「天龍ちゃぁぁぁぁぁん!何処にいるのかしらぁぁぁぁぁぁぁ!」
「天龍何処だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
天龍型軽巡洋艦二番艦『龍田』と彼女とケッコンカッコカリをした提督の二人が大声で天龍の名前を呼びながら、鎮守府内を走り回っている。
鎮守府内を移動している他の艦娘たちが何事かと声のした方を見るが、龍田と提督が二人揃って走り回っているのを見て、いつもの事かと興味を無くし、そのまま去っていった。
「絶対に出るもんか絶対に出るもんか絶対に出るもんか絶対に出るもんか絶対に出るもんか絶対に出るもんか……」
件の天龍はと言うと、鎮守府内に植えられている茂みの中で耳を押さえ、目を瞑っていた。
そして、声が聞こえなくなった所で茂みから少し顔を出して辺りをうかがい、また茂みの中に潜り込む。
「なんで龍田と提督はオレを着せ替え人形にしたがるんだよ」
「うふふふ~、だって天龍ちゃん可愛いし、反応が楽しいんだもの」
「うんうん」
「ばっ!別にオレは可愛くなんかね……え……よ?」
天龍は自分の独り言に返事が返って来ているのに気が付き、声のたし方向を見ると、そこにはとてもイイ笑顔をした龍田と提督の姿があった。
「ど、どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
天龍は女の子にあるまじき叫び声を上げながら、茂みを飛び出した。
その後を追って、龍田と提督も茂みを飛び出し、逃げた天龍を追いかけ始めた。
「うふふ~、天龍ちゃぁぁぁぁぁん!」
「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!!?」
意味ありげな龍田の笑顔を見て、天龍は更に速度を早めた。
……それにしても、艦娘の足に着いて行ける提督は何者なのか、不思議である。
天龍と龍田、提督の三人の追いかけっこは数時間にも及んだ。
最終的に駆逐艦にぶつかりそうになって急停止した天龍が龍田に捕まり、執務室に連行された。
「いつまで不貞腐れているんだ…」
「……別に不貞腐れてなんかねぇよ」
ソファーに座った天龍は不機嫌そうに溜息を吐いた。
「まあ、そう怒るな。今回お前を呼んだのは着せ替え人形にするためじゃないからな」
「んじゃあ、なんで呼んだんだよ」
天龍がそういうのと同時に提督は懐から小さな箱を取り出した。
「お前、それ…」
天龍には見覚えがあった。
同室の龍田が何時も大事そうにしまっている箱、ケッコン指輪が入った箱だった。
「昨日の出撃で練度がMAXになっただろう?そこで龍田と話し合って、お前ともケッコンカッコカリをすることに決めたんだ」
「……龍田は、それでいいのか?」
「うん、だって提督は私も天龍ちゃんも大切にしてくれるって言ってくれたから。この人なら二人共幸せにしてくれるって、そう思ったの」
提督の真面目な表情、龍田の幸せそうな微笑みを見た天龍は頭をガシガシと掻いた。
そして、しばらく下を向いて何事かを考え始め、顔を上げた。
「本当にオレと龍田を幸せにしてくれるか?」
「ああ、努力しよう」
「頼りねえな。でも、『絶対に幸せにする』って言われてたら、お前や龍田がなんと言おうともケッコンしなかった」
そう言うと天龍は自身の左手を提督に向けて、差し出した。
「す、末永く頼む」
「ああ、こちらこそよろしく頼む」
提督は天龍の左手の薬指に銀色に光る指輪をはめた。
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