かつてokakaと竜神丸が訪れた事のある『エグゼイドの世界』。2人はこの世界を訪れた事で、ゲーマライダーのシステムであるゲーマドライバーとライダーガシャットを入手した。しかしこの2人の場合、手に入れた経緯と入手したシステムは少し異なる。
okakaは聖都大学附属病院に存在する、電脳救命センター(通称CR)を通じて、衛生省の衛生大臣官房審議官であり、かつては臨床の医師だった男性―――
一方で竜神丸は、ドライバーとガシャットの生みの親であるゲーム会社―――
それぞれ異なる形でゲーマライダーのシステムを入手していた2人の内、竜神丸は自身が変身するゲーマライダーを更に強化する為のデータを入手するべく、同じくゲーマライダーとなったイーリスを連れて再び『エグゼイドの世界』を訪れる事にした。
そして訪れた先の公園で、2人が目撃したのは…
「博士、これは一体…!?」
「…これはこれは、面白い事になっていますねぇ」
「よっしゃ、リボルは俺が攻略してやるぜ!!」
「ふざけんな、先越されてたまるか!!」
「うぉら、喰らえっ!!」
「くっそ、まだレベルが足りねぇ…!?」
ライオトルーパーを彷彿とさせる戦闘員のような恰好の戦士達が、バグスターの集団を相手に乱戦を繰り広げている光景だった。
「フン、甘いわ!! 撃てぇっ!!」
「「「「「ゲゲッ!!」」」」」
そんな戦闘員のような恰好の戦士達―――ライドプレイヤーと相対するのは、難易度が高過ぎるあまり発売自体が中止となったガンシューティングゲーム『バンバンシューティング』に登場する『リボル隊長』のデータから誕生したリボルバグスター。ロケット砲やガトリングなどの武装を構えた彼の指示で、手下である兵士型バグスター戦闘員達が銃器を構え、ライドプレイヤー逹に一斉射撃を繰り出す。攻撃を受けるライドプレイヤー逹の中には、一方的に射撃される者もいれば、公園の遊具を駆使して上手く射撃を回避している者もいる。
そんな常軌を逸脱し過ぎている戦場を、竜神丸とイーリスは少し離れた位置から眺めていた。
「あれは、ゲーマライダーでしょうか…? 何故あんなにたくさん…」
「ゲーマドライバーらしき物は装着していないようですね。ガシャットを使用する以上、普通ならバグスターウイルスの抗体が無ければ変身は出来ない筈ですが……ふむ」
「それがこのゲームの見所さ」
「ッ!?」
「! あなたは…」
突如、2人のすぐ隣にコンピューターのようなノイズが走り、1人の青年が姿を現した。突然の出現にイーリスは即座に構えるが、その青年の素性を知っている竜神丸は特に慌てる様子は見せない。
「久しぶりだなぁ、ザイエン」
「…あなたこそ久しぶりですね、パラド」
「!? 博士、お知り合いなのですか…?」
驚くイーリスを他所に、竜神丸は目の前でニコニコ笑顔を浮かべている青年―――パラドに対し、表情には出さずとも内心では密かに警戒していた。かつて檀黎斗に接触した時も、今のように何の前触れも無く突然その場に姿を現してきたのだから、竜神丸にとって彼はバグスターの中でも特に得体の知れない存在なのだ。
「元気そうで何よりだ。最後に会ったのはお前がバグスターTウイルスのデータを持って来た時だったか?」
「…パラド。あなたこそ、何故このような所に? 檀黎斗はどうしたのですか?」
「あぁ、ゲンムか? あいつには俺が、
「! …そうですか。哀れですね、例のゲームを完成させられないまま破滅するとは…」
「いや、ゲームならもう完成している。この光景がまさにそうさ」
「「!?」」
「ようこそ。究極のゲーム―――『仮面ライダークロニクル』の世界へ」
仮面ライダークロニクル。
かつて檀黎斗が開発しようとしていた究極のゲーム。
その内容は、プレイヤーである一般人が仮面ライダーに変身し、襲い来るバグスターと戦う命懸けのサバイバルゲームという、あまりに狂気染みた物。
ゲームオーバーとなった者に訪れるのは消滅―――すなわち死。
当然、そんなゲームが世界に普及されてはならないとして、宝生永夢―――仮面ライダーエグゼイドを始めとしたドクター達が檀黎斗の陰謀を阻止し、仮面ライダークロニクルが完成する事はなくなった筈だった。
しかし、檀黎斗を文字通りゲームオーバーにしてしまったパラドの手によって、ゲームに必要なデータが全て揃えられた仮面ライダークロニクルは遂に完成に至った。
その後、仮面ライダークロニクルは何の予告も無く一般販売を開始、ゲームは飛ぶように売れ始めた。ヒーローを夢見た人間が次々とゲームに参加し、仮面ライダークロニクルは瞬く間に社会現象となっていったのだった。
「―――その結果がこれ、という訳ですか」
「そういう事♪ どうだ? 面白いだろう?」
ライドプレイヤー達とバグスター逹が戦う光景を、パラドは楽しそうな表情で見ていた。それに対し、これまで仮面ライダークロニクルの詳細を一切知らなかったイーリスは呆然とした表情を浮かべ、竜神丸は今もなお無表情のまま戦場を見据え続ける。
「しかし、色々不自然ですねぇ」
「?」
ここで、竜神丸がとある疑問をぶつける。
「ライドプレイヤー……でしたか? 彼等の装備があまりにも貧弱過ぎます。見たところ、レベルがそれほど高いようには見えませんし、あれではリボルに勝つ事なんて到底不可能です」
「そう。だからこそ、面白いのはここからさ」
「喰らえ!!」
「う…ぐあぁっ!?」
リボルバグスター率いるバグスター集団との戦い。1人のライドプレイヤーがリボルバグスターの砲撃で大きく吹き飛ばされ、地面を何度か転がった後に悔しそうに呟く。
「くっそ、レベルが足りな過ぎる…!! どうすりゃリボルを攻略出来るんだ…!?」
そんな彼の疑問に答えるべく……“彼女”は現れた。
「ジャジャーン♪」
「「「「「!?」」」」」
ライドプレイヤーは全員、声が聞こえた滑り台の方に視線を移す。その滑り台の上に立っていたのは、カラフルな明るい衣装を身に纏ったピンク髪の女性だった。
「ポッピーピポパポが、ゲームをナビゲートするよ♪」
「!? あれは、確か『ドレミファビート』のマスコットキャラの…!?」
「……」
ピンク髪の女性―――ポッピーピポパポ(通称ポッピー)の正体を知っているイーリスがその姿に驚く中、竜神丸は更に別の疑問に捉われる事になったのだが、そんな事情など知る由も無いポッピーは明るい雰囲気で、ライドプレイヤー逹に聞こえるようにゲームの説明を開始する。
「まだまだレベルの低いプレイヤーの皆に、とっておきの攻略情報をあげちゃうよ♪ ゲームフィールド内にはバグスターの他に、
「「!?」」
そのポッピーの言葉には、イーリスだけでなく竜神丸も思わず目を見開く。
「仮面ライダーは、ゲームの攻略に役立つゲーマドライバーとライダーガシャット、それにガシャコンウェポンも隠し持っているよ♪ 見つけ次第ぶっ倒して、レアアイテムをゲットしよう♪」
「ラ、ライダーシステムをレアアイテム扱い…」
「さぁ、一番に“ラスボス”に辿り着くのは誰かなぁ~? 世界一のヒーローを目指して、レッツゲーム!」
「む、ラスボス…?」
イーリスの呟きや竜神丸の疑問には目も暮れないまま、ポッピーはその場から一瞬で姿を消してしまった。未だに事情を完全に把握し切れていない2人にパラドが語りかける。
「ま、実際にゲームを楽しんで貰った方が早いだろ。ザイエン、お前も存分に楽しんで行けよ」
それだけ告げて、パラドも同じようにその場から姿を消す。竜神丸は少し考えた後、イーリスに指示を下す。
「…一応、ライドプレイヤーのデータも取っておきましょうか。イーリスさん、戦闘準備を」
「は、はい!」
竜神丸の指示で、イーリスは慌てて取り出したゲーマドライバーを装着。右手にライムグリーンのガシャットを、左手に青色のガシャットを持って同時に起動する。
≪ボンバースタント!≫
≪爆裂パンチャー!≫
「「「「「ん?」」」」」
ガシャットの起動と共に、フィールド全体にエナジーアイテムが配置される。それに気付いたライドプレイヤー逹が一斉に竜神丸逹の方に振り返った中、イーリスは2本のガシャットを同時にゲーマドライバーに装填、ゲーマドライバーのレバーを開く。
≪≪ガシャット!≫≫
「サードギア……変身!」
≪ガッチャーン! レベルアップ! アガッチャ! ぶち抜けパンチ! 爆裂! 激烈! 爆・裂・パンチャー!≫
目の前に出現したパネルを右手で触れた後、イーリスの姿がゲーマライダーの物に変化する。
ライムグリーンのボディに青色の手足、両手に装備した赤いボクシンググローブ、青いヘッドギアパーツなどが特徴的な赤い瞳の戦士―――仮面ライダーイグニス・ボンバースタントゲーマーレベル3だ。
「レディ、アクション…!」
赤いボクシンググローブ型ガシャコンウェポン―――ガシャコングローブを両手に、ボクシングのような構えでライドプレイヤー逹を見据える。その姿を見たライドプレイヤー逹は呟き始めた。
「なぁ、仮面ライダーって……もしかしてアレか?」
「だよな。今目の前で変身したし……よっしゃ、レアアイテムは俺がゲットしてやる!」
「あ、抜け駆けすんなよ!? 俺だって!!」
ライドプレイヤー逹は銃と剣にモードを切り替えられる武器―――ライドウェポンを手に、一斉にイグニス目掛けて突撃し始めた。イグニスはそれを迎撃するべく、1人ずつ順番にガシャコングローブで殴りつけていき、左右から斬りかかって来たライドプレイヤーは薙ぎ払うように吹き飛ばす。
「うぉ!? く、強ぇ……一筋縄じゃいかねぇみてぇだな…!!」
「だったらこれだ!!」
「!? く…!!」
接近戦では勝てないと判断したのか、一部のライドプレイヤー逹はライドウェポンを剣モードから銃モードへと切り替え、離れた位置からイグニスを狙撃する。イグニスは銃撃をガシャコングローブで上手く防御した後、右手側のガシャコングローブの手の甲に付いているAボタンを押す。
≪バ・リーン!≫
「ハァッ!!」
「「「「「うわぁっ!?」」」」」
イグニスが右手で地面を殴りつけた瞬間、殴りつけた場所から発生した青色の電撃が周囲のライドプレイヤー逹を纏めて攻撃。ライドプレイヤー逹が地面を転がり、そこへ更に追撃しようとしたイグニスだったが…
-ズキュゥン!!-
「…ッ!?」
突如、イグニスの背中に強力な銃弾が命中した。リボルバグスターが銃撃を仕掛けて来たのだ。
「我々がいる事を忘れて貰っては困る!! やれ、お前達!!」
「「「「「ゲゲゲッ!!」」」」」
「チィ、面倒な…!!」
バグスター戦闘員達の一斉射撃がイグニスを襲う。イグニスは左手側のガシャコングローブに付いているBボタンを押して電撃を強化し、銃撃して来るバグスター戦闘員達を纏めて攻撃する。しかし、リボルバグスター逹の方に気を取られてしまった所為で…
「隙ありぃ!!」
「くぁ!?」
その隙をライドプレイヤー逹に突かれてしまい、ライドプレイヤー逹からも一斉に銃撃を浴びてしまう。ライドプレイヤー逹だけでなくバグスター逹も纏めて相手取らなければならないこの状況に、離れた位置で眺めていた竜神丸はと言うと…
(ライドプレイヤーの個々の戦闘力はさほど高い様子は見られない……変身する者によって戦闘力が変動するケースなのか、それとも……あとは、ライドプレイヤーが如何にして入手したガシャットを使用するのかも気になるところですし…)
「…どれどれ。少し確認してみましょうか」
≪ガッチョーン…≫
竜神丸は何処からか取り出した黒いバックルと、青色のゲームパッド型可変装備―――ガシャコンバグライザーを一つに組み合わせ、1つのベルト―――バグラドライバーが完成。それを腰に装着した後、その場から駆け出した彼は勢い良く飛び蹴りを繰り出し…
「そぉい!!」
「え……あだぁっ!?」
「「「「「…へ?」」」」」
…あろうことか、ライドプレイヤー逹ではなくイグニスの背中に飛び蹴りを命中させた。まさか上司に後ろから蹴り飛ばされるなんて思っていなかったのか、イグニスは大きく転倒する羽目になってしまう。
「は、博士!? 何故私に攻撃を…」
「すみませんねイーリスさん。少し試したい事がありまして……それと、後ろ危ないですよ?」
「え……うぁ!?」
そんな状況下でも、ゲームを楽しむ事しか頭に無いライドプレイヤー逹はイグニスを一斉に攻撃。ライドウェポンによる攻撃が連続で命中していき…
「何が何だか分かんないけど、レアアイテムは貰ったぁ!!」
「きゃあぁっ!?」
≪ガシューン!≫
ライドプレイヤーの銃撃がゲーマドライバーに命中。その影響でイグニスの変身が解けたのか、イーリスが地面に倒れた後、その周囲には彼女が使用していたドライバーとガシャットが落下し、それを拾うべくライドプレイヤー逹が一斉に群がって行く。
≪爆裂パンチャー!≫
「よっしゃあ、強そうな武器ゲット!!」
≪ボンバースタント≫
「うぉ、バイクが出て来た!? こりゃ良いね、ヒャッホー!」
「くっそ、お前等だけずりぃぞ!?」
拾ったガシャットを起動した事で、1人は召喚されたガシャコングローブを両手に装備。もう1人はイグニスのレベル2の姿であるマシン―――スタントゲーマーに乗り込むが、落ちたガシャットは2本しか無かった為、他のライドプレイヤー逹は武器を入手する事は出来なかった。
「なるほど。武器が存在するガシャットであれば、ガシャットに応じた武器を召喚出来る…と」
「ッ……博士、一体どういう事ですか…?」
「色々試したい事がありましてね。まぁ、いきなりだった事については謝りましょう」
倒れていたイーリスに肩を貸して起こした後、竜神丸は白衣のポケットから取り出した黒いライダーガシャットを右手に持って構える。取り出された黒いライダーガシャット……その絵柄には、ネメシス-T型を彷彿とさせるゲームキャラクターが描かれていた。
「ここから先は私が引き受けます。取られたガシャットもきちんと回収するので、その辺はご安心を」
≪マッドネスタイラント!≫
ガシャットが起動され、黒く禍々しいエフェクトがフィールド全体に広まって行く。竜神丸はガシャットを持った右手を右側にゆっくり動かした後、すかさず腰に装着しているバグラドライバーの挿し込み口に装填、そしてドライバーに付いているトリガー状のスイッチを押し…
「変身」
≪ガシャット! バグルアップ!≫
竜神丸の周囲が黒い霧に包まれ、ネメシス-T型のような絵柄の等身大パネルが発生。その瞬間、パネルを突き破るように黒い右腕が伸び、その瞬間パネルを粉砕するように戦士がその姿を現した。
≪マッド! デンジャー!(デストロイ!)マッドクリーチャー! マッドネスタイラント!(スターズ!)≫
防弾コートを彷彿とさせる黒いボディ。
左肩から左掌まで触手のように繋がっている紫色のチューブ。
剥き出しの歯を思わせる形状になっている口元のマスク。
黄色のバイザーが破損した事で、青色の瞳が露出してオッドアイのようになっている複眼。
コントローラボタンが罅割れ、何かが突き立てられたような傷跡が2つほど残っている胸部アーマー。
「Woooooo…」
B.O.W.のネメシス-T型を彷彿とさせる禍々しき戦士―――仮面ライダーザイエン・タイラントゲーマーレベル
「―――STAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAARS!!!!!」
「「「「「!?」」」」」
フィールド全体に、その大きな咆哮を響かせてみせた。そんなザイエンの咆哮に、ライドプレイヤーやバグスター逹は驚いてザイエンの方へと振り返る。
「Wooooooooooo…!」
「な、何だありゃ!? アレも仮面ライダーか…!?」
「何でも良い!! 今度こそレアアイテムゲットのチャンスだぜ!!」
「ふざけないで、レアアイテムは私の物よ!!」
そんなザイエンの姿を見ても、ライドプレイヤー逹は臆さず立ち向かっていく……それが命取りになるなど、思いもしないまま。
「…グルァッ!!」
「え…ぐぼっ!?」
「ぐぁ!?」
「きゃあっ!?」
向かって来るライドプレイヤー逹を片っ端から殴っては蹴り倒し、跳びかかって来た者にはアッパーを炸裂させて吹き飛ばす。銃撃をその身に浴びてもビクともしないザイエンは1人のライドプレイヤーの首を掴み、銃撃して来た他のライドプレイヤーに投げ当てて転倒させた後、倒れた状態から起き上がろうとしていたライドプレイヤーの背中を踏みつける。
「つ、強い…!!」
「フゥゥゥゥゥゥ……あなた達、レアアイテムは欲しいですか?」
「ッ…当たり前だろうが!! レアアイテムをゲットして、俺がボスを倒すんだ!!」
「そうですか、そうですか。そんなに欲しいなら奪ってみなさい……奪えるものなら」
≪ガシャコンランチャー!≫
「ごはぁっ!?」
「あぐぅ…ッ!!」
「くそ、だったら俺が…」
「フゥン!!」
「ぐげぇ!?」
FIM-92スティンガーの形状をしたロケット砲型ガシャコンウェポン―――ガシャコンランチャーがザイエンの右手に出現。その長い砲身で目の前のライドプレイヤーを薙ぎ払った後、足で踏みつけていたライドプレイヤーは蹴り転がしてからガシャコンランチャーの砲撃で容赦なく吹き飛ばす。バイクに乗ったライドプレイヤーが突っ込もう物なら、それを片手で受け止めてからライドプレイヤー強引に引き摺り下ろす。
「き、貴様、我々を無視するなぁ!!」
「フン!!」
「な…ぐおわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「「「「「ゲゲェェェェェッ!?」」」」」
完全に放置されてしまっていたリボルバグスターが銃撃を仕掛けるも、それすら物ともしないザイエンはガシャコンランチャーの砲身に付いているBボタンを押し、強化された砲弾をリボルバグスター逹目掛けて発射。手下のバグスター逹が一撃で全滅し、リボルバグスターは大きく吹き飛ばされた後、ヨロヨロ立ちながらその場を後にしていく。
「グゥ、おのれ……撤退、一時撤退だァ…!!」
「ぐぁあっ!?」
「戦闘データはもう充分ですね……さて」
≪スノーマンエクスプレス!≫
「終わらせましょうか」
≪ガシャット! キメワザ!≫
また1人ライドプレイヤーを蹴り飛ばした後、ザイエンは水色のライダーガシャットをガシャコンランチャーのスロット部分に装填。斬りかかって来たライドプレイヤーの攻撃をかわしてから高く跳躍した後、滑り台の上に着地したザイエンはガシャコンランチャーの砲身を地上のライドプレイヤー逹に向け…
≪SNOWMAN CRITICAL FINISH!≫
「フン!!」
「!? な…うぉわぁぁぁぁぁぁぁ―――」
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ―――」
ガシャコンランチャーから放たれた青色のエネルギー弾が、ライドプレイヤー逹のいる地面に着弾。爆発したかと思いきや、爆炎は一瞬にして凍りつき、ライドプレイヤー逹は凍ったまま全く動けなくなる。それを見たザイエンはガシャコンランチャーをその場に放り捨てた後、バグラドライバーに付いているAボタンとBボタンを両手で同時に押す。
「軽い気持ちで戦場に立てばどうなるか……思い知りなさい」
ボタンを同時に押す事で、フィールド全体に待機音が鳴り響き始める。そしてもう一度Aボタンを右手で押し…
≪CRITICAL END≫
死刑宣告が、その場に鳴り響いた。
「ハァァァァァァァァ……フッ!」
ザイエンの全身が黒いエネルギーに包まれていき、ザイエンはその場から跳躍。空中で回転しながら、地上で凍りついたまま動けないライドプレイヤー目掛けて突っ込んでいき…
「―――グルァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」
「「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」」」」」
獣のように咆哮を上げながら、ライドプレイヤー逹を纏めて吹き飛ばしてみせた。砕かれた氷と共にライドプレイヤー逹が地面に落下した後、彼等は変身が解けて生身の姿へと戻っていく。
「ぐぅ……く、そぉ……強過ぎる…」
「ま、まだだ! まだやれる…!」
「そうよ…! 今度こそ、レアアイテムを…」
圧倒的な力の差を思い知らされてもなお、諦めずにガシャットを手に持ち、もう一度ライドプレイヤーに変身しようとするプレイヤー達。
しかし、彼等に
「…? あ、あれ…?」
1人のプレイヤーが気付いた。
自身の右手が、ノイズと共に透け始めている事に。
「な、何だ…?」
「か、身体が…!?」
「ど、どうなってるの…!?」
「…これは」
それは他のプレイヤー達も同様のようで、それを見ていたザイエンはバグラドライバーからガシャットを抜いて変身を解除、竜神丸の姿に戻る。
「ジャジャーン! 誰か私を呼んだかな?」
「「「「「!」」」」」
その直後、先程まで竜神丸が立っていた滑り台の上に再度ポッピーが出現する。
「困っているプレイヤーの為に、ポッピーピポパポがゲームをナビゲートするよ♪」
その次に発せられたポッピーの言葉は……プレイヤー達を絶望に陥れる内容だった。
「もしも、戦いに負けてゲームオーバーになってしまったら……そのプレイヤーは消滅しちゃうの♪」
「…消、滅?」
1人の男性プレイヤーが自身の右手を見る。その右手はどんどん透け始めており、今にも消える寸前だった。
「コンテニューは出来ません♪ 1つだけの命を大切にね? 世界一のヒーローを目指して、レッツゲーム!」
明るいテンションでサラッと恐ろしい事を言ってのけたポッピーは再び姿を消す。彼女から告げられた事で、ようやく自分達がどんなゲームをやらされていたのか、それに気付いたプレイヤー達は表情がどんどん青ざめていく。
「う、嘘だ……嘘だぁ!?」
「た、助けてくれ!! 誰かぁ!!」
「い、嫌!! 嫌よ!! 死にたくない!!」
そんなプレイヤー達の希望は、次に発せられた音声で完全に叩き潰された。
≪GAME OVER≫
「「「「「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」」」」」
結果、プレイヤー達は1人も残らず一斉に消滅。その場には竜神丸とイーリスだけが残り、地面にはプレイヤー達が使用していたガシャット、イーリスが先程奪われたガシャットとドライバーだけが散らばっていた。
「…博士、これが…」
「そう、ゲームオーバーとなった者の末路です」
自分の手で彼等をゲームオーバーに追い込んだにも関わらず、特に何ともなさそうな表情でイーリスのガシャットとドライバーを拾い上げる竜神丸。そんな彼の態度にイーリスは恐々とした表情を浮かべる。
「しかしまぁ、収穫はありましたね。ライドプレイヤーの戦闘データと……このガシャットが」
次に竜神丸が拾い上げたのは、先程までプレイヤー達が持っていた緑色のガシャット。絵柄には仮面ライダーと思われるシルエットがいくつも描かれており、タイトルは『KAMENRIDER CHRONICLE』と書かれていた。
「今の戦闘で、この仮面ライダークロニクルの本質がハッキリしました。これは人間がバグスターを攻略していくゲームではない…」
「バグスター……つまりゲームキャラが、人間を攻略していくゲームです」
その後、違う場所でもokakaが同様の事態に巻き込まれる羽目になるのだが、それはまた別のお話…
END…?
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βテスト番外(仮面ライダークロニクル編)