよ」

 

『このまま決める!』

 

 

 残るシャルルへアヤ、ベーオ改が攻撃。数と手数で確実に追い詰めていく。

 

 

 

「流石光牙だー! 強いぞー! かっこいいぞー!!」

 

「織斑先生どうしたのかしら……」

 

「さ、さあ……」

 

「あぁ、胃が……」

 

 

 

 周りの反応。織斑先生はいつも通りでした。他の先生方がそれを見て不思議そうにしていて、そんな先生の副担任である山田先生は最近起こり始めた胃の痛みに悩まされていた。

 

 

「よっし! 決めたわね光牙ぁ!」

 

「それにしてもなんて銃の使い方……普通なら誘爆か砲身が壊れてしまいますわ」

 

「奇っ怪な戦い方をするものだな、全く」

 

「……レールガンが無傷だけどどんな風に出来てるんだろう」

 

「予想外ね~光牙君は全く」

 

 

 観客席。鈴は光牙をたたえ指をパチンと鳴らし、セシリアと箒は荒々しい戦い方に少し呆れ気味。簪はレールガンの構造を気にしていて、上級生の席にいる楯無は『奇想天外摩訶不思議』とかかれた扇子を広げながら驚いていた。

 

 

「どーだ見たかぁ! ワシの武器はそんじょそこらのやつとはちがうんじゃーい!」

 

「引山博士、誉めてないのではそれは」

 

 

 ……ともかくだ。 

 

 ラウラがやられたので、光牙・アヤペアの勝利はほぼ決まった、誰もがそう思っていた。

 

 ――誰も予期せぬ、異物が目覚めなければ、であるが。

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 

(私は……負けたのか、あんな奴に?)

 

 

 相手の力量を見謝ったのは確実なミス。しかし、それでも認められない。あいつは倒すと決めていた相手なのだから。 

 

 織斑千冬。戦うだけに産み出され、その中で底辺に落ちた私を救ってくれた存在。彼女の比類なき強さに、力強い姿に、その全てに……私は憧れた。

 

 私を救ってくれた光。私の希望。いつかはこうなりたい、あの人の様に強くなりたい……と。

 

 ……だから、許せなかった。そんな彼女につきまとう“あいつ”が。

 

 滝沢光牙。何故か奴にあの人は意識を向け、常に気にかけていた。笑いかけている時もあった……。私はそれが許せなかった。あの人はそんな風にいるべきじゃない、常に、そしてこれからも最強でなくてはならいのだから。そしてあいつのせいで、あの人も侮辱された。

 

 私はあいつが憎い。憎くてたまらない。

 

 あの人を堕落させ、侮辱までさせたあいつを……完膚なきまでに叩き潰す。

 

 その為に必要なものが……力が!

 

 

(力が、欲しい……!)

 

 

 次の瞬間、私の中で蠢く“ナニカ”。

 

 

『――願うか……? 汝、自らの変革を望むか……? より強い力を欲するか……?』

 

 

 あぁよこせ、最強の力を……! 全てを圧倒する絶対無敵の力を!

 

 その為ならば、私など全てくれてやる!!

 

 

『――ならば受けとれ。そしてお前の中の……負の炎を燃やすがよい! この力でッッッ!!』

 

 

 直後……何かが突き刺さる様な感触がして、私の中にナニカが入ってきて、増幅されていった――。

 

 

 

 

 

「ぐ、あ、あぁ」

 

『ん!? こ、これは! レーゲンが、再び立ち上がっていきます! 満身創痍ですがその闘志は消えていなぁぁい!』

 

 

 火花を関節や装甲から散らしながら、シュヴァルツェア・レーゲンが立ち上がっていく。が、その動きはガタガタしていて何かおかしかった。

 

 その直後。

 

 

「負けてたまるか……負けて……なるものかァァァァァァ!! お前なんかにィィィィィィィィッ!!」

 

『ぐぉわ!?』「きゃ!」「うわぁ!」

 

 

 アリーナ全体を揺るがす程にラウラが絶叫、その次の瞬間にレーゲンから凄まじい電撃が発せられてベーオ改達を吹っ飛ばした。

 

 

「ア、アアァァァ!!!!」

 

 

 ラウラはレーゲンから染み出てきた黒い泥に飲み込まれてしまう。泥はぐちゃぐちゃと形を変え、やがてレーゲンとは全く違うISとなった。背中に一対の翼を備え、右手には日本刀を持つ漆黒の機体。

 

 その機体を知る者は驚愕する……かつて世界最強の女が纏っていた愛機だったのだから。

 

 

「暮桜だと!」

 

「何故あの機体が!?」

 

「もしや、あれは……!」

 

 

 千冬、ケンツが何故と目を見開き、引山は思い当たる節があって黒い暮桜を凝視。

 

 その黒暮桜は右手の日本刀『雪片』を中段に構え、

 

 

『シェアアァァァァァァ!!』

 

『のおわぁ!?』

 

「光牙! きゃあ!?」

 

「うぐっ!?」

 

『ハァァァァッッッ!!』

 

 

 叫びながら目にも止まらぬ速さでベーオ改に突撃していき横一閃。吹き飛ばすとアヤとシャルルも蹴散らす。更にそこから雪片の刀身が左右にスライド、紫の光が刀身を形作ってビームソードとなり、大上段一閃。

 

 その威力は衝撃でベーオ改をぶっ飛ばし、アリーナのフィールドを抉りとる!

 

 

『え!? ちょ何あれは……』

 

『非常事態発令! トーナメントの全試合を中止、状況をレベルDと認定し教師部隊を送り込みます! 来賓、生徒は直ぐに避難すること! 繰り返します!』

 

『ま、またですかぁ!? 前回に引き続いて2回目ェ!? あ~とりあえず、落ち着いて避難してくださ―い!』

 

 

 言い終えると響子もナレーターと一緒に避難開始。ただしマイクは最後まで離さずだった。実況放送魂恐るべし。

 

 隔壁が下ろされ観客、来賓が慌てて避難していく。

 

 

「あっ、光牙達は!?」

 

 

 鈴が振り返ると、まだアリーナ・フィールドにいるベーオ改達の姿があったが、直後に隔壁が下りてきたので様子が分からなくなった。

 

 フィールドにいるベーオ改達は避難どころではない。黒暮桜が駆け回り攻撃を繰り出してくるからだ。

 

 

『どうした滝沢! さっきまでの威勢は!』

 

『ボーデヴィッヒ!? ぐっ!?』

 

 

 レールガンを仕舞い右腕の雪刃・左手のゲッタートマホークで応戦するベーオ改。しかし相手の速くて強い斬撃に攻めきれないでいた。

 

 対し黒暮桜は中腰に構えてから放った一閃でトマホークを弾いて上段斬りを繰り出す、

 

 それをかろうじてベーオ改は後退し回避した、しかし刃が触れた左腕は装甲が切り裂かれ血が滲んでいる。アヤとシャルルが止めようとするも、サブマシンガンとヴェントをかわされ返り討ちにあってしまい、ベーオ改達は各個撃破されないよう黒暮桜から離れて一ヶ所に集まる。

 

 

「光牙……大丈夫?」

 

『かすっただけだよ……ってシャルル君、その腕!?』

 

「ゴメン。深くはなさそうだけど戦うのはちょっと無理かな……エネルギーも少ないし」

 

「私もです。シールドエネルギーが、100を切ってます……」

 

『クソッ! 一体なんなんだよあの黒いやつは!?』

 

「……多分、だけど。VTシステムかもしれない」

 

『なんだよそれ?』

 

「ヴァルキリートレースシステム。過去のモンド・グロッソ上位入賞者の動きを再現するシステムです。搭乗者に大きな負担がかかるので搭載は禁止されている筈ですが……」

 

「しかもあれはブリュンヒルデ……織斑先生の全盛期の動きだよ」

 

 

 つまり、千冬の模造品にラウラは取り込まれてしまっているということ。

 

 

『なんだよそれ……』

 

 

 それを聞いてベーオ改……光牙は血が出そうな程に拳を握りしめていた。

 

 

「とにかく、早く僕らも避難しないと……」

 

「そうですね、あの黒い機体が気になりますがこのままの戦闘は危険です」

 

 

 二人の意見は最も。相手もそうエネルギーがないだろうが、こちらもエネルギー・弾薬を消費して傷も負っている。自分達が危険を冒す必要などない。

 

 だけど光牙は、違う。

 

 

『僕は嫌だ』

 

「「え?」」

 

『僕は奴を、ボーデヴィッヒを止める。二人は下がって』

 

「な、何言ってるのさ! さっきの放送を聞いてなかったの!? 先生達が事態を解決してくれる、それに光牙とベーオだって消耗してるじゃないか!」

 

『だからわざわざ、危険なところに行く必要はないと?』

 

「そうだよ……早く避難しないと」

 

 

 光牙を心配するシャルル、それは正しい意見。

 

 わかっている。でも、分かった上で光牙は拒否する。

 

 

『でも僕はそれでもボーデヴィッヒを止める。そうしなきゃいけないんだ』 

 

「なっ……なんだよ! 光牙の分からず屋! なんなのさ! 何があるっていうの!?」

 

『織斑先生と約束したから、ボーデヴィッヒを頼むって。パチモンに取り込まれたのもあるけど……何より、僕が前に進む為でもあるから』

 

「光牙……?」

 

 

 話の途中から光牙の言い方が少し変わる。アヤはそれに何かを感じて光牙に目をやった。それから感じられるは、強い意思。決心だ。 

 

 

『誰かじゃない、僕が、僕の意思で、僕の中で考えて決めた僕の答えなんだ。……本当の意味で前に進む為にも……今僕がやることなんだ、これは』

 

 

 

 ――や、止めてくれ! 悪かった、俺達が悪かったからよぉ!

 

 ――そういって止めなかったのがてめえらだろうがァ!!

 

 ――イギャアア!! 痛い、痛いよぉぉぉ!

 

 

 

 言葉の途中から怒りが付与され、脳裏に思い浮かんできた光景。

 

 力のままそれを好き勝手に振るいまくり、周囲に痛みを与える姿。

 

 光牙がラウラに抱いていたのは同族嫌悪。今のラウラが、かつての光牙自身とそっくりであったから。

 

 

 ――表面だけの力は、人を悪く変えるだけなんです。

 

 

(その通りです……山田先生)

 

 

 次に思い浮かんだのは、支えてくれた先生の言葉。力とは攻撃力ではない。ではなんなのか、と問われれば光牙にも何かはわからないが、力を振るうために必要なものはわかる。

 

 それを教え、示してくれた人達がいたのだから。

 

 だから光牙はゆく! それがどんなに危険でも! 過去と決着をつける為、力とは何かを証明する為!

 

 

「光牙……」

 

「……自分で、決めたんですね。なら行ってください」

 

「あ、アヤ!?」

 

 

 光牙の決意を聞くも心配が消えないシャルル、まさか戦うのを賛成するとは思っていなかったので、驚いてアヤを見た。

 

 

「光牙が決めたというんです。なら私はそれを信じるだけ。だって、必ず帰ってくるって思ってますから」

 

『ありがと、アヤ』

 

「だ……だったら僕だって信じる! そこまで言うなら絶対帰ってきてよ!」

 

『シャルル君……』

 

「本当に……絶対だよ。折角できた友達が死ぬなんて、嫌なんだから……」

 

『……OK』

 

 

 幼馴染と友、二人から後押しをもらって、光牙は相手に向かう。

 

 

「絶対だからね! 負けたりしたら光牙には星になってもらうから」

 

「ピック千本と手刀と糸の仕事人コンボもつけますよ」

 

『ドワッ……し、心配するなって! 必ず勝つ!』

 

 

 ジョークを投げかけられる、下らないがそれがいい意味で光牙の緊張をほぐしてくれ、力をくれた。

 

 

『だから待ってろ。僕は、絶対に死なない』

 

「……はい」「……うん」

 

 

 決意を胸に相手へ進む。

 

 アリーナ・フィールド、黒い暮桜とゲッターロボベーオ改が対峙。

 

 

『話は済んだか? 貴様もこの刀の錆となるのだがな』

 

『勝手に決めんな。……一つ聞くよボーデヴィッヒ。お前、その力で満足してるの?』

 

『愚問だな。この力はかのブリュンヒルデのもの、これに敵う力があるものか』

 

『……あっそ』

 

 

 雪刃を右手に構えるベーオ改こと光牙。紫のビームソード雪片を中段に構える黒暮桜。

 

 偶然か否か、この二機には同じ世界最強が宿ってる。

 

 片や、世界最強になり損ねた白の翼。それを取り付けた機体。

 

 片や、世界最強を模倣した黒の刃。それに取り込まれた少女。

 

 紛い物の白対偽物の黒。

 

 

『ならば、世紀のパチモン決戦といこうか。ボーデヴィッヒィ!!』

 

『ハァッ!』

 

 

 先に動いたのは黒暮桜、高速で突撃。光牙は左手にレールガンを展開。二連射で迎撃。

 

 

『ヌッ!?』

 

 

 突撃してくる黒暮桜の直線上の地面に弾丸が撃ち込まれた。爆風と土煙が混ざって立ち上り、黒暮桜がそれに突っ込む形となって怯む。

 

 

『うぉぉぉらぁぁぁぁ!』

 

『グガッ!?』

 

 

 レールガン発射と同時に突撃していた光牙が、煙を突き破り振り上げた雪刃で袈裟斬り。続いて、突撃の中でレールガンから持ち替えた左手のゲッタートマホークで逆袈裟。

 

 これ以上は食らうのは不味いと黒暮桜は下がるが、光牙はトマホークを投げつけ、それは雪片に弾かれて黒暮桜の後方のフィールドに突き刺さる。

 

 

『貴様ァ……どういうつもりだ。そんな武器を使いおって』

 

『お生憎ってやつだよ。僕はお利口な剣士様じゃない、使えるものは使うだけさ!』

 

『貴様ァァァ!!』

 

 

 怒り斬りかかる黒暮桜、光牙は空いた左手のデュアルガンを連射して迎え撃つが黒暮桜は弾丸を弾きながら距離を高速で潰し、切り上げでデュアルガンを弾き飛ばす。切り上げにより上段に上がった腕と雪片で上段斬りに移行し、光牙は咄嗟に雪刃を寝かせ受けた。が、衝撃は殺せない。凄まじい衝撃が全身を貫く。

 

 

『ぐうッ!』

 

『切られろォォォッ!!』

 

『がああぁぁぁ!』

 

 

 力任せに上段斬りが決められ、よろめいた所に黒暮桜が逆襲をかける!

 

 斬撃、斬撃斬撃斬撃!

 

 袈裟、逆袈裟、左右の薙ぎ・切り上げ、唐竹、逆風、横一閃からの上段。

 

 あらゆる斬撃が黒暮桜の怒りを乗せ繰り出される。紫の光が尾を引くそれらはまさしく嵐、怒りの炎を宿し巻き起こる嵐。

 

 嵐に全身を斬られ、たちまち光牙は血だるまにされてしまう。

 

 

『ぐ、うう』

 

『言った筈だ。この力はブリュンヒルデのもの!』

 

『うっ!』

 

『貴様なんぞが……敵う筈がなぁい!!』

 

 

黒暮桜が放つ、居合いに見立てた刀の一閃。雪刃でガードするもよろける光牙、そこを狙い、落とす様な鋭い斬撃が降ってくる。

 

 

『終わりだああぁぁぁぁぁっ!!』

 

『終わるかよ……ドリルランサーッ!』

 

 

 その刹那! 黒暮桜の頭上に武器が召喚され、放たれる……ドリル!

 

 

『がっ!?』

 

 

 重力に従い降ってきたそれは黒暮桜の顔面にヒット! 上段斬撃を食い止める!

 

 武器を召喚するのにわざわざ手元に呼ぶ必要はない、この接近された状況を利用し、光牙は自分の真上にドリルランサーを呼び出し落下武器としたのだ。

 

 

『ど、ドリルが降ってきただとぉ!』

 

『オラッ! 続いてミサイルファイアーッ!!』

 

 

 たたらを踏む黒暮桜を蹴っ飛ばし、続いて脚部ゲッターミサイルを全弾発射!

 

 

『ぬごぉぉぉぉっ!? お、おのれえぇぇぇ!!』

 

『物真似の力で満足かよ! お前は!』

 

『何ィ!?』

 

『確かに世界最強の力は強いかもしれない、でもそれは本当の最強なんかじゃない! 自分を究極と認めれば、進化はそこで終わるんだよ! 覚えとけ!』

 

『黙れぇぇぇっ!!』

 

 

 爆発と爆風に包まれるも、最後の悪あがきと言わんばかりに紫の光を全身に纏い襲いかかる黒暮桜。まるでそれは黒暮桜の中にいる、ラウラの怒りが形をなしているかにも見えた。

 

 

『戻れ、トマホーク!』

 

 

 対し光牙は叫ぶと、フィールドに突き刺さっていたゲッタートマホーク二丁が、答えるように自ら回転しながら光牙の手に戻る。

 

 内一本が黒暮桜の後方、右のスラスターを斬り落としながら。

 

 

『な、なにぃ……!?』

 

 

 ガクリ、と足をつく黒暮桜。それを狙い光牙が飛ぶ。高速突撃、展開しなおした雪刃を両手で持ちながら。

 

 

『き、貴様なんぞにぃぃぃぃぃ!』

 

 

 迎え撃つは必殺の一閃。神速の如き横一閃。

 

 光牙は身を沈ませ紙一重で――回避。

 

 

『っ!?』

 

 

 地面に足を付け懐に潜り込む光牙。腰を沈め、繰り出すは右切り上げ。一撃。

 

 

『――ある人が言っていた』

 

 

 続いて逆の軌道。左切り上げ。二撃。

 

 

『力とは、なんなのかを』

 

 

 雪刃を振りかぶる。その瞬間、脳裏に閃く恩師の姿。

 

 

 ――光牙、忘れんなよ。力を振るうのは自身自身だが、一番大事なのは……コイツだ。

 

 

『本当の、力は――』

 

 

 全体重を、気力を、光牙という人間の全てを込め。

 

 雪刃を、叩きつける。

 

 過去を断ち切り、未来を――切り開く為に。

 

 

 

 

 

 

 

『――心の強さだ』

 

 

 

 

 

 大上段一閃。三撃。切り上げによる二撃、〆の大上段で一閃。

 

 計三撃、十文字と縦一文字の十一文字斬撃。

 

 

『ぎ、が、がはっ』

 

 

 

 黒暮桜は雪片ごと本体を真っ二つになり、纏っていた紫の光も切り裂かれ霧散していく。

 

 割れ目からシュヴァルツェア・レーゲンの残骸、それに眼帯が外れたラウラが出てきた。

 

 振り返った光牙が彼女を受け止める。

 

 

『血まみれなのは勘弁してよね』

 

 

 そう呟く光牙。

 

 それが聞こえていたかは、ラウラのみが知るところだろうが。

 

 その直後にベーオ改が光りガントレットに戻る、活動限界を迎えたのだ。

 

 

「やりましたね」

 

「光牙ぁー!」

 

「二人とも、僕は――ごふっ」

 

「「……え?」」

 

「あ、れ」

 

 

 後ろから声がして、アヤとシャルルが飛んでくるのが見えた。 

 

 そう思った瞬間、ドクン、と鼓動が光牙の体を走り。

 

 次の瞬間、吐血。そのままぐるりと視界が回って――

 

 

 どさり。

 

 

 光牙は、地面に倒れた。

 

 その直後、教師部隊が突入してきて、事件は一旦幕を下ろした。

 

 
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