No.903179

マイ「艦これ」「みほちん」第64話<決意と鎮魂歌>

しろっこさん

北上と同様、司令も一つの壁を越えようとしていた。しかし、ある者たちには越えられない壁もあるようだ。

2017-04-28 22:29:15 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:374   閲覧ユーザー数:366

「チガウ……」

 

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 マイ「艦これ」「みほちん」

:第64話<決意と鎮魂歌(レクイエム)>(改)

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「でもさ」

そのとき北上の口調が急に変わった。

 

 何かを察した比叡が気を利かせて探照灯を北上に向けた。(……比叡、良い仕事するな)

 

月夜を背景に探照灯に浮かび上がった北上。その姿は、ますます月下美人っぽい。

 

思いを込めたように彼女は言った。

「過去はサ……もう戻らないんだよ」

 

 その黒い瞳が透き通るようだ。風が少し強くなってきて彼女の長い髪が胸の前で左右に揺れている。

お腹は痛くないのだろう。いつの間にか腹を押さえるのは止めていた。

 

 北上は揺れる髪の毛を片手でサッと肩の後ろへ払い退けた。そして、深海棲艦へ語るように言った。

「お互い、もう変わらなきゃ? ね……」

 

『おお!』

埠頭で見ている艦娘たちから一斉にどよめきが起こった。

 

北上が深海棲艦(大井?)に啖呵(タンカ)切ったぞ。

 

「役者だなぁ」

コレは青葉。

 

私も続けて深海棲艦(大井?)に話し掛けた。

「北上の言うとおりだ。そして……君」

 

私は『彼女』を見詰めた。相手は無表情のままだが、視線はこちらを向いた。

 

改めて心を込めて言った。

「私は君に心から申し訳ないと思っている」

 

 それを受けた北上もまた頭を少し斜めにして私を見て微笑んだ。彼女のその長い髪が風に揺れた。

何だろうか? そんな魅力的ともいえる彼女の姿を見ても不思議といつもの『ドキドキ感』が無い。

 

 そのときの私と北上は、いわゆる一般的な『男女』としてではなく純粋に指揮官と部下……そうだな、同志としての連帯感を感じたのだ。つまりこのとき突然、彼女と心が通い合う感覚に包まれた。

 

 それは寛代と接するときの雰囲気にも似ていた。思わず私は改めて手を握ったままの寛代を見た。すると彼女もこちらを見上げていた。

 

「……」

彼女は珍しく微笑んでいた。

 

「そうか、お前はずっと以前から私に心を開いてくれたんだな」

「うん」

彼女の普通の肉声を初めて聞いた気がした。

 

 軍人であることに加えて私は性格的にも女性と心を通わせるなんて意外なのだが。まさか、初めて心を通わせる相手が艦娘とはな……不思議な縁だな。

 

 私は再び正面を見据えた。

北上が一つの壁を越えたように私もまた、指揮官として重い足かせを、いつまでも引きずってはいられない。

 

 北上と共に、これまでの過去の私とは、ひと区切りさせて貰おう。

提督とは個人のためではなく、国家や公のために。また皆のために考え行動しなければならない。

 

 それが生き残った者(戦士)への、せめてもの償いなのだ。前進し、勝利を刻み続けることが去って逝った者たちへの最大の鎮魂(レクイエム)になるのだから。

 

 埠頭の一同は、堂々と立ち上がった北上と私を固唾(かたづ)を呑んで見守っていた。

しかし深海棲艦は相変わらず無表情のままだろうか?

 

「……いや、何か言うぞ」

呉オジさんが言う。すると神戸を始め全員が海上に注目した。

 

 下を向いた深海棲艦は激しく頭(かぶり)を振っている。

「チガウ……」

 

 否定した。やはり彼女は大井ではないのか?

「ワタシハ……」

 

その顔に初めて表情のようなものが浮かんでいた。

「チガウ……」

 

彼女は自分の両手を開いてジッと見詰めている。今までの無表情から一転して、とても険しい表情になっていた。

 

「ありゃ、深海棲艦の髪が……」

 青葉が言うまでも無く急に彼女の髪の毛が逆立ってきた。その長い髪がまるでメドゥーサか何かの生き物のように勝手に宙を舞い逆立っている感じだ。

 

「これってかなりマズい?」

神戸が言う。

 

確かに尋常ではない雰囲気になってきた。風は強くないのに、湾内には変な白波が激しく立ち始めている。

 

 深海棲艦の周りの手下共も変な光を点滅し始め盛んに白い歯を見せている。そして地響きのような轟音が響く。

 

「じ、地震なのです!」

電が叫ぶ。

 

その言葉の如く地震のような振動が埠頭一帯を包んでいた。大地だけでなく、空気までもが激しく振動しているようだ。

 

「皆さん、撤退してください!」

大淀さんが命令を出したが……あれ? 誰も動かない。

 

「いや動けないのさ」

こんなときまで沈着冷静な響だな。

 

 この周りの連中は皆、腰が抜けたか? そもそも大淀さんも、まるで金縛りにあったように動かない。

 

「おい、動けないのか?」

寛代に聞いても彼女は私の手を必死に掴んで離さない。だから私も結局、この場から動けない。

 

「これは……」

海の上を見た私はハッとした。髪の毛を逆立てた深海棲艦は……そう、まるであの『悪夢』そのものだった。

 

「北上ぃ!」

私は海上に必死に叫ぶ。

 

「お前だけでも早く逃げろ!」

 

 だが彼女は荒ぶる深海棲艦を見詰めたまま微動だにしない。

 

 彼女の瞳は、すべてを受け入れたような……あの悪夢に出てくる軽巡とは正反対の澄んだ表情だった。

 

「北上……」

私は焦るばかりだった。

 

 

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※これは「艦これ」の二次創作です。

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サイトも遅々と整備中~(^_^;)

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PS:「みほちん」とは「美保鎮守府」の略称です。


 
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