恭子「しかし、なんか締まらんな。気い使って呼び合うても、イマイチ乗らん。これ終わったら名前で呼んでもええか?」
やえ「別に構わんが……なあ、それは俗に言うなんたらフラグとかいうやつじゃないのか?」
恭子「そんもんなん好き合うとる奴らだけでやったらええねん。私らそんな暇ないしな」
やえ「だな。恋愛は相手との時間が大切だと聞く。麻雀だけでも時間が足りていない現状で、特定の方と親しくするのは難しい。麻雀が恋人の青春を選んだ、とでも言って強がるしかなかろう」
恭子「上手くやっとる奴らもおるんやろけどなあ。ま、不器用な私には遠い世界のお話か。そういや、赤土さんも戒能プロも、見た目めっちゃええのにそういう話は聞かんな」
やえ「うむ。阿知賀の面々からも聞いたことはない。姫松はどうなんだ?見た目で言えば、姫松の監督も綺麗な方だと記憶しているのだが」
恭子「どっちのことやろ。ちなみに前の善野監督も今の赤阪監督も独身で、噂すらないわ」
やえ「……また知らない方がいい情報を知ってしまった」
恭子「これ対局前にする話ちゃうかったな」
やえ「でも緊張が少しほぐれた気がするぞ」
恭子「言われてみれば、変な力入ってたんがちょい抜けたかもしれん」
やえ「何が幸いするかわからんものだ」
恭子「案外、こういうんが勝負を左右したりするんかもな」
やえ「ところで、だ」
恭子「なんや?」
やえ「卓で待っているお二方の顔が、やけに怖く見えるんだが何故だろうか」
恭子「あー……マズイわ。集中してたっぽいからなあ。耳もよう聴こえとったんちゃうか」
やえ「それは、さっきの話が聴こえていた可能性があるということか?」
恭子「もう諦めえや。どう考えても聴かれとるわ」
やえ「い、いやだ。あんな笑い方をする実力者を相手に打ちたくはないぞ」
恭子「さっきの威勢はどこ行った」
やえ「誰だって蓋の開いた地獄の釜に飛び込みたくはないだろう」
恭子「開けたんお前や。責任とれや」
やえ「話相手は連帯責任だ。一緒に行くぞ」
恭子「締まらんなあ……」
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第十三話の対局直前会話で、こんな入り方にしかけた時期がありました。
前後の雰囲気を完全に忘れて、なんとなく筆を進めてしまったパターンです。
推敲と清書、本当に大事だと思います。