「最果ての地か」
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マイ「艦これ」「みほちん」
:第63話<最果ての追憶>(改)
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確かにあの当時、舞鶴で臨時に指揮を執ることになった私は北上が出撃する予定を急きょ変更したのだった。何となく思い出してきた。
その北上は今、お腹(なか)を押さえつつ語りを続けた。
「ホントは私が旗艦だったんだけどさ、装備の調子が悪かったんだよね。でさ、アンタは私の代理出撃を最後まで渋ったよね」
北上と大井は当時ほぼ同じタイミングで重雷装艦に改装された。二人はもともと同型の軽巡だった。よく舞鶴の廊下でも仲が良さそうに二人が手を取り合って歩いていた。
大井の会話を思い出した。
「私たち同じ重雷装艦に改装されるなんて、なんて素敵なのかしら!改修時期まで同じだから、これからもずっと、ずーっと一緒だよね? 北上さん!」
喜ぶ大井が印象的だった。今思うと、はしゃいでいたのは大井だけだったが。
「そうだねぇ」
同意しているのか違うのか淡々と応える北上も、いつも通りだった。
とはいえ作戦を変更したのは私だ。同じ重雷装艦なら任務遂行にも問題ないだろうと。あまり深く考えずにチェンジしたのだ。
だがそれは艦娘に対しては対応が拙(まず)かったといえる
特に当時の大井は旗艦変更だけでなく私の出撃命令に対しても激しく抵抗したのだ。そのときの私は疑問しかなかった。
だから今思えば、あの頃の私は考えが甘かった……実際、艦娘は一筋縄ではいかない。
この美保に来てから数日で更に、そのことは実感した。そもそも艦娘たちの個性や繊細さは並みの人間以上なのだ。
だから艦娘の同型艦といども、まったく個性が違う。スペックだけでは分からない部分が大きい。
(それは第六駆逐隊が、いい例だろう)
その判断は結局、その後の展開も含めた私にとって後々までの重たい課題となったのだ。
だから今は反省している。そう……
「思い出したぞ!」
叫んだ私に、舞鶴や他の参謀たちが驚いてこちらを見た。それに構わず私は制帽を取った。
「そうだよ」
あの海戦に大井を出撃させたことが、ずっと引っ掛かっていた。
だから今、言わなければ。
「大井、済まなかった!」
海の上では、なおも北上の告白が続いていたが私の呼びかけに北上は語るのを止めた。だが深海棲艦は黙ったままだ。
「……」
北上はチラッとこちらを見ると少し含みのある表情を浮かべた。
そうして
『司令、ちょっと待ってね』といった感じで彼女は自分の口の前に指を立てた。
……ああ、そうだな。今は『お前たちの時間』だったな。
「すまん」
この空間は北上と敵の『語らいの場』となりつつある。それは彼女の周りの敵駆逐艦たちもジっとしていることからも伺えた。
不思議なことだが敵の手下どもは『命令がないから』動かない……というよりも敵の白い肌の『彼女』と一緒に北上の告白を聞いているように感じられる。
そもそも深海棲艦も北上の言葉に何か感じ始めているんじゃないか?
北上は深呼吸をするように間を取ってから続けた。
「こんなことしてまで、また出てきちゃってさ」
まだ深海棲艦は無表情で北上を見詰め続けている。
「ま、アンタらしいけどね」
北上は、かなり回復したのだろう。ゆっくりと立ち上がる。それから焦げた前髪を片手でさっと払い退けた。
そうして一瞬だけ私のほうをチラッと見た。それから意を決したように言った。
「ホントはアンタも司令を追ってきたんだろ? ここまで……」
「え?」
驚く私。
「えぇっ?」
これは比叡。さすがに目を丸くしている。
「なに? ソレ!」
おい、青葉めっ、言いながら写真を撮るな!
大井の件については私も反省はしていた。しかし北上の意外な指摘に度肝を抜かれたのだ。
その『大井(仮)』が私を追ってきた? いや、北上は今、何て言った?
『アンタも司令を追って』
……それって、つまり北上も私に何らかの想いを抱いているって言うことなのか?
焦り始めた私。
「あ……」
見ると比叡は既に変顔でこっちを見ている。
参謀たちはともかく大淀さんまでが疑うような眼(まなこ)だぞ。
……いや、知らない知らない! それはゼッタイに無いって!
まあ今更、確認のしようもないけど。
もしここが昼間の時間で明るかったら私は赤面している姿を晒した事だろう。暗くて良かった。
焦りながらも寛代と私は手を繫いだままだった。慌てて手を離すのも変だろうと思って、そのまま握っていたけど……彼女は無表情だった。やはり、この子もマイペースで沈着冷静なのか。
こちらを見て何かを言いかけていた北上だったが、少し私の周囲が落ち着いた様子を見て再び敵に相対(あいたい)して続けた。
「ここはさ、辺境なんだよ。西の最果ての地さ」
北上はポツリといって、ふっと寂しい顔をした。
「最果ての地か」
なぜか舞鶴が同意するように頷いている。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほちん」とは「美保鎮守府」の略称です。
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北上と深海棲艦との対話で司令も過去の記憶をえぐられるような心の痛みを覚えるのだった。