潜水艦が居ないとは!
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マイ「艦これ」「みほちん」
:第30話(改1.5)<錯綜と弱小>
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翌朝。
早々に朝食を終えて執務室入りした私は秘書艦から報告を受けていた。
「今朝、05:00に軍令部よりより発令。臨戦態勢は解除され第三種警戒態勢に下げられています」
「5時?」
また軍令部にしては早朝から珍しいことだ。
昨夜の雨で今朝から湿気が多い。既に昇った太陽の日差しは早くもギラギラして夏を強く感じる。
「本日の視察団の列車到着時間は暗号でも伏せられています。各地から到着した参謀たちは各自判断して降りる駅を決め、迎車等で08:30には美保鎮守府に到着予定です。また本省の将校と舞鶴の参謀は大艇にて09:00には直接当鎮守府に接岸する予定となっています」
淀みない祥高さん。
腕を組んだ私は気になった部分を聞いてみた。
「大艇で直接接岸とは仰々しいな。ほとんど臨戦態勢だ」
軽く頷いた彼女は続けた。
「平行する電報の情報では視察団は、そのまま昨日と変わらず陸攻にて07:30に空軍美保飛行場に到着予定となっています」
私は時計を見た。
「いま7時15分過ぎだから、空港到着は直ぐだな」
「左様です」
祥高さんは応えた。
「祥高さん、今朝から機動部隊は出ているよね」
彼女は少し微笑んで思い出す素振りを見せた。
「はい。かなり不服そうな川内と、補佐役の神通支援部隊が弓ヶ浜沿岸に出ています。また山城を中心とした攻撃部隊は少し沖合の美保湾に既に展開中です」
「うむ」
私はアゴに手を当てた。。
(川内だっけ? どうせあの夜戦娘は「夜戦ン~!」とか言ったンだろうな)
昨日、入渠明けの川内の出撃は遠慮させたが、やっぱ煩(うるさ)いから直ぐ投入すべきだったかな?
アレコレ思いつつ私は立ち上がって窓辺に近寄った。
(ひょっとして上の連中は)
そのまま大山を見ながら思案する。
(電報の情報通りなら陸攻を3機使って敵の標的にさせるつもりか?)
「いや」
つい独り言。
(美保湾は今朝から、うちの艦隊が押さえてる。もしそこに予定にある陸攻が降りてきたら?)
ふと、ある考えが過ぎる。
「敵は中海(なかうみ)で待ち伏せする気か?」
最短部は僅か数キロの弓ヶ浜だ。
呟きながらも心の中では否定してみる。
(いや、まさか。浅い中海では有り得ない)
そこで私は振り返った。
「祥高さん、ここに潜水艦娘は居るのか?」
彼女は首を振って申し訳なさそうに言った。
「いえ美保鎮守府には潜水艦が所属していません。陸軍の『まるゆ』が仮停泊しているくらいです」
「な、なんと!」
思わず馬鹿みたいな返事をした。
「山陰地方の要(かなめ)足る美保鎮守府で、この有り様か」
ガックリ来た。
いや、もちろんここは設置されたばかり。どうしても艦隊編成が歪(いびつ)なのは仕方がない。
(それでも潜水艦が居ないとは!)
もはや舞鶴よりも、かなり下。実質的には半分以下の艦隊勢力だ。
現存の潜水艦らしきものは、かろうじて陸軍の『お荷物』だけか。
「『まるゆ』は実験船だろ?」
「はい」
祥高さんも苦笑している。
『まるゆ』は実戦に投入出来ない。悪く言えば陸軍から押し付けられた。
「こりゃ、だめだ」
思わず本音が出た。あまり貧弱な現実を突き付けられた私は、へなへなと全身の力が抜け椅子からずり落ちそうになった。
「司令、顔色が」
祥高さんが心配する。
「……」
いつもなら直ぐに「大丈夫だ」って返したいところだが、さすがにこの弱小ぶりは衝撃的だ。
(やっぱり美保は私への左遷人事だったか?)
海軍上層部からの嫌がらせだろうか?
(しかもそこへ陸攻の囮作戦だぞ)
私は天井を仰いだ。
「はぁ」
深くため息をついた。
「やれやれ」
悩んでも始まらない。もしこれが上層部からの嫌がらせだったとしても指揮官として責務は果たさなきゃ。
そのとき、かなり遠くから聞き覚えのある陸攻の低い発動機の音が徐々に響いてきた。しかも一機ではない。やはり編隊だ。
「なんだか……まずいな」
悪い予感がした。
あの長い髪の深海棲艦。不気味で不敵な瞳の笑顔が私の脳裏に浮かんだ。また鳥肌が立った。
そんな中、陸攻の音は美保湾じゅうに低い重奏を奏で続けていた。
以下魔除け
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほちん」とは
「美保鎮守府:第一部」の略称です。
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いよいよ外部からの視察団を迎える当日、美保鎮守府では情報が錯綜し、ちょっとした緊張が漂っていた。